ハリー・ポッターと竜魂の学徒 作:ホグワーツの点字聖書
向かいあって気まずそうに黙りこくる両陣営を尻目に、ダフネはプロメテアを膝に乗せて彼女の髪を梳かしていた。
ドラコがハリーに対して「お前が嫌いだ」と宣言し、ハリーがそれに対して「知ってる」と応えて以降、10分近く会話が生まれていない。仕方のないことだろう、和解するにはあまりにも組み合わせが悪い面子が揃っているのだから。
「……両者から提案がないのなら、進行役として私が議題を出すぞ。純血至上主義について、それぞれ何を知っているかだ」
「論述試験みたいですわね」
「私に進行役を任せるというのはそういうことだ。……というか、お前はドラコ側にだな」
「座る場所と立場は関係ないでしょう? 議会というわけでもないのですから」
膝の上で所在なさげに身じろぎしたプロメテアを片腕で抱きとめて、隠れていた枝毛を処理していく。せっかくきれいな銀髪をしているのだから、もっと手入れをすべきだ。
ダフネはこの会合にさほど興味がなかった。ハリーもドラコも個人的な交友を持っている相手だが、両者が和解するかどうかは個人の自由だ。要請がない限り、積極的に世話を焼く理由はない。
それよりもむしろ、最近頑張っているプロメテアを労うほうがダフネにとっては大事だった。
ダンブルドア、アブラクサス、ルシウス、そして以前語っていた弟子。いくつもの意図がプロメテアの小さな身体を縛ろうとしている。それはあまりにも酷なことだ。
「じゃあ、私からいいかしら。純血至上主義は優生思想と階級社会の格差から生じた差別主義よ。魔法族の血が濃ければ優れているという考えは、科学的根拠に欠けるわ」
「科学的? ハッ、それは随分とマグル的じゃない、グレンジャー」
「でも、事実としてマグル生まれにも優れた魔法使いや魔女はいるわ!」
口火を切ったのはハーマイオニーだった。
マグル生まれの偉大な魔術師を傍証として、差別主義としての純血至上主義を論破しようとする姿勢は模範的なディベートそのものだ。きっとプライマリースクールでやり方を学んだのだろう。
惜しいな、とダフネは思ったが、口には出さなかった。ダフネが言及するまでもなく、パンジーが反論に移ったからだ。
「大前提から間違ってるのよ、あんたは。血の濃さと魔術師としての実力を論じる道具として科学はそもそも尺度がずれてる」
「あら、それなら純血という考え方自体がおかしいわ。だって、遺伝は科学よ」
「だから間違ってるって言ったのよ、馬鹿ねえ。魔法の才能はメンデルの法則で測れる形質じゃないの」
ハーマイオニーが息を呑んだ。
メンデルの法則が報告されたのは1865年、魔法族がマグル界から姿を消して200年近く経った後のことだ。パンジーの口から遺伝学の根本原理が飛び出すとは思いもよらなかっただろう。
ほとんどの場合、ハーマイオニーの姿勢は正しい。魔法族の大半は遺伝学など知りもしないし、そもそも魔法によって植物の促成栽培を可能にしてきた魔法族には遺伝という概念自体が曖昧なものに思えてしまう。
しかし、目の前に座っているのは凡百の魔女ではない。パンジー・パーキンソンなのだ。
パーキンソン家は謂わば魔法界の監視者だった。反マグルを唱えた魔法大臣ペルセウス・パーキンソンを筆頭に、マグルの脅威を認識し続けてきた一族だ。だからこそ反マグル的、純血至上主義的と揶揄され、スリザリンに相応しいとされてきた。パンジーは次期当主として、一族の知識を最大限に継承している。
「メティ、仕方ないからあんたの意図を汲んであげる。貸しだからね。……サラザール・スリザリンが純血を尊んだのは、社会全体の混乱を恐れたからよ」
「社会全体の混乱?」
「あんたたちマグルの歴史にも残ってるでしょ、大混乱。魔女狩りよ」
部屋の空気が一瞬にして冷え込んだ。
魔女狩りは魔法族に被害を与えなかった。そういうことになっている。しかし、旧家はどこも屋敷の庭に無名の墓標を立てている。一族の家系図には載らなかった誰かのための墓標を。
