勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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 トワ、ロボ子対はあちゃまの、二対一の戦闘が始まります。

 はじめに動いたのはトワでした。

 

「はあ!」

 

 トワは大きく跳び上がり、着地と同時にはあちゃまめがけてキリタンポを縦一文字に振り下ろします。

 はあちゃまはそれを難なくかわして、剣を振りきったトワにクリスタルサビロイで斬りかかります。

 トワに避ける様子はありません。

 しかしはあちゃまが仕留めたと思った瞬間、トワはその身体を数十というコウモリに変えてしまいました。

 身体を斬り裂いたと思われたクリスタルサビロイはコウモリたちに避けられて、風切り音だけを残し空を斬ります。

 こうなると次に振り終わりを狙われるのははあちゃまの方で、隙を窺っていたロボ子がはあちゃまとの距離を詰めてハムを横なぎに振るいます。

 はあちゃまはクリスタルサビロイをしならせてハムの剣身にぶつけます。

 そうしてロボ子が振るうハムの剣速を弱めたところで半歩ほど下がり、ぎりぎりの距離を測ってハムの剣先をかわしてから、攻撃の標的をトワからロボ子に切り替え反撃に移ろうとします。

 するとはあちゃまの後方で、あちこちに飛んでいったコウモリが急に集まり人の形に身体を合わしトワの姿が現れます。

 トワはロボ子めがけて斬りかかろうとするはあちゃまを、背後から串刺しにしようとキリタンポを繰り出します。

 

「!」

 

 直前でそれに気づいたはあちゃまは、驚異的な瞬発力でもって真横に飛び込みトワの一突きをかわします。

 これではトワの突きがロボ子にあたって同士討ちとなりそうなものですが、トワもロボ子もそのあたりは心得たもので、まるで二人一組の剣舞でも見せられているかのような息の合ったコンビネーションを発揮して、トワがわずかに剣先を横にずらしロボ子が身体を踊るように捻るだけでこの問題を解決してしまいます。

 

「これは、思ったより面倒臭いわね」

 

 思わずはあちゃまが呟きます。

 好き勝手斬りかかってくるトワを絶妙にフォローして戦うロボ子も面倒ですが、やはり何と言っても悩ましいのはトワです。

 隙ありと思って斬っても無数のコウモリに分かれて避けられますし、ならば無視してロボ子から叩こうとしても、標的が自分から外れたとわかるや否や背後や死角から急所を狙って襲いかかって来るのでたまりません。

 さらには二人の息の合いようが神懸っていて、まるでテレパシーか何かで意思疎通しているかのように、はあちゃまが同士討ちさせようと小細工を仕掛けても逆に裏をかかれて窮地に追い込まれる始末です。

 そのため現状、優勢なのは明らかにロボ子とトワのタッグでした。

 流れを変えなければマズいと思いながら、はあちゃまはクリスタルサビロイをトワに振るいます。

 トワはまたもやコウモリに化けてそれを回避します。

 彼女が無数のコウモリとなって散るのを認めるや否や、はあちゃまは素早くロボ子の方へ駆けだしました。

 

「……ッ」

 

 はあちゃまの振り下ろす一撃をロボ子はハムで受け止めます。

 ロボ子はハムを持つ手に力を込めて、剣を押し込む強さをはあちゃまのクリスタルサビロイに合わせて拮抗させます。

 そうして鍔迫り合いに持ち込もうとしますが、一方のはあちゃまはすぐにクリスタルサビロイを引いてその状況になることを避けました。

 背後でコウモリたちが集まりかけていたからです。

 一度仕切り直したはあちゃまは、今度はやや威力を抑えた力加減でもってまたもやロボ子に攻めかかります。

 その攻め方は例えるならば、かつて白上フブキを逃がすために猫又おかゆが自分に仕掛けてきた攻撃方法に似ていて、相手を倒すと言うよりはとにかくちょっかいをかけることに重点を置いたような戦い方です。

 しかしそれでも上級剣士であるロボ子に対してはあちゃまは伝説級剣士、ロボ子とはあちゃまの打ち合いはようやく実力拮抗といった具合になります。

 一方で、そのような戦いとなってくるとトワの割り込む隙がなくなります。

 なぜかと言えばはあちゃまがロボ子に対して力を加減して戦いだしたのは、おそらくそうすることによってロボ子を相手にすると同時にトワの不意打ちを警戒する余力を維持するためだったからです。

