勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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 気分転換のため一日休みを挟んだ翌日の十二日目の昼頃、スバルたちはまたマリンのもとを訪れて彼女をうんざりさせました。

 そうして大して特筆すべき展開も起きないままさらに一週間が経過したあと、

 

「た、たいへんデス!」

 

 事件が起きました。

 

「シュバ?」

(ん?)

 

 それはスバルとるしあがまた酒場へ行ってマリンを説得している昼頃でした。

 例のごとくスバ友トリ派の動きを探るべく外出していたキアラが、血相を変えてスバルたちのいる酒場へ飛び込んできたのです。

 

「シュバルバシュバア?」

(どうしたキアラ?)

 

「どうしたんですかキアラ、そんなあわてて」

 

 尋ねるるしあにキアラは乱れた呼吸を整えてから「そ、それが……」と話しはじめます。

 

「ようやく、スバ友トリ派の連中が何を企んでいるのか分かったのデスが……」

 

「ですが?」

 

「とにかく時間がないのデス! スバルせんぱい、るしあさん! 急いでこの町の人々をどこか別の場所へ避難させてください!」

 

 キアラは大声を張り上げます。

 

「キアラ、落ち着いて。どういうことなのか説明してください」

 

 尋ねるるしあにキアラは深呼吸をしてから「は、はい」と答えます。

 

「実は、スバ友トリ派の集団がこの町を襲撃しようと向かってきているんデス!」

 

「シュ、シュバアアア!」

(な、なにいいい!)

 

 キアラはおおよそ次のようなことをスバルたちに説明しました。

 

 スバ友トリ派とは、スバルが人間に戻ることを阻止する目的で結成されたスバ友内派閥です。

 そんな彼らは、スバルが西の孤島に向かおうとしているということ、またそこに人間に戻るための何かがあるらしいことを耳にし、それは何としても阻止しなければならないと考えました。

 そこで企てたことこそ、西の孤島へ渡れなくするためにメードに停泊している船をすべて壊すという「メード襲撃作戦」でした。

 彼らはその作戦を確実に成功させるため、日々特訓を重ねながら十分な人数が揃うまで息をひそめ、そして機が熟した今日ついに決行に移ったというのです。

 

「連中はもうこの町の目と鼻の先まで来ていマス!」

 

「シュバルシュババシュバルバ!」

(やりすぎだろあいつら!)

 

 キアラの報告にさすがのスバルも激怒します。

 

「とにかく、そういうことなら急ぎましょう! 一人でも多く町の人を安全な場所へ!」

 

 言いながらるしあが慌てて立ち上がり、駆けだそうとします。

 すると、

 

「違う!」

 

 るしあの隣、マリンの方から否定する声が上がりました。

 

「一人でも多くじゃない。全員よ」

 

 そう口にしながらマリンは空のジョッキを卓上に置き、スバルたちの会話に加わります。

 

「避難させるのはこの町の全員、それは船長が引き受けた。ただ話を聞かせてもらった感じ、これからやってくるやつらはあんたたちが招き入れた厄介事ってことよね? 責任取ってそいつらがメードへやって来た時には船長たちと一緒に戦ってもらうわよ」

 

「もちろんデス!」

 

「シュバルバシュバルルシュバ!」

(言われるまでもねえシュバ!)

 

「当然です!」

 

 るしあたちの返事を聞いて「よし決まり!」とマリンは頷き、椅子から立ち上がります。

 

「マスター、お代はつけといて!」

 

「はいよ」

 

 マリンは勢いよく酒場を出ました。

 それからなぜか酒場の屋根上へのぼっていきます。

 

 のぼり終えたマリンは眼下にメードの町を一望しました。

 次に砂埃をたてて町へ向かってくる南方からの集団を目視します。

 彼女は大きく息を吸い込みました。

 

「聞きなさい! メードのみんな!」

 

 そして町中に響き渡る大声を出しました。

 一方町の人々は、聞こえてくる緊迫した声が元宝鐘海賊団船長・宝鐘マリンのものであるから、動かしていた手をピタリと止め、続きを聞こうと耳を澄まします。

 

「この町に敵が攻めてきた! かなりの数がすぐそこまで向かってきている! 剣を持たない一般人は急いで北に向かって避難しなさい! それからメードの剣士! 故郷を守るためならば戦わんとするソーセージ道を胸に秘めた、メードの誇り高き剣士たち! 今こそフォークを持って立ち上がりなさい! 船長たちの力を余所者どもにわからせてやるのよ!」

 

 マリンが号令をかけ終えると町中から「「おおー!」」という掛け声が返ってきます。

 彼女は屋根から地面へ飛び降りました。

 

「やっぱりすごく信頼されてるんですね、町の人々に」

 

