勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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 アクアマリン号に一体何人の元一味が集まってくれるのかと怯えていたマリンのもとに、元一味の男たちは宝鐘海賊団の証であるバンダナを巻いて次から次へと乗り込んできます。

 

「き、キミたち……」

 

 信じられないような顔をしてマリンは呟きました。

 

「へへへ、どうしたんですか船長。らしくないですよ、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして」

 

「船長、もしかして泣いてるんですかー?」

 

 そう言って元一味たちはイタズラっぽい笑みを見せます。

 

「ば……ッ、このバカモンどもが!」

 

 マリンは目元を腕で拭いました。

 

「二年も前に解散って言ったのに、そんなのを常日頃から持ち歩いて! キモイなってドン引きしてたんだよ!」

 

 怒鳴るマリンに元一味たちは皆声を出して笑います。

 

 そうこうしているうちに、渡しもかけていないのにアクアマリン号の甲板がたくさんの男たちで溢れかえってしまいます。

 どうやら宝鐘海賊団の元一味全員が乗り込んでしまったようでした。

 

「キミたち! 乗りすぎだ!」

 

 マリンは元一味たちに怒鳴ります。

 

「遅れて乗ってきた半数! 今すぐ船から降りろ!」

 

「そ、そんな!」

 

「横暴だ!」

 

「船長、俺たちを見捨てるんですか!」

 

 必死に訴えかけてくる元一味たちにマリンはたじろぎました。

 しかしすぐ首を振ってから「そうじゃないでしょ!」と言い返します。

 

「さすがにメードを無人にしとくのはマズイじゃない。それにこれから船旅に出ようってわけじゃないしさ、スバ友たちをボコしてちょいと客人を島に送り届けたらまたすぐ帰って来るわよ。ちょっとの間の留守番じゃない」

 

「あー、はいはい、わかりましたよー」

 

「あーあ、俺も一緒に行きたかったなあ」

 

 船場に渡しがかけられ、しぶしぶと元一味の半数が陸地に降りていきます。

 そんな彼らと入れ替わりに、スバ友トリ派の剣士たちが続々とアクアマリン号に乗り込んできました。

 その数ざっと二十人、船場で戦っていたスバ友トリ派のほとんどです。

 

「さあ、来てやったぜ」

 

 もちろんスバ友たちにも、船場に呼びかけるマリンの声は聞こえていました。

 だから彼らも自分たちが船に誘い出されたということは重々承知です。

 しかし彼らの立場からすれば、この船を使って例の島へ行くと堂々宣言された手前、乗り込まないわけにはいきませんでした。

 

「それで、俺たちをボコボコにするなんて豪語したイカレ野郎はどこのどいつだ?」

 

 そう言って、スバ友の一人が元一味たちに睨みを利かせます。

 元一味たちは思わずたじろぎました。

 

「船長よ」

 

 マリンが答えながら元一味たちをかき分けて前に出ます。

 

「ははは! 納得だ!」

 

 そんなマリンを見たスバ友の男は笑いだしました。

 

「己の年もわきまえずにイカレた格好をしてやがる、頭もそうとう来ちまってるってわけだ」

 

「なんだとおまえぶっ殺すぞ」

 

 マリンが彼に掴みかかろうとします。

 

「せ、船長落ち着いてください。挑発です」

 

「ああもう、うううう、くそお」

 

 マリンはぎりぎりと歯を食いしばって男の挑発に耐えました。

 そんな彼女を男は「ふん」と鼻で笑います。

 

「それでどうするんだコスプレ船長さん、俺たちは早くこの船を燃やしたくてうずうずしてるわけなんだが」

 

「……キミたち」

 

 問いかける男に目を向けたまま、マリンは元一味たちに小声で話しかけます。

 

「この場にいる宝鐘一味全員ただちに漕ぎ場へ直行、すぐにアクアマリン号を船場から離して」

 

「え、全員ですか? こいつらの相手は?」

 

「船長がまとめてしてやるよ。どうやらこいつら、船長にボコボコにされたいドМ願望のド変態どもらしい」

 

 マリンが口角を持ち上げて笑いかけると、元一味の男も「アイアイサー」と答えて笑い返します。

 

「おっしゃあああ! 宝鐘海賊団一味全員漕ぎ場につけえええ! もたもたして船長の足を引っ張んな!」

 

 元一味の男が声を張り上げました。

 直後、彼を含めた元一味全員が漕ぎ場に向かって走り出します。

 あっという間に甲板はマリンとスバル、るしあとキアラ、そして二十人弱のスバ友たちだけになりました。

 

