勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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勇者スバルと最終決戦
123羽


 スバルたちが時の塔を降りてから二週間ほど経ちました。

 

「平和ペコなあ」

 

 兎田ぺこらはぺこらビル最上階の社長室で紅茶を片手にぺこらタウンを見下ろしながら、そんなことを口にします。

 とは言ってもこうして優雅なティータイムを満喫しているのはぺこら一人で、ウサダ開発社員の野ウサギたちは忙しなくタウンを走り回っています。

 

「あ。紅茶が切れたペコ」

 

 ぺこらは内線の受話器を手に取ります。

 

「へいムーナ」

 

『はいシャチョー』

 

「悪いけど紅茶が切れたか新しいのをティーポットに入れて持ってきてほしいペコ。わかってると思うけど茶葉を蒸らす時間とお湯の温度は気を付けるペコよ」

 

『はいシャチョー』

 

「ああそれから、茶菓子もなくなりそうだからついでに持ってきてほしいペコ」

 

『はいシャチョー』

 

 ぺこらは通話を切ります。

 

「これでよしっと」

 

 しばらくしてから社長室のドアがノックされました。

 

「ムーナか。入るペコ」

 

「はいシャチョー」

 

 ムーナがティーセットを持って入ってきました。

 彼女は慣れた所作で紅茶をティーカップに注ぎ、ぺこらの手前に置きます。

 

「ありがとうペコ」

 

 礼を言ってから、ぺこらは一口含みました。

 

「うまいペコ」

 

「……」

 

 ムーナは嬉しそうにはにかみます。

 

「なあムーナ」

 

「はいシャチョー」

 

「平和ぺこなあ。ところで平和とは何なのか、おまえわかるペコか?」

 

「……」

 

 唐突にそんな問いかけをするぺこらに、ムーナは一瞬だけ考えます。

 

「平和とハ」

 

 それから彼女は滔々と喋りだしました。

 

「やすらかニ和らぐこと、穏やかデ変わりノないこと。もしくハ戦争ガなく世ガ安穏であることですシャチョー」

 

「そんな広辞苑みたいな回答求めてないペコ。いいかムーナ。平和とは皆が教養ある遊び、つまり詩句を吟ずる余裕がある世の中ということペコ。ぺこらがポエムを作ること、これすなわち平和ペコ。覚えておくペコ」

 

「はいシャチョー」

 

「ではここでまた一つ、ぺこらがホロ・デ・ソーセージ大陸の歴史に残る名ポエムを作ってしまいましょうかペコ。ムーナ、口述筆記頼むペコ」

 

「はいシャチョー」

 

 ムーナがペンとメモを準備します。

 その間ぺこらは「あっはーん! あっはーん!」と独特のチューニングをし出します。

 

「シャチョー」

 

「お。準備できたペコか」

 

「はい」

 

「いくペコよ」

 

 ぺこらはガラス張りの壁越しに明後日を眺めながら口を開きます。

 

「『海は広いな、大きいな。月は昇るし、日は沈む』」

 

 それから少し間を開けて「『海は沈む』」と続けた時でした。

 ガシャーン! と、外から何かが飛んできてガラス張りの壁を突き破り社長室に入ってきます。

 

「ぺ、ペコー!」

 

 ぺこらは思わず大声を上げてソファーの後ろに隠れます。

 

「ぬいぐるみ?」

 

 投げ込まれたものを見たルーナが不思議そうに呟きました。

 それは確かに等身大のぬいぐるみのように見えました。

 しかし正確にはぬいぐるみではなく着ぐるみ、ハートンの制服である黄豚の着ぐるみでした。

 そしてその着ぐるみの赤い紐がほどけだし、中から女性が現れます。

 

「お初にお目にかかります兎田ぺこら社長」

 

 出てきたのははあちゃまでした。

 

「お会いできて光栄ですわ」

 

 そう言ってから、はあちゃまは満面の笑みでぺこらに微笑みかけます。

 

「ペコおおお!」

 

 ぺこらの叫び声がぺこらタウンに響き渡りました。

 

 

  ◇  ◇  ◇

 

 

 ぺこらが叫んでから数日後。

 スバルたちはフレアの館に留まっていました。

 時の塔からフレアの館に戻ったスバルたちはフレアとホロファイブの四人に事の次第を話しました。ちなみに桐生ココと紫咲シオンはすでに館にいませんでした。

 話しを聞いたフレアは懐かしそうな顔をしてから、スバルたちを労わってしばらく館で休んでいくようにと言って、スバルたちも断る理由がなかったのでその言葉に甘えることにしたのです。

 そうして彼女たちが久しぶりにゆっくりとくつろいでいた時です。

 

「大変だにぇ!」

 

 さくらみこが慌ただしく館に駆け込んできました。

 

「どうしたんですか魔王様」

 

