ハイスクールD×D + 悪魔処刑執行人   作:ぱすえ

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第2話 駒王町にひそむ魔

これは遠い過去の記憶。

俺がうたた寝しているとよく見る夢の話だ。

 

昔、俺が小学1年2年の頃、なんの因果か2年連続でクラスが一緒になった女の子が居た。その子は控えめに言っても可愛く頭も良くクラスの中では人気者。対して俺は、「バカ」「チビ」「運動音痴」という日陰者であり、スクールカーストで言うなら底辺の部類に属していた。

 

そんな日陰者の俺は必然的に揶揄われの対象になり、先公からはダメなクソガキのレッテルを貼られ、放課後には居残り学習を強要される始末。とても良い学校生活とは言えなかった。

 

そんなある日。いつものように居残り学習をさせられ、俺はみんなよりも遅い時間に学校を出た。日頃鬱憤が溜まってた俺は、むしゃくしゃしてた気持ちを晴らそうと、道端に落ちてた小石を蹴飛ばす。だが、運痴だったために振り上げた足は小石をスカして、バランスを崩しぶっ倒れた。

 

尻に鈍い痛みが走ったと同時に、閉めてなかったランドセルの蓋がベロンと開き、中身があたりに散乱する。込み上げてくる惨めさと虚しさが涙に変わり、ポトポトと自分の掌に雫が落ちた。

 

そんな時、視界の隅に白い手が見えて散らばった荷物を拾う。ふと顔を上げるとそこには、例の女の子が居た。

 

 

「俺みてぇーなのと一緒にいると、バカが伝染るぞ」

 

 

お礼の言葉よりも先に、拒絶の言葉が口から出る。誰かにこんなところを見られたらからかいの元になりかねない。それにこの子自身だって嫌な思いをする。それ故に俺は彼女の善意を否定した。

 

 

「そんなことない。〇〇君はバカじゃないもん。」

 

 

だが、彼女は俺の言葉なぞ意に返さず、真剣な顔でこちらを見る。

 

 

「毎日毎日放課後に勉強頑張ってるし、この間なんて、傷だらけになるまで逆上がりの練習してたよね? 私それ見てて、すごい!って思ったもん!」

 

「っ!?///」

 

 

初めてかけられた肯定の言葉に俺の胸はドキンっと高鳴り、一気に顔が赤くなる。その子の言葉は、まるで俺の心の中にポッカリと空いた穴を塞いでくれたようで、とても嬉しかった。

 

はい!これ、次は落とさないようにね。っとその子は俺に荷物を渡し立ち去ろうとする。やべ!っと思った俺は思わず彼女を呼び止めた。

 

 

「ま、待って!」

 

「どうしたの?」

 

「…あ、ありがとう。その…荷物拾ってくれて…」

 

「うん! じゃあまた明日ね!」

 

 

その子は、えへへと笑いアスファルトを駆けていった。

 

 

 

 

 

それから、俺の過ごす日常にちょっとした変化が起きた。彼女の言葉に励まされた俺は、苦手な勉強もめげずに頑張り続けることができ、少しずつだが成績が上がり始めた。それで自信がついたのか、他のことにも挑戦してみようという気になり、コンプレックスだった小さい体を強くする為、スポーツも始めた。

 

それに、放課後学校を出るとその子と一緒に帰るようになり、気づけば互いの家で遊ぶぐらいまで仲良くなっていた。

 

彼女にとって俺との出会いは些細なものだったかもしれないが、俺にとってはとても大きなもので、次第に友情を超えた感情を抱き始めるのにもそう、時間はかからなかった。

 

 

「ねぇ、あーちゃん。」

 

「どうしたの〇〇君?」

 

 

いつもの様に"あーちゃん"の実家である神社の境内で遊んでいると、夕方のチャイムが鳴る。そろそろ帰らなければ行けない時間になった俺は、ふいに彼女に声をかけた。

 

 

「これやるよ。その、いつも勉強とか教えてもらってから…」

 

 

そういって俺は、前々から貯めてた小遣いで買った"ロケットペンダント"を渡した。ペンダントといっても、そこら辺の雑貨屋にあったものであったが、小2のガキの小遣いを貯めに貯めてようやく買った想いのこもった品だ。

 

 