 スバルたちと合流したマリンにるしあが話しかけます。

 するとマリンは照れくさそうに髪をかきました。

 

「ここのみんなが単純でお人好しなだけよ」

 

「シュバルババ」

(おまえもな)

 

「単純でお人好しで、子供の頃の夢を忘れられないようなバカばっかり。海賊向きのバカどもよ。……だからもう、絶対に失うわけにはいかないのよね」

 

 マリンの最後の言葉は呟くような小さい声で、近くの誰も聞き取れていませんでした。

 

 

  ◇  ◇  ◇

 

 

「ふはははは! 燃やせ燃やせ! この町の船ぜんぶ燃やし尽くせ! そうしたらスバルさんはずっとアヒルのまま、今度こそ俺たちスバ友の時代が訪れるんだ!」

 

「ふざけるな! 上位ランキングから転落した絶望の末、ついにとち狂ったかスバ友ども! これ以上おまえたちの好きにさせるか!」

 

 スバ友トリ派がメードへとなだれ込み、あちらこちらで戦闘がはじまります。

 しかし運が良いのか悪いのか、スバルたちは一向にスバ友トリ派の剣士と遭遇しません。

 

「スバルせんぱい、船場へ行きマショウ! スバ友トリ派の狙いは船を燃やすことなのデスから!」

 

「シュバルバ!」

(そうだな!)

 

 キアラの提案に皆が賛同し向かおうとします。

 

「待ってください船長!」

 

 そんなスバルたちに、後方から引きとめる男の声がしました。

 振り返ってみると、スバルたちを呼び止めたのはあくあの屋敷を教えてくれた元一味の男でした。

 

「船場にはすでに元一味の上級剣士たちが向かっています! それよりあくあの嬢ちゃんの屋敷へ行ってくれませんか?」

 

「どういうことよ!」

 

 マリンが聞き返します。

 

「そ、それが、あくあの嬢ちゃんの屋敷に停泊しているクソでかい何たら号っていう船目指してスバ友どもが屋敷に押し寄せているらしいんですが、まだあくあのお嬢ちゃんが避難せずに屋敷に籠っているらしいんです。それで、俺たちも助けに行きたいのはやまやまなんですが、あの船クソ目立つからスバ友の腕利きどもが向かっているらしくて中途半端な戦力で救出しに行くわけにいかず、かといって俺たちは俺たちで船場の船を守るだけで手いっぱいの状態で」

 

 マリンが怒鳴るように尋ねてしまったためでしょう、彼はしどろもどろになりながらもある程度の要点を押さえた説明をしてくれました。

 

「あんの陰キャメイド!」

 

 マリンは叫びながら屋敷に向かって駆け出していきます。

 キアラとスバルを抱えたるしあも彼女に続き走りました。

 

 

  ◇  ◇  ◇

 

 

 スバルたちはあくあの屋敷の門前に着きました。

 屋敷の門扉は外側から壊されており、玄関口はドアが開けっぱなしになっています。

 

「あくあさん!」

 

「あくたん!」

 

 三人のなかで一番足の速いキアラがまず最初になかへ入り、次にマリン、最後にスバルを抱えたるしあが続きます。

 

(シュバア、シュバルバ!)

「るしあ、降ろせ!」

 

「はいスバル先輩!」

 

 るしあがスバルを放します。

 スバルは羽ばたき落下する速度を緩めながら身体を眩しいほどに輝かせ、アヒルから人間に姿を変えました。

 そして人間スバルになるや否や、ものすごい速さで駆けだしてマリンとキアラを追い抜きます。

 

「え? アヒル、あんた、え? 大空スバル? へ?」

 

「うおおおお! いっけえええ! スバルせんぱあああい!」

 

 後ろからマリンとキアラの声がしますが、スバルは振り向くことなくまっすぐ前だけ見て走ります。

 そして長い縦の通路が終わり、左へ曲がった時でした。

 少し開けた場所に出ます。

 そこに七、八人のスバ友剣士がたむろしていました。

 

「あ、ス、スバルさん……」

 

 そのなかの一人がスバルに気づき、思わずといったふうに口にします。

 すると他の剣士たちもスバルに目を向けはじめました。

 

「おまえら、いい加減にするシュバアアア!」

 

 スバルは怒鳴ってからスバ友たちに向かって走りだします。

 その手には虹色のフォークを握りしめています。

 

「ス、スバルさん本気で戦うつもりなんですか! 俺たちは、俺は、スバルさんに剣を向けるなんて! そんなこと、そんなことできるわけが……ッ!」

 

「バカ野郎!」

 

 フォークを手に取ることをためらうスバ友に、隣のスバ友が怒鳴りました。

 

