幻の流れ星   作:きなこモチ

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夢 2

~~~~~~~~

 

 

ジリリリ...

 

 

 

颯「...もうこんな時間かぁ」

 

 

 

ピコン!

 

 

 

耳元に置いてある目覚まし時計が鳴り、見ずに止めた。

 

 

 

それと同時に、LINEの通知が来た。

 

 

 

スマホを見てみると、紬からメッセージが来ていた。

 

 

 

日付を確認した。

今は、土曜日の昼の1時。

 

 

 

『そろそろ着きます。起きていますか?』

 

 

 

相変わらず文面が事務的なんだよな~。

絵文字くらいあってもいいのに!

面白いからいいけど!

 

 

 

颯 (てか、休日は昼寝するってこと紬にバレてんじゃん...。

そんなことより、もう約束の時間じゃないか!迎え入れる準備しないと)

 

 

 

自分の部屋は、今はそんなに散らかってないが、床にある物を軽くしまっておいた。

 

 

身なりも整えておこう。

 

 

 

ピンポーン

 

 

 

颯「はいはーい」スタスタ

 

 

 

紬のメッセージに返信してから数分たった今、家のインターホンが鳴った。

 

 

 

ガチャ

 

 

 

颯「入って~」

 

 

紬「おじゃましま~す...今は颯汰君一人?」

 

 

 

颯「うん。今日は、親が仕事から帰ってくるの遅いから心配しなくていいよ。紬が来ることは一応伝えてあるけどね」

 

 

 

紬「そうなんだ」

 

 

 

 

 

~~~~

 

 

 

 

 

紬「久しぶり~颯汰君の部屋!」

 

 

 

颯「部屋にも挨拶するんだ...」

 

 

 

紬「うん!やっぱり颯汰君の部屋は落ち着く~」

 

 

 

颯「まじで...?嬉しいな~そう言ってくれて」

 

 

 

颯 (最近は部屋のにおいに、めちゃくちゃ気をつけてるからな...)

 

 

 

颯「...よいしょっと」

 

 

 

颯汰君は部屋を出て、どこかへと行った。

 

 

 

部屋で待っていたその時...。

 

 

 

 

 

ガシャン!!

 

 

 

 

 

一階の方から、ガラスが割れるような音がした。

 

 

 

紬「颯汰君大丈夫っ!?」

 

 

 

慌てて台所に行くと、床には透明なコップの破片が散らかっていた。

 

 

 

颯「コップ落としちゃった...」

 

 

 

私を見てそう言うと、再び破片を見つめる。

 

 

 

紬「怪我はない...!?」

 

 

 

颯「う、うん。大丈夫...」

 

 

 

紬「...颯汰君。今は片手しか使えない状態だから、困ったときは私を呼んでね?」

 

 

 

颯「うん... ありがとう...」

 

 

 

颯「じゃあ、そこの棚からコップを二つ取って、このお茶を注いでほしいな...!」

 

 

 

紬「はいっ!」

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

颯「すげー器用だなぁ... 」

 

 

 

紬「そう?」

 

 

 

 

颯「うん...」

 

 

 

 

紬「...」

 

 

 

 

颯「...」

 

 

 

 

 

裁縫の刺繍を頑張ってやってくれてる紬の手元を、僕は隣でジーッと見つめていた。

 

 

 

見てる側の僕も、いつの間にか集中していた。

 

 

 

しばらくの沈黙が続いた後、紬が声を出した。

 

 

 

紬「よし!終わった~」

 

 

 

そう言い、出来上がったものを僕に見せてくれた。

 

 

 

颯「おおー!ありがとうー!」

 

 

 

紬「どうかな?」

 

 

 

颯「めちゃくちゃいいよ!俺がやった部分と全然違う」

 

 

 

紬「ううん、颯汰君のやったところも綺麗よ?」

 

 

 

颯「そうかなぁ?」

 

 

 

紬「うん」

 

 

 

 

 

颯「それじゃあ、裁縫手伝ってくれたお返しに...う~ん...」

 

 

 

 

 

颯「...お返し、何がいい?」

 

 

 

 

 

紬「...お返しは、『颯汰君の家にお泊まりできる許可』をください!」

 

 

 

 

颯「は?えっ...!?」

 

 

 

 

紬「...ダメ...だよね」

 

 

 

 

颯「いや、別にダメじゃないけど...紬は大丈夫なの?親は反対してない...?」

 

 

紬「うん!しなかったわ」

 

 

 

颯「それならいいけど...」

 

 

 

 

 

颯 (...てか、お返しが『俺の家にお泊まり』ってよくわからんな。自分に利益のあるお返しなのか...?)

 

 

颯 (俺の家に泊まっても、俺がこんな状況だから、俺がやらなきゃいけない家事を手伝ってもらうだけだよ...?)