「わぁ!すごいキラキラしてて綺麗だね!」

 

「そこのピンを押すと蓋が外れるんだ。そんで、そん中に写真とか入れる事ができるんだぜ。」

 

「すごい!ありがとう〇〇君、大切にするね!」

 

「あ、あぁ。無くすんじゃねーぞ///」

 

 

それは、「好きだ」なんて言葉を面と向かっては言えないチキンな俺ができる最大限の告白だった。こんなんじゃ彼女には想いが伝わらないのは分かっていたが、あーちゃんの喜ぶ顔が見れればそれで十分だった。

 

またねー!っと手を振ってくれるあーちゃんの姿を名残惜しく思いつつも、俺は石段を降りていく。また彼女と会える明日を楽しみにしながら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日。

 

 

 

 

 

あーちゃんは行方不明になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピピピピッ!!ピピピピッ!!

 

けたたましいアラーム音が耳の鼓膜を揺るがし、うたた寝していた彼の頭を覚醒させる。

ポケットの携帯を取り出し画面を見ると表示されていたのは「警告:赤」

 

 

 

「相変わらず空気の読めない奴らだな……」

 

 

 

束の間の休息を邪魔され少々機嫌が悪くなったが、仕事は仕事。すぐ様、重いロングコートを羽織り直し、手持ちの武装を確認する。そして、耳にインカムを付けると上司の叫び声聞こえてきた。

 

 

<端末に座標を送った。監視カメラのノイズから見るに新入りの可能性が高けぇ!!きちっと歓迎してやれよTomahawk(手斧)‼︎ >

 

 

わーってますよ。っとぶっきらぼうに返答しつつ、彼はそこらに立てかけてあった原付に跨りキーを捻る。ブンッ!ブ、ブンッ!とビミョーに燻ったエンジン音を立てる相棒を若干不安思いつつも、処刑人は、駒王町に向けてハンドルを向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからしばらくして…

とある公園に若い2人のカップルがいた。

 

 

 

「ねぇ…イッセーくん、私たちの初デートの記念に1つだけ私のお願い聞いてくれる?」

 

「な、何かな?お願いって?」

 

 

 

少女にイッセーくんと呼ばれた少年は、照れ臭そうにそう聞き返す。もしかして…キス?などと少しうわついたことを考えていると、少女…天野夕麻はこう返した。

 

 

 

「…………死んでくれないかな?」

 

 

 

瞬間、天野夕麻の服が弾け飛び背中から艶のある黒い翼が現れる。チラリと見えた乳房に見惚れつつも突然の出来事に、イッセーこと兵藤一誠は驚愕し腰を抜かしてしまった。

 

 

 

「あなたが買ってくれたコレ大切にするわ。……だから死んでちょうだい。」

 

 

 

彼女は手元のシュシュを物惜しげそうに見つめた直後、手元に光が集めそれを鋭い円錐形状のものへと変化させる。そして、それを一誠の方は向かって手をかざした。

 

ズブリッ!!

一誠の腹部を禍々しい光の槍が貫いた。バシャバシャと血液が飛び散るその様子を、噴水の淵に腰をかけた天野夕麻…もとい堕天使レイナーレは、口元に手を当て愉悦の表情を浮かべながらこう言った。

 

 

 

「恨むなら、その身に神器(セイクリッド・ギア)を宿した神を恨んでちょうだい。」

 

 

 

バタッ…後方に倒れ込む一誠を確認するとレイナーレはふぅっと一息吐く。

全く他愛もない。人間というものはどうしてこうまでか弱き存在なのか。まぁ、その様な存在だからこそ神はお情けとして、神器などという能力を与えたと言われれば合点がいくが……

 

まぁ良いか。と心の中で呟きその場を立ち去ろうとした瞬間。 

 

 

 

ズキッ!!鋭い痛みが背中に走る。

 

 

 

ハッと後ろを見ると、顔面全体をボロ布でぐるぐるに巻いたロングコートの男が手に拳銃を構えていた。すぐ様、上方へと飛び逃げようとするも、さらに弾丸が翼を撃ち抜き身動きを封じられる。

 

 

「動くんじゃーねぇぞ糞悪魔ぁ。」

 

 

男はそう言い顔のボロ布を緩めるとギロリとした目でレイナーレを射抜きながら彼はこう言った。

 

