勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~ 作:はばたくアヒル
「ごめんねーみんな。ごたごたさせちゃって」
スバルたちの元に戻ってきたおかゆが謝ります。
「そんなことないわよ。ナイスファイト」
マリンが答えてグッとフブキに親指を立てました。
しかしフブキは顔を俯かせたまま無反応で通り過ぎてしまいます。
「ごめんね。今はちょっとへこんでてさ、少ししたら元気になると思うんだけど。でも全然悪気とかはないから誤解しないでほしいな」
ミオがマリンを無視してしまったフブキをフォローします。
「わかるよ。さっきの戦い見てたら無理ないなって」
マリンは気の毒そうにフブキの背中を見ながら頷きました。
「でも彼女の戦いは意味のあるものだったわ。船長もすっかり忘れていたもの、『血の涙』とかいう致命傷ダメージを激減させるすごいスキル。そのことを教えてくれただけでも後に控える側としてありがたいわよ」
「トワは知ってたけどな。あいつが『血の涙』を持ってること」
マリンたちの横でトワがぼそりと呟きます。
「なによ。じゃあ教えてくれてもよかったじゃない」
マリンが呆れたふうに言うと、彼女は「ふん」と鼻を鳴らしました。
「白上フブキはあえてトドメを刺さずにダメージを与えていく戦い方をしていた。てっきり『血の涙』のスキルを警戒しているのかと思ったんだ」
「ああ。なるほどね」
「でもトワが教えておけば勝てた勝負だったんだよな。今は教えておけばよかったと思ってるよ。ごめん」
憮然と腕を組みながらもその点は素直に謝ってきます。
マリンとしてもそんなトワを責める気にはなれず「まあ。過ぎたことは仕方ないしね」と言って頭を掻きました。
「それに、本当に勝てたかどうかはわからないしね」
「そうなのか?」
マリンの呟きにトワが首を傾げます。
「まあ、ほら。ソーセージを使った戦いは何が起こるかわからないからさ」
マリンは答えてからストレッチするように腕を伸ばしだし、
「さあてと」
ニヤリと笑みを浮かべました。
「トリはスバルって決まってるから、次は船長の番ですかね」
そして意気揚々とはあちゃまの待つステージに向かおうとしますが、
「ふふ。トリがスバル。アヒルなだけに余」
あやめがぼそりと呟いて一人笑っているのに気づいて、微妙な顔になり足を止めました。
「ねえ、そこの余さん。別にそのダジャレがつまらないとか野暮なこと言うつもりはないけど、空気は読んでほしいと言うかさ、せっかく船長がステージに上がる見せ場なんだからその雰囲気ぶち壊すのはやめてもらえます?」
「あ、ああ。ごめん余。余としたことが、つい。悪かった余」
あやめがすまなそうに頭を下げてぺこぺこ謝ります。
「そんなに謝られたら謝られたで、逆に申しわけなくなっちゃうな」
「シュバルルシュバルシュババシュバ」
(面倒臭い女だな)
マリンは改めてステージに上がります。
「あと二人」
マリンが来たのを目にしたはあちゃまが、右手を握り開きしながら呟きました。
「お疲れのようね」
マリンははあちゃまから数メートル先のところで足を止め、話しかけます。
「そんな調子で船長とスバルを相手にするのはキツイでしょ。そろそろ降参するタイミングじゃない?」
マリンの軽口に「冗談でしょ」と、はあちゃまは一笑しました。
「ようやくウォーミングアップが済んで身体が温まってきたところよ」
「あーやだやだ強がり言っちゃってさ」
言いながらマリンはレッグバッグに手を伸ばしフォークを取り出します。
「うっさい年増」
はあちゃまがぼそりと呟きます。
「年増言うんじゃねえよ!」
叫ぶなりマリンはブン! と虹色のフォークを振るいました。
全長およそ180センチメートル、生肉のような色をしたドラム缶状の大型ソーセージ、マシーンヨーテボリです。
「ふふん」
はあちゃまもフォークを取り出してブン! と振るいます。
彼女のフォークの先にクリスタルサビロイが出現しました。
「うおおお!」
お互いにソーセージを出したことが合図になったのでしょう、大声を上げながらマリンがはあちゃまに駆け出していきます。
はあちゃまもフォークを強く握り直し、クリスタルサビロイをマリンに向けて構えます。
そして彼女たちのソーセージが合わさるというところになり、マリンが目を見開きました。
その目が鉛色に染まります。
それと同時に彼女の持つマシーンヨーテボリがギチギチと音を鳴らして凝固していき、凝り固まった分わずかに大きさを縮ませます。
スキル「集結」の発動です。
初手バフスキルである「集結」は使用者の体力が完全状態であることを条件に発動可能となり、攻撃力を75%上昇させます。
「撫でますドン!」
マリンの張り上げた声と同時に、マシーンヨーテボリとクリスタルサビロイがぶつかります。
その折衝はもちろんマシーンヨーテボリの圧勝で、はあちゃまのクリスタルサビロイは凄まじい勢いで上方に撥ねられました。
「く……ッ」
はあちゃまが思わず苦々しく呟きます。
はあちゃまとしても、マリンが「集結」を使って攻撃力を上昇させているのはわかっていたことであり、こうした結果になるのは目に見えていました。
だからたとえ弾かれようともクリスタルサビロイの柔軟性と長さを活かした驚異的なしなりを使い、牽制するなりなんなりする気でいたのです。
しかしながらマリンの振るうソーセージの威力が、計算外でした。
マシーンヨーテボリによって上方に撥ね上げられたのはクリスタルサビロイのみならずそれを持つはあちゃまの腕ごとで、また衝突時の威力と「集結」によって生じた硬度の差から、彼女の手首に一瞬妙な痺れが走ったのです。
その一瞬が、しなりで反撃するシビアなタイミングを狂わせました。
そして何より、クリスタルサビロイとぶつかり合いそれを撥ね上げるまでしたマシーンヨーテボリの剣速が、まるで何もなかったかのように衰えないのです。
その大型ソーセージは全く変わらない軌道を描きながらはあちゃまめがけて突っ込んでいき、
「……ッ」
ズドン! と大きな音を立てて、まるで砲弾をぶち込んだような大きな風穴を彼女の胴体に作り出しました。