6月下旬、梅雨の季節に入っていた。
少しずつだが友達もでき、新しいクラスに馴染んできた。
颯「もう、朝から雨とかテンション下がるって~」
悠「やっぱ雨の日は、女子と相合い傘して楽しむもんだよな~」
颯(...ムギちゃんと相合い傘で歩くのか...晴れの日よりドキドキするかも~///)イイネイイネ~!
悠「...どうした!?顔赤いけど、雨に打たれて風邪でもひいたのかー?」
颯(おっ!風邪ひいてムギちゃんに看病してもらうっていう手もアリだな~!)
悠「...何だよ気持ちわり~なぁ」スタスタ
颯「置いてかないでよ~!」
~~~~~~
雨のせいで登校中に靴下が濡れたので、自教室に着くと窓際に干していた。
颯「ホント。明後日、遊園地に遊びに行くからその日だけは晴れて欲しい」
健「誰かと出かけんの?」
颯「...さあね」
健「あ、あの子!紬ちゃんとだろ!」
颯「何で分かったんだ...」
健「だって、いつも一緒にいるから」
そう、僕は紬と遊びにいく約束をしている。
一緒に遊びに行きたいなって思って、勇気出して誘ったらOK貰っちゃった。
あ、そういえば紬の私服姿まだ見たことなかったな!
それに、生まれて初めてのデートだから失敗できねぇ!
女子A「...ふーん」
颯汰と健の会話を、教室外の廊下を歩いていた一人の女子生徒は耳にした。
~~~~~~
「じゃあ、また明日!」
健「うん、バイバイ~」
健「...おーい颯汰ー、起きろー。もう放課後だぞー。皆帰ってるよー」ユサユサ
颯「ウーン....」zzz
健(あ、そうだ...!)
健「もう土曜日だぞ~、紬ちゃんと遊びに行く約束してたんじゃないのか~?」
悠「そうなのか?」
颯「ハッ!!....へ??」
健「嘘で~す。...って、いつまで寝てんだよ!」
どうやら僕は、午後の授業が始まってから今まで寝ていたらしい。
目を覚まし教室内を見渡すと、悠と健の2人の姿しか無かった。
窓の外を見ると、雨はまだ降っていた。
颯「紬は?...あ、部活か」
健「ううん、今日は部活休みらしくて、颯汰を起こしてたけど起きないから諦めて帰ったよ」
颯「...もう帰っちゃった?」
健「うん」
颯「...まじか!」ダダッ
健「って、おーい!帰ったの30分くらい前だから!」
颯「まじか~。何やってんだ30分前の俺!」ショボン...
悠「さあ、諦めて俺達と一緒に帰ってもらうからな!」
颯「え~~」
~~~~~~~~~
颯(あ~...最悪。今日の朝干したのに...)
家に帰り、靴を脱ぐとすぐに、つま先立ちをしてタオルを取りに行った。
濡れた足を拭いていると、制服のポケットの中の携帯が鳴った。
画面には『紬』と書かれていた。
颯(紬から電話掛かってくるのって珍しいな)
颯「...もしもし?」
紬 "もしもし?
...急にごめんね。あのね、土曜日の事なんだけど、遊びに行けないかも知れないの..."
紬の声は少し震えていた。
颯「え、何で?」
紬 "お財布が見当たらなくて"
颯「まじで?どこかで落としたんじゃないのか??」
紬 "ううん。たしかに今日は学校に持っていったけど、カバンの奥にしまったからそんなはず無いと思うの...それに今日は一回もカバンから出してないし..."
颯「無いことにはいつ気づいたの?」
紬 "学校の最寄り駅に着いたときに気付いたの。それに、ICカードはいつもお財布の中に入れてるから帰れなくて..."
颯「今、駅にいるの?」
紬 "...うん。でもどこかで落としてそうだから、今来た道を辿って探しt
プツー
颯「...あれ?」
何故か会話の途中で電話が切れてしまった。
スマホの不具合か?まあいいや。
颯(...でも今日の帰り道、紬とはすれ違ってないよ...?)