「元から魔法族である者だけが魔法の教育を受ければ、魔法は決まった一族が扱う職能で済んだのよ。それこそポッターの先祖がそうだったようにね」
「僕の?」
「……あんたのそういうとこがほんっとうに嫌い。親がいたらその親、さらにその親がいるのは当たり前でしょうが。少しは自分で聞くなり調べるなりすればいいのよ、そうすればグリンゴッツのありがたみも身にしみるでしょ」
実にパンジーらしい説教だ。
ダフネはプロメテアの髪に編み込みを施しながら、小さく頷いた。ハリーのことは嫌いではないが、彼が自分自身のルーツを粗末に扱っているのを見ると純血の社会ではやっていけないだろうなと感じてしまう。
純血の旧家にとって、先祖を敬うというのは当たり前のことなのだ。先祖は血を絶やさないよう努めてくれた。家が潰れないよう、資産を築いてくれた。長く苦しい時代を生き抜いて、自分の代まで繋いでくれた。だから支えあってきた同胞である同族との結束も強い。
もっとも、ダフネはパンジーやドラコほど家の歴史に誇りを持っているわけではない。グリーングラス家が抱える悍ましい宿痾を思えば、それを誇ろうという気持ちが湧いてくるはずもなかった。
「パンジー、説教は後でやれ」
「はいはい、進行役様の仰せのままに。ホグワーツはマグル生まれを受け入れた、つまりマグルの家庭に魔法使いや魔女が暮らすようになった」
「いいことよ。社会の発展だわ」
「人は悪いことのほうを記憶するのよ。魔法事故に対応できるのは魔法だけ。グレンジャー、本当に想像したことはない? あんたが夏休みの間に高度な魔法に挑戦して、失敗したら家族はどうなるか」
ハーマイオニーは返事の代わりに顔を強張らせた。それこそが答えだった。
もちろん、明確な史料が残っているわけではない。パーキンソン家に残されている記録があるのかもしれないが、ダフネの知る限りではこのことを裏付ける情報はないに等しい。
しかし、想像はできる。
まだ魔法省が存在せず、長老会議のような委員会が魔法族の行政として機能していたころのことだ。未成年の魔法使用を追跡する方法はまだ生まれていなかったし、魔法事故に遭った人間の治療法も確立されていたとは言いがたかっただろう。
マグルの民話や伝承で魔女が人さらいとして描かれるのは、「魔法の学校に入学した子どもが制御できない力を持った化け物になって帰ってきた」という悪夢の積み重ねに起因している。
そして蓄積した不満や怒りは、やがて疫病、飢饉、冷害と結びつき、爆発に至った。
マグルから見れば、疫病も呪いも何ら違わない。目に見えない害だ。そして魔法族は「この疫病は自分たちの呪いではない」と証明できない。魔法で自らを守ることができる魔法族だけが健康であり続ける様子は、きっと邪悪な怪物が私腹を肥やしているように映っただろう。
世界が分かたれていれば起こらなかった誤解と悲劇が、皮肉にも両者を隔てる壁の礎となった。
「じゃあ、スリザリンが正しいって言いたいのか?」
戦況を劣勢と見たのか、それとも簡潔な話に収束させるつもりなのか、ロンが食って掛かった。
パンジーはそれを鼻で笑って、赤く染まったロンの顔を指差した。
「実現できない目標を正しいとは言わないわよ。スリザリンの目標が理想論に過ぎなかったというのは、今年度の頭にあんたが見事に示してくれたっけ」
空飛ぶ車での通学という蛮行をリセットするため、多くの忘却術士が休暇を返上して駆け回った。彼らの中には我が子をホグワーツに送り出したばかりの親だっていただろう。我が子を見送るためになんとかもぎ取った有給が突然の事件に潰されてしまった。可哀想な話だ。
そう、魔法を独占するというのは不可能だ。存在はいずれ知れ渡るし、才能ある子どもは否が応でも生まれてきてしまう。放置すれば、それこそ制御できない魔法によって甚大な被害がもたらされるだろう。