 

 

 

 

 

 

 

 

颯「...そろそろ洗濯物乾いてきた頃かな?取り込まなきゃ」

 

 

 

窓の方へ向かおうとすると、目の前を紬が横切った。

 

 

両手で窓に触れた紬は振り返った。

 

 

 

紬「颯汰君、私に任せて!」フンス

 

 

 

颯「...まさか、家事までも手伝ってくれるってこと!?」

 

 

 

紬「うん!」

 

 

 

颯「それじゃあ、また俺が得しちゃう...けどいいのか...?」

 

 

 

 

 

紬「...あのね。私は、お礼が欲しいから颯汰君のお手伝いをしてるんじゃないの」

 

 

 

颯「う、うん...」

 

 

 

紬「私、颯汰君の笑顔を見ると元気が出るんだ~」

 

 

 

颯 (そんな事言ってくれるなんて...)

 

 

 

紬「私が得すること、それだけじゃないのよ?」

 

 

 

颯「...そうなの?」

 

 

 

紬「私、颯汰君の家に泊まってみたかったの」

 

 

 

紬「ほら、これで私は二つ得したわ!これで おあいこ ね~」

 

 

 

颯 (何の張り合いだよ...)

 

 

 

 

~~~~~~

 

 

 

 

颯「頼む!3を出されたら負けてしまう!」

 

 

 

紬「えいっ!」

 

 

 

 

カタカタカタ...

 

 

 

 

紬「...やったー!3だ!」

 

 

 

颯「あーー!また負けた~」

 

 

 

 

テレビゲームや、紬が持ってきた人生ゲームで、初めての室内遊びを楽しんでいる。

 

時間を忘れて遊んでしまい、時刻は午後6時になっていた。

 

 

 

 

紬「...」グウウ

 

 

 

颯「晩御飯にするか!」

 

 

 

紬「そうね」

 

 

 

 

今から晩御飯を作るのだが、俺はそもそも料理ができない。

 

 

なので、使っていい食材を台所に並べ、調理は紬に任せた。

 

 

何か出来ることがあれば手伝いたいが、片手しか使えず、アクシデントを起こしそうなので、食卓でおとなしく待つことにした。

 

 

 

30分ほど待つと、紬が料理を並べに来た。

 

 

 

紬「おまちどおさま~」

 

 

 

颯「うお~美味しそう~!」

 

 

 

グラタンやオニオンスープ、サラダ、パンが並べられた。

 

 

 

颯「いただきま~す」

 

 

 

紬「召し上がれ~」

 

 

 

颯「...」パク

 

 

 

 

颯「...」モグモグ

 

 

 

 

紬「どうかしら?」

 

 

 

颯「ベリーベリーおいしい~!!」

 

 

 

紬「よかった~」

 

 

 

 

初めて食べる紬の手料理。

 

本当に美味しすぎる。

 

 

料理ができることを知って本当にビックリしたし、感動しているよ。

 

 

 

 

 

 

それに―――。

 

 

 

 

 

 

食卓を挟んで、向こうに座る紬と向かい合って...。

 

 

 

 

 

 

「おいしい」と、僕に見せる無邪気な笑顔...。

 

 

 

 

 

 

そんな情景を目にした僕は、僕が望む未来を夢見ずにはいられなかった。

 

 

 

~~~~~~~

 

 

 

颯「...」

 

 

 

時刻はすでに午後11時をまわっていた。

楽しい時間が過ぎるのは本当に早い。

 

 

晩御飯を食べ終わってからも遊んだが、疲れて眠くなってきたので寝ることにした。

 

 

 

紬「...」

 

 

 

颯 (もう寝たのかな...)

 

 

 

名前を呼んで、起きているか確認しようと思ったが、寝ているなら起こしてはいけない。

 

 

僕は地べたの布団で、紬はベッドで寝ているので、身体を起こして紬の様子を見てみた。

 

 

 

颯 (...お、起きてた)

 

 

 

暗くてよく見えないが、紬の目は開いていて、時折瞬きしていた。ちょっと怖かった。

 

 

 

紬「颯汰君起きてたんだ」ヒソヒソ

 

 

颯「うん。まあ、昼寝したからね」ヒソヒソ

 

 

颯 (今日の一日を振り返えっていたなんて言えない...)

 

 

 

颯「紬は眠れそう?」ヒソヒソ

 

 

紬「う~ん...眠れないかも...」ヒソヒソ

 

 

 

颯 (普段寝てる場所じゃないもんな...)

 

 

 

 

 

紬「ねぇ、颯汰君」

 

 

 

颯「...ん?」

 

 

 

 

 

 

 

紬「...眠れなかったら、一緒に寝てもいい?」ヒソヒソ

 

 

 

 

颯「...本気で言ってる?」

 

 

 

 

紬「うん...」

 

 

 

颯「まじか...。ま、まぁ、いいけどぉ...」

 

 

 

 

紬が俺の家に泊まるということについては、いつかその日が来るかもと思っていたから、その提案は別に問題なかった。

 

 

だが、同じ布団で一緒に寝ることまでは想定してなかった。

 

 

嬉しいことなのに、心の準備も出来ておらず、中途半端な返事をしてしまった。

 

 

 

 

でも...。

 

 

 

 

 

 

俺が起きたとき、横に紬がいますように...。

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

紬「...」

 