 ポルカが彼女に尋ねます。

 

「兎田が! 兎田が!」

 

「ぺこら社長がどうしたんですか」

 

「みこの魔王城に連れ去られたにぇ!」

 

「……。えっと、魔王様がぺこら社長を連れ去ったんですか?」

 

「んなわけあるか! そうじゃなくて、みこの魔王城が乗っ取られて、そこに兎田が連れ去られてしまったんだにぇ!」

 

「無茶苦茶ですね。誰がそんなこと」

 

「はあちゃまって言ってたにぇ!」

 

 はあちゃまという名前を聞いて、廊下から会話を盗み聞きしていた皆がみこの側に集まりだします。

 

「ポルポル! みこ、もうどうしていいかわからなくて! ポルポル!」

 

 みこはポルカに縋りつきながら泣き出してしまいます。

 ポルカは屈んでそんな彼女の頭を撫でてあげました。

 

「シュバルバシュババ」

(行くしかねえな)

 

「ですねスバル先輩。行きましょう」

 

 スバルたちとフレア、ホロファイブの面々は頷き合いました。

 

 

  ◇  ◇  ◇

 

 

 皆で魔王城に向かいたいところですが、館のなかを空にするわけにはいきません。

 しかもラミィは館から出てくるのをはあちゃまが狙っているのですから、外に出るのはまずいと言うことになり、ホロファイブのメンバーが留守番を任されることになりました。

 ただしポルカだけはそれでも一緒に行きたいと言い出し、さらに意外なことにフレアが今回は自分も同行させてほしいと頼んできたので、ラミィ、ねね、ぼたんを除くメンバーで魔王城に向かうことになりました。

 

「えっと、ポルカの気のせいでしょうか魔王様」

 

 そして魔王城の門前に着いたスバルたちですが、ポルカが苦笑しながらみこに聞きます。

 

「魔王城、一回り大きくなってませんか?」

 

「気のせいじゃないにぇポルポル」

 

 みこは首を振って答えます。

 

「ムーナが増築させたんだにぇ。兎田を人質に取られて、やむを得なくさせられてるんだと思うんだにぇ」

 

「ムーナさんも魔王城に囚われているのですか?」

 

 るしあが尋ねます。

 

「ううん。近くに作業場があって、そこでいろいろ作らされているみたいだにぇ」

 

「とにかくぺこら社長を救出しマショウ!」

 

 キアラが扉に手をかけて開けようとします。

 しかし案の定、施錠されていてびくともしません。

 

「皆さん、離れていてください」

 

 キアラはフォークを振るってチュロスを出しました。

 

「はあ!」

 

 そしてかけ声とともに扉に切りかかります。

 ソセレ合金という例外を除きソーセージは最も硬い物質です。

 普通の扉であれば切られるなり突き破られるなりして壊れるはずです。

 しかし、

 

「なに!」

 

 目の前にある魔王城の扉はびくともせず、逆に切りかかったキアラのチュロスが弾かれました。

 

「バカな!」

 

 ソーセージが硬度負けした事実に、キアラは信じられないとばかりに声を上げます。

 

「無理なんだにぇ」

 

 みこがぼそりと言います。

 

「みこも魔王城から追い出された後に兎田を助け出してやろうと思って、おまえと同じようにぶっ叩いてみたんだ。でもなんでか全然壊れないんだにぇ」

 

「そんな」

 

 ポルカも中級剣シシカバブを出して切りかかろうとします。

 

「やめとけポルカ」

 

 それをフレアが止めました。

 

「師匠?」

 

「……」

 

 フレアは扉の前にきてから、それを触ったり何度か叩いたりしはじめます。

 かと思えば同じことを城壁にもやりだして、城の周囲をぐるりと一周してから戻ってきました。

 

「ソーセージで壊そうとしても無駄だ」

 

「どうしてなんですか師匠」

 

「信じがたいことだが、この扉と城壁はすべてソセレ合金でコーティングされている」

 

「「ええ!」」

 

その場の全員が驚きの声をあげます。

 

「シュバルババシュバ」

(やべえだろそれ)

 

「そうだな」

 

 フレアは頷きます。

 

「とんでもない科学力だ。あたし以外でこんなことができるやつは」

 

「ムーナだにぇ!」

 

 みこがフレアの言葉を遮り声を上げます。

 

「みこが魔王城から追い出されて数日しか経っていないのにこんなすんごいことできるのなんて、ムーナしかいないにぇ!」

 

「その通りだ。あたしを除いてこんなことができるやつは、彼女しかいない」

 

「シュバルバシュバルバシュバシュバ!」

(ムーナのところに行くシュバ!)

 

「みこさん。ムーナさんがいるという作業場に案内してください」

 

「わかったにぇ!」

 

 スバルの言葉を伝えるるしあにみこが頷きました。

 

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