勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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勇者スバルとアヒルの呪い
1羽


 時は戦乱、場所はホロ・デ・ソーセージ大陸。

 

 老若男女種族を問わず、人々は最強の名声を求め剣(ソーセージ)を手に取り、血で血を洗う戦いを繰り広げていました。

 

 昨日の味方が今日の敵など日常茶飯事、不意打ち裏切りあたり前。それはまさに無秩序、まさに地獄の光景でした。

 

 しかしやがて人々は信頼できる仲間を作りチームを組み、個人個人の戦いの時代から己の所属するチームのランキングを競い合うチーム対抗の時代へと移っていきます。

 

 そして強豪チーム「スバ友」のリーダー・大空スバル、彼女こそこの物語の主人公なのでした。

 

  

◇  ◇  ◇

 

 

「「かんぱーい!」」

 

 ホロ・デ・ソーセージ大陸のとある村「アヒール村」の酒場で、ビールジョッキをかかげるムサくるしい男どもがムサくるしい声を張り上げます。

 

「乾杯っす!」

 

 それに合わせて高く上がる色白の細い腕、彼女のハスキーボイスは聞こえがよくて、野太い男どもに負けず劣らず酒場に響き渡ります。

 

 彼女の名前は大空スバル、前後逆にかぶったキャップ帽が目印の、父に舞元啓〇、母にしぐれう〇を持つチーム・スバ友のリーダーです。

 

「とうとうやりやしたねスバルさん!」

 

「このホロ・デ・ソーセージ大陸でスバルさんの名前を知らない剣士はいませんぜ!」

 

 酒をあおりスバルに絡む男たち。

 しかしスバルは嫌な顔一つせず「そうっすね、これもみんなのおかげっす」と返してから、ジョッキの中身をごくごく飲みます。

 ムサい男たちが飲んでいるのは度数の高いビールですが、スバルのそれはアルコールゼロのメロンソーダ。

 スバルはお酒が飲めません。

 

「さあ野郎ども! 今日は飲むぞ!」

 

 ムサい男どものなかでもひときわムサい男がテーブルに行儀悪く足をかけ、ほかのムサい男どもに呼びかけます。

 

「なんといっても今日は我らスバ友がランキング5に躍り出た、またとない素晴らしい日だ! スバルさんの実力が世界に認められた、俺たちスバ友にとって誉れ高き尊い日だ! 飲んで飲んで飲みまくって、この喜びに酔いしれるぞ!」

 

「「おおーっ!」」

 

 そして勢いを増す男どものどんちゃん騒ぎ。

 

「おおーっす」

 

 この場の主役はチームリーダーであるスバルのはずですが、スバルはお酒を受け付けない下戸のためなかなか勢いに乗れず苦笑します。

 それでもスバルは盛り上がる雰囲気に水を差すには気が引けて、通りかかった青白い肌のホールスタッフ女性にジョッキでメロンソーダのお代わりを頼み、皆に合わせて乾杯の掛け声を上げて飲み干すのでした。

 

 

  ◇  ◇  ◇

 

 

「先輩、先輩、スバル先輩、ああるしあのスバル先輩!」

 

 一方場面が切り替わり、ここは深い深い樹海の奥地、不気味な屋敷がそびえ立つところ。

 その屋敷の地下の底、薄暗くて湿っぽい居心地よしとは言い難いその場所で、片手に青紫光る水晶玉をのせながら、そのなかを覗き込みニタニタ笑う少女が一人。

 

「おめでとう! いや本当に祝ランキング5、大陸で五指に入る実力の公式認定、おめでとうございます! るしあは、スバル先輩がレジェンドソーセージ・ライトニングウィンナーの所有者になられるよりずっと前の頃から見守らせていただいていたのですが、それがなんというか、今度はこんな感動をさせていただいて、なんかもう、嬉しい! とにかく嬉しいです! いや、本当にめでたいなあ」

 

