勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~ 作:はばたくアヒル
マリンやアキロゼが魔王城前にやってきてからしばらくして、
「あ、いた! るしあー!」
少し離れたところからるしあを呼ぶ声がしました。
「?」
思わず振り返るるしあは目を丸くします。
「ちょっ、えええ! みんな何で来てるのよ!」
そこには馬に乗ってこちらへ向かってくるメルとあやめ、ちょこの姿がありました。
「ひどいですわるしあ様。せっかくの再会だというのに、るしあ様はわたくしたちに会いたくなかったのですか」
門前までやってきて馬を降りたちょこが寂しそうに言います。
「そんなこと言ってないじゃない。るしあが言っているのはホロ・デ・ソーセージ大陸の命運がかかったこの戦場に、どうしてレジェンド所有者でなければ剣士ですらないあなたたちが来てるのかってこと!」
「るしあ。そのセリフそのままあなたにブーメランなこと気づいてる?」
呆れたようにそう口にするのはメルです。
「るしあはいいのよ! スバル先輩の通訳として同伴しているんだから!」
「え。そうだったのデスか」
「通訳のためだけに来てるって言うなら、あたしがいるから事足りてるんだけどな」
ぼそぼそと呟くキアラとフレアを、るしあはキッと睨みつけて黙らせます。
「ほらね。そんなことだろうと思った」
メルは「ふふん」と鼻を鳴らしました。
るしあは「なにがわかったって?」と彼女に突っかかります。
「まあまあ喧嘩は止す余」
そんなるしあとメル双方をあやすように、あやめが間に入りました。
「メルもちょこ先生も心配だったん余な。でもるしあの立場に立ってもう少し申し訳なさそうにしても良いと思う余。それにるしあ、気持ちはわかるが来てしまったものはもう仕方ない余。今回だけは大目に見てやろう余」
「どの口がそれを言う!」
するとるしあの矛先が今度はあやめに向きます。
「るしあはあやめにも言っているのよ!」
「余にも?」
あやめはびっくりしたように目を瞬かせました。
「なぜ余。余は剣士であるし、スキルを失ったとは言えれっきとしたレジェンド所有者。はあちゃまと残りのレジェンド所有者の決戦を直に見届けたいと思って何が変なの余」
素でそう問いかけるあやめに、メルとちょこが「そうだそうだ」と加勢します。
一方メルとちょこには威勢よく言い返していたるしあでしたが、あやめの言っていることは至極真っ当だと感じたのか「くうう」と悔しそうに呻いて顔を顰めることしかできていません。
少ししてから、るしあは諦めたようにため息をつきました。
「もう、わかったわよ。仕方ないな」
そう言って、あやめたちを許可しました。
「みんな。るしあにちゃんと礼を言う余」
「るしあ。ありがとー」
「るしあ様。ありがとうございますわ」
「ああもう! そういうおママゴトみたいなことするからいて欲しくないのに! スバル先輩たちの前で子ども扱いしないでよ! ていうかるしあが反対しようがどうしようが、無視して勝手にいればいいじゃない! 別にるしあに許可を取らなくちゃいけないわけじゃないんだからさ!」
「そんなことない余。みんなで仲良くしていたいじゃないか余」
けらけら笑いながらあやめが右手でるしあの肩を軽く叩きます。
「……」
そうされて、るしあはあることにハッと気づきます。
彼女は思わずあやめの手を掴んでまじまじと見つめだしました。
「ど、どうした余」
あやめがやや困惑しながら聞きます。
「手」
「手?」
あやめは首を傾げてから、るしあの掴んでいる自分の右手を一緒になって見ました。
「あのなるしあ。余はトイレに入ったあとちゃんと手を洗ってる余」
「そうじゃない」
るしあは視線を上げて、今度はあやめの顔を真っすぐに見ました。
「手はもう大丈夫なの? はあちゃまに斬り落とされたんでしょ」
るしあが聞くと「ああ。そのことか」とあやめは答えます。
それからちょこの方を振り向いて、
「ちょこ先生。何もそんなことまで手紙に書かなくても良いのに余」
と、苦笑しながら言いました。
「わたくしじゃありませんわ」
ちょこは首を振ります。
「わたくしがるしあ様をいたずらに心配させるような内容を書くはずありませんわ。それにもう何十通と書いているのに相変わらず返事がなしのつぶて。一言で良いので返信くださいませるしあ様」
「どうせるしあの館宛で送ってるんでしょうが。それにここ二年間はそれどころじゃなかったもん仕方ないじゃん」
「じゃあどうして余の手のことを知ってる余」
「そんなことどうでもいいでしょ」
るしあはぐいっとあやめの手を顔の前に持っていきます。
「もう手は大丈夫なの?」
「問題ない余」
あやめは答えてから手を握り開きしてみせます。
「なんならジャンケンしてやってもいい余」
「るしあはそういうレベルのことを聞いてるんじゃないの。剣士としては? もうあれから二年経ったけど、ソーセージはちゃんと振るえる?」
心配そうに尋ねるるしあに、あやめはにこりと笑ってから「振るえる振るえる」と頷きます。
「そう。よかった」
それを聞いたるしあはホッとしたようなため息をついて、やっとあやめの手を放しました。