勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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 スバルたち三人とわためが塔を出てからしばらくしてのことです。

 

「ブブー!」

 

 彼女たちはすれ違ったハートンに呼び止められました。

 もちろんキアラ、るしあ、わための三人は着ぐるみを着ていましたし、スバルもしっかり隠れていました。

 にもかかわらず、そのハートンは彼女たちを呼び止めたのです。

 

「バ、バレたのデショウか」

 

「わからないです」

 

 キアラとるしあが彼に聞こえない声量で喋ります。

 そうしている間にも二人、三人とハートンたちが集まってきて、一人目と同様嘗め回すようにるしあたちの着ぐるみを見始めます。

 それから「ブーブー」「ブブーブー」と話しだしました。

 

「……。強行突破しマスか?」

 

 キアラがそっとレッグバッグに手を伸ばしながら聞きます。

 

「待って」

 

 それをわためが止めました。

 

「『変わった素材の着ぐるみですな』。『柔らかそうでもあり、温かそうでもある』。『羨ましいですなあ』」

 

 そして何やらぶつぶつと呟きだします。

 

「ど、どうしたんですかわためさん。急に独り言を喋り出して」

 

 るしあが気味悪そうにそんなわためを見ながら聞きました。

 

「独りごとじゃないよ」

 

 わためは心外そうにムッとした調子で答えます。

 

「ハートンたちの会話を通訳してあげてるのに、ひどいなあ」

 

「彼らの言葉がわかるのデスか!」

 

 思わず大声を出してしまったキアラにハートンたちの視線が集まります。

 キアラは「ブーブーブー」と適当にブーブー言って誤魔化しました。

 

「うん。彼らがやってきてから二年も経つんだもの。会話くらいわね」

 

「シュバルシュバシュバシュバシュバシュバルシュバシュババシュバル」

(会話でしか存在しないだろあんな言語)

 

「聞いてる感じ怪しまれてるわけじゃなくて、この着ぐるみの素材が珍しいから興味を持って集まってるみたい。見世物になっちゃってるんだ」

 

「ど、どうするんですか」

 

「強行突破デショウか」

 

「大丈夫。ここはわために任せて」

 

 言うなりわためは一歩前に出ました。

 

「ブーブブブブーブ」

(ウールであります)

 

 彼女はハートンの言葉を話し始めました。

 

「ブブ、ブーブブー」

(なに、ウールとな)

 

「ブーブブブーブ。ブブーブーブブーブブブーブブブーブブブー、ブブーブーブブーブブーブーブブーブブーブブ」

(そうであります。断熱性に優れて冬に温かく、通気性も高いので夏に涼しいのであります)

 

「ブブー。ブブ、ブーブーブブブーブブーブ」

(なんと。して、どのように入手したのか)

 

「ブーブブ―ブブーブーブ、ブーブブブブブーブブー」

(申し訳ありませんが、極秘中の極秘ゆえ)

 

「ブーブブブーブ」

(そこをなんとか)

 

「ブーブブーブ、ブーブブブブーブブブブーブーブブブーブーブーブブブーブーブブーブ」

(であるならば、一着につきポテチ一ヶ月分でわたくしが手配いたしましょう)

 

「……ブーブブーブブブブブーブブー。ブーブブブーブブーブ?」

(……それはふっかけ過ぎではないか。三週間分でどうだ?)

 

「ブーブーブブーブブー。ブブーブブブブーブーブブブ」

(無理にとは言いません。この話はなかったことに)

 

「ブ、ブブ! ブーブブ。ブーブーブブーブブーブブー」

(ま、待て! わかった。一ヶ月分で手を打とう)

 

「ブブブーブブブーブブーブブブブブーブ。ブーブーブーブブブーブブブブーブブブブーブブ」

(では後ほどブツを持って例の場所へ。あいにくわたくし共は今急いでいますゆえ)

 

「ブブブーブブ」

(あいわかった)

 

 会話が終わるや否や、るしあたちを取り巻いていたハートンたちが一斉に道を開けてくれます。

 

「さあ行きましょう」

 

 わためが颯爽と歩きだします。

 

「す、すごいデスね」

 

 わための隣に並んだキアラが、ちらりと後ろを見てから彼女に話しかけました。

 

「野次馬一人ついてくる様子がありマセン。一体どんな交渉をしたのデスかわためさん」

 

 尋ねるキアラにわためはフッとニヒルに笑います。

 それから大空を見上げて「なに、大したことじゃないよ」と言いました。

 

