幻の流れ星   作:きなこモチ

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健「――うん。後で俺のほうから、どんな感じだったか聞いておくよ」

 

 

 

律「ああ、よろしく!じゃあバイバイ」

 

 

 

健「バイバ~イ」

 

 

 

 

 

 

健 (...ちょっと寒いな。

そうか、もうすぐ12月か...)

 

 

 

 

今は11月下旬。肌寒い。

 

 

まだ白い息は出ないが、もう少しだけ気温が下がれば出せるだろう。

 

 

これ以上下がらなくていいけど。

 

 

 

 

 

俺は最近、遊びにいく予定などは あまり無く、学校が終わると家に帰って寝ている。退屈な毎日だ。

 

 

 

 

...でもこれから寒くなるし、家でゴロゴロしていよう。

 

 

 

 

 

 

健 (...少しの間でいいから、颯汰になってみたいな、なんちゃって)

 

 

 

 

僕は先週の土曜日の夜に、二人きりの演奏はどうだったのかを颯汰に聞いてみた。

 

 

 

 

紬の演奏はすごく良かったらしい。

 

 

それに

 

『紬が俺の家に泊まることになったんだ。予定では、家庭科の課題を手伝ってもらって終わり、だったんだけどね』

 

ということもLINEで報告してくれた。文章だけで嬉しいという感情が伝わってきた。

 

 

 

2つ目の報告までしてこなくてもいいと思うかもしれない。

 

 

しかし俺が、2人はどんな感じなのかも気になって聞いたので、颯汰はそれに答えたまでだ。

 

 

 

颯汰と紬は上手くいってるみたいだ。

2人とも本当に楽しそう。

 

 

 

何で俺がそこまで2人の関係が気になったのか、理由は自分でもわからない。

 

 

 

ただただ、気になった...。

 

 

 

 

今思えば、2人の間に首を突っ込みすぎたな。

 

 

 

 

健 (最近楽しいことねぇなぁ...俺も刺激が欲しいよ...)

 

 

 

颯汰って本当に優しいんだなぁ。

 

 

 

 

2人のプライベートについてどれだけ聞いても、全ての質問に答えてくれた。

 

 

 

でも嫌だろうし、これから2人の間に首を突っ込むようなことをするのはやめよう。

 

 

 

 

颯汰、プライベートをしつこく聞いてごめんね。

 

 

 

 

 

 

健 (本当この信号長いな...)

 

 

 

 

なかなか青に変わらない信号に少し苛立ちながら待っていたら、誰かが俺の名前を呼んだ。

 

 

 

 

紬「あ、健君!」

 

 

 

 

健「お、紬ちゃん」

 

 

 

 

紬「...ちょっと時間ある?」

 

 

 

 

健「うん、暇だよ!」

 

 

 

 

紬「ほんと?...この前のお話の続きをしたくてね」

 

 

 

 

健「あ...うん。聞くよ~」

 

 

 

 

紬「じゃあ、あそこの喫茶店でいい?」

 

 

 

 

健「うん」

 

 

 

 

紬「...ごめんね。学校帰りで疲れてるところ」

 

 

 

 

健「ううん。それは紬ちゃんもだろ?」

 

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

 

 

颯「...はぁ」

 

 

 

颯 (もうすぐ21時か...。あともうちょっとだけここにいるか)

 

 

 

今日は1日中、気分が良くなかった。

 

 

 

 

学校では、授業中寝ているわけではなかったのに寝るな、と怒られ、

バイトでは客に、理不尽なクレームを言われ...。

 

 

 

 

まだ月曜日だっていうのに、次の土日まで 乗りきれるのか不安だ。

 

 

憂鬱だなぁ...。

 

 

 

 

 

 

心の傷を癒すため、久しぶりに夜空の星を見に河川敷に来ていた。

 

 

 

今日の夜空は、星がとてもきれいに見える。

 

 

俺の今の心の状態とは正反対の輝きを放っていた。

 

 

 

 

また紬と、見に来たいな。

 

 

 

 

 

 

 

そういえば、俺がここでダンスの練習してるときに梓が来たんだっけ。

 

 

 

軽音部は皆、この道を通るから結構な頻度で会う。

 

 

 

 

 

さあ、今回も誰か来るのかな?

