勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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 ゲーマーズの獣人チームメンバーたちはリーダーのフブキと幹部のミオ、ころね、おかゆを城門前に残して帰っていきます。

 時刻は間もなく正午になります。

 

「やっぱり来ませんね。バーニング・サラミの所有者」

 

 るしあが誰に言うでもなく呟きました。

 

「仕方ないさ」

 

 フレアがそれに答えます。

 

「あたしらのせいじゃないんだ。悪いのは間違いなくあんなイタズラ電話じみた通告をしたはあちゃま本人なんだから自業自得さ」

 

「そうなんですけど、最後のレジェンド所有者はるしあたちにとっても重要人物なんですよ。その人がクソザコの書に署名してくれればスバル先輩のアヒルの呪いが解けるのですから」

 

「それはご愁傷様だな。まあ、ついてなかったと思って諦めろ」

 

 そんなことを話していると、魔王城から妙に明るいメロディが流れ始めます。

 

「なんデショウ」

 

 キアラが辺りを見回しながら独り言ちます。

 

「あ。これはコッペパンのメロディにぇ」

 

 みこがそれに答えました。

 

「みこがお昼ご飯を食べ忘れないように、正午になったら城内外にコッペパンのメロディが流れる仕様にしてあるんだにぇ」

 

「シュバルシュバシュババシュバルシュバルバシュババシュバルル」

(おまえもうここを魔王城って言うのやめとけ)

 

「つまり、正午になってしまったというわけですね」

 

 最後の最後まで、もしかしたらバーニング・サラミの所有者が来てくれるかもしれないと希望を持っていたのでしょうるしあは残念そうに項垂れます。

 その時です。

 

「ということは、これで全員揃ったってわけか」

 

 どこからか、聞き覚えのある声がしました。

 あたりを見回するしあは、城門から少し離れたところでコウモリたちが集まっていくのを目にします。

 そのコウモリたちは重なり合って塊を成していき、その塊から一人の女性が形作られていきます。

 

「久しぶり。あんたたち」

 

「トワさん!」

 

 塔の守り手の一人、常闇トワでした。

 

「るしあびっくりしましたよ!」

 

「ごめんごめん。そういえばコウモリから人間に姿を変えるとこ、見せてなかったもんね」

 

「それもなんですけれど、まさかトワさんがバーニング・サラミの所有者だったなんて!」

 

「……。ん?」

 

 トワが首を傾げます。

 

「なんでトワがバーニング・サラミの所有者になってんの?」

 

「だって、そうでなければこんなギリギリのタイミングでこんな注目が集まる登場の仕方をするはずないじゃないですか!」

 

 言いながらるしあがバッグからクソザコの書を取り出そうとします。

 

「いやいやいや」

 

 トワは顔の前で手を振りながら否定しました。

 

「全然違うし。トワはレジェンド所有者じゃないし。ていうか、もしそうならとっくにサインしてあげてるし」

 

「え、でも」

 

「トワは守り手代表であなたたちの戦いを観に来ただけだよ。タイミングとか言われても、トワは正午になるまで暇つぶしにそこらへんをぶらぶらしてて、そうしてるうちにあんたたちの方から時間になったみたいなこと聞こえて慌ててコウモリ状態のまま来ちゃってさ、仕方ないからあんな登場になっちゃっただけなんだけど」

 

「そうなんですか」

 

 るしあが残念そうに呟きます。

 

「シュバルシュバシュバルルシュバシュババ」

(ややこしい登場しやがって)

 

 るしあの隣でスバルがボソリとこぼします。

 

「あん? なんだって?」

 

 トワが耳聡くそれを聞き取ってスバルを見下ろしました。

 

「こいつ、今なんつったの?」

 

 トワがるしあに尋ねます。

 

「あ。いや、その」

 

 まさかスバルの口にした言葉をそのまま伝えるわけにもいかず、るしあはどう言い繕うかと考えます。

 

「登場の仕方がややこしい、だとさ」

 

 しかし、そうしている間にフレアがスバルの言葉をそのまま通訳してしまいました。

 

「んだとコラあ!」

 

 トワはいきなり両手でスバルの首元を掴み持ち上げて、締め上げます。

 

「てめえもう一遍言ってみろや!」

 

「シュ、シュバ! シュ、シュバル。シュバルシュバル……」

(ぐ、ぐえ! ご、ごめん。ごめんなさい……)

 

「言いやがったな!」

 

 シュバル語がわからないトワは、スバルがまた何か自分の悪口を言ったと勘違いして締め上げる手に力を加えます。

 

