上杉山御剣は躊躇しない   作:阿弥陀乃トンマージ

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第18話(4) カラオケ店での戦闘

「妖レーダーが激しく振動している!」

 

「妖が大量に湧いてきたな!」

 

「!」

 

 その時、勇次たちがいる部屋に人間よりはやや小柄だが、頭部は人間よりも大きい不思議な人型で全身ピンク色の妖が多く入ってくる。勇次が驚く。

 

「こ、こいつら⁉」

 

「はあ!」

 

「‼」

 

 仁藤が素早く反応して前に飛び出し、腰の剣を抜いて、大量の妖に対して斬りかかる。斬りつけられた妖が次々と霧消する。

 

「へっ、ざっとこんなもんだぜ……」

 

「へえ……案外やるな」

 

「案外ってなんだ! 案外って!」

 

 勇次の言葉に仁藤が声を上げる。三尋が呟く。

 

「人間に似ているが目や口はない妖……『魂喰(こんじき)』か。ピンク色は珍しいな」

 

「そいつらって確か……?」

 

「生物の魂を奪って喰らう種族の妖だ。調査報告通りだな」

 

 勇次の問いに三尋が答える。愛が口を開く。

 

「ピンク色は初めて見ます」

 

「人の色欲が暴走している魂を特に好む種だな」

 

「色欲……」

 

 愛がジト目で山牙と勇次を見る。二人が慌てる。

 

「そ、そこまでいやらしいことは考えてない!」

 

「そ、そうだ! 暴走なんて心外だ!」

 

「とにかく合コンが多く行われているような場所が奴らにとっての恰好の狩場だ」

 

「ということはこのカラオケ店全体が……?」

 

「ああ、挟世と化している」

 

 愛の問いかけに三尋が頷く。女性が呟く。

 

「このフロアだけでなく、まだまだいるぞ……」

 

「上等だ! 片っ端から俺が根絶してやる!」

 

 仁藤が部屋を飛び出す。女性が声を上げる。

 

「待て!」

 

「うおあ⁉ こ、こいつら!」

 

 仁藤が早速押され気味になる。女性が呆れながら呟く。

 

「狭い廊下ではかえって刀を振り回しにくいだろう……」

 

「仁藤が挟まれているぜ! 援護しないと!」

 

「任せて! ……仁藤正人、力をお貸し給へ……!」

 

 愛が唱えると、彼女が持っていた四枚の形代が仁藤に変化し、本物の仁藤の周囲を囲み、仁藤の守りに入る。魂喰の攻撃を受けて、四体の仁藤があっさり霧消するが、その間に勇次と山牙が仁藤の前後に進み出る。

 

「そりゃあ!」

 

「えい!」

 

 勇次と山牙がそれぞれ金棒と槍を繰り出し、鋭い突きを連発して、魂喰たちを霧消させる。

 

「よっしゃ! 仁藤のお陰で仁藤を守れたぜ! 仁藤たち! お前らの犠牲は忘れない!」

 

「なんだかややこしいな!」

 

 勇次の叫びに仁藤が声を上げる。山牙が口を開く。

 

「助けてやったんだからお礼が先でしょ!」

 

「あ、ありがとう……」

 

「どういたしまして!」

 

「仁藤さんたちがうまく壁になってくれました……」

 

「あ、愛ちゃん……君の術は分かったが、他の人じゃ駄目だったのか……?」

 

「壁役に適任な方が他に思いつかなかったので……」

 

「俺が壁役にピッタリみたいな言い方止めてくれよ!」

 

 愛の説明に仁藤が再び声を上げる。レーダーを確認した勇次が叫ぶ。

 

「他のフロアにも魂喰は大勢いやがる! 俺はこっちを片付けるぜ!」

 

「それならアタシはこっちを!」

 

 勇次と山牙が左右にそれぞれ勢いよく駆け出していく。三尋が女性に声をかける。

 

「どうする?」

 

「狭い場所で戦うのは不利だ……広い屋上まで相手を誘導していくように戦う」

 

「なるほど、それで行こう」

 

「山牙を援護する」

 

「俺は勇次を援護しよう。曲江さんは……」

 

「そういうことでしたら、下の階は任せて下さい。数は少ないですから、私と仁藤さんだけでも大丈夫なはずです」

 

「よろしく頼む。それじゃあ、散るぞ!」

 

 愛の言葉に三尋が頷き、各自が散開する。

 

「うおりゃあ!」

 

「狭い場所でも巧みに金棒を使えているな……戦い方に磨きがかかっている」

 

 勇次の戦いぶりに三尋が感心する。

 

「ええい!」

 

「槍さばきは流石だな。余計な援護は不要か……」

 

 山牙の戦闘を女性が冷静に評する。魂喰たちはその勢いに次第に屋上に追い詰められる。

 

「追い詰めたぜ!」

 

「覚悟しな!」

 

「!」

 

「ちっ⁉」

 

「くっ⁉」

 

 反撃に転じた魂喰たちのトリッキーな動きに勇次と山牙が虚を突かれる。

 

「丸い体をしていると思ったら、弾むように動きやがって!」

 

「勇次! ここは俺たちに任せろ!」

 

 三尋と女性が前に進み出る。勇次が慌てる。

 

「み、三尋はともかくとして、お姉さんは大丈夫か⁉」

 

「問題ない……」

 

「⁉」

 

 女性が両手をポンと叩くと、男性の姿に変化する。三尋が問う。

 

「良いのか? スピードが落ちるんじゃないか?」

 

「パワーを重視するならば、こちらの姿の方が良い……」

 

「まあいい! 一気に片付けるぞ!」

 

「ああ!」

 

 三尋と男性はそれぞれ分身し、数に勝る魂喰たちとほぼ同数となる。

 

「はっ!」

 

「ふっ!」

 

 三尋と男性の苦無を用いた素早い攻撃によって魂喰たちは霧消する。三尋が頷く。

 

「……レーダーにも反応無し。よし、根絶完了だな」

 

「お、男だったのか……?」

 

「やっぱりね」

 

「! 知っていたのか、愛⁉」

 

 勇次は振り返り、屋上に駆け付けた愛に尋ねる。

 

「武枝隊の忍び、朔月望(さくげつのぞみ)さん……性別を変える術を使う方よ。なるほど、合コンで頭数を揃える為に女性の姿になっていたのね、合点がいったわ」

 

「な、なんというか、女としての振る舞いが完璧だったな、気が付かなかったぜ……」

 

「褒め言葉として受け取っておこう。術の出来が良かったということだからな」

 

 勇次の呟きに朔月は笑みを浮かべる。遅れて駆けつけてきた仁藤が声を上げる。

 

「おおっ! 朔月、来ていたのか!」

 

「……お前、正気か? 今まで誰だと思っていたんだ……」

 

 仁藤の言葉に朔月は呆れる。ともかく、共同任務は完了した。

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