エースストライクウィッチーズ 〜因果は交わり、新たなifへと〜 作:writer
「痛てててててっ!トゥルーデ!落ち着けぇ!止めろぉ!」
「うるさい!///何であの会話を聞いてるんだ!?///」
「現状報告に無線開いたらそうなったんだ!不可抗力だ!」
帰ってからフェンリアとバルクホルンはこの様子だ。バルクホルンは恥ずかしかったのだろうが、フェンリアに非は無いのではと思いつつ、グリフィスは面白そうに眺めていた。
「あの2人は仲がいいんですね」
アーマーを格納し、整備の為にもう一度脱いだ状態で再出現させていたクラックスが、フェンリアとバルクホルンの漫才を眺めている。
「そうだな。仲いいなら何も言うことは無い。取り敢えず心配事が1つ減った訳だ」
心無しかグリフィスもホッとした様子を見せている。
そこへミーナがやって来る。
「改めまして、私はこの501統合戦闘航空団の隊長をしているミーナです」
「失礼。オーレリア空軍空中管制機、クラックスです」
「オーレリア空軍所属、グリフィス1だ。グリフィスと呼んでくれ…そこで夫婦漫才繰り広げてる夫役とやりやった事がある」
「ネメシス!まだ結婚とかしてねぇだろ!」
「初対面なのに既婚者設定作るなお前!」
「息ぴったりですね。式場の予約は任せてください」
「「誰かそこの2人を黙らせろ!」」
もはやフェンリアとバルクホルンの乗せ方を把握したグリフィスとクラックスに、ミーナは苦笑いしている。他も目を輝かせたり口笛を吹いたりしている。
「おふざけはこの辺で済ませるか…フェンリア。お前にとってもこの基地…いや、ウィッチーズだったか。ともかくこれから重要な事を話す」
「何だ改まって…」
「薄々気になってるんだろ?俺達が来た事で、この世界に影響があるんじゃないかって」
フェンリアは黙る。確かにさっきはフレガータとアレクト隊がネウロイ化して攻撃してきた。
「長話になる。椅子のあるとこで話そう」
「分かりました。こっちに集まって」
ミーナの案内の元、全員が会議室に集合した。グリフィス、クラックスの2人は壇上に上がって視線が集まるのを待った。
視線が集まると、言い出しっぺのグリフィスが口を開いた。
「…まず事実を話そう。我々の他に同様の存在が世界各地に来ている」
「なっ…フェンリアやグリフィスみたいのがまだ来てんのか…」
「そうだシャーロット。クラックス。説明を」
「了解です。我々の他に確認されてる存在は多数です。中には我々が認知していない…おそらく別世界の存在がいます」
予め降ろされたスクリーンに青い世界地図が表示され、緑ピンが刺されていく。
フェンリアも思わず呟いた。
「あちこちにいるな…」
「スオムスの海軍基地司令が殺されています。こちらが傍受した無線によると、猛吹雪の中を自在に飛行して対空設備を壊して回った航空隊がいたとあります」
「スオムス海軍基地司令…噂では暗部と繋がっていて、ウィッチーズの妨害をしているとあったけど…」
「同様な暗殺事例は多数あります。酷いところだと爆発しないミサイルが撃ち込まれてやられたケースも…」
「刃付けたあのミサイルか…」
フェンリアも兵器に心当たりがあるのか、目を遠くして会話に交じる。
一見普通の報告に見えるが、ここからが本題だった。
「ま、これだけなら良かったんだがな…」
「何かあるのか?」
「我々はここに来る途中、ネウロイの攻撃に晒されました。しかも本体は遠距離にいます」
地図がズームされ、それはおそらく数時間も前のグリフィスとクラックスの位置を示してるとされた。
「周囲に敵影無し。だが攻撃のみが飛んでくる…その兵器は超長距離からの空間制圧兵器によるものと判断した」
「…待てグリフィス。あれはお前らの手によって潰された筈だ」
「確かに潰した…だがこの世界にネウロイとして蘇ったなら?」
「その兵器って何だ?そんなに広範囲を制圧することが出来るのか?」
「君はエイラだったか。君の能力は資料によると、予知だったな。君が予知した所で逃げられない兵器とだけ言っておこう」
「私でもか?」
「もしくは、お前が逃げれても他が危ないってやつだ」
