上杉山御剣は躊躇しない   作:阿弥陀乃トンマージ

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第22話(2) 東日本管区長会議

「……本日はお忙しい中、各地からお集まり頂き恐縮です」

 

 ミディアムストレートで鮮やかな赤みを帯びた黄色の髪色をした眼鏡が似合う美しい女性が楕円形のテーブルを囲うように座った御剣ら管区長たちに声をかける。

 

「あの女性があの方ですか……?」

 

 各副管区長や他の隊員はそれぞれの管区長の後方に椅子を並べて座っている。勇次は小声で隣に座る御盾に尋ねる。御盾が首を振る。

 

「あの人は太田原山吹(おおたわらやまぶき)さん……東京管区の管区長補佐じゃ。秘書と言った方が良いかの」

 

「眼鏡の美人秘書さんか……羨ましい……」

 

「山吹さん~管区長は?」

 

 貫太郎がまだ短い脚を退屈そうにバタバタとさせながら問う。勇次は小さく驚く。

 

「あ、あの少年、管区長だったのかよ! てっきり熊さんが管区長かと……」

 

「人は見かけによらんということじゃ」

 

 御盾はクスっと笑う。山吹がため息を一つついてから答える。

 

「……もう少々お待ち下さい……!」

 

「⁉」

 

 突如として、部屋に大音量の音楽が流れ、管区長たちは周囲を見回す。

 

「はっはっは! こっち、こっち!」

 

「!」

 

 天井から吊るされたゴンドラに乗った茶髪で短髪の青年が現れる。勇次が唖然とする。

 

「な、なんだ……?」

 

「あの方が善川光康(ぜんかわみつやす)……この東京管区の管区長で、十二ある管区を束ねる方じゃ……」

 

「ええっ⁉」

 

 御盾の言葉に勇次は驚く。ゴンドラから降りた光康が声をかける。

 

「ヘイヘーイ! 皆、元気~?」

 

「……」

 

 光康の言葉に対し、各管区長は黙り込む。光康は首を傾げる。

 

「あれ~皆、どうしちゃったのかな~? 元気がないね~」

 

「皆、心底呆れているのですよ……」

 

 傍らに立つ山吹が眼鏡の縁を触りながら呟く。

 

「え? 呆れられちゃっているの⁉」

 

「むしろ白けきっていますね」

 

「そ、そんな……」

 

「早く〇ね!とまで思っていらっしゃいます」

 

「ひ、酷くない⁉」

 

 山吹の言葉に光康はショックを受ける。晃穂が笑顔のままで口を開く。

 

「善川管区長……時間がもったいないので、席にお座り下さい」

 

「う、うん……」

 

 光康が楕円形のテーブルの先端部分、部屋の入り口から一番奥の席に座る。

 

「それでは会議を始めさせて頂きます」

 

「お待ち下さいませ。太田原さん」

 

「なんでしょうか? 織田桐管区長」

 

「半分足りませんわ。西の皆さんはどうされたのかしら?」

 

「西日本各地で色々と騒ぎが起こっているようで、東京までは出てこられないそうです」

 

「……リモートの参加ですら無理なのかしら?」

 

「それなりの混乱ぶりのようで……」

 

「ふ~ん……このわたくしがわざわざ顔を出しているというのに……」

 

 摩央が露骨に不満そうな態度で頬杖をつく。雅が笑う。

 

「だからいつもと違う会議室に通されたのね。おかしいなと思ったのよ~」

 

「まあ、西の方々……特に『第七管区』や『第八管区』のお二人なんかはアレだよね。僕と顔を合わせるのを極力避けるというか……ひょっとして僕が嫌いなんじゃないのかな?」

 

「……」

 

 光康の発言に周囲は再び黙り込む。光康は戸惑う。

 

「え⁉ なに、その沈黙⁉ 全員納得なの⁉」

 

「光康ちゃん……ドンマイ♪」

 

「雅さん! 即慰めないで! 『そんなことないわよ』とか言ってよ! 後、いい加減ちゃん付けはやめて! 僕一応管区長筆頭なんだから!」

 

「ぶっちゃけ、ここの皆からも認められてないから……」

 

「うえっ⁉」

 

「中田管区長、本当のことを言ってしまっては気の毒です」

 

「うええっ⁉」

 

 貫太郎が本音をぶっちゃけ、晃穂が笑顔で追い打ちをかける。光康が頭を抑える。

 

「……下らない話はその辺でもよろしいですか?」

 

「み、御剣ちゃん! く、下らないって⁉」

 

「おっしゃる通りですね、会議に入りましょう」

 

「山吹ちゃん⁉」

 

 山吹の言葉に光康は振り返る。山吹はそれを無視して話を進める。

 

「会議に先立ちまして、皆さんにご紹介したい方がいます……鬼ヶ島さん、ご起立下さい」

 

「は、はい……」

 

 山吹に促され、勇次がおずおずと立ち上がる。周囲の視線が勇次に集まる。

 

「鬼ヶ島勇次さん、先日上杉山隊に加入されました」

 

「……報告にあった鬼の半妖の子だね……なかなか良い面構えをしているじゃん」

 

 光康が勇次を見てうんうんと頷く。摩央が隣の御剣に尋ねる。

 

「何故、このタイミングで紹介を? 少し遅いのではなくて?」

 

「この数か月はいわゆる試用期間と見ておりました。妖力が暴走する恐れもありましたから……その心配も少なくなりましたので、本日こうして連れて参りました」

 

 御剣は淡々と答える。御剣の対面に座る晃穂が問う。

 

「報告書によると、感情が昂ると、体がふんわりと赤くなるとか……?」

 

「勇次、答えて良いぞ」

 

「あ、は、はい……ふんわりというか、ほんのり……ですかね?」

 

「そんなのどちらでもよろしいでしょう……」

 

「いえ、織田桐管区長、大事なことです。なるほど、ほんのりですか……興味深いですね」

 

「は、はあ……」

 

 綺麗な顔立ちの晃穂から微笑を向けられ、勇次は照れ臭さそうに俯く。光康が語りかける。

 

「鬼ヶ島くん、座っていいよ」

 

「は、はい……」

 

「ついでと言ってはなんだけど……御剣ちゃん、先日狂骨(きょうこつ)と遭遇したようだね?」

 

「ええ……長岡の花火大会で交戦しました」

 

「天狗の半妖もいたとか……」

 

「はい」

 

「ということは……曲江実継が生きていて、再び動き出したのかな?」

 

「その可能性は極めて高いかと思われます」

 

「ふむ、連中はどう動くかね?」

 

「そこまでは……すみません」

 

「……?」

 

 勇次は御剣が狂骨たちの狙いが一美であるのを伝えないことに首を傾げる。

 

「まあ、いいや。実継一派に関しては引き続き要警戒ってことで……」

 

「干支妖がまた動き出したという情報がありますが……?」

 

「流石は晃穂ちゃん、耳が早いね。山吹ちゃん……」

 

「実は今回、西日本の管区長たちが欠席なのは干支妖が絡んでいるようなのです」

 

「それは大変ね……」

 

 雅の呟きに光康が応える。

 

「心配だけど、今のところ救援要請などは出ていない。当面は西に任せておけば良いよ……それで次の議題だけど……えっと、『第五管区解体について』だっけ?」

 

「えっ⁉」

 

 光康から出た思わぬ発言に勇次は思わず声を上げる。

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