 

 

 

 

颯「...!」

 

 

 

 

その時、背後に人気を感じた。

振り向くと、唯がしゃがんでいた。

 

 

 

 

 

唯「気付くの遅いよ~」

 

 

 

颯「...唯か~、帰るの遅いね」

 

 

 

唯「さっきまで学校にいてね、授業でわからなかったところを先生に教えてもらってた」

 

 

 

そう言いながら、唯は横にちょこんと腰を下ろした。

 

 

 

 

 

唯「ちょいと疲れたから、気分転換!」

 

 

 

颯「唯もなんだ...てか、意識高いな~!」

 

 

 

唯「そう?じゃあ、颯汰君はわからない問題があるとどうしてるの?」

 

 

 

颯「...ほったらかし!」

 

 

 

唯「え~!ダメだよ~?せっかく先生がいるんだから、教えてもらわなきゃ」

 

 

 

颯 (正論ぶちかまされた...)

 

 

 

颯「...嘘、先生に聞いてるよ。

ってか、唯らしくない返答だな!」

 

 

 

唯「そうかな?」

 

 

 

 

唯「...颯汰君はどうかしたの?何か悩み事でも?」

 

 

 

 

颯「...まあ、ちょっとね」

 

 

 

唯「...ほう?」

 

 

 

 

~~~~

 

 

 

 

唯「そうなんだ~。今日は災難続きだったんだね」

 

 

 

颯「ま、まあね...」

 

 

 

 

唯に、今日起きた嫌な出来事を話した。

 

 

 

先生に怒られたこと、バイトでのトラブル...。

 

 

 

もちろん、経験した僕は気分のいいことではなかったが、笑い話にしてみた。

 

 

 

愚痴なんか聞かされて、いい気はしないだろうから。

 

 

 

 

 

だが唯は終始、真剣に聞いてくれた。

 

 

 

 

話しているうちに、ストレスが消えていくような感じがした。

 

 

 

 

星を眺めるだけじゃ、ストレスは消せなかったみたい。

 

 

 

 

唯「でも、大丈夫だよ!頑張ってる颯汰君ならへっちゃら!」

 

 

 

颯「ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

颯「...やべ、もうこんな時間」

 

 

 

唯「ほんとだ、もう帰んなきゃ」

 

 

 

颯「今日はありがとうね」

 

 

 

唯「とんでもございません~」

 

 

 

 

 

 

 

つくづく感じることがある。

 

 

 

僕は周囲の人に恵まれているんだ、と。

 

 

 

 

 

途中まで帰り道は同じなので、一緒に帰ることにした。

 

すると、後方から歩いてきた澪と合流した。

 

 

 

 

 

澪「お、颯汰とム...唯?」

 

 

 

颯「おお!澪も学校にいたのか?」

 

 

 

澪「ううん、ちょっと気分転換に散歩してるんだ」

 

 

 

 

澪「...唯と颯汰って珍しいな。てっきりムギだと思ってた」

 

 

 

颯「ああ。紬はさっき、俺に言ってきたよ。『ちょっと健に用があるから』って」

 

 

 

颯「だから、一緒にいるんじゃないかな」

 

 

 

 

澪「...」

 

 

 

唯「...そうなんだ」

 

 

 

颯「ど、どうした...?」

 

 

 

澪「え、いや...何でもないよ」

 

 

 

澪「...そんな事より、何してるんだここで?」

 

 

 

颯「夜の空気を吸いに来たんだよ。今から帰ろうとしてたところ」

 

 

 

澪「そうなのか、じゃあ帰ろう。私も帰るところだし」

 

 

 

颯「うん」

 

 

 

 

 

 

颯 (...そういえば、喫茶店に行くって言ってたな。そろそろ帰る頃だろ)

 

 

 

颯 (ちょっと、行ってくるか!)

 

 

 

颯「ごめん、俺今から行きたいところがあるから先帰ってて~」

 

 

 

澪「あんまり遅くなるなよ~?」

 

 

 

 

颯「親か!...じゃあまた明日!」

 

 

 

 

 

~~~~~~

 

 

 

 

 

颯(多分この喫茶店だろ...おっ!タイミング良すぎだろ!)