「ま、待ってください! 謝っているんです! ごめんなさいって!」

 

 るしあが慌てて止めに入ります。

 

「ふん。わかればいいんだよ」

 

 トワがスバルを放し地面に落とします。

 スバルはしばらく四つん這いでゲホゲホと咳き込んでいましたが、それが納まるや否や急いで駆け出してるしあの後ろに隠れました。

 トワはまた「ふん」と鼻を鳴らしてから魔王城の方に振り向きます。

 

「コラ! はあちゃま! もうメンバーは勢揃いしてるし、あんたが指定してきた時刻もとっくに過ぎてんだからさっさとこの門開けろってんだよ!」

 

 そう怒鳴ってトワはガシガシと城門を蹴りつけます。

 しばらくして、城門に設置されたカメラのレンズがスバルたち一同を見回しだします。

 

『メンバーが勢揃い?』

 

 その機械からはあちゃまの声が聞こえてきました。

 

『バーニング・サラミの所有者はどこ? このなかにいるの?』

 

 尋ねるはあちゃまですが、誰も答えられずに無言になります。

 すると、機械からバチンバチンという音と『痛いペコ! 痛いペコ!』というぺこらの悲鳴が聞こえてきました。

 

「兎田!」

 

 みこが叫びます。

 

『蠅叩きでほっぺを叩くのは本当にやめてくださいペコですよ!』

 

「はあちゃま! やめてください!」

 

 るしあが大声で言います。

 

「確かにこの場にバーニング・サラミの所有者はいません! でもそれはるしあたちではなく、あなたの不手際なんですよ!」

 

『なんですって?』

 

「あなたがした一週間前の通告放送、あんなイタズラ電話のような伝え方で事情を知らないレジェンド所有者が来てくれるはずないじゃないですか! それでもるしあたちは、バーニング・サラミ以外のレジェンド所有者がこの場に集結するようにといろいろなことをしたんです! それなのに兎田社長のほっぺをペシペシするなんて、あんまりじゃないですか!」

 

『……。つまりバーニング・サラミの所有者は、一週間前の私の通告がイタズラだと思ってここに来てないってこと?』

 

「そう思われていてもおかしくないということです」

 

『わかったわ』

 

 ブツンと通話が切れます。

 しかしそれからしばらく待っても城門が開く気配はありません。

 

「あ!」

 

 唐突に、みこが叫んで上方を指でさしました。

 その先を見てみると、魔王城から上空へ突き出している煙突らしき部分を指さしているようです。

 そこからもくもくと暗雲が立ち上っていました。

 

「やばいにぇやばいにぇ! あの雲! デーモン・みこ・ソウルが稼働してるんだにぇ!」

 

「そんな! どうして!」

 

 狼狽えるるしあに「多分デスが」とキアラが口を開きます。

 

「バーニング・サラミの所有者に、イタズラではないということをわからせる気でいるのではないデショウか。実際に暗雲を作り出すことで」

 

「ええ!」

 

 それを聞いたるしあは涙目になります。

 

「る、るしあのせいですか!」

 

「いや、そんなことはないデス決して!」

 

 キアラは慌てて否定します。

 

「しかし、これは早くどうにかしなくてはいけマセンね。はあちゃまとてずっと稼働し続けるつもりはないと思いマスが、それでもこのままでは大陸に被害が出てしまうかもしれマセン」

 

「うう。ごめんなさい。るしあのせいで」

 

 るしあは蹲ってしくしく泣きだしてしまいます。

 

「ねえ。はあちゃま。ポルカと少し話しない?」

 

 するとそんなるしあの横で、ポルカがカメラに向かって話しかけました。

 

『何よあんた』

 

 はあちゃまが通話に出ます。

 

「尾丸ポルカ。忘れたの? ポルカたち何度か会ってるんだけど」

 

『消えなさいザコが。あなたなんかが私に話しかけるんじゃないわ』

 

「別にポルカは消えてもいいんだけど、でもこのままだとあんたさ、来るか来ないかもわからないようなバーニング・サラミの所有者だけじゃなく、せっかくここに集まってくれたレジェンド所有者全員を逃がしちゃうことになるんだけど。それわかってる?」

 

『どういうこと?』

 