そっちに行くとするか。
僕は、傘を一つ持って家を出た。
~~~~~~~~
颯「はぁ...はぁ...」
学校の最寄り駅に着き、改札を出た。駅から少し離れたところで紬の姿が見えた。
颯「財布、見つかった?」
紬「まだなの...」
~~~~~
紬「... 」
颯「ん~無いなぁ」
颯「最悪警察に遺失届を出すしか...」
20分程さがしていると、紬が口を開いた。
紬「あっ、あった!!」
そう言うと腕まくりをして、溝に落ちていた財布を拾い、僕の方に来て笑顔を見せた。
その時、見たことのない紬の左腕の傷を目にした。
颯(...!!)
颯「...あ、そうだ。中身は無事なのか?」
紬 「そうね...
...うん!だ、大丈夫よ!ICカードもあるわ!」
紬「...一緒に探してくれて、ありがとう~」
颯「う、うん...」
颯「そ、それより土曜日13時、喫茶店で集合だからな!」
紬「了解ですっ!」
颯「じゃあ、帰ろうか」
真っ向から感謝され、照れてしまった。
財布も無事見つかったので帰ることにした。
颯(相合い傘♪相合い傘♪...って、雨止んでるし!!)
こうなったら無理やり。
颯「傘持ってきたから。これさして帰ろ?」
紬「えっ?でも雨降ってないよ?」
颯「まあそうだけど、ほら、傘さして帰りたくなる時あるじゃん?」
紬「...たま~にあるかも」
颯「あるでしょ!」
(あるのかよ!)
~~~~~~~~~~
颯「ふぁ~~~」
今は土曜日の朝5時半。
昨夜は、楽しみすぎて眠れないだろうなと思ったが、22時に就寝し、しっかり睡眠がとれた。
今は口数よりあくびの数のほうが多い。
窓の外を見ると晴れていた。
考えてみれば、紬と出会ってから2か月がたった。
紬と出会った頃、話をしてみると紬はお嬢様で、上品さが漂い、それが僕にとっては新鮮でどう関われば良いんだろうと悩んでいた。
でも一緒に過ごしてみると、そんな印象はすぐに変わっていった。
紬にとって初めて見るものが多く、色んなものに目を輝かせる。
そんな純粋さに、僕は惹かれた。
実は今日、紬に伝えるんだ――――。
朝ごはんを食べ終え、時間をもて余していた。
この暇な時間は、紬に何と伝えようか必死に考えていた。
プルルル...
悠から電話だ。
颯「もしもし、悠?...何?こんな時間から」
悠 "お、やっぱ起きてたんだな!"
悠の言葉を理解するのに少し時間が
かかった。
颯「...お前もしかして知ってたのか!?」
悠 "うん、健くんから"
颯「健のヤツ~!!...まあいいけど」
悠 "告白、そろそろした方がいいんじゃないか?"
颯「あ、ちょうどよかった。悠、ききたいことが一つあるんだけど...」
悠 "何だ?"
颯「...紬にどういう風に伝えればいいのかなぁ??」オロオロ
悠 "そんなこと知らねぇよ~!そんな重大なセリフ、第三者の俺にきくんじゃねぇ!"
颯「まあそうだよな...」
悠 "...ま、下手に言葉を飾らない方がいいと思うよ。『好き』っていうのが伝わればいいんじゃないか?"
悠 "颯汰と紬さんがどんな関係なのか俺は知らないから、アレだけど..."
悠 "颯汰なら大丈夫だよ。優しいし"
颯「...ありがと。ってか、緊張する~!やばくなったら悠を思い出して緊張ほぐすか」
悠 "どういう意味だよ..."
颯「ってか悠は何でこんな時間に起きてるの?」
悠 "変な時間に起きちゃってさ"
(颯汰がデートに行くって聞いたから!だって颯汰って、お楽しみの日の朝は早起きするじゃん!)
颯「変な時間に起きたからって電話かけてくるなよ~」
悠「...ゴメン!じゃ、切るわ」
颯「うん、バイバ~イ」
プツー
悠 (...頑張れよ!)
~~~~~~~~~~~~~~
颯 (...。)
もうすぐ13時を回ろうとしていた。
喫茶店の中で紬を待っているところだけど...
ガチャ...
「いらっしゃいませ~」
紬「颯...?」
颯 (今になってすげー緊張してきた...帰りたい...ダメだ!こんなこと言ったら悠に「自分から誘っといて何言ってやがる」って言われる。それになんだ!会いたいのに帰りたいという矛盾は!)