国際魔法使い機密保持法にすら限界がある。秘匿、平和、そんなものは幻想だ。かつて革命家としてグリンデルバルドはこの幻想を砕こうとしたが、彼が破壊せずともいずれ破綻する壁でしかない。
1000年前の人物にこんなことを思うのは酷かもしれないが、サラザール・スリザリンはあまりにも夢を見すぎていた。
「ウィーズリー。四人の創設者のうち、他の創設者を挙げてみろ」
ぽつりとプロメテアが問いかけると、ロンは困惑したような表情を浮かべながら一人ずつ名前を挙げていった。
「ゴドリック・グリフィンドールだろ、ヘルガ・ハッフルパフ……レイブンクローって名前なんだっけ、3人いたよな」
「創設者はロウェナよ。あとは妹のダスク、娘のヘレナね。……そっか、そうだわ! 勇気、寛容、叡智!」
プロメテアが小さく頷いた。
ようやく魔法史らしい話になって嬉しいらしい、膝の上でプロメテアがそわそわしている。こうしていると、まるで小さな兎かなにかを飼っている気分だ。妹の入学に合わせてペットを飼うつもりだったが、プロメテアで十分かもしれない。
ダフネが余計なことに思いを馳せているうちに、プロメテアは静かな語り口で歴史の背景を示しはじめた。
「サラザール・スリザリンの危惧に対して、他の創設者は同意を示さなかった。彼らはおそらく、どんな生徒であっても導けると考えたのだろう。どんな者でも受け入れ、そして正しい知恵を与えれば、間違えることのない立派な魔術師になると」
「それは……確かに、ちょっとだけ甘い見通しかもしれないわ」
「私の予想が正しければ、サラザール・スリザリンがこの部屋で育てようとしていたのは監視者――今の魔法法執行部や魔法事故惨事部が担っているような、トラブルシューターだったのではないか。……しかし、その組織を結成することは同族を信じないことと同義になる」
根拠はないが、面白い考察だ。そこはかとなくプロメテアの実感が籠もっているところがダフネにとって好印象だった。
かつてプロメテアは刺客だった。刺客というのはゴロツキや快楽殺人者ではない。目的のある依頼者から金品を受け取り、殺人を代行する職業だ。
もしもプロメテアが生まれたのがサラザール・スリザリンの時代だったら、彼女は監視者として同族殺しをさせられていたのかもしれない。
「……話が散らかってしまったな。まとめよう。魔法界における伝統的な純血至上主義は、元々能力の管理と混乱の回避を目的としていた。追記すべき事項は?」
「待って、大事なところがまだわかってない。……それなら、純血じゃないから差別していいってことにはならないよね」
責められたと思ったのだろう、黙って腕を組んでいたドラコが眉を上げた。
同年代の男の子にこんなことを思うのは失礼かもしれないと考えながらも、ダフネは心から嘆息した。なんと純朴な少年なのだろう。悪意に晒されたことなど一度や二度ではないだろうに、彼は悪意に合理性を求めている。
「……はっきり言ったらどうだ。僕に文句があるんだろう」
「そりゃあ、あるよ。ひどいことをされたり、言われたりしたし。でも、その理由がわからないと文句の言いようもない」
「理由? 嫌いだからだ」
「それはどうして?」
「嫌いに理由が必要だなんて僕は知らなかったね」
「君がただの嫌なやつじゃないってことは、その、なんとなくわかる。だから、僕に理由があるなら――」
「なんなんだよ、今さら」
ドラコが立ち上がった。
拳を震わせて、目を怒りに燃やしながら、ドラコはハリーを睨みつけていた。
彼がここまで怒っているのは初めて見たかもしれない。彼がこんなに泣きそうな顔をしているのも。
「何も、知ろうとしなかったくせに。プロメテアの入れ知恵だかなんだか知らないが、僕を決めつけるなよ!」
「……決めつけてるのは君のほうだろ。マダム・マルキンの時だって、ホグワーツに着いてからだって、君は一度も僕を見てない! 君は生き残った男の子に嫉妬してるだけじゃないか!」