 

 

 

「そこに転がってる兄ちゃんをぶっ殺したのはテメェで間違いねぇな?」

 

「……確認もせずに発砲とは、頭のネジが飛んじゃってるのかしら?」

 

「悪りぃな。コイツの引き金は軽く設定してあるのさ。だからよ、ちょっと力むとこの通り…」

 

 

 

ドンッ!鈍く光る拳銃から弾丸が発射される。すると、それが合図とでも言わんばかりに、止まっていた男とレイナーレは同時に動きだした。レイナーレは、弾丸を避けつつ光の槍を生成し一気に男へと投げつける。逆に男は、拳銃を捨て腰元から二丁の手斧を取り出すとレイナーレ目掛け突進していった。

 

ガキィンッ!!

光の槍を男のコートが弾く。なッ!?と驚愕するレイナーレへ男は瞬く間に距離を詰め、そして、右手の手斧が彼女の腕に真一文字の傷をつけた。

 

 

ーっ!?

瞬間、彼女は焦った。

何故なら、何処の馬の骨だか分からないが、コイツは自身の武器である「光の槍」を難なく弾き堕天使である自身に傷を負わせたからだ。それも接敵してから僅か1分も経たぬうちに。

 

 

「く、くるなぁ!!」ブォン!!

 

「ッ!!」

 

 

闇雲に振ったレイナーレの蹴りが、男の横腹に炸裂する。「ぐぶっ!!」っと低い呻き声を上げながら男はアスファルトを滑る様に転がっていった。

 

 

「へへ、女しちゃ中々重みのある蹴りじゃねーか。今のは骨の髄まで響いたねぇ…。」

 

 

吹き飛ばされ男はすぐ様を起き上がると何事もなかった様に手斧を構えた。その男のタフネスさにレイナーレの焦りはさらに増していく。その焦りを決して悟られない様に彼女はうわずりそうになる声を何とか抑え、男に問う。

 

 

 

「あなたは一体何者なの? 見るところ、只者じゃないわね。」

 

「俺か?俺は悪魔処刑執行人。名も無い影の仕置人だッ。」

 

「ッ!?」

 

 

 

その名を聞きレイナーレの中の焦りは戦慄へと変わった。悪魔処刑執行人といえば、近頃この駒王町を拠点に、主にはぐれ悪魔を狩っているワンマンの殺し屋。そして、殺しに快楽を感じる仲間のエクソシスト(異常者)に、「あーアイツにゃ関わらない方が吉ざんす。」と言わしめたまでの存在だ。

 

 

 

「ってことでよぉ。その首叩き落させてもらうぜ。このビチグソ野郎ォッッ!!」

 

「チィィッ! 堕天使であるレイナーレ様がこんなとこで殺されてたまるもんですか!!」

 

 

 

雄叫びを上げながら突っ込んでくる処刑人に対し、レイナーレは光の槍を投函するも「んなもん効くかぁぁぁあ!!」と処刑人の足は止まらない。そして、先程と同じ様に纏うコートが光の槍を弾き飛ばした刹那。

 

ブォォンっと光が一気に膨張し、あたりを眩い閃光が呑み込んだ。

 

咄嗟に目を防御し丸くなる処刑人。その隙狙ってレイナーレは逃げ出す。撃ち抜かれた翼で弱々しくも羽ばたきながら、手斧はおろか拳銃の弾さえ届かない高度まで上昇した彼女は引き攣った顔で公園を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボドボドと流れ出る血が白いタオルを染め上げていく。

 

一誠の腹に空いた傷は思っていた以上に深くひどい状態だった。胃より下の内部臓器、とくに小腸、大腸の損傷が激しく止血は絶望的だ。せめて救護班が到着するまでの間、何か出来る事はないかと考えた末、たまたま手元にあった何枚かのタオルで腹部の傷を抑えていた。

 

 

「…後もう少しで救急車が来るからな。それまで持ち堪えろよ。」

 

 

処刑人の声が届いたのか、一誠は虚な目で宙を仰ぎながら何やらパクパクと口を動かしている。最早、声を出すことすらできない程まで衰弱している事は明白であった。

 