颯「クスッ...」
紬「...どうしたの?」
颯「うおっ!!!」
紬が入店してきたことになぜか気付かなかった。
いつの間にか紬が座っていて思わず驚いてしまった。
颯 「...って、その服すげぇ似合ってるよ~!」
紬「ありがとう~!」
紬の可愛い私服姿はもちろんだが、いつもと違う紬のメイクに一番ウットリしていた。
颯 (なんか...嬉しいな)
颯「じゃあ、何か注文して少ししたら行こか」
紬「うん」ニコ
颯 (くっ!その笑顔がまぶしいですよ!紬さん!)
悠。僕は一日中この調子だと思う。
~~~~~
悠 (颯汰も今は楽しんでるのかな...俺も颯汰たちのデートに参加したかったな~。なんちゃって!
それより、この前の中間テストの結果があまり良くなかったから期末テストで巻き返さなきゃだし、勉強するか)
プルルル...
悠と同じクラスの平沢唯から電話がかかってきた。
唯「もしもし~?」
悠「もしもし~、どうしたの?」
唯「あの~今から勉強を教えてほしいのです」
悠「お、いいよ。俺も丁度勉強するところだし」
悠 (快諾したけど、絶対教える立場じゃないと思う)
唯「そうなの?!じゃあ悠ちゃんが勉強するとなると、ジャマしちゃいけないから―――」
悠「え、一緒に勉強しようよ?」
唯「いいの?ありがと~!」
悠 (...そういや颯汰、中間テスト俺よりひどくなかったか?期末まであと10日くらいしか無いよ?)
~~~~~~
颯 (あのジェットコースターの角度すごいなぁ...)ジーー
紬「~だよね!颯汰くん!...」
颯「...あ、ゴメンゴメン。なあに??」
紬「あ!今このジェットコースターに乗りたいって思ったよね?」
颯「いやいや、思ってないよ!」
紬「行こう行こう!」
そう言うと僕の手を取り、無理やりジェットコースターに連れた。
~~~~~~~~
颯 (お化け屋敷ってこんな怖かったっけ??)
紬「颯汰くん、この道な気がするわ!」
颯「何も見えない...うああああ!!!!」
ふと紬を確認すると、怖がる様子もなくただひたすら前に進んでいた。
颯 (ジェットコースターでもお化け屋敷でも、紬がずっと笑顔なんですけど...!紬の笑顔が怖くなってきた...)
その後も色んなアトラクションに乗った。
実は紬にとって、今日が人生初の遊園地だった。
それにしても、紬がこんなにはしゃぐ姿を目にしたのは初めてだと思う。
~~~~~~~~~~~~
紬「あっ、颯汰くん!あそこに焼きそばの屋台があるわ!!」
颯「...あれアトラクションじゃないよ!
もしかしてまだお腹空いてるの?」
紬「うん、食べてみたいの!」
颯 (食べたいじゃなくて、食べてみたい、か...幸せそうだなぁ~)
颯「おまたせ~」
紬「ありがとう~!!」
モグモグモグ...
颯 (こんな至近距離で、紬の食べてるとこ見るの初めてかも。本当美味しそうに食べるな~)
紬「食べる?」
颯「じゃあ一口だけ...」
(満腹だけど、断れねぇよ...)
~~~~~
紬「楽しい時間って、過ぎるの本当早いね~」
颯「そうだな...」
颯「...あ、そういえばこの近くに、すごく景色の良い場所あるんだ。後で見に行かない?」
紬「うん!」
もうすぐ19時を回ろうとしている。
もうそろそろ帰る時間なので、最後は観覧車に乗ることにした。
今日一緒に過ごせて、本当に楽しかった。
ついにこの時が来た。
気持ちを素直に伝えよう。
落ち着こうとすればするほど、緊張してしまう。
そんなことを、紬は知らない。
紬「すご~い!観覧車から見える景色ってこんな感じなんだ~」
颯「ああ、綺麗だよな...」
紬は観覧車から見える街の景色を、幼い子どものように興味津々に見つめている。
僕はそんな紬の横顔を、まっすぐ見つめていた。
紬の言うとおり、観覧車って本当にすごいよ...。
普段の学校でも、紬と二人でいる時間長いけど...
観覧車の小さな空間が、紬を独り占めしているような気分にさせてくれる...
