勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~ 作:はばたくアヒル
はあちゃまを壁に叩きつけたマリンはマシーンヨーテボリを担ぎながら欠伸します。
「随分と余裕じゃない」
衣服の埃を払いながらはあちゃまが歩いてきました。
「ちょっとしたかすり傷でも初手バフスキルの持ち主にとってはスキルを使えなくなる痛手。あなたはもう『集結』を発動できない」
マリンの頬の切れ傷を指さしながらはあちゃまは言います。
マリンは「そうね」と返しました。
「でもそれと引き換えにどのくらいまで力を込めて打って良いのかわかった。『血の涙』を使えるあんたに『集結』は相性が悪いし、まあ失った分の収穫はあったわ」
「どうかしらね」
はあちゃまはブン! とクリスタルサビロイを素振りします。
「さっきまではあなたのバカ力に『集結』の攻撃力バフが掛かっていたからこそ手こずったけれど、今のあなたはただのバカ力。ちょっと力が上回ってるだけなら打ち合いで私が不利になるなんてことはないわ。加えて力加減をわかったと言うけれど、力を抑えながら戦うのはそう簡単なことじゃない。つまり今の状況、完全に私の優位ということよ」
「さあ。それはやってみなくちゃわかりませんよっと!」
言うなり、マリンはマシーンヨーテボリを振り上げながらはあちゃまに突っ込んでいきます。
はあちゃまは「ふん」と鼻を鳴らしてクリスタルサビロイを構えます。
そしてクリスタルサビロイでマシーンヨーテボリを真っ向から受け止めようとするのですが、
「はあ!」
かけ声と同時にマリンが剣に力を込めて、クリスタルサビロイを撥ね上げました。
もう「集結」は解除されているにもかかわらずの圧倒的な打撃力に、はあちゃまは思わず舌打ちします。
さらに一撃、もう一撃と打ち込まれてくる攻撃に、初めの一撃目から真正面に受け止めて腕の芯までダメージを響かせてしまった彼女は、反撃する隙も無くただ防ぐだけで手いっぱいです。それは先程までとまるで同じ展開のようでした。
「……ッ」
仕方なく、はあちゃまはクリスタルサビロイの構えをあえて解きます。
その狙いはあきらかで、本体に攻撃をしてくるマリンの隙をつくことで反撃し、このよろしくない流れを変えるきっかけにしようというものです。
マリンは構わずマシーンヨーテボリを振るいました。
しかしながら、本体にマリンの強打が入れば「血の涙」が発動するのは必須ですので、彼女は発動しないまでに力を抑えてくるはずです。
そこにカウンターでも合わせて命中させればまさに形勢逆転の一撃になるわけで、はあちゃまは息を呑んで待ち受けます。
そして、
ドガン!
と、マリンの渾身の一撃がはあちゃまの胴体に命中しました。
「……ッ」
なにが「力加減を覚えることができた」なのか、その一撃は彼女の左肩から左腹部までを抉り削り取って突き進んでいきます。あきらかな致命傷です。
はあちゃまは痛みを堪えながら「血の涙」を発動し、ダメージを軽傷までに軽減させます。
そして苛立たしげにマリンを睨みつけます。
そんなはあちゃまに、マリンはすでにマシーンヨーテボリを振るっていました。
「ぐッ」
顔を上げた直後にソーセージを叩き込まれ、はあちゃまはなすすべなく飛ばされていきます。
それから壁に激突し、再びの痛みに歯を食いしばります。
はあちゃまは再度「血の涙」を発動しようと目を見開きました。
「……?」
しかし今度は発動しません。
先に殴られたダメージは、「血の涙」発動までには至っていないようなのです。
「おのれえ」
憎々しげに、はあちゃまはマリンを睨みつけました。