勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~ 作:はばたくアヒル
「まずはあなたからというわけね。雪花ラミィ」
「!」
はあちゃまの言葉にねねは後ろを振り向きます。
確かにラミィが手を上げていました。
「ラミィ!」
ねねがラミィの側に駆け寄ります。
ねねだけではありません。ぼたんとポルカもやってきて、一緒になって「本気かラミちゃん」「大丈夫かよ」とラミィを心配します。
「心配しないでみんな」
ラミィはそんな彼女たちを安心させるように微笑みました。
「はあちゃまに襲撃された二年前、ラミィが負けちゃったせいでみんなを危険な目に合わせたし、キアラさんには本当に申し訳ないことをした。あれからラミィはもう二度と同じ過ちを繰り返さないために、ひそかに特訓を積み重ねてきたの。今のラミィはあの頃よりずっと強いし、それに」
ラミィは言葉を止めて、意味ありげな笑みを作ります。
「とっておきの必殺技を会得したの」
「必殺技?」
オウム返しに聞くねねに「ええ」と彼女は頷きます。
「見せてあげるわねねちゃんに、ラミィの超カッコイイ必殺技を。まあ、出すまでもなくやっつけちゃったらゴメンだけどね」
「いつまでグダグダ喋っているの」
はあちゃまが痺れを切らして嘴を入れます。
「少年漫画のノリごっこは他所でやってちょうだい。戦うなら戦うでさっさと出てきなさいよ雪花ラミィ」
急かすはあちゃまにラミィは肩を竦めます。
「あーやだやだ、セカセカしちゃって。カルシウムが足りてないんじゃないかしら」
「ラミィ。ねねもなんか心配になって来た。これ以上自称俺TUEEEE!の会話続けてると咬ませ犬のフラグっぽくなっちゃうから、本当に早く行った方がいいと思う」
「わかったよ。もう行くよ」
「がんばれラミちゃん!」
「ポルカたち一生懸命応援するから!」
ホロファイブのエールを背にラミィは戦いのステージに向かいます。
すると、
「あ。だいふく」
そんなラミィの後ろをだいふくがふわふわ浮かんでついてきました。
「こら。ダメよだいふく」
ラミィは足を止めて振り返り、彼に注意します。
「聞いていたでしょう。ここから先は一対一の真剣勝負、あなたがついてきてしまうとラミィはそのルールを破ったことになっちゃうわ。だから戻ってなさい」
ラミィが言い聞かしてもだいふくは首を振って拒否します。
「もお!」
仕方なくラミィは彼を引っ張って隅の方に行き、そこで粘り強く説得を試みます。
しかし彼は頑なに言うことを聞こうとしません。
「もういいわよ別に」
見かねたはあちゃまが面倒くさそうに言いました。
「そんな瓢箪クマの一匹や二匹、助っ人としてカウントしてないわ。戦場に上がりたいって言うなら一緒に上がってこればいいじゃない」
だから早く来なさい、とはあちゃまが促します。
ラミィはだいふくの額にデコピンを一発かましてから、彼を伴ってはあちゃまの待つ戦いのステージに立ちました。
それから真っ直ぐにはあちゃまと対峙します。
「ようやく来たわね」
はあちゃまは組んでいた腕を解きました。
「あなたが初戦の相手を申し出てくれて本当に嬉しいわ雪花ラミィ」
「どうして?」
「だってこれからさき戦う相手のことを考えると、あなたの持つレジェンドソーセージ・スケルトンソーセージのスキル『執着』はぜひ手元に置いておきたいもの。残り体力が25%以下であることを条件に受けるダメージを60%軽減する、『鉄の意思』の軽減力をも上回るその防御スキル」
「お生憎さま。捕らぬ狸の皮算用はほどほどにしないと立ち直れなくなるわよ。もっともラミィと初戦で戦えたことをあなたは別の意味で感謝することになるでしょうけど。だってこの初戦で気持ちよく敗北すれば今まで奪ってきたスキル全部失って、もう『ああしなくちゃいけない』『こうしなくちゃいけない』ってセコい作戦を考えるのに煩わされることがなくなるんだもの」
「言ってくれるようになったじゃない」
「まあね」
ラミィとはあちゃまが睨み合います。
「ブブー!」
ハートンのかけ声を合図に二人は同時に駆け出します。
「はあ!」
はじめに攻撃を仕掛けたのはラミィです。
ラミィは大きく踏み込むや否や、鎚のような形状のスケルトンソーセージをはあちゃま目掛けて振り下ろします。
はあちゃまはクリスタルサビロイでその一撃を受け止めました。
「なるほど」
はあちゃまが呟きます。
「確かに以前に比べてかなり腕が上がったみたいね」
「ふふん」
「でも」
彼女はクリスタルサビロイを押し込んで、鍔迫り合いするラミィを後退させました。
「……ッ」
「残念なことに私はもっと強くなっているのよ」
後方に跳ねて仕切り直しをはかるラミィを認めてから、彼女は続けます。
「あなたと戦ったのは確か、獲得したスキルが『断末魔』だけの頃だったかしら。私はね雪花ラミィ、あなたたちから奪ったスキルをただ使用できるというだけじゃないの。そのスキルのエネルギーを使って衰弱した身体の強化もしているの。あなたと戦った頃の私はまだ本来の私じゃなかったのよ。そして今あなたの目の前にいる私こそ本当の私というわけ。これがどういう意味かわかるかしら? つまりあなたがあの頃より少しばかり腕を上げたとしても、今の私にとってはアウト・オブ・眼中のザコということよ」
「くッ」
ラミィは呻くような声をもらし、剣を構えながら半歩はあちゃまから距離を取りました。