 

  ◇  ◇  ◇

 

 

 わためがスバルたちを案内したのは彼女と初めて会った森の道の岐路から少し離れたところにある丸太小屋でした。

 小屋は馬小屋と隣接しており、わためはハートンの着ぐるみを脱いでからその馬小屋の戸をあけて中に呼びかけます。

 

「ダチョウさん。キアラを連れて来たよ」

 

 すると馬小屋内からタタタタタと駆け足の音が聞こえてきて、中からフェニックスが飛び出してきました。

 外に出たフェニックスは忙しなくあたりを見回して誰かを探します。

 

「フェニックス……」

 

 キアラはそんなフェニックスの愛らしさに目の奥が熱くなります。

 

「フェニックス。迎えが遅くなって悪かったな。いい子にしてたか」

 

 ハートンの着ぐるみを脱ぎ落してから、キアラはフェニックスに呼びかけました。

 フェニックスはキアラの声に振り返り、彼女の姿を認めるや否や駆け出してきます。

 そしてキアラに突撃するのですが、キアラはキアラでその衝撃を踏ん張って受け止めてから彼の背中を撫でてやりました。

 

「随分とたくましくなったなフェニックス。私にとってはたったの数時間だったがおまえにとっては二年という月日。当然か」

 

 話しかけるキアラにフェニックスはぽろぽろと泣き出します。

 

「泣くなバカ者。誇り高きアヒージョたるものこんなことでいちいち涙を見せるんじゃない。もっとシャキッとしないか」

 

 キアラに叱責されたフェニックスは素直に頷いて泣き止みます。

 キアラは彼に「よし」と言ってやってからわために向き直りました。

 

「わためさん。改めて、フェニックスの面倒をこれまで見ていただきありがとうございマシタ」

 

「ううん。いいんだよ」

 

 わためは首を振って答えます。

 

「それよりもっとダチョウさんに優しくしてあげて。彼、寂しいのを我慢しながらずっとあなたたちの帰りを待っていたんだから」

 

「いえ。甘やかしすぎるのはよくありマセンので」

 

 キアラは「な」とフェニックスに振り返って言います。

 フェニックスはまたこくりと頷きました。

 

「まあわためは、あなたと彼がそれで良いと言うなら別に良いんだけど」

 

 などとぶつぶつ言いながら、わためはフェニックスの側までやってきて頭を撫でてやったりします。

 

「それでるしあさん、スバルせんぱい」

 

 わためとフェニックスの方をしばらく見ていたキアラが、スバルとるしあに向き直って話しかけます。

 

「これからどうしマショウ。はあちゃまが塔の最上階から降りてこないうちにここから離れるのはもちろんデスが、その行き先などについて」

 

「シュバ、シュバルバシュバルルバシュバアバシュバルシュバルバ。シュバアバシュバルシュバルルシュバルルシュバルルバ、シュバルルバシュババシュバルルシュバシュバルシュバルルシュバルシュバルルシュバ」

(まあ、ふつうに考えてフレアのところじゃないか。フレアに事の次第を教えてやりたいし、まだいるかどうかわからないがシオンのやつにも礼を言いたいしな)

 

「とりまフレアさんのところへ向かおうと仰っています」

 

「そうデスね」

 

 頷いてからキアラはまたフェニックスとわための方に振り返ります。

 そして名残惜しそうにフェニックスを撫でているわために、

 

「あの、わためさん。そろそろ出発しようかと思っていマシて」

 

 と、気まずそうに話しかけます。

 

「うん」

 

 わためは小さく頷きます。

 

「元気でね。ダチョウさん」

 

 耳元でそう言ってからギュッと抱きしめて、彼女はフェニックスから離れました。

 

「たあ!」

 

 キアラがかけ声とともにフェニックスに騎乗します。

 それからスバルを抱えたるしあを引き上げました。

 

「それではわためさん。本当にありがとうございマシタ」

 

「他の皆さんにもお世話になったとお伝えください」

 

「シュババ!」

(じゃあな!)

 

 キアラ、るしあ、スバルがそれぞれわために別れを言います。

 

「うん」

 

 わためは頷きます。

 それから小さく手を振って「ばいばい」と言いました。

 

「走れエ! フェニックス!」

 

 スバルたちを乗せたフェニックスが地面を蹴って駆けていきます。

 わためはしばらくその後ろ姿を眺めていました。

 

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