上杉山御剣は躊躇しない   作:阿弥陀乃トンマージ

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第20話(1) 騒々しい邂逅

                  漆

 

「ふむ……」

 

 配信終了後、別の部屋に通された御剣は椅子に座って深く頷く。愛が声を上げる。

 

「いや、ふむ……じゃなくて!」

 

「ん?」

 

「いいんですか! 配信なんてさせて⁉」

 

「プライベートは自由にさせてやりたい」

 

「理解が良すぎませんか⁉」

 

「若い感性というのも大事だ」

 

「そうは言ってもですね……」

 

 愛が軽く頭を抑える。御剣が首を傾げる。

 

「言うほど問題はあるか?」

 

「妖絶士があまり目立ってしまうのは……」

 

「正直配信というのがよく分からんのだが、そんなに影響があるのか?」

 

「チャンネル登録者数百万人ですよ⁉ 金の盾です!」

 

「盾……私は御剣だが」

 

「なにを張り合っているんですか! そうではなくて!」

 

「冗談だ」

 

「と、とにかく、少なくとも数十万人が彼女たちの配信を見ているのです!」

 

「それは全国でということか?」

 

「……場合によっては海外にも視聴者がいるかもしれません」

 

「そうなのか?」

 

「そうなのです!」

 

「それは……ちょっと問題かもしれんな」

 

「ちょっとどころではないと思いますが!」

 

「まあ、少し落ち着け」

 

 御剣は愛をなだめる。呼吸を整えた愛が問う。

 

「……妖絶講の本部からはなにかないのですか?」

 

「なにかとは?」

 

「注意勧告とか……」

 

「今のところは特にないな」

 

「ええ……」

 

「それどころかこのことを把握しているのかどうかすらも分からん」

 

「大丈夫なのですか、それ……」

 

 愛が不安げな目で御剣を見る。

 

「まあ、大丈夫じゃないか……勇次はどうした?」

 

「あれ? さっきの部屋に残っているのかしら?」

 

「哀たちも遅いな。やはりあちらの部屋で話すか」

 

 御剣が立ち上がり、愛とともに先ほどの部屋に戻ろうとしてドアの前に立つと、なにやら話し声が聞こえてくる。愛が耳を傾ける。

 

「へえ……こんな感じになっているんだな……」

 

「い、いや、そんなにじっくり見られると……」

 

「なかなかどうしてたくましいですね……」

 

「あ、あんまり触らないでくれないか? 結構敏感なんだ……」

 

「そう言われても……ねえ、哀?」

 

「ああ、愁。こんなものを見せられたら正直たまらないぜ……」

 

「ふ、二人とも、ちょ、ちょっと待ってくれ……」

 

「⁉ な、なにを破廉恥なことをやっているのよ⁉」

 

 愛が勢いよくドアを開けると、ほんのり赤くなった勇次の頭に生えた角を興味深そうにベタベタと触る哀と愁の姿があった。勇次が驚いて尋ねる。

 

「ど、どうした、愛……?」

 

「い、いや、それはむしろこっちの台詞よ……」

 

「二人が鬼の角を見てみたいというから生やしてみたんだ」

 

「ほう……感情がさほど昂らなくても、角を生やせるようになったのか?」

 

 御剣が感心したように尋ねる。

 

「試しにやっていたら出来るようになりました」

 

「とはいえ、まだまだそんなものではないだろう?」

 

「そ、そうですね……もっと長く太くなるはずですから……」

 

「え⁉ もっと長く太くなるのか⁉」

 

「ますます興味深いですね……」

 

「もっと大きくしてみせてくれ!」

 

「なにかお手伝いしましょうか?」

 

 哀たちがグイっと勇次に近づく。愛が叫ぶ。

 

「は、破廉恥よ! 勇次君!」

 

「な、なにがだよ?」

 

「なんかこう……雰囲気がよ!」

 

「そんな漠然としたこと言われても……」

 

 愛の様子に哀と愁が悪戯っぽい笑みを浮かべる。

 

「え~どうしたんですか?」

 

「一体なにを想像されたのでしょうか……」

 

「う、うるさいわね!」

 

 愛が恥ずかしそうに声を上げる。

 

「うぃ~す、邪魔するぜ!」

 

「別働隊とは、副隊長のわたくしに黙って……」

 

「万夜殿、ぶつぶつ言ってないで、早く部屋に入って下さい」

 

「って、ああん⁉」

 

「こ、これは……⁉」

 

「むむっ⁉」

 

 部屋に入ってきた千景と万夜と億葉が勇次たちを見て驚く。

 

「な、何を抱き合ってやがるんだ⁉」

 

「い、いや、抱き合ってはいないぞ!」

 

「それにしては近いですわ!」

 

「いや、触りたいって言うから……」

 

「お触りあり! う、うらやましい……じゃなくてけしからんであります!」

 

「連れてきたんにゃが……マズかったかにゃ?」

 

「いや、問題ない」

 

 首を傾げる又左に対し、御剣は頷く。

 

「姐御! これはどういうことだ!」

 

「説明を求めます!」

 

「拙者もお触りしたいであります!」

 

「落ち着け、お前ら……」

 

「……どちら様ですか? ひょっとして……」

 

 愁の問いに御剣は答える。

 

「察しの通りだ、本隊の隊員たち……『億千万トリオ』だ」

 

「だからその雑なくくりやめろよ!」

 

「こちらが『哀愁コンビ』……『哀愁ツインズ』だ」

 

「いや、言い直しても一緒ですから!」

 

 御剣のざっくりとした紹介に千景と哀がそれぞれ抗議する。愛が口を開く。

 

「ちゃんと紹介した方が……」

 

「そうだな……せっかくだから隊舎の外に出るか」

 

「え? 外ですか?」

 

「ああ、さあ、トリオもコンビも私に続け」

 

「だからその雑なくくりを止めて下さいます⁉」

 

「ツインズです……」

 

「お、かわいい双子ちゃん。どこかで見たことがあるでありますな……」

 

 皆がわいわいと言いながら部屋を出る。

 

「俺は……どうやらまた忘れられているな……」

 

 部屋の片隅に一人残された三尋がポツリと呟く。

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