 

 

 

颯「...」

 

 

 

 

 

紬「颯汰君...」

 

 

 

 

もう少しで眠りにつくところだったが、紬に名前を呼ばれ、少し眠気がとんだ。

 

 

 

 

颯「...どうしたの?」

 

 

 

 

 

紬「あのね、私が『颯汰君の家に泊まりたい』って言ったのには、もうひとつ理由があるの...」

 

 

 

颯「...何」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紬「...私、海外へ行くことになっちゃった」

 

 

 

 

 

 

 

颯「...え」

 

 

 

 

紬「ごめんね。急遽行くことになってしまったの」

 

 

 

颯「...」

 

 

 

紬「この前まで『今のところは無い』って言ってたのにね...。私、嘘ついちゃった」

 

 

 

颯「...いつ行くの?」

 

 

 

紬「3週間後...」

 

 

 

 

紬「だから、最後に颯汰君と一緒に過ごしたいなって」

 

 

 

 

颯「...そうなんだ」

 

 

 

颯「...でも、仕方ないよ。」

 

 

 

 

僕は、物事を『仕方がない』で済ませることが嫌い。

 

 

 

 

でも、紬の家庭の事情に介入して、海外への引っ越しを引き止めるわけにはいかない。

 

 

 

 

そう思った僕にひとつ残った選択肢は、紬を笑顔で見送ることだった。

 

 

紬と過ごす、この限られた時間を精一杯楽しむ。

 

 

そう決心した。

すると、僕の目から涙がこぼれた。

 

 

紬は俯き、黙ったままだ。

 

 

 

 

颯「紬のこと絶対忘れないから!心配するなよ!!」

 

 

 

紬「...」

 

 

 

 

 

紬も不安なのかな...。

 

 

抱き締めて、慰めようとするが...。

 

 

 

 

颯「...あれ?」

 

 

 

 

颯「お~い!紬~?」

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

颯「...」

 

 

 

 

チュンチュン...

 

 

 

 

 

目をゆっくり開くと、自分の体をおおう掛け布団と、敷き布団のわずかな隙間から朝日が差し込んでいることに気がつく。

 

 

 

 

颯 (夢か...。良かった~~!!!)

 

 

 

 

夢とはいえ、一方的に感情的になっていたことを思いだすと、恥ずかしくなってきた。

 

 

 

しかし、夢の中で大泣きしたからか、今すごく気持ちがいい。

 

 

 

 

 

 

 

颯 (...ん、ちょっと待てよ...?)

 

 

 

 

 

 

 

颯 (俺の部屋に抱き枕なんてあったっけ...?)

 

 

 

 

布団をめくって確認してみると、横で紬が寝ていた。

 

 

ってことは、紬に抱きついていたってことじゃん...!

 

 

 

慌てて、紬から手を離した。

その勢いで、紬は目を覚ます。

 

 

 

 

紬「颯汰君の手、暖か~い...。おはよう、颯汰君...」

 

 

 

颯「だ、抱きつくつもりはなかったんだけどな」

 

 

 

 

紬「眠れなかったから、こっそり颯汰君の寝ている布団に入ったの。そしたら、眠くなってね」

 

 

颯「そうなんだ...」

 

 

 

颯 (俺にそんな催眠能力あったのか...でも、効くのは紬だけだろうな)

 

 

 

 

 

 

紬「...」シャカシャカシャカ

 

 

 

 

一階の洗面所に行くと、紬が鏡を見ながら歯を磨いていた。

 

 

今思えば、紬のパジャマ姿が見れる日が来るなんて、1ミリも想像していなかったな。

 

 

 

 

颯「はぁ...」

 

 

 

紬「どうひたの?颯汰ふん」シャカシャカシャカ

 

 

 

颯「ううん、別に~」

 

 

 

 

楽しかったお泊まり会も、もう終わりか~。

昨日の今頃の自分は、ウッキウキだろうなぁ。

 

 

『連休の最終日。明日からまた学校が始まる』っていう時と同じような気分だ。

 

 

 

颯 (さあ、俺は買い物行かなきゃだし、出かける準備するか)

 

 

 

 

 

~~~~~~~

 

 

 

 

ガチャ

 

 

 

颯「うわ、まぶし!」

 

 

 

午前9時。

これから、家に帰る紬を見送る。

 

 

 

 

紬「颯汰君。お返し、ありがとう」

 

 

 

颯「ううん。本当は、裁縫を手伝ってもらった俺が、礼を言う側なんだけどね」

 

 

颯「...ありがとうね」

 

 

 

 

 

紬「うん!じゃあね」

 

 

 

 

 

颯「ばいばい!」

 

 

 

 

そして僕に背を向け、ゆっくりと歩き始めた。

 

 

 

颯「...紬」

 

 

 

紬「?」

 

 

 

名前を呼ぶと、紬は素早く振り返った。

 

 

 

 

 

 

 

颯「...また、遊びに来てね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

紬「うん!もちろん!」

 

 

 

 

それから、紬は振り返ること無く、姿は次第に見えなくなっていった。

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