フェンリアが言葉を紡ぐ。それを合図に世界地図は小さく表示され、代わりに何か巨大な写真が表示された。
夕日に照らされたその巨大な物体は、半分透明でもう半分が黒い色をした航空機だった。周囲を戦闘機が飛んでいるが、その大きさの違いから空母よりも遥かに巨大である事が分かる。
「な、何これ!?」
「でっけぇ…」
「コイツは…」
「やっぱりコイツか…」
「グリフィスさん。この機体は…」
「レサスが開発した超兵器、グレイプニルだ」
「映像、映します」
クラックスがリモコンを操作して2つある動画の内1つを再生する。多数の航空機が空を舞い、爆撃機らしき影が撃墜されていく映像。おそらくコックピットからの映像だろうが、最後に異変が起こる。
『高速で何かが当空域に侵入してきます!』
『何だ!?』
次の瞬間、至近に何かが飛来して炸裂した。
青白い閃光と共に衝撃波が機体を襲った瞬間に映像が途絶えた。
「…2本目行きます」
2つ目の映像が再生される。
『妙だな…レサス軍がいないぞ?』
『このまま慎重に進もう』
戦車からの映像だ。ビルに囲まれた夕日の中を進んでいる。順調そうに見えたが、音声に電気が走る耳障りな音が聞こえてきた。
『おい。この音は何だ?』
『あっ!上を見ろ!』
カメラが上を向く。空間が歪み、黒い壁が現れた。グリフィスがグレイプニルと呼んだ超大型航空機だ。
『グレイプニルだ!』
『目標グレイプニル!撃て撃て!』
戦車の機銃、対戦車ロケット、対空車両からの一斉攻撃を機体に受けるが、ダメージがあるようには見えなかった。
必死な戦車隊を嘲笑うかのように、グレイプニルの機体中央に青白い光が貯められていく。
『見ろ!何をする気だ?』
映像の撮影者らしき腕が、光を指差した。
「!?逃げろ!」
エイラが顔面蒼白になって注意を促した。無論全てが終わった後の映像なため無駄ではあった。だが分かっていても彼女はそう叫ばずにはいられなかった。
『まさか…マズイ!』
未来の注意喚起に気が付いた訳ではないだろうが、撮影者は咄嗟にカメラを近くの地下鉄駅入り口に投げ込んだ。
カメラは撮影者の方を見て撮影を続けていた。
爆音と衝撃波が戦車隊を襲った。戦車が爆発すると共に宙を舞い、人影が燃えて四散する。
映像はそこで途絶えた。
「…」
凄惨たる映像を見せつけられた彼女らは無言になるしか無かった。
「…今のがグレイプニルの兵器の威力を示す唯一の映像だ」
「あ…あぁ…」
「すまないエイラ。注意喚起をしておくべきだったな」
誰もがショックを受けたが、1番そのダメージが大きかったのはエイラだろう。グリフィスとフェンリアの言った意味が身に沁みて分かったからだろう。
「えっと…1本目はSWBMと呼ばれる長距離ミサイルです。2本目がショックカノンの映像ですね」
「こんな映像を見せてすまなかった…だが我々がここに来る途中、SWBMによる攻撃を受けたのは確かだ」
再びスクリーンには地図が表示された。緑ピンはほとんど消え、1つの場所を刺していた。
「残ったピンは我々が攻撃を受けた場所だ。飛距離などを換算すると、攻撃地点はここだ」
グリフィスがレーザーポインターを取り出して一点を指す。その場所にバルクホルンとハルトマン、ミーナが勢いよく立ち上がった。
「待て!ベルリンだと!?」
「ネウロイの巣、ヴォルフがある私達の故郷…」
「本当ですか!?」
「本当だ。しかももうすぐここに知らせは来るだろうが、衝撃の事実がある」
「それは一体なんですか?」
リネットが恐る恐る質問する。
「…このネウロイの巣は移動している」
「何だって!?」
「奴ら…ネウロイの目的は人類を確実に追い詰めること。要所を落とせればそれでいい」
「位置的にアフリカ方面へ向かっているそうです」
「アフリカ…スエズ運河か!」
シャーリーも立ち上がる。
北アフリカは人類の存亡が掛かっている激戦区の1つだ。スエズ運河はヨーロッパに物資を送る唯一のショートカットだ。
そこを制圧されてはヨーロッパ全土は一気に風前の灯火となってしまう。