「こっちの気持ちになって考えてみなよ。みんなあんたが魔王様のデーモン・みこ・ソウルを使って世界をとんでもないことにするって聞いたから、正義感からとにかくここへ駆けつけてきたんだよ。なのにあんたときたら、戦場に上げないどころか集まれば稼働しないって言ったデーモン・みこ・ソウルも悪びれもなく動かしてさ。ぶっちゃけポルカたちはもうバカバカしくなってきてるわけ。せっかく約束守って来たっていうのに、言った当の本人が平気で約束破るんだもん。忘れてるかもしれないけど、ポルカたちはそうさせないためにここにやって来てあげてるんだよ。あんたがその機械を問答無用で動かすって言うのなら、もう何のために集まったのかわからなくなっちゃうわけ。みんな仕方ないと思って帰るしかないじゃん」

 

『……』

 

「それにね、そんなふうに好き勝手するなら次に同じようなことしても誰も応じてなんか来ないってのは覚悟しておいた方が良いよ。だって来ても来なくてもあんた約束守んないからバカ見るだけなんだもん。駆け引きってそういうもんだよ。あんたみたいに初っ端からヤバいジョーカー切ってくるやつはみんなから相手にされなくなるんだ」

 

 ポルカは後ろのスバルたちに振り返って「な?」と言います。

 皆はそれにこくりと頷きました。

 

『……わかったわ』

 

 少ししてから、はあちゃまが答えます。

 

『そうね。私としたことが、今回でみんなまとめて相手にしようと思っていたせいで、せっかちになっていたわ。待ってなさい。今開けさせるから』

 

 しばらくして城門がひとりでに開きます。

 スバルたちはぞろぞろと城内へ入っていきました。

 なかは入ってすぐに広い空間の部屋があり、その奥に魔王の玉座らしいものが設置されている小さなスペースがあります。

 それらの間には階段が挟まっており、魔王の玉座から入り口を見下ろすような構造となっています。

 はあちゃまはその魔王の玉座の横で腕を組みながら立っているのでした。

 

「ようこそ。我が魔王城へ」

 

「みこのだろうが!」

 

 みこが言い返しますが、はあちゃまは目を斜め上にやって素知らぬ顔で無視します。

 

「ペコー! みこ先輩! みんな!」

 

 城内にぺこらの声が響きます。

 ふと声の方に視線をやれば、ぺこらははあちゃまの隣の玉座に座っていました。

 もっとも座っているというよりも無理矢理に座らされているというのが正確な表現で、椅子の背もたれに身体をロープでぐるぐる巻きに固定して身動き一つできない状態にさせられているのです。

 さらには念には念をということでしょう、ぺこらの側には十数人のハートンたちが控えており、そのうちの数人はソーセージも出しています。

 下手な行動を取ればすぐにでも彼女の首を斬り落とすという意思表示であることは明らかです。

 

「兎田!」

 

 みこがぺこらに向かって駆けだそうとします。

 

「おい!」

 

「魔王様!」

 

 それをフレアとポルカが二人がかりで押さえました。

 

「放せ! 放すにぇ!」

 

「ここで暴走するのはおまえマジでやめろ! さくらみこ!」

 

「どうか気をお静めになって! お静めになって!」

 

 みこは「ううう」と悔しそうに呻きながら、ずるずると引っ張られていきます。

 そんな光景を横目で見ながら、

 

「じゃあ早速はじめましょうか」

 

 はあちゃまが階段をゆっくりと降りてきます。

 

「待った」

 

 それをマリンが止めました。

 

「なに?」

 

「なに、じゃないでしょうが。その前にあの雲を作ってる変な機械止めなさいよ。まさか戦ってる間ずっと稼働させてるつもりじゃないでしょうね」

 

「ああそうね。忘れてたわ」

 

 はあちゃまはパチンと指を鳴らしました。

 するとハートンの一人がスバルたちから見て右手奥の方へと駆けていき、そこに設置されているデーモン・みこ・ソウルをガチャガチャと操作します。

 ブーンという低い機械音と共にデーモン・みこ・ソウルは停止しました。

 

「これでいいでしょ」

 

 はあちゃまは改めて階段を降り始めます。

 

「私はずっと待っていたわ。この時を」

 

 それから独り言を言うようにスバルたちに話しかけてきました。

 

「魔王城という最終決戦にふさわしいステージで、残りのレジェンド所有者をぶちのめすこの時を」

 

「シュバルルシュバシュバルバ」

(一週間だろうが)

 

「はじめるとしましょう。レジェンド所有者、そのなかでも今なおスキルを所持している選ばれし剣士たちによる、ホロ・デ・ソーセージ大陸の命運をかけた戦いを」

 

 気持ちよく言い終えて、はあちゃまがスバルたちに向き合い対峙した時です。

 

『タラタタッタタッタラータッタ! タラタタッタタッタラータッタ!』

 

 あたりに軽快な音楽が流れ始めました。

 

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