(後もう少し早く現場に着いていれば、こんな事にゃ……。)と自身の未熟さを悔いるが現実は非情。お構いなしに赤い円は広がっていく。

 

 

 

「チッ…遅ぇ…遅すぎるぜ救護班の奴ら。クソ、こうなりゃ負ぶってでも、近くの病院に連れていくしかねぇな…。」

 

「その必要はないわ。」

 

 

 

痺れを切らした処刑人が、一誠を担ごうと脇に手を回したその時、何処からか女の声が聞こえた。「誰だッ!?」そう叫ぶ処刑人の足元が、突如深紅色に輝いたかと思うと凄まじい電撃が処刑人だけを襲う。

 

 

「(ま、魔法陣ッ!?) ぐがぁぁぁぁぁぁあ!!!」バチバチバチッ!!

 

 

コートに仕込んである鎖帷子を伝い体全身に電気が駆け巡る。そして、弾かれる様に魔法陣の外へと吹っ飛ばされた。

 

 

「手荒な挨拶を許してちょうだい。悪魔処刑執行人さん。」

 

 

魔法陣から赤髪の女性(リアス・グレモリー)が現れると、その場に倒れていた一誠を抱き抱える。そして、魔法陣の外で這いつくばる処刑人を威圧的に見下ろしながらこう言った。

 

 

 

「貴方とは会話する前に殺し合いになりそうだったから、先手を打たせてもらったわ。大丈夫。この子は私が責任持って預かるから安心して。」

 

「ざ、っけんなぁ…」

 

「そう睨まなくてもいいんじゃない?私はただ、悪魔と堕天使の抗争に一般市民を巻き込んでしまった責任を取るだけ、この子はちゃんと助けるわ。」

 

「んな…綺麗事言ったて、俺は騙されねぇ…結局はテメェがやってんのは"事実の隠蔽"だろーがッ!」

 

 

 

処刑人は、残る全ての力を振り絞り、いう事を聞かない体を無理矢理起こす。そんな処刑人の姿にリアスは「あの電撃を喰らってよく立てるわね…」っと若干ひいていた。

 

 

 

「うぐっ!…っまぁ…人の人生をしっちゃかめっちゃかにしても屁とも思ってねぇ保身野郎にゃ何言ったて無駄か…」

 

「ちょっと話が飛躍しすぎじゃないかしら?…まぁいいわ。その話は後でたっぷりと聞いてあげるから今は大人しくしていてちょうだい。」

 

「大人しくすんのはテメェの方だ。地獄に帰りやがれぇぇええ!!」

 

 

 

バッっと処刑人は、コートから拳銃を抜き放ちリアスの額に照準を合わせる。だが、弾は発射されることは無かった。

何故なら……

 

 

 

ゴロゴロッ!ピシャーンッッ!!

 

「がぁぁぁぁああああ!!!」

 

 

 

先程の電撃とは比べ物にならないほどの稲妻が、処刑人の体を射抜いたからである。手に持っていた拳銃は虚しく地面に落ち、ドサッ!!っと処刑人は地面に突っ伏した。

 

それと同時に、魔法陣から黒髪の女性が現れ「大丈夫でしたか、部長?」っとリアスを気遣う。

 

 

「ええ、何ともないわ。にしても相変わらず容赦無いね…ちゃんと加減したの朱乃?」

 

「うふふ、心配なさらずとも大丈夫ですわ。ちょーと電圧を高めただけで命に別状はないはずです。」

 

「そ、そう。その割には結構凄い音してたけど……ま、朱乃がそう言うなら大丈夫そうね。それじゃ、私はこの子の治療を行うから、頼んだわねソレ。」

 

「ええ、わかりましたわ。」

 

 

 

朱乃に処刑人の処分を任せたリアスは一誠を抱え、魔法陣の中に消えていく。

 

公園には、地面に這いつくばって動かない処刑人と姫島朱乃の2人のみ。カツ…カツ…と靴音を鳴らしながら朱乃は処刑人に歩み寄ると、口元に手を当て恍惚の表情を浮かべた。

 

 

 

 

 

 

「さぁて、久々にどんなことをして遊びましょうか。ねぇ?悪魔処刑執行人さん。うふふふ……」

 

 

 

 

 

 

駒王町の闇夜の中で、悪魔の微笑う声が木霊した。

 

 

 

 

 

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