 薄い翡翠の髪色で頭の左右にお団子結んだボブカット、着ているものはクロアゲハ蝶を広げたようなドレスです。

 彼女、潤羽るしあはさきほどの感激の余韻にひたっているようで、ぶるぶると震えながら遠くのほうを見ています。

 しかし、しばらくしてゴホンゴホンと咳払いをし目を閉じて、それからゆっくり開けはじめ、

 

「機は熟した、大いなる運命の時が」

 

 そう声色を変えて呟いてから、今度はその言葉に酔いしれて震えます。

 

「スバル先輩、待っていてくださいね。今こそあなたをるしあのものにしてあげますから」

 

 そして誰もいない屋敷の地下で、るしあはまた一人で笑い出しました。

 

 

  ◇  ◇  ◇

 

 

 早くも夜になりました。

 

 スバ友たちが飲み食いした酒場は、二階が宿屋となっています。

 その宿屋の部屋は三つだけ、相部屋で泊まるにしてせいぜい六、七人がいいところです。

 しかし日中、これでもかと酒をあおったスバ友の男たちは最早各々の寝床に帰る力もないようで、仲間が予約した狭い部屋で八、九人がぎゅうぎゅう詰めになりながら鼾をかいていたり、もっとタチの悪い者は廊下や一階の酒場の床で横になっていたりしています。

 

 スバルはと言いますと、あらかじめ宿屋に一室予約しておいたためムサい男たちに寝床を提供させられる被害者となっていました。

 しかし彼女が横になっているベッドには、いくらムサいスバ友の男たちとはいえど一切手を付けようとしません。

 どれだけ無礼講で騒ごうともスバ友はスバルがリーダーのチームです。

 リーダーでありアイドルでもある彼女には常に最低限度のリスペクトが示されるのです。

 

「ぐがー、ぐがー」

 

「うう、スバルさん、スバルさん……」

 

「むにゃむにゃ、だ、駄目だスバルさん、そっちに行ったら、ア、アヒルに……、むにゃ」

 

「……。無理、寝れないっす」

 

 それでもスバ友たちのいびきと寝言がうるさくて、スバルはベッドの上で横になったままなかなか寝付けずにいました。

 

 そんな時、

 

『スバル先輩、スバル先輩』

 

 唐突に、どこからかスバルを呼ぶ女性の声が聞こえてきました。

 

 スバルは驚いて上体を起こします。

 そして耳を澄まします。

 しかし先の声は聞こえません。

 スバ友の寝言を聞き間違えたのか、とスバルは納得しようとしました。

 

『スバル先輩、聞こえますかスバル先輩』

 

 しかし今度は間違いなく聞こえました。

 スバルは返事をしようかどうか少しだけ考えてから「聞こえてるっす」と答えます。

 

『ああよかった』

 

「スバルに何か用っすか?」

 

『えっと、こんな夜更けにごめんなさい。でも、スバル先輩に大事なお話があって、その、少しでいいので外に出てきてもらってもいいですか?』

 

「今っすか?」

 

『大事なお話なのでぜひ。るしあはすぐそこで待っていますから』

 

「君、るしあって言うっすか?」

 

『あ、はい、るしあと申します。では外で待っていますのでどうか』

 

 それからプツンと音がして、通話が切れたように声がしなくなります。

 

 スバルは話だけならこのまま伝えてくれればいいのに思いましたが、何か面と向かわなくてはならない理由があるのだろうと考え直してベッドから降ります。

 それから床で寝るスバ友たちを踏まないように気を付けて歩き、階段を使って一階へ下り裏口から外へ出ました。

 

 外はひんやりとしていました。

 雲がなく透き通った夜空をたくさんの星がきらめいていて、地上をほのかに照らしていました。

 

「あの、ごめんなさいスバル先輩、急に呼び出してしまって」

 

 そんな夜空を見上げていたスバルに、すぐそばから声がかけられます。

 それはさきほど頭に響いていたものと同じ声でした。

 スバルはそちらへ振り向きます。

 

