勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~ 作:はばたくアヒル
るしあとあやめたちの会話が終わってから少しして、
「おーおーおー。なあPPT、これってもうワタシたち出てもいいタイミングだと思うか?」
「なんだよココ。さっきから何で馬車を降りないのかと思ってたらそんなこと気にしてたの? いいに決まってるじゃん。ていうかPPT言うな」
あやめたちと共に魔王城にやってきた荷馬車の中から、そんな会話が聞こえてきました。
「?」
るしあは、その馬車のなかには旅慣れしていないあやめたちによる大量の旅道具が詰め込まれているのだろうと勝手に思ってさほど注意を払っていなかったのですが、中からもれてきた声が聞き覚えのあるものだったので思わず馬車の方を振り向きました。
「ねえあやめ」
「なん余」
「あの荷馬車って、誰か人が乗ってるの?」
「ああ。乗ってる乗ってる余。ここに向かう途中に泊まった宿屋で知り合った二人組で余、そのうちの一人はまだスキルを取られていないレジェンド所有者だと言うし行き先は一緒だし、旅は道連れ世は情けとも言うし、荷馬車で良かったら乗せてやるけどどうする余、という感じでここまで一緒に来たん余。ふむ。そういえば全然降りて来ない」
ちょっと待ってくれ、もう着いたって教えてくる余! と言ってあやめが荷馬車に向かって駆けていきます。
彼女が荷馬車のドアを開けて一言二言呼びかけると、中から長身の女性と小柄な女性が出てきました。
「よお。またまた久しぶりだなア、おまえたち」
「ココさん!」
一人はレジェンドソーセージ「大地」ストーンスンデの所有者、桐生ココ。
そしてもう一人は、
「あー! 海賊団チームの船長がいる! 大空スバルも!」
「げえ! 天音かなた!」
マリンがさも嫌そうな顔をして口にしたとおり、天音かなたその人でした。
「なんだよ『げえ!』って。汚いなあ。せめてもっと『きゃあっ』みたいな反応した方が良いよ女の子なんだから」
気さくに笑いながらそう言うかなたに、マリンは「余計なお世話よ!」と返します。
「天音かなた! ま、まさかあんたまた船長をボコボコに凌辱したくてムラムラしてきちゃってこんなところまでやってきたんじゃないでしょうね! 『ああ、そういえば宝鐘マリンもレジェンド所有者だったな。へっへっへっ。てことは魔王城に行けばまたあの女を犯せれるのか』とか思って! それで! ああもう! やだ! やめて! あんっ! ああっ!」
「ねえ。さっきからあの人一人でぶつぶつ何言ってるの? 身体くねらせて」
マリンを指さしながらかなたがるしあに聞きます。
「るしあに聞かれても。本人に聞いてみればいいんじゃないですか」
「そうだね」
かなたは頷いてからマリンに向き直ります。
「ねえ。一人でわけわかんないこと喋りだすのやめてよ。気持ち悪いから」
「お、おま、ストレートに気持ち悪いとか言うのやめてよ! ガチめに死にたくなっちゃうでしょうが! もっと言い方ってもんがあるでしょ! オブラートに包んでさあ!」
かなたがめんどくさそうに「ええー」と言います。
「いや。あいつの言うことは一理あるぞ、かなたん」
するとココが横から会話に入ってきました。
「おまえは確かにそういうところがある」
「わかったよ。じゃあやり直すね」
かなたは少し考えてから「ねえ」とまたマリンに話しかけました。
「あくまでボクの個人的な意見なんだけど、一般的に考えてみんなが理解や共感のしづらい言動をするのはやめた方がいいよ。気持ち悪いって思う人もいるかもしれないし、視界に入れたくないっていう人もきっといると思うから」
「うわ、やめて! もうやめて! お願いだから! 死にたい! 船長すごく死にたい! どうしてだろうさっきより全然殺傷力高いんだけど!」
「そんなこと言われても」
かなたは苦笑します。
そんな彼女に「とにかく!」と言って、マリンは指を突きつけながら続けます。
「船長がここに来たのはマシーンヨーテボリの所有者としてはあちゃまと戦うためであって、決してあんたに再戦するためじゃないんだからね! か、勘違いしないでよ!」
「船長。ツンデレの口調っぽく締めないほうがいいですよ。フリだと受け取られると困るでしょう」
るしあが注意すると「勘違いしないでくださいお願いします」とマリンはかなたにぺこぺこと頭を下げだしました。
「あはは。わかってるよそんなの」
かなたは笑って答えます。
「ボクだってキミと戦うためにここに来たわけじゃないもん。今日の主役はココだからさ、ボクはあくまでオーディエンス。直接ココを応援するために現地までやって来たというわけさ」
「いらねえって言ってんのによオ」
「とか言いながらニヤニヤしてさ。嬉しくてたまらないんだよコイツ。かわいいよね」
からかうようにそんなことをいうかなたに、ココは「ちっ」と舌打ちしますが言い返したりはしません。
どうやら彼女たちの日常的なやり取りのようでした。
「それに」
と言いながら、かなたがスバルの方を見ます。
「今のボクは、以前のボクほど勝負や敗北に執着してはいないからね」
それから「ね!」と言って、彼女はスバルにウィンクを飛ばしてきました。
「シュバ。シュバルバシュバルシュバルルシュバルルシュバルバシュババ」
(いや。スバルにアイコンタクトされても困るんだけど)
スバルは苦笑を返しました。
「なるほど。それで私との勝負は乗り気ではなかったというわけか」
そんな彼女たちの会話にアキロゼが入ってきます。
「アキ・ロゼンタール……」
すると、かなたが先の船長と瓜二つの苦虫を噛み潰したような顔になります。
「言っておくけど、ボクに決闘を申し込んでもお断りだからね。さっきも言ったように、ボクはココを応援するためだけにここに来たんだ」
「わかっている。私だっておまえと戦うつもりなんて毛頭ない」
「へえ。あれだけ戦え戦えってうるさかったキミが、一体どんな心境の変化かな」
「やはりおまえはすごい女だな天音かなた。口にすること尽くがおまえ自身に返ってくるブーメランだということに気づいていない」
「うるさいよ」
「私も大空スバルと戦った。そしておまえと同じように学びを得たのだ。つまらないことに執着してもどうしようもないとな」
そう口にしてからアキロゼはスバルの方を見て「な?」と目配せします。
「シュババシュバルシュバルルバシュバルバシュババ」
(だからアイコンタクトはやめろというに)
スバルはうんざりしたようにため息をつきました。