「嫉妬? ふざけてるのか! 僕は君と違って、醜い傷跡なんかなくても家族が――」
ああ、これは駄目だ。
仲裁のために口を開こうとしたとき、ぱしん、と乾いた音が響いた。
パンジーがドラコの頬を打ったのだ。
「……それは違うでしょ、ドラコ」
立ち上がったパンジーが見上げるようにしてドラコを睨みつけている。
そう、それはドラコが口にしてはいけない言葉なのだ。
詳しい事情を知らないであろうドラコも、多少は自分の犯した罪の重さがわかるのだろう。呆然とした表情で、プロメテアとハリーの間を視線が泳いでいる。
「僕、僕は、そんな」
「……僕は傷なんかほしくなかった。家族に、生きていてほしかったよ」
こぼれたその言葉が何よりも雄弁だった。
「君にはわからないと思うけど、家族がいないってすごく、すごく辛いんだ。僕は親戚の家に捨て子同然で預けられた。みんなマグルで、魔法は大嫌いだった。……当たり前だよね、僕の両親は魔法で死んだんだから」
「ハリー……」
「大丈夫、ありがとうロン。……だから、僕は僕のご先祖様について知らなかったし、知る術もなかった。今は知ろうと思えば知ることができるけど……どうせ、みんなもう死んでる」
ハリーは静かに涙を伝わせていた。
眼鏡の奥でドラコを見据える瞳は静かだ。きっと、本人は自分が激情していることに気づいてすらいない。その滴がローテーブルの上で弾けて初めて、不思議そうに己の頬を撫でて、そして自分が泣いていることに気がついたようだった。
知らないものは求められない。彼は親の愛を知らずに育った。親、先祖、家、血、どれも彼を助けなかったのだ。
ダフネの脳裏に、少しだけ嫌な想像が浮かんだ。赤子だったハリーが魔法界を救った後、彼の消息が途絶えたのには間違いなくダンブルドアが関わっている。彼はこれを想定していたのだろうか。ハリー・ポッターが純血の社会に染まらない、染まれないことを。
少しだけ、お節介を焼きたくなってしまった。
「混ぜっ返すようですけれど、生きている親戚なら目の前にいますわよ?」
「……え?」
「ドラコのお母様、ナルシッサ・マルフォイはブラック家のお生まれ。ナルシッサ様の大叔父にあたるチャールズ・ポッターは貴方のご先祖様ですから、ドラコとは遠縁の親戚ですわね」
「ちょっとダフネ!」
「わたくし、別に旧家だからと歴史を誇るべきとは思いません。ええ、微塵も思いませんわ。でも、もし貴方が孤独だと思ってらっしゃるのなら、それこそ歴史を辿ったほうがよろしいんじゃないかしら。だって、同学年に遠縁とはいえ親戚の子がいるんですのよ?」
そうでしょう、と水を向けると、ドラコは泣きそうな顔を歪めて視線を逸らした。
ダフネは知っていた。ずっと前、まだプロメテアがドラコの妹分でしかなかったころに、ドラコが「ハリー・ポッターをマルフォイ家の養子に迎えるにはどうすればいいか」とパンジーに相談していたことを。
そのころ、パーティーの席で偶然居合わせたダフネはこう答えた。「遠縁とはいえ親戚なのだから、養子よりも被後見人にして、彼を当主としてポッター家を再興させたほうがいい」と。
ドラコは期待していたのかもしれない。
貴族の子どもというのは孤独だ。親からは同じ階級の人間と付き合えと言われるが、同じ階級の人間と友達らしく腹を割って話すことなどできやしない。ノットもザビニも、父の代から付き合いがあるクラッブとゴイルですら、対等ではない。ドラコは本当の意味で対等な友達というものを知らないのだ。
だから、いつか現れるハリー・ポッターに抱えていた期待はいつの間にか歪になってしまった。
とはいえ、それはハリーの責任ではない。それに、ハリーは自ら対等な友達を掴んだ。ドラコにはなかった勇気が彼にはあったと取るべきか、ドラコにあった
「ウィーズリー家だって親戚ですわよ? そうでしょう?」
「……うん。セドレーラばあさんの実家はブラック家だ。うちは血を裏切りし者とかなんとか言われてるから、パパのお父さんと結婚したときに勘当されてるけど」