 声の主は夜の闇に溶け込むような黒いローブを羽織って、フードを目深にかぶっていました。

 

「君がスバルを呼んだっすか?」

 

「はい!」

 

 元気良く返事をしてから、彼女はいそいそとフードを下ろします。

 すると、きめの細かい翡翠色の髪が現れました。

 フードを下ろした拍子にその髪がなびき、星明りに照らされてうっすら白く光ります。

 スバルは思わず見惚れてしまいました。

 

「う、潤羽るしあです。あの、陰ながらいつも応援させてもらっています。スバル先輩のファンです。このたびはスバ友のランキング5へのランクイン、おめでとうございます!」

 

 言ってから、るしあはどこに隠し持っていたのでしょう花束を取り出してスバルに差し出してきます。

 

 スバルは「え? なんでスバルが君の先輩?」と聞き返したいのをぐっと飲みこんで、「うん、どうもありがとうっす」と花束を受け取りました。

 

「話っていうのはこれのことだったんすね」

 

「はい。こんなに夜遅くに迷惑かとも思ったのですが、るしあの都合がなかなか付かなかったし、やっぱり当日中にお渡ししたいと思って。ごめんなさい」

 

「いやすごく嬉しいっす。スバ友のみんな以外でスバルのファンがいてくれるなんて、全然知らなかったっすから」

 

「ほ、本当ですか? るしあ以外、誰も?」

 

「そうっすよ。こんなふうにお祝いしてもらったの、はじめてっす」

 

 スバルが答えると、るしあは目を細めて「ふふふ、ふふふふふ」と笑い出します。

 

「スバル先輩、実はるしあ、もう一つだけ大切なお話があるんです」

 

「なんすか?」

 

「スバル先輩……」

 

 スバルを呼びかけるるしあの目の奥が、すーっと黒く陰りだします。

 それに気づいたスバルは少し警戒を抱きながらも顔には出さず、「どうしたっすか?」と変わらぬ調子でるしあに聞きました。

 

「スバル先輩、るしあはスバル先輩を誰よりも深く愛しています。だからスバル先輩はるしあのものとなって、この先ずっと一緒にいてください」

 

 そうるしあが口にした直後でした。

 スバルが持つ花束の花々がけらけらと笑い出します。

 そしていきなり茎を伸ばし、ツルのようにしなりながらスバルに巻き付こうとしてきました。

 スバルは急いで花束を地面に投げ捨て、それとるしあから距離を取ります。

 

「なんのつもりっすか!」

 

「抵抗しないでくださいスバル先輩、るしあはスバル先輩を傷つけたいわけじゃないんです」

 

「傷つけたいわけじゃないのにこんなことするっすか!」

 

「持ち帰りやすいように身動きできなくしようとしただけなんです!」

 

 るしあは勢いよく言い返してから「はあ、はあ」と肩で息をします。

 

「でも、どうしても抵抗するというのなら強硬手段に出るしかないですね」

 

 るしあは右手をスバルに向けて突き出します。

 すると細く白いるしあの手先に、青白い光の玉が四つ五つ現れます。

 

「スバル先輩、ケガしないでくださいね!」

 

 叫んでから、るしあは投球するように手の周りで浮かぶ光の玉をスバルに向かって放ちました。

 

「ケガしないでください、っすか」

 

 一方スバルは呆れたようにため息をつきます。

 

「じゃあなんで攻撃してくるっすかね」

 

 るしあの放った光の玉はどんどん迫ってきますが、スバルは全く動じず避けようともしません。

 とうとう光玉が命中直前のところまでやってきます。

 そこでようやく彼女は動き出します。

 

 レッグバッグに手を伸ばし、そこから一本のフォークを取り出しました。

 




 スバルドダック(アヒルverスバル)のシュバル語は読み始めると疲れます。
 あえて読もうという方以外は、基本的にシュバシュバ喋った次行の(~)だけをお読みください。
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