「あらかじめ話し合っただろうが! こういうことになるかもしれないと! それでも剣を取るって決めたんじゃねえか!」

 

「し、しかし!」

 

「そうだ! すでに他のトリ派同志たちは作戦を実行している! 我らがここで立ち止まるわけにはいかん!」

 

「逃げるな! 心を鬼にしろ! これもすべてはスバルさんのため! ひいては新たなお姿となったスバルさんと共に返り咲く、我らが新生スバ友のため!」

 

「我らが夢のため!」

 

「我らのチームのため!」

 

「くっ!」

 

 先程までためらっていたスバ友剣士は、思い切るようにレッグバッグからフォークを抜き取りました。

 

「許してくださいスバルさん、今この時だけあなたに牙をむきます!」

 

「訳わかんねえこと言ってんじゃねえシュバアアアア!」

 

 叫びながらスバルがフォークを振るいます。

 そのフォークの先にライトニングウィンナーが取り付けられます。

 

「よそ様に迷惑かけてこんな大騒動引き起こしやがって! スバ友だからってもう容赦しないからなあああ!」

 

 スバルは先程フォークを抜き取ったスバ友剣士に飛びかかりました。

 

「くうっ!」

 

 彼の名は上級剣士岡田、所持するソーセージは上級剣のピクルス。

 二つ名も名乗りましたが諸々の事情で割愛されます。

 

 岡田はすぐにフォークを振るいピクルスを出してから、飛びかかってくるスバルを迎え撃つために剣を突きだします。

 しかしスバルはその一閃を空中で器用にかわしてから、鞭のようにライトニングウィンナーをしならせて岡田のピクルスに絡ませました。

 

「なにい!」

 

 岡田は巻き付いたライトニングウィンナーを振り解こうとしますが、解くどころか剣を動かすことさえできません。

 一方スバルはピクルスにライトニングウィンナーを絡ませたまま真横に振り切ります。するとスポン! という音とともに岡田の手からフォークがすっぽ抜けました。

 

「そ、そんな!」

 

「目え覚ませ、岡田ああああ!」

 

 スバルは着地した直後ふたたび岡田に飛びかかり、飛び膝蹴りを彼の腹部に叩きこみました。

 

「ぐえぇ!」

 

 それを受けた岡田は白目をむいて地面に倒れます。

 

「シュバアアア!」

 

 口では容赦しないと断言したスバルですが、やはりスバ友を剣で斬りつけることはできませんでした。

 そのため、無力化すれば結果は同じなのだからということで格闘に持ち込んだのです。

 

「お、岡田あああ!」

 

 一瞬で倒された仲間に他のスバ友たちがざわめきます。

 

「や、やはりスバルさん、五年前と変わらぬその強さ!」

 

「だがスバルさんの実力が健在であるというその事実、我らにとってはむしろ朗報! だからこそ、ふたたび立ち上がるスバ友のために、なんとしてもこの作戦は成功させなければならぬ!」

 

「岡田! おまえの意志は俺たちが引き継ぐ!」

 

 スバルの強さに圧倒されながらも彼らは自分たちを奮い立たせ、各々フォークを取り出しソーセージを出現させていきます。

 

「だからなんでそうなるんだよ!」

 

 スバルは地団駄を踏みながら怒鳴りました。

 しかし彼らは剣を構えたまま沈黙で返します。

 

「ああそうかい、そうですかい!」

 

 スバルはぴくぴくと顔を引きつらせながら「上等だシュバア!」と叫びました。

 

「久々にスパルタ稽古つけてやるシュバ! どっからでもかかってこいおまえたち!」

 

 

  ◇  ◇  ◇

 

 

「スバルせんぱい!」

 

 スバルがスバ友剣士たちの相手をしだしてからおよそ三分後、ようやく追いついたキアラとマリン、るしあの三人がその場所に駆け付けます。

 

「シュバルルシュバルバシュバルルバ!」

(おそいじゃねえかおまえたち!)

 

 そこには地面にうずくまり倒れているスバ友剣士たちと、アヒルに戻ってしまっているスバルの姿がありました。

 

「シュバシュバルバシュバルルシュバルルバ、シュババシュバルルシュババシュバ」

(この姿じゃドアノブ回せなくて、先に進めないんだシュバ!)

 

 悶絶している剣士たちは皆ソーセージを使わずに倒されているのでしょう、意識はあるものの動けないようで、しかしなぜか嬉しそうに「うう、さすが、スバルさん……」などと呟いているのでした。




 スバルドダック(アヒルverスバル)のシュバル語は読み始めると疲れます。
 あえて読もうという方以外は、基本的にシュバシュバ喋った次行の(~)だけをお読みください。
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