 先程までは簡単に見つけられたはずの隙が全くなくなってしまったことに、トワも気づきました。

 ロボ子とはあちゃまが互角の打ち合いをしだします。

 そんななか自分だけが手持ち無沙汰にその戦いを見守ります。

 トワのコウモリたちはとうとう焦れるようにロボ子とはあちゃまの周囲をぐるぐると旋回しはじめました。

 するとはあちゃまが動き出します。

 唐突に、先程までの細々とした剣戟は何だったのかというくらい大きく剣を振りかざし、凄まじい勢いでもってロボ子に振り下ろしてきたのです。

 相手をしていたロボ子もさすがにびっくりしまして、後方に跳ねてその一振りをかわします。

 はあちゃまはブン! とクリスタルサビロイを大振りで空振りさせてから、続けざま逆袈裟でロボ子に斬りかかろうと一歩大きく踏み込みます。

 それを見たトワが動きました。

 トワははあちゃまの右後方に姿を現して、ロボ子に剣が届く前に敵の急所を貫こうとキリタンポを繰り出します。

 しかしそこで思わぬことが起こりました。

 ロボ子めがけて振り上げられたと思われていたクリスタルサビロイは、いつの間にか大きくしなりを入れられて360°剣身を捻らされており、背後から攻撃しようとするトワめがけて突っ込んできたのです。

 

「ぐッ!」

 

 その攻撃は焦れに焦れていたトワにとってまさに不意打ちでした。

 トワがコウモリに姿を変える暇さえ与えずに、クリスタルサビロイの剣先が彼女の胸元を貫きます。

 その一撃は致命傷でした。

 しなりによるクリスタルサビロイの突き自体の威力は大したものではありません。しかしそれがトワの攻撃に対するカウンターとして入ってしまったのです。

 

「う……ッ、うう……ッ」

 

 胸元にクリスタルサビロイを突き刺されたまま、トワが苦しそうに呻きます。

 

「なに? 私の狙いが屑鉄に向いてると思った?」

 

 そんなトワにはあちゃまが振り返り、嘲るように笑います。

 

「んなわけないでしょう。どう考えてもはじめに処理しとかなくちゃならないのは、ちょこまかと鬱陶しいあなたの方だからね」

 

「トワ!」

 

 ロボ子が叫びながらはあちゃまに斬りかかります。

 はあちゃまはトワからクリスタルサビロイを引き抜いてから後方に跳ね、その一振りをかわします。

 剣を引き抜かれたトワの胸元から鮮血が噴き出しました。

 

「くッ!」

 

 ロボ子は着ていたパーカーを急いで脱いでそれをトワの傷口へあてがいます。

 

「しっかりして! トワ!」

 

「ロボ子、先輩……」

 

「トワ! 急いでわためのところに行って、傷を治してもらうんだ!」

 

 指示するロボ子に、トワは首を振ります。

 

「ロボ子先輩一人じゃ、あいつに、勝てないし……」

 

「そんなことない! トワは何も心配しなくていいから!」

 

「優先順位、決めたじゃないですか。ロボ子、先輩……」

 

「?」

 

「一番優先すべきは、あの方の、使命。トワは、ここで少し休んで、すぐに回復して、またロボ子先輩と戦います……」

 

「な、なに言ってるのトワ!」

 

 ロボ子は叱るように言います。

 するとトワはそんなロボ子の右手首に右手を伸ばし、ぎゅっと握り込みます。

 ロボ子は手首にちくりとした痛みを覚えました。

 トワはロボ子に笑いかけます。

 

「トワは悪魔だから、並の剣士とは、回復力が違うんです……」

 

「バカ!」

 

「ロボ子先輩、トワのことはいいから、ロボ子先輩のすべきことを……」

 

 そこまで言って、トワはかくりと項垂れてしまいます。

 ロボ子の手首を掴んでいた手も、力を失って地面に落ちました。

 

「トワ!」

 

 もしや死んでしまったのか、背筋をゾッとさせながらロボ子はトワを揺すります。

 しかしそんなトワからすやすやと寝息が聞こえてきました。

 どうやらトワは自然治癒による体力回復を早めるために寝入ったようでした。

 ロボ子はほっと胸を撫で下ろしました。

 

「……」

 

 悪魔である自分は他の人間たちとは回復力が違うのだと言う彼女の言葉、おそらくそれは確かなのでしょう。

 しかしだからと言っても傷が深すぎます。

 ロボ子は己がどうすべきかしばし逡巡します。

 考えに考えて、彼女はゆっくり立ち上がりました。

 

「トワ。少しだけ待ってて」

 

 言ってからロボ子ははあちゃまに向き直りました。

 

「すぐに終わらせて、わためのところに連れて行ってあげるからね」

 

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