 

 

 

健と紬が喫茶店から出てきた。

2人に気付かれないように真後ろを歩いてみる。

 

 

こういうことをしてる時って、なぜか笑えてくるんだよな。

 

 

 

いつ気づくんだろ?

気づくまで真後ろを歩き、2人の会話を聞くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紬「―――最近は大丈夫...」

 

 

 

 

 

 

 

健「...やっぱり先生に言った方がいいんじゃないか?」

 

 

 

 

 

 

 

健「クラスの人たちに言わないように、先生にお願いしようよ」

 

 

 

 

 

 

 

紬「その方がいいのかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

健「うん。だって一応言っといた方が、嫌がらせも止められると思うし...」

 

 

 

 

 

 

 

颯 (嫌がらせ...?)

 

 

 

 

 

 

 

 

一瞬耳を疑ったが、確かにそう言った。

 

 

 

健からその言葉が出た瞬間、僕はとっさに2人の前に出た。

 

 

 

 

颯「ちょっと待って」

 

 

 

 

 

健「あ、颯汰...」

 

 

 

 

 

紬「颯汰君...」

 

 

 

 

 

颯「紬...」

 

 

 

 

 

 

 

 

颯「嫌がらせ受けてたのか?」

 

 

 

 

 

紬「...」

 

 

 

 

 

紬は何も言わず、ゆっくりとうなずいた。

 

 

 

 

 

 

颯「あのさ...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

颯「...何で俺に言わなかったんだ」

 

 

 

 

 

紬「...」

 

 

 

 

 

颯「何で俺に言わなかったんだって聞いてんだよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

紬「...もし颯汰君...に言って...」

 

 

 

 

 

 

 

颯「...」

 

 

 

 

 

 

 

 

紬「もし颯汰君に言って、私が颯汰君に嫌われたらと思うと...怖くて...」

 

 

 

 

 

颯「...」

 

 

 

 

 

紬「...」

 

 

 

 

 

 

颯「...俺のこと、信じてなかったのかよ」

 

 

 

 

紬「ち、違うのっ!」

 

 

 

 

颯「じゃあ、なんで俺じゃなくて健に相談したんだよ...」

 

 

 

 

紬「...」

 

 

 

 

颯「俺じゃなくて、健の方が信用してるってことだろ」

 

 

 

 

 

 

 

紬「ちがうのっ...」

 

 

 

 

 

 

颯「俺には黙ってるとか...意味わかんねぇ」

 

 

 

 

 

 

紬「...」

 

 

 

 

 

 

颯「...好きにしろよな」

 

 

 

 

健「あっ!ちょっと待って!」

 

 

 

 

 

 

やばい、颯汰がどこかへと走っていった。

 

 

 

颯汰の後を追いたいが、それだと紬を置き去りにする事になる。

 

 

 

 

 

 

健「紬ちゃん、ちょっと待ってて。すぐ戻ってくるから」

 

 

 

 

 

紬「...」

 

 

 

 

 

僕が走り出した瞬間、背後から「ごめんね」と謝る言葉が、微かに聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

~~~~~~

 

 

 

 

 

健「はあ...はあ...」

 

 

 

 

息を切らしながら走っていたら、すこし前の方で颯汰が歩いていた。

 

 

 

 

 

健「颯汰!はあ...はあ...」

 

 

 

 

 

颯「...」

 

 

 

 

 

健「ごめん颯汰...紬の相談受けて...」

 

 

 

颯「...謝ることじゃない。それに、俺は紬に対して怒ってるんだ」

 

 

 

 

健「でも...」

 

 

 

颯「...」

 

 

 

 

健「そ、それとさ...」

 

 

 

 

健「俺言ったんだ、紬に。『相談相手は俺じゃなくて颯汰の方がいいんじゃないか?』って」

 

 

 

健「そしたら『自分がいじめられていることを颯汰君に打ち明けた時、颯汰君が傷ついたらどうしよう』って言ってたんだ...」

 

 

 

颯「...」

 

 

 

健「そして、俺に相談してくれた...。それは、颯汰に対する優しさだと思うんだよ...」

 

 

 

 

健「だから、紬には怒らないであげて...?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

颯「...」

 

 

 

 

颯汰は何も言わず、そして振り返ることもせずに家に帰っていった。

 

 

 

颯汰があんなに声を荒げて怒るのを見るのは初めてだった。

 

 

 

僕は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

 

心の中で何度も謝った。

 

 

 

 

 

 

紬と颯汰、本当にごめん。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

颯「...」

 

 

 

僕は早歩きで家に帰り、自分の部屋のベッドで横になると、掛け布団で自分の体を包んだ。

 

 

スマホを見ると、LINEの通知が一件だけ来ていた。

 

 

 

『紬が「颯汰と会って話したい」って言ってるよ。今俺に伝えてきた』

 

 

 

健からのメッセージだった。

 

 

 

 

『俺は話したくない』

 

 

 

 

そう返信しておいた。

 

 

 

 

 

もう今の僕の気持ちは、さっきのような怒りではなく、悲しいという感情に変わっていた。

 

 

 

 

何だか紬にフラれたような気分だ...。

 

 

 

 

僕の目には涙が溢れていた。

 

 

 

 

 

 

 

颯「...もう知らねぇ」

 

 

 

 

ただ自分の鼻をすする音だけが聞こえている。

 

 

 

泣き疲れたからか、ご飯も食べずにそのまま眠りについた。

 

 

 

寝ている途中、母親が「晩御飯も食べないでどうしたの?」と聞いてきたが、僕は黙ったまま無視をした。

 

 

 

 

 

 

僕は生まれて初めて、親に反抗した。

 

 

 

 

 