この空間が永遠に続いてほしいと思った。
颯「紬。外を眺めながら聞いてくれないか?」
紬「うん!」
颯「俺は、紬と同じクラスになれて、紬と出会えて...」
颯「本当に幸せ。毎日が楽しい。」
紬「...」
颯「僕は...。紬、君のことが好きです」
颯「今以上に君のことが知りたい。だから...」
颯「僕と付き合ってください!」
僕は、紬への想いをそのまま伝えた。
そして、さっきの夢みたいな空間は消えてしまった。
しばらくすると、外を眺めていた紬は俯き、両手で顔を覆った。
沈黙の時間が続き、少しイヤな空気が流れた。
振られるような気がした。逃げたい。
『ごめんなさい』という言葉だけは聞きたくない。
俺は、友達という関係をこえることが出来るのか...?
とりあえず答えを待つか。
すると紬は小さく頷き、震えた小声で言った。
紬「よろしくお願いします」
と同時に、俯く紬の手首を涙が伝った。
紬は泣いていた。
颯 (今のは...OKってことだよな?)
良かった~!!!!悠、俺はやったよ!
って、おい!ホッとするのはまだ早いぞ、俺。スタート地点に立ったとこだ!
でも紬が涙を流す理由が、今の僕には分からなかった。
颯 (どうすればいいんだろ...)
紬の泣いている姿は見たくない。
慰めたいけど、かける言葉が見つからないので紬の横に座り、そっと抱き寄せた。
ぬくもりと髪の匂いで、ドキドキしてしまう。
って俺、気持ち悪っ!!
その時、紬は言った。
紬「...いつもありがとう」
颯「...こちらこそだよ」
紬が消え入りそうな声で言った。
僕らの乗る観覧車はもう、下まで来ていた。
~~~~~~
颯「ここだよ!」
紬「うわぁ~!!すごく綺麗~!」
晩御飯を食べ終え、僕がよく来る場所に紬を連れてきた。
外はすっかり暗くなり、紬の顔がよく見えなくなっていた。
遊園地ではしゃぐのも楽しかったけど、やっぱり紬と落ち着いた雰囲気も楽しみたかったし。
それに、星見るの好きって言ってたから。
颯 (今日流れ星見れるのかな?)
颯「流れ星が見えたら、何お願いする?」
紬「えっ?今日って流れ星見れるの?」
颯「いや、わかんない...」
紬「う~ん、もし見れるなら...」
紬は少し考えると答えた。
紬「...秘密!」
颯「え~!教えてくれたっていいじゃ~ん!」
紬「...ごめんね!」
紬「じゃあ、颯汰くんは何をお願いするの?」
颯「俺は~...」
颯 (紬とキスできますように!...なんて、俺には恥ずかしくて言えねえや)
颯「ん~俺も秘密かな」
紬「颯汰くんもなんだ~!知りたいな~」
その時、流れ星が見えた。
颯「あっ!流れ星だ!」
紬「えっ、どこ?」
颯「あれ?空見てなかったの?」
紬「ううん、見てたよ?」
俺にしか見えない流れ星とか存在するのか!?
でも、確かに見えたんだけどなぁ。
颯「...見間違えかなぁ」
その時、スマホの画面の光が紬の顔を照らしていた。
紬は一瞬怯えた表情をしていた。
そして、紬は急いでスマホをしまった。
颯「...どうした!?」
紬「あ、うん!ごめん!大丈夫!」ニコ
~~~
颯「晴れてくれたから、今日の星綺麗に見えるね。」
紬「そうね...」
紬「...それは、星もなのかしら?」
颯「...どういうこと?」
紬「私ね、星を見るといつも気になってる事があるの。」
紬「星には、私たちの世界がどんな風に見えてるんだろうって。」
紬「世界ではいろんな事が起きているけれど...」
紬「星たちにとっては、この世界は綺麗なのかなぁ」
颯 (そんなこと考えながら見てたのか...
俺は、無理だと分かっていながら何個あるのか数えてた)
僕は、紬の目を見て話を聞いていた。
しかし紬は目を合わせることなく、星を見つめて話していた。
紬「流れ星になって見てみたいとは思わないけど...。」
颯「じゃあ紬はこの世界のこと、どう思う?」
紬「綺麗...なんじゃないかな」
颯「...」
なぜ曖昧なんだろう...
紬が言葉を濁す理由が、俺には分からなかった。
颯「あ、そろそろ帰ろうか」
紬「そうね」
夜遅くなってしまったので、僕は紬を家まで送ることにした。