勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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 ムーナと会ってから数日後のこと、

 

『はあちゃまっちゃまー!』

 

 ホロ・デ・ソーセージ大陸にはあちゃまの声が響き渡ります。

 

「シュババシュババ」

(なんだなんだ)

 

 いきなり聞こえてくるはあちゃまの声に、スバルたちは館の外に出ます。

 しかしはあちゃまの姿はありません。

 その代わり館のすぐ近くにハートンが立っていました。

 彼の格好は普段とはやや異なっており、頭に黒い竜の被り物をして、紫色のマントを羽織っています。

 

「ああ!」

 

 それを見たみこが大声を上げました。

 

「それみこのドラゴンヘッド! エリートラ! おまえなに勝手に装着してるにぇ!」

 

 みこが怒鳴りながらハートンに飛びかかります。

 しかし彼はエリートラを靡かせてスーッと大空に飛翔してかわし、また少し離れた位置に着地してからそんなみこをじっと見てきます。

 

「こ、この! おちょくってからに!」

 

 みこは悔しげに地団駄を踏みました。

 

「……。魔王様、あれ」

 

 ポルカがそんなみこに呼びかけて空を指さします。

 

「んあ?」

 

 みこは不機嫌そうにその指さす先を目で追って、「ええええ!」とまた叫びました。

 彼女たちの頭上ではドラゴンヘッドとエリートラを装着したハートンたちが晴天の空を飛び交っていたのです。

 

「な、なんだにぇこれ! なんであんなたくさんのドラゴンヘッドとエリートラが!」

 

「量産させたんでしょうね。ムーナに命令して」

 

 ポルカが答えた時です。

 

『ホロ・デ・ソーセージ大陸および西の孤島のレジェンド所有者に告げる。私ははあちゃま、クリスタルサビロイの所有者よ』

 

 みこを見つめるハートンのドラゴンヘッドから、はあちゃまのマイク音声が聞こえてきます。

 

「みこのドラゴンヘッドに変なオプション付けるんじゃないにぇ!」

 

「でもドラゴンヘッドもエリートラも、魔王様よりずっと有効活用していますね」

 

「なんだと! もう一遍言ってみろポルポル! 減給するぞ!」

 

「なんでもありません! 魔王様が一番でございます! 魔王様しか勝たん!」

 

「ふむ。わかってるならいいにぇ」

 

 みこは満足そうに頷きました。

 

「二人とも静かにしてください。はあちゃまが何を喋っているのか聞こえません」

 

 るしあがポルカとみこに注意します。

 

「あ。はい。すいません」

 

「ごめんにぇ」

 

 二人は素直に謝って黙りました。

 

『単刀直入に言うわ。大陸と孤島に残っている六人のレジェンド所有者、出てきて私と勝負しなさい。そのためにふさわしいステージを用意しているの。あなたたちに選択肢はないわ。もしも拒むというならば、この大陸――』

 

『ペコー! 助けてくれペコー!』

 

 はあちゃまの話を遮るようにぺこらの声が聞こえます。

 

『ちょっと! 声が入るじゃない! 大人しくしてなさいこのマロうさぎ! この! この!』

 

『ぺ、ペコ! ペコお! ぺこ虐はやめるペコ!』

 

「兎田!」

 

 みこが叫びます。

 

『えっと、なんだっけ。ああそうそう、今から一週間後の正午に大陸中部の魔王城っていう建物に必ず来なさい。もしも拒否したら大陸全土を暗雲で包み込んで作物一つ育たない荒れ地に変えてやるからね!』

 

 それだけ言って、はあちゃまの音声がブツンと切れます。

 地面に立っていたハートンもスーッとどこかへ飛び立ってしまいました。

 

「え! 終わりですか!」

 

 るしあが思わず声を上げます。

 

「シュバルバ」

(雑だな)

 

 呆れたようにスバルも呟きました。

 

「これは大変なことになったな」

 

 フレアがそんな二人に話しかけます。

 

「そうですね。大陸の未来をかけた大決戦が一週間後に起きてしまうなんて」

 

「そっちも大変なんだが、それ以前に目下の問題として厄介なことができてしまっただろ」

 

「厄介なこと?」

 

 るしあが首を傾げます。

 

「おいおいさっきの雑な通告を聞いてただろ」

 

 フレアは苦笑して続けます。

 

「あたしたちはいいよ。はあちゃまがどういった人間なのか知ってるし、デーモン・みこ・ソウルで世界が大変なことになり得るっていうことも理解してる。だから彼女の通告に従わなくちゃいけないってわかる。だけど事情を知らないレジェンド所有者があんな放送を聞いて真剣に取り合うかどうか、はなはだ疑問だぞ。『変なヤツがなんか言ってる』程度に捉えて無視してもおかしくない」

 

「確かにそうですね」

 

「そのせいで『呼び出しに応じなかった』とかなんとか逆上されて、万が一その場の勢いでデーモン・みこ・ソウルを稼働させられたりしたらシャレにならんだろ」

 

「……。シュバルシュバルルシュバシュバルババ。シュバルルシュバルバ」

(……。残り六人って言ってたな。レジェンド所有者)

 

「おまえとラミィ、それから桐生ココ。あと誰だ?」

 

「ゲーマーズの白上フブキさんと宝鐘海賊団の船長、宝鐘マリンさんです。最後の一人はバーニング・サラミの所有者ですが、るしあたちもまだ会ってません」

 

「その一人は仕方ないとして、残りの二人は連絡取れそうなのか?」

 

「どちらもなかなか捕まらない、みたいなことをはあちゃまが塔で言っていました。ただフブキさんははあちゃまと一回戦っているので、先の通告を聞いていたら真剣に受け取ってきっと来てくれると思います」

 

「宝鐘マリンの方は?」

 

「寄港先をメードという港町に決めているらしいのですが、航海に出てからあまり戻ってないみたいです」

 

「そうか」

 

 フレアはため息をつきます。

 

「とにかく宝鐘マリンの行きつけの酒場や宿場に、はあちゃまの通告についての補足を手紙にして出してみるか。宝鐘マリンが帰ってきたら渡すように頼んでな。何もしないよりはましだろう」

 

「あ。それでしたらるしあが書きます。酒場も宿場も知っていますし、船長と親しいメードの市長がいるんです。彼女のところにも出しておこうと思います」

 

「任せた」

 

 話しがまとまったところでスバルたちは館のなかへ戻ろうとします。

 

「でも変だよね」

 

 そんなスバルたちと一緒に外に出ていたねねが呟きます。

 

「なにが変なのねねちゃん」

 

 ラミィが尋ねました。

 

「だってみんなはあちゃまに好き放題されていい迷惑してるのに、そんなやつの尻拭いでまた苦労してるんだもん。変じゃん」

 

「あ、こらねねち! それは思っても口にするんじゃない!」

 

 ポルカが注意しますが手遅れで、

 

「シュバルババシュバルシュバ」

(本当にそうだよな)

 

 スバルは憂鬱げに重いため息をつきました。

 

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