~~~~~~~

 

 

 

 

 

あれから何時間が経っただろう。

 

 

 

颯「...」

 

 

 

目を覚ましたが、朝なのか夜なのかわからない。

 

 

 

窓の外は、まだ暗い。

部屋の時計は午前2時を指していた。

 

変な時間に起きてしまったな。

 

 

 

晩御飯を食べずに寝てしまったので、今すごくお腹が空いている。

 

 

 

颯 (カップラーメンでも食べるか...)

 

 

 

 

母親が作ってくれたご飯、食べれば良かったな。

 

 

3分待ち、ラーメンを食べ始める。

 

 

 

 

颯「...」ススーッ

 

 

 

ラーメンを食べてる間も、僕は今日の事を思い出していた。

 

 

...あ、もう日付変わったから昨日か。

 

 

 

 

 

颯「はぁ...言い過ぎたな...」

 

 

 

紬にはとても腹を立てていたが、今は睡眠をとったのもあってか、紬に対する怒りはおさまっていた。

 

 

 

 

 

もちろん、明日も明後日も学校だ。

 

よく覚えてないが、昨日は紬にひどいことを言ったような気がする。

 

 

 

...合わせる顔がないな。

 

 

 

 

あれは喧嘩というより、僕が一方的に怒っただけだもんな...。

 

 

 

 

 

 

その時の、紬の表情。

それだけは鮮明に覚えていた。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

「ねぇ、あの二人って、もしかして別れたの...?」ヒソヒソ

 

 

 

「いや~、それは無いんじゃない?

...でも最近、お互い距離を置いてる感じがするね」ヒソヒソ

 

 

 

 

颯「...」

 

 

 

 

別れるなんて、僕にとってはあり得ない選択。

 

 

 

...だけど、紬にとっては選択肢の一つとして存在してるような気がして、切ない気持ちになってしまう。

 

 

勝手な妄想だけど、そんな気がする。

 

 

 

 

悠「颯汰~」

 

 

 

颯「どうした?」

 

 

 

悠「これから数学あるんだけどさ、教科書忘れちゃったから貸してほしい」

 

 

 

颯「まじか...はいよ」

 

 

 

悠「ありがとう...って、これ世界史の教科書じゃねーか」

 

 

 

颯「...あ、本当だ」

 

 

 

悠 (...真顔だから、ボケたのかボケてないのかわかんねー...)

