勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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 あくあから「たまには休んで気分転換したら?」と提案されたその日、彼女の助言に従ったのでしょうスバルたちは晩になっても酒場にやってきませんでした。

 

「なによあいつら、もう諦めたわけえ?」

 

 マリンは独り言を呟いてからお酒をあおります。

 マリンはお酒を飲むのが好きでした。

 かと言って、今のようにぽつんと座って飲む一人酒ではなく、航海を終えて帰港したあとに皆と飲む祝い酒が好きなのです。

 一味たちの「Ahoy! Ahoy!」という掛け声に応えジョッキに入ったアルコールを一気に飲み干します。

 立場は船長であるけれど、あまりかしこまって船長扱いされるのは窮屈で、酒の場になると一味の笑いをとるため一発芸なども披露していました。

 

 しかしその宴も今はなし、宝鐘海賊団は二年も前に解散しています。

 なのにマリンの耳元に、まだ一味たちの『Ahoy! Ahoy!』という掛け声が聞こえてきます。

 

「まだ酒が足りん!」

 

 マリンはぐいっとジョッキをあおりました。

 ぐでんぐでんに酔わないと、彼らの声が耳から離れないのです。

 

『俺たちは無敵の宝鐘海賊団!』

 

「んぐ、んぐ、んぐ! ぷはあ!」

 

『見つけましょう船長、伝説のエルドラド!』

 

「うるせええええ!」

 

 マリンは自分以外客のいない店内で大声を張り上げます。

 空ジョッキを拭いていた店主が驚いて振り向きました。

 

「どうしたんですか、船長」

 

 店主が心配して尋ねても、マリンは「うるせえええ!」としか言いません。

 彼は「はあ」とため息ついてからまた仕事に戻ろうとします。

 すると、

 

「なにが海賊団! なにがエルドラド!」

 

 急にマリンが、天井にジョッキを突き上げながら怒鳴りはじめました。

 

「船長?」

 

 いきなりどうしたのだろうかと思いながらも、店長はマリンをなだめようと手を伸ばそうとします。

 しかし、

 

「そのために何人の夢を奪った! 何人の命を奪った! ばかたれえええ!」

 

 マリンのその叫びを聞いてしまい、ぴたりと止まりました。

 

「船長……」

 

 店主は肩を震わせはじめます。

 一方、酔った勢いのマリンの叫びは止まりません。

 

「みんなの善意に甘えて! のうのうと毎日酒を飲み明かして! 船長が海へ連れ出さなければ、あんなことには、あんなことにはならなかったのに! ううう、ううううう!」

 

 大声を上げたかと思えば今度は急に泣き始めました。

 

「船長!」

 

 居ても立ってもいられなくなったというふうで、店主はポケットから緋色の布のような物を取り出し握りしめながら「しっかりしてください船長!」と呼びかけます。

 

「俺たち一味は、元一味は、誰も船長が悪いだなんて思ってなんか」

 

「うるせええええ!」

 

 マリンは店主の言葉を遮るように怒鳴りながら、彼にジョッキを振り回しました。

 店主は慌ててそれを避けます。

 

「仲間がいてこその大航海、生きて帰ってこその宝さがし! 未練がましいんじゃあああ、宝鐘マリンんんんん!」

 

 大声をあげてからマリンはカウンターテーブルに突っ伏します。

 そしてそのままぐうぐうを寝息を立てて眠ってしまいました。

 

「船長?」

 

 またジョッキを振り回されないかと警戒しながら店主が呼びかけるものの、本当に眠ってしまったようで「むにゃむにゃ」としか返ってきません。

 店主はため息をついてから表口を閉め、外側のドアノブに「Close」の札をかけます。

 それから店内をてきぱきと片付け、船長が突っ伏しているカウンター上の明かりを残して消灯します。

 

「船長、さすがにそんな薄着だと風邪をひきますよ」

 

 ゆすって呼びかけてもやはり「むにゃむにゃ」しか返ってきません。

 仕方なく店主は二階の住居スペースからコートを持ってきてマリンに羽織らせてから、ひょいと彼女の身体をおぶりました。

 店の裏口を使って外へ出て、そのままマリンの泊まっている宿屋まで向かいます。

 こうして彼は今晩も、毎晩そうしているようにマリンを宿まで送り届けるのでした。

 




 スバルドダック(アヒルverスバル)のシュバル語は読み始めると疲れます。
 あえて読もうという方以外は、基本的にシュバシュバ喋った次行の(~)だけをお読みください。
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