 それからしばらくして、アクアマリン号がゆっくりと動き出します。

 そして船場からだいぶ離れたところまでやってきて、ぴたりと前進をやめました。

 

「なるほどな」

 

 さきほど喋っていたスバ友の男がまた口を開きます。

 

「こうやって海に出ちまえば、船が燃やされ沈んじまった場合俺たちは陸地へ戻れなくなる。だから船を燃やすなんてできないだろうと、だいたいそんな策だろう」

 

 男はニヤリと笑ってから「残念だったな」と続けます。

 

「まあよくこの短時間で考えたと褒めてやりたいところだが、相手が悪かったな船長さんよ。俺たちスバ友トリ派はスバルさんがアヒルの姿になったと知った時から、いずれ訪れるだろう共に水上を渡る日に備え厳しい水泳訓練を積んできた。そんな我らの遠泳能力、メードからおまえたちの言っている西の孤島まで泳ぎ切ることすら造作もないほどだ」

 

「シュバルルシュババシュバルルシュバシュシュバ!」

(間違ってる努力の方向性!)

 

「ぜんぜん違うわよ」

 

 マリンは彼の話を聞いて呆れたようにため息をつきます。

 

「逆上して町に入られた厄介だから離れただけよ。それにもしもあんたたちが海に落ちるようなことがあっても、救命用の浮き輪を投げて助けてあげるから安心しなさい」

 

「結構だ。それは自分たち用に今から抱きかかえておくんだな」

 

 スバ友の男は一歩前へ踏み出します。

 

「名を名乗りなコスプレ船長さん、最期にそれだけは聞いといてやる」

 

「チーム・宝鐘海賊団船長、宝鐘マリン」

 

 名乗るマリンに「宝鐘海賊団?」と彼は鼻で笑いました。

 

「五年前には聞いたこともない無名チームだ。まあ、スバルさんがいなくなってからの五年間、他チーム情報を全く仕入れることができていないわけだがな」

 

 言ってから男はフォークを取り出します。

 

「俺からも教えといてやろう、おまえがこれから剣を交える相手がどこの誰であるかを。聞いて驚け! 俺はスバル十本刀に名を連ねる上級剣士の一人、後藤! そして我が二つ名は『スバルのおし」

 

「黙れええええ!」

 

 マリンは急に怒鳴って後藤の二つ名を遮りました。

 

「な、なんだ? 言わせてくれよ!」

 

「うるせええええ!」

 

 抗議する後藤に耳をかさず、マリンはレッグバッグからフォークを取り出します。

 そのフォークは陽光を受けて虹色に輝きます。

 

「船長よりセンシティヴなキャラ付けしようとするんじゃねええええ!」

 

 マリンは虹色のフォークを真上にかかげました。

 するとそのフォークの先に異様なソーセージが現れます。

 

 とにかく巨大なソーセージです。

 荒く削り取られた生肉のような色をしたそのソーセージは、全長およそ180センチメートル。

 幅もかなりのものがあり、それを持つマリンがまるごと中にすっぽり入ってしまいそうです。そのためソーセージというよりも血色に塗られたドラム缶のようなビジュアルです。

 

「ふん! ふん!」

 

 マリンはそれを、肩慣らしだとでも言うように片手で振るいはじめます。

 あまりに軽々と扱うからでしょう、もはやその光景は小柄な鬼が棍棒を振るっているようにしか見えません。

 

「しゅ、『集結』マシーンヨーテボリ!」

 

 そのソーセージを見たるしあが思わず口にしました。

 

「シュバルルシュバルルバ? シュバルルシュバシュバババ! シュババ!」

(マシーンヨーテボリ? レジェンドソーセージの! あれが!)

 

 るしあの言葉にスバルがマリンのソーセージをまじまじと見つめます。

 

「え? スバル先輩、レジェンドソーセージをすべて知ってるんじゃないんですか?」

 

「シュバシュシュバ! シュバルバシュバルルシュバルバシュバシュバババシュバルバシュバルバシュバルバシュバルルバ!」

(バカ野郎! 世界に十二振りしかないソーセージの実物を見たことあるわけねえだろ!)