 

 

 

悠「すまねぇ、終わったらすぐ返す」

 

 

 

颯「うん。その次は俺らが数学だから、()()な」

 

 

 

悠「ありがとう。じゃあ、また」

 

 

 

 

颯「...」

 

 

 

 

あの日から何日か経ったけど、本当に紬とは話すことがなくなった。

 

 

 

どんな時も紬は近くに居てくれたが、最近は少し探すと「あ、いた」という感じだ。

 

 

 

軽音部に顔を出すことも今はない。

 

 

 

学校が終わると家に帰り、バイトに行く。

その繰り返しだ。

 

 

 

 

~~~~~~~~~

 

 

 

 

颯「重い~」

 

 

 

健「俺が持つよ」

 

 

 

颯「お、ありがと。悪いな」

 

 

 

健「全然いいよ。あんまり無理すんなよ?」

 

 

 

颯「無理してないよ」

 

 

 

健「そうか。...まあ、その腕が完治したら、手伝った分のお返ししてもらうからな~」

 

 

 

颯「嘘だろ...?」

 

 

 

健「はははっ!」

 

 

 

軽音部に顔を出すこともなければ、当然健と一緒に下校している。

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

ある日の放課後。

 

 

今、僕は教室中をほうきで掃除している。

 

 

周りには止められたが、リハビリも兼ねて、それに、皆に迷惑かけたままじゃ嫌だと思い、何とかさせてもらった。

 

 

リハビリになるか知らないけど。

 

 

 

 

今、少し離れた所に紬の姿がある。

 

 

 

僕は、気づかれないように後ろ姿を見つめながら、掃除をしていた。

 

 

 

 

颯 (...?何やってるんだろ...?)

 

 

 

 

僕に背中を向けている紬はキョロキョロしながら、何やら一人でコソコソしている。

 

 

 

 

 

 

颯 (ん...?あれは、チョコ...!?)

 

 

 

 

 

 

紬は今、自分の机に入れていたチョコらしきものをカバンの中にしまった。

 

 

 

颯 (随分早いな。まだ年明けてないぞ...?)

 

 

 

 

ボーッとしていたら、クラスメートが話しかけてきた。

 

 

 

「何たそがれてるのさ...ていうか、何で掃除してるの?誰かに掃除任されたの?」

 

 

 

颯「...えっ、あ、ううん。任されてないよ」

 

 

 

颯「ご覧の通り、右腕は今も治療中だけど、最近皆に任せっきりだから、何か悪いな~って思って」

 

 

 

颯「ほうきで掃くくらいなら出来るかなと思ってやってるんだ。左腕と左足使えば何とかなると思ってね」

 

 

 

「おおー!...ってことは、こきつかわれたいって事だな!?」

 

 

 

「じゃあ、机運び手伝ってくれ!」

 

 

 

颯「それは勘弁してくれ」

 

 

 

 

掃除をしながらクラスメートとお喋りしていたら、横から紬が近づいてきてることに気づいた。

 

 

 

 

颯 (...あっ)

 

 

 

紬「颯汰君」

 

 

 

颯「...ん?」

 

 

 

 

紬「そこのゴミをちり取りに入れ終わったら、今度はこっちに来てくれ...ますか...?」

 

 

 

颯 「え...あ、うん。了解」

 

 

 

 

 

 

 

今、何と言った...?

 

 

 

 

 

 

 

僕は聞き逃さなかった。

 

 

紬の声が後半、小さくなって聞き取りづらかったが...。

 

 

 

 

語尾が敬語だったのを。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

颯「なんで...」

 

 

 

 

家に帰っても、僕に対する話し言葉が敬語に戻っていたというショックは消えなかった。

 

 

 

 

いや、ショックを受けたのは、急に怒られた紬のほうだよな...。

 

 

 

 

 

 

これから紬とどう関わっていけばいいんだろう。

 

 

 

このままだと、関わることさえ厳しい気がする。

 

 

 

 

考えれば考えるほど分からなくなってきたので、電話で悠に相談していた。

 

 

 

 

悠 "颯汰の方から謝ってみたらどうだ?"

 

 

 

颯「...」

 

 

 

悠 "いや、颯汰の気持ち、めちゃくちゃ分かるよ?そんなの俺だって怒るもん"

 

 

 

悠 "でも、ここは一回謝ってみるほうがいいと思うよ。今の気まずい状態が続くよりは良いかと"

 

 

 

颯「う~ん...」

 

 

 

悠 "相手が自分の好きな人なら、そんなに謝るの苦じゃないだろ?"

 

 

 

 

颯「まあ...」

 

 

 

 

 

悠 "...本当に好きならね"

 

 

 

 

颯「うん...頑張ってみる」

 

 

 

悠 "おう、頑張れよ"

 

 

 

颯「ありがとう、用件はそれだけだから」

 

 

 

悠 "おう、じゃあな"

 

 

 

 

プツー

 

 

 

電話を切ってからも、僕は紬の事しか頭になかった。

 

 

ただ、悠が相談に乗ってくれたから、明日の学校で直接謝って、よりを戻す勇気がついた。

 

 

 

 

 

悠、ありがとう。

 

 

 

 

~~~~~~~

 

 

 

 

朝の教室にて。

いつもより早めに教室に入り、どういう風に話しかけようか考えていた。

 

 

 

 

颯 (めっちゃ緊張する...)

