勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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 スバルたちが右の洞窟へ入ってからしばらくして、今度ははあちゃまたちがトワの元にやってくるのが見えてきます。

 トワはまた口をへの字にして腕を組み始めます。

 

「大空スバルはどっちへ行ったの?」

 

 入り口前に着くや否や、はあちゃまがトワに話しかけました。

 トワはスバルたちにしたように「ん」と言って顎でしゃくります。

 ただし彼女が示した先はスバルたちに教えた右側ではなく、もう片方の左側です。つまりは行き止まりの道でした。

 

「念のために言っておくのだけど、嘘をついたらただじゃおかないわよ」

 

 先程のわための件があったからでしょう、はあちゃまは声にドスを利かせて釘を刺します。

 

「もう一度聞くわ。本当に左側でいいのね?」

 

「じゃあ信じなきゃいいだろ」

 

 トワは面倒くさそうに返しました。

 

「別に右でも左でも好きな方に行けよ。トワは止めたりしないからさ」

 

「……。わかったわ」

 

 はあちゃまはハートンたちに向き直ります。

 一方ハートンたちは暗い洞窟に入るとわかったからでしょう、はあちゃまがトワと喋っている間に手際よくカンテラに火をつけて灯りを作り終えていました。

 

「半数半数で二手に分かれるわよハートン」

 

 はあちゃまは目前にいたハートンからカンテラを分捕って指示を出します。

 

「半数は私と一緒に左へ、もう半数は右へ行きなさい。そしてあなた」

 

「ブブ?」

 

 彼女はカンテラを奪ったハートンに向きながら続けます。

 

「こいつを見張っておきなさい。いい? 絶対にこいつに背後を許すんじゃないわよ。それから少しでも妙な動きを見せたら構わず斬り殺しなさい」

 

「ブブー」

 

 指示を受けたハートンが頷きます。

 

「さあ行くわよ!」

 

 はあちゃまが率いる半数が左の洞窟へ、もう半数が右の洞窟へ入っていきます。

 取り残されたハートンとトワは彼女たちを見送りました。

 

 

  ◇  ◇  ◇

 

 

「はーあ。暇だ」

 

 はあちゃまたちが洞窟に入ってから少しして、トワが口元に手を当てながら退屈そうに欠伸します。

 

「ブブー!」

 

 すでにソーセージを出しているハートンが剣先をトワに向けながら何か言っています。

 

「はいはい」

 

 トワはハートンの喋っている言葉がわかるわけではありませんが、「動くな!」のようなことを言っているのだろうとは察しがつきます。

 

「わかってますって」

 

 彼女は適当に答えながら腕を組みなおしました。

 

 

  ◇  ◇  ◇

 

 

 またしばらく時間が経ちます。

 

「それにしてもさ、あんたたちも大変だよね。あんなやつにヘコヘコしなくちゃいけなくてさ」

 

 とうとう暇で暇で仕方なくなったのか、トワは夜空を見上げながら自分に剣を突きつけているハートンに話しかけます。

 

「トワだったら死にたくなるわマジで」

 

 言ってから自分で笑います。

 一方ハートンは無反応です。

 先程のような警告らしきことも言ってきません。

 

「?」

 

 トワは気になってハートンの方へ振り向きました。

 そこにハートンはいませんでした。

 あるのは萎んだ風船のように地面で平たくなったハートンの着ぐるみで、すでにそこから出てきていたはあちゃまが問答無用でトワに斬りかかってきます。

 

「……ッ」

 

 クリスタルサビロイで身体を上下に両断されたトワが地面に倒れました。

 

「なめた真似してくれるんじゃないわよ」

 

 無残に上下に別たれて動かなくなったトワを見下ろしながら、はあちゃまが吐き捨てるように言います。

 

「さっき私が気まぐれで獣人の羊女を見逃したのを知って、自分も大丈夫だろうって高を括ったのかしらねバカ女が。ざまあみなさいよ」

 

 はあちゃまは踵を返して右の洞窟へ向かおうとします。

 

「気まぐれ、ね」

 

 すると彼女の背後から死んだはずのトワの声がしました。

 

「それはトワのセリフだよ」

 

 はあちゃまは振り返ります。

 そして先程斬り伏せたトワの身体を見て、思わず自分の目を疑いました。

 人であったはずのトワの身体が何十匹というコウモリに姿を変えていき、それらの群れが夜空に羽ばたいて行くのです。

 それらを呆然の見上げるはあちゃまの方へ、群れの中からひときわ小さいコウモリが抜け出て向かってきました。

 そのコウモリははあちゃまを鬱陶しがらせたいようで、わざと彼女の顔の前で羽ばたいたり旋回したりしてあからさまな嫌がらせをします。

 

「なに、このちっこいの」

 

 はあちゃまは「ふう!」と息を吹きかけました。

 たったそれだけのことなのに、身体が小さすぎるためでしょうコウモリは飛行不安定に陥ってしまいます。

 ですがすぐに立て直し、コウモリはまたはあちゃまの目前の位置に戻ってきました。

 

「今回気まぐれを起こしてやったのはあんたじゃない、このトワ様よ。命拾いしたことを泣いて感謝しなさい」

 

 コウモリからトワの声が聞こえてきます。

 

「あんたはわためを斬らなかった。だから今回は特別に見逃してやるんだ。だが次は容赦しない、覚悟しておきな」

 

 言いたいことを言ってから、コウモリは群れへ合流しようと羽ばたいて行こうとします。

 はあちゃまはコウモリをペチンと叩き落としてから「ふん」と鼻で笑いました。

 

「くだらない」

 

「ブブー!」

 

 ちょうどその時、左側の洞窟を引き返してきたハートンたちが入り口まで戻ってきます。

 

「ハートン!」

 

 はあちゃまは彼らに振り返り呼びかけます。

 

「随分と時間を食わされたわ。急ぐわよ!」

 

「「ブブー!」」

 

 彼女はハートンたちとともに右の洞窟の中へ駆けていきました。

 

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