「そうか…ならヴォルフの目標はこのスエズだろう。それだけ重要な地点ならそこに巣が来ても違和感が無い」
「それとだ…ここの基地に新型ネウロイが来たって報告が入ってないか?」
「えぇ、来てますけど…」
何を当たり前な事をとミーナは首を傾げたが、グリフィスとクラックスの顔には『やっぱり』と浮かんでいた。
「俺達宛にもその命令が来ている。501統合戦闘航空団基地にフレガータが向かっているとな」
「送り主は誰だ?」
「送り主どころかどこから命令が飛ばされているのかさえ不明だった。今回も同様なら、世界に散らばっているエースが全員集合することになる」
静かになった会議室。誰かの生唾を飲む音が酷く大きく響いた。
フェンリアが沈黙を破った。
「『現状最強のネウロイの巣と多数の新型ネウロイ』対『ヨーロッパ各地に点在するウィッチーズとエース』か…空が狭くなるな。人類には空が必要だ。平穏を乱すネウロイにはご退場願おう」
『ベルリンに居座るネウロイの巣の移動を確認。目標北アフリカスエズ運河。ここを制圧されれば人類に明日無し』
どこからか送られたその情報は世界を駆け巡った。
「来たか…」
「位置的に我々が近いな。準備ができ次第向かうぞ。イエロー」
「爆速で飛ばしても間に合わないな。相棒」
「途中で補給してから再度行くぞ」
「スエズ運河をネウロイに渡すわけにはいきません。506統合戦闘航空団A、B両部隊も行きます。皆さんもお願いします」
「了解しました。ベルカの真髄を見せて差し上げましょう」
「将軍。本気で行かれるのですか?」
「人類の生命線を失う訳には行かない。預かってる全戦力を率いて向かうぞ」
「では、あの娘達も?」
「心苦しいが連れて行く。新生第7装甲師団の結成を宣言する」
「分かりました。すぐに準備します」
「パットンの親父。やはり出撃命令を?」
「そうだ。戦力が整い次第出す。連中に目に物を見せてやる」
「存分に暴れてやろっと」
「この命令に従った方がいいのか?タリズマン」
「人類に後が無いらしい。それだけ重要な地点なのだろう。死守するために向かう」
「了解した」
「進路変更!目標、スエズ!」
「お仕事完了と思ったら、次は最強とされるネウロイの巣が相手なのか?」
「そうだ。ここにいる全員で叩き潰す」
「おいらはブービーについていくぜ!他はどうする?」
「隊長についていくわ」
「僕も同じく」
「俺もだ」
「分かった。俺達も協力する…最強のネウロイの巣か…空戦で確かめるぞ」
「兄弟。俺達も向かうか」
「そうしよう。ところでお前達はどうするんだ?」
「おぉ、俺達も向かう予定だぜ」
「誰だろうが手加減はしない!」
「ミスせずにするさ」
「フッ…行くぞ。そこに赤サソリもいるだろうしな」
「…らしいけどどうするの?私はそこの大馬鹿野郎についていくけど?」
「全員でついていくさ。そこの爺さんらは?」
「他のエースと会えるなら飛ぼう。楽しみだ」
「そうか。で、イリスとマリアはどうする?」
「マリアは私が運ぶわ。一緒に向かう」
「人類の生命線を絶たせやしないわ!」
「…通達出来たな…」
彼の声がは誰にも聞こえない。誰かいたとしても聞こえるはずがない。
ここは地表から500km離れた地点だ。流星やオーロラを見下ろし、スペースシャトルが活動する熱圏と呼ばれる所と言えば分かる者もいるのでは無かろうか?
ともあれ、そんな所に酸素は無い。無いのにも関わらずこの男はその空間に存在している。
しかもフェンリアらのアーマーでさえ未知な物なのに、男のアーマーはさらに意味が分からない。水色と白を基調とした流線型のアーマー。ADFX-01のエンジンを2発を一纏めにした複合エンジン。それだけならいいのだが、形状からするとシャトルと同じ構造の戦闘機だ。
左手には長大な日本刀が握られ、右手にはアメリカ軍のレーザーライフルが握られていた。
「この世界が私を望んでくれる世界なのかは知らんが、下にいる連中がどの程度か見極めさせてもらおう」
どこか悲しげな目をした月白の長髪の男は笑みを見せて見下ろす。刻一刻と迫りつつある決戦に心を踊らせながら…
( 主)「さ〜て、やりたい放題するか」