 

 

 

こんなに緊張するの、紬に告白した時以来かも...。

 

 

 

 

健「おはよー颯汰」

 

 

 

颯「健、おはよう。てか、珍しく早いな」

 

 

 

健「そうか?最近は、早く来て宿題してるよ」

 

 

颯「宿題やれよぉ...家で」

 

 

 

 

健「颯汰は何で早いの?俺と一緒?」

 

 

 

 

颯「そんなわけないだろ...どんな風に謝ろうか考えてるんだ」

 

 

 

健「...そうか」

 

 

 

颯「まあ、健はいいから宿題やっときな」

 

 

 

 

 

 

 

それから数十分が経ち、他のクラスメートが次々と教室に入ってくる。

 

 

 

紬だけがまだ来ていない。

 

 

 

 

 

颯「...もうすぐ一時間目が始まるというのに」

 

 

 

 

 

担任「誰か琴吹さんから、何か連絡聞いてる人はいますか~?」

 

 

 

 

誰も連絡は聞いていないそうだ。

 

 

 

もしかして、休むのか...?

 

 

 

 

キーンコーン

 

 

 

 

 

颯 (あ、始まっちゃった...)

 

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

 

健「紬...大丈夫かな...」

 

 

 

颯 (やっぱ、俺のせいだよな...)

 

 

 

 

今日一日、紬は学校に来なかった。

 

 

紬にLINEを送っても返信が来ない。

不安になってきたので、紬の家に行ってみようと思う。

 

 

 

ただの風邪であってくれ...。

 

 

 

 

そう願っているが、風邪である気が全くしなかった。

 

 

 

 

~~~~~~

 

 

 

 

颯「...やっぱり分かりやすいな」

 

 

 

紬の家は本当に大きい。

 

前に一回だけ来たことあるが、その時は本当に圧倒された。

 

訪問するの二回目なのに、全く慣れない。

 

 

 

インターホンを押してみる。

 

 

 

 

ピンポーン

 

 

 

 

颯「...」

 

 

 

 

反応がない。

もう一度押してみる。

 

 

 

颯 (やっぱり出ないな...)

 

 

 

 

インターホンを押しても反応がなく、出てくる気配がない。

 

 

 

 

 

いないのか...?

居留守の可能性もあるけど...。

 

 

 

颯 (仕方ない、帰るか)

 

 

 

 

その時、誰かから電話がかかってきた。

 

健からだった。

 

 

 

健 "もしもし、颯汰?"

 

 

 

颯「あ、健か。どうしたんだ?」

 

 

 

健 "今紬の家にいるのか?"

 

 

 

颯「うん」

 

 

 

 

 

 

健 "...遥っていう子から聞いたんだけどさ"

 

 

 

颯「う、うん...」

 

 

 

 

 

 

 

 

健 "...紬、入院してるらしい"

 

 

 

 

 

 

颯「え...」

 

 

 

健 "その子も、『らしい』って言葉を濁してたから、本当かどうか分からないけど"

 

 

 

颯「う~ん...」

 

 

 

颯「...じゃあ、どこの病院にいるかも、分からないってこと?」

 

 

 

健 "うん、友達も知らないんだって"

 

 

 

颯「まじかよ...」

 

 

 

 

颯 (どうすることもできないな...)

 

 

 

 

 

残念だが、諦めて帰るしかない。

それにしても、紬の居場所が気になる。

 

 

 

入院の場所も理由も分からない。

 

 

そもそも入院しているのかどうかも曖昧な情報だ。

 

 

 

 

 

 

颯 (いったいどうすればいいんだよ...)

 




ルート1は次のページへ、ルート2は「涙 2」の方へお進みください。
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