 

 スバルがるしあに怒鳴り返しました。

 その一方、

 

「マ、マシーンヨーテボリだと!」

 

 マリンの手にしている剣が、レジェンドソーセージのマシーンヨーテボリだと耳にした後藤はいきなり狼狽えだします。

 

「そんなにビビんなくてもいいわよ」

 

 マリンはため息をつきました。

 

「あんたたちに『集結』のスキルを使ったりなんかしないからさ。ちょっとばかしデカいけど普通のソーセージだと思ってかかってきなさいって」

 

「そ、そういうことじゃねえ! てめえ、伝説級剣士だったなんて、ああくそ! なんだよそんなの! 全然聞いて」

 

 ない、と言いかけて後藤はその言葉を寸前で飲み込みます。

 屈しそうになる膝を奮い立たせ、彼はスバルのほうを横目で見ます。

 それから乱れた呼吸を整えて、パチンパチン! と両手で頬を叩きました。

 

「ふぅう」

 

 静かに息を吐きながらフォークを構えます。

 フォークの先に現れたソーセージは上級剣、フィッシュアンドチップスです。

 

「え? なに今の? 戦う直前のジンクス?」

 

 尋ねるマリンに後藤は「似たようなもんだ」と答えます。

 

「このコスプレクソ女が。てめえのせいで、スバルさんの見てる前で醜態さらしちまうところだったじゃねえか」

 

「いやそれ船長は関係ないし。ていうかコスプレとかもう一回言ってみろマジでぶち殺すからな」

 

「お望みなら何百回でも言ってやるぜ」

 

 そう返してから「しかし、まさかレジェンド所有者だとはな」と後藤は吐き捨てます。

 

「だがな、俺たちも覚悟を決めて今ここでソーセージ持ってんだよ!」

 

 それから彼はいきなり大声を張り上げました。

 

「元上位ランカーのチームが町を襲撃するなんていう盗賊紛いの行動を起こしたんだ! その意味が貴様にわかるかコスプレ女! 輝かしいスバ友の歴史に忌まわしい汚点を付けてまでも作戦決行に移った我らの覚悟がどれほどか! これはスバ友の名に悪名が付いてまわることを甘んじて受け入れた上での、苦渋の襲撃作戦なのよ! ここで退いたら、スバ友は世間の笑いものになっちまう!」

 

「スバル先輩を人間に戻さない目的で襲撃した時点で、すでに笑いのネタですけどね」

 

「シュバルシュババ」

(言ってやるな)

 

「え、なんかあんた面白いわね。ねえ、あとで宝鐘一味に加えてあげてもいいわよ?」

 

「断る!」

 

 後藤は即答します。

 

「骨を埋めるべきチームはもうすでに決まっている! なあ、そうだろみんな!」

 

 後藤が呼びかけると、彼の周囲のスバ友たちが「「おおー!」」と応えて各々フォークを引き抜き、ソーセージを取り付けます。

 

「いくら伝説級とは言え、これだけの剣士を相手にどこまで戦えるかな!」

 

 吠える後藤に「いいからかかってきなさいよ」とマリンが返します。

 

「いくぞおおお!」

 

「「うおおおおおおお!」」

 

 後藤がマリンに突っ込んでいきます。

 他のスバ友たちも後藤に続いていきます。

 そして、まさにスバ友たちでマリンが埋め尽くされたと思われたそのとき、

 

「「ぐああああ!」」

 

 二十数人のスバ友剣士が同時に吹っ飛びました。

 

「ば、ばかな……」

 

 後藤が呻きます。

 

 スバルたちを除くと、現在甲板に立っているのは宝鐘マリンただ一人です。

 そんなマリンは、マシーンヨーテボリを大きく振るった直後のような体勢をしています。

 彼女はゆっくりとソーセージを持ち上げて構え直しました。

 

「一つだけ言っておくけど、船長は海賊であって真っ当な剣士じゃないの。あんたたち生粋の剣士の常識じゃ一対一がセオリーだからとか思って、同時にかかればワンチャンあるかもとか甘く考えてるんだったら痛い目見るよ? 一体多数? 乱戦? いいわよいいわよどんとこい! こっちはそういう戦闘こそ本領発揮するのよ!」

 

「黙れええええ!」

 

 それから後藤とスバ友たちは、何度も起き上がってはマリンに突っ込んでいきます。

 しかしその度毎に吹き飛ばされて、ついには気絶してしまいました。

 

「キミたち、このスバ友どもを縛り上げて船倉へぶち込んどきなさい!」

 

「「アイアイサー!」」

 

 マリンは元一味もとい宝鐘海賊団一味に指示を出し、気絶しているスバ友トリ派の剣士たちを拘束させます。

 そして彼らを船倉へ運び込ませました。

 メードに帰港するまで大人しくしていてもらうためです。

 

「よおし、目的地は西の孤島! このまま全速前進ヨーソロー!」

 

「「アイアイサー! 船長!」」

 

 こうして、スバルたちを乗せたアクアマリン号は西の孤島へ向け出航しました。

 




 スバルドダック(アヒルverスバル)のシュバル語は読み始めると疲れます。
 あえて読もうという方以外は、基本的にシュバシュバ喋った次行の(~)だけをお読みください。
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