機動戦士ガンダム 青のプロヴィンギア 作:紅乃 晴@小説アカ
時代が宇宙世紀と呼ばれて随分と月日が流れた。
長きに渡る不安と混沌、戦乱の世からの幕開けとなった宇宙世紀は、その多くの刻を戦いという流れの中に沿って歩みを続けてきた。
時には、ヒト種という存在が脅かされるほどに。地球という母なる大地に縋ることができなくなるほどに。
いつかの刻、過ぎ去った偉人が残した言葉がある。
『人の温かみこそが、悲しみだけを広げて、地球を押しつぶす。ならば、人類は自分の手で自分を裁いて自然に対し、地球に対して贖罪しなければならない』
その言葉呪いのように連なって、100年余りの時の中で人々は多くの血を流し、憎み、怒り、悲しみを広げる戦いに身を投じていた。
宇宙世紀の末期。
人類はまさに地球に対しての贖罪とも呼べる未曾有の危機に瀕していた。
『もはや、地球圏に縋り付いていては人類は生き残れまい』
誰かがそう言った。
人はついに、地球というゆりかごの中での戦争をやめて、新たなるフロンティアへと目を向け、歩み出さなければならない。
でなければ、本当に人は地球を食い潰して帰る場所のない難民という種族へと成り下がってしまう、と。
戦いの代償にさらされ続けた人々は、その思想に希望を見出していた。新天地を目指すための方舟、人という種を地球から巣立たせるという行いが、新たなる思想となった。
彼方にこそ栄えあり。
まだ見ぬ遠き世界へ、純粋な希望と夢、光を託して、人々は方舟を作り上げた。
星間移動型コロニー「プロヴィンギア」。
数十の密閉型コロニー郡であるプロヴィンギア船団は、多くの物資と酸素、資源を乗せて太陽系の外へと向け、地球に残る人々の希望を背負い旅立った。
ガンダム。
かつて戦いの象徴とも呼ばれた殺戮と戦乱を呼び寄せた機体の忌み名。その名を冠する存在すらタブーとされていた世界で、プロヴィンギアは、ガンダムを希望の象徴として生まれ変わらせた。
遠き昔、『人の心の光』を集め、その光を力と変え、ついには地球を滅ぼそうとした隕石すら押し返した時のように。
その人の心の暖かさが再び人々の希望となり、世界を救うという願いを込めて。
だが、その希望も深い宇宙の闇に呑まれた。
プロヴィンギアが太陽系から出る直前、謎の宇宙嵐に巻き込まれた船団は地球圏との連絡を途絶えてしまった。
外宇宙を目指す壮大な夢は、その宇宙の脅威を前にもろく、あっけなく、崩れ去ったのだ。
人々はそこから、宇宙の外側を見ずに心を閉ざした。
人類の未来を制限し、タブーを設け、そしてゆりかごを生かすためのシステムが生み出された。
地球圏の脱出に夢を託したはずなのに、その夢が呪いとなって、人々は地球というゆりかごにしがみつく。
皮肉だ。
宇宙の果てへと挑める力を持ちながら、その先へと挑むこともなく、同じ空間で増えては減るを繰り返す。
結局、人という存在は己自身を裁くことはできない。地球に対しての贖罪すらも。同じ過ちを繰り返す愚かな種族だと言うのか。
プロヴィンギアは生きていた。
その身に多くの傷を背負ったまま。
新たなる新天地、惑星ソラリスと共に。
機動戦士ガンダム
青のプロヴィンギア