「そういうわけですから、お門違いの寂しがりはおやめになって、前を向いてくださいな。貴方はドラコが自分を見ていないと思ってらっしゃったでしょうけれど、ドラコはドラコで貴方に無視されていたんですから、お相子でしょう?」
目を瞬かせたハリーが、ドラコに顔を向ける。
ドラコが嫌なやつだったのは事実だ。ダフネから見ても明らかにやりすぎだと思うくらい、陰湿で実害のある嫌がらせをしてきた。
しかし、悪意というのは大概が何かの結果だ。全く合理的ではない、説明の筋が通っていないかのように見える屈折を経て生じるとしても、必ず原因がある。
境遇を憐れみ、家族に迎えようとすら思っていた相手に思いきり袖にされれば、人は傷つく。それを飲み込んで無関係の隣人として過ごせるほどドラコは大人ではない。
これから二人が親しくなろうと、やはり許せずに憎みあおうと、それは自由だ。ダフネの知ったことではない。しかし、互いが互いに抱えていた誤解を整理するのは、少なくとも損とは限らないだろう。
「……私としては、共通の友人がいつまでもいがみあっているのは面倒だ。すぐに和解しろとは言わないが、お互いに相手が会話できる存在であることくらいは認識しておけ」
プロメテアが大きく息を吐いた。まるでそれがきっかけになったかのように、緊張していた空気が一気に弛緩した。
「……僕はもう帰る。ポッター、僕はお前に謝ろうとは思わない。だから……だから、お前も僕に謝るなよ」
それだけ言い残して、ドラコは足早にキャビネットへと去っていった。
ハリーにもどうやら彼の意図が伝わったのだろう、小さく頷いている。あれは、ドラコなりの譲歩なのだ。
「解散だ。まったく、魔法史らしい魔法史はほんの一瞬だったぞ。……ああ、そうだ、グレンジャー」
「え、あ、はい!」
「今日はもう疲れた。質問には後日答えるから、これを持っていけ。それから、ジニー・ウィーズリーがまだ寝ているだろうから連れて帰れ」
プロメテアはハーマイオニーに白枝――研究室の鍵を投げ渡すと、ダフネの膝から飛び降りて大きく伸びをした。
さすがにプロメテアも思うところがあったらしく、どこか仕草にわざとらしさがある。この小さな皮肉屋の友人は、周囲から想像されているよりはるかに情に厚いのだ。
「お前には居心地の悪い時間だったかもしれない。進行役として私も大したことをできなかった」
「いいえ、勉強になったわ。私もまだまだ知らない、というか理解していないことが多いのね。……ミス・パーキンソンもありがとう」
「あんたにお礼を言われる筋合いなんてないけど……まあ、ドラコのあの顔に免じて受け取ってあげる。精進しなさいよね。あんた出世しそうだし、多少は気にしといてあげる」
「気にしておいてくださいの間違いだろ? パーキンソンよりハーマイオニーのほうが出世するぜ、絶対」
「あんたみたいのをね、東洋では虎の威を借る狐って言うのよ。話についてこれなくて間抜け面晒してたあんたでもひとつ賢くなれてよかったわね、ウィーズリー」
「喧嘩をするな、喧嘩を」
「はあ? 元はと言えば進行役のくせに役立たずのあんたが悪いんでしょうが!」
今にも取っ組み合いの喧嘩が始まりそうなのに、少しも空気がひりついていない。
こみ上げてくる笑いに身を任せながら、ダフネはハリーにちらりと目をやった。
同じように笑っているハリーは、もう泣いていない。彼が背負っていた重荷を少しでも下ろせたのなら、そしてドラコも同じであるのなら、この時間はきっと無駄ではなかった。
《ペルセウス叢書》
パーキンソン家に伝わる禁書
魔法大臣ペルセウス・パーキンソンの言行録
悪意ある歪曲を受ける前の純血思想が記されている
ペルセウスは反マグル急進派の筆頭であり、ゆえに失墜したと語られる
それでもなお、ペルセウスは導き手だったのだろう
高みに立たねば失墜することはできないのだから