勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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「はあ!」

 

「……ッ」

 

 何度か剣を交え、はあちゃまはマリンの攻撃の防ぎ方を掴んでいきました。

 まともに受け止めては力負けしてしまうので、接した直後にわずかに引いて威力を弱めて受けるのです。

 しかしそれでようやくお互いに打ち合う形となっただけで、彼女が優位に立ったというわけではありませんでした。

 あるいは、そんなもどかしさのせいでありましょう、

 

「ふふ。なかなか当てれなくなってきたわね」

 

 鍔迫り合いになった際、はあちゃまはあえて挑発するような軽口を叩きます。

 しかしマリンは「そうね」と素直に答えました。

 

「さすが赤井はあとの別人格。戦闘センスが並外れてる」

 

「ありがと。でもわざわざ赤井はあとの名前を出す必要ないでしょ。私の実力よ」

 

ことわりを入れるはあちゃまに「でも」とマリンは続けます。

 

「だからと言って別に大した問題じゃないけどね。この戦いにおける船長の役目は勝つことじゃないから」

 

「は?」

 

 マリンの言葉にはあちゃまは顔を顰めました。

 

「勝つ気がないって、どういうことかしら」

 

「誤解させちゃったみたいだから訂正するわ。別に船長だって勝つ気がないわけじゃない。あわよくば狙っていこうとはもちろん思ってる。今話しているのはそういう希望的な目的じゃなくて、船長がなさなくちゃいけない最低限のノルマのことよ。船長の次に控えてるスバルは三分間しか戦えないからね。そんなカップラーメン作る時間しかないとさ、たとえ実力で勝る相手だったとしても倒すのが無理ゲーになっちゃうでしょ。だから少しでもスバルのために体力を少なくさせて次にバトンを渡す。これが船長のノルマだと思ってるわけ」

 

「へえ。面白いじゃない」

 

 マリンの「たとえ実力で勝る云々」のあたりから、はあちゃまは張り付いたような笑みを浮かべています。

 

「でも、あなたは大事なことを二つ忘れてる。まず一つ目、あなたを倒した時点で私は『不死の魂』が発動できるから、せっかく削った体力も元に戻ってしまう。二つ目、これもあなたを倒した時点で、マシーンヨーテボリのスキル『集結』が私のものになる。残念ねえ。次に控えてる大空スバルはさらにパワーアップした私と戦う羽目になるのよ」

 

「パワーアップ?」

 

 マリンははあちゃまの言葉を繰り返してから、くすりと笑いました。

 

「それはない」

 

「なに?」

 

「あんた、ココさんの戦闘終了後から『不死の魂』の回復量が下がっているでしょ。ラミィさんとの戦闘終了時にかなり体力が減らされても次のココさんに初手バフスキルを使っていたのに、ココさんの次だったフブキさんには使ってなかったものね。さらに船長との戦闘開始時、外傷は塞いでいるし顔に出さないけれど大分ダメージが身体に残っていることはバレバレ。『不死の魂』も瀕死状態からの連続使用には対応できなかったってわけね。んで見たところ、今回の開始時体力は半分弱程度。つまりフブキさんとの戦闘直後時点で体力を1割切っていたとしても、次に使用する『不死の魂』の効果がさらに薄れていることを踏まえれば、たとえ今この瞬間に船長が瞬殺されたとしてあんたが体力完全状態になることはないってことよ。さらに船長がこの戦いで二割以下まで削り取っておけば、多分スバルと戦う際には五割を切ってることになる。まあだからそこまで体力を減らすことが船長のノルマってことになるわね」

 

「……」

 

「話を戻して、そんなあんたが船長の『集結』を手に入れてどうするって話なのよ。確かに『集結』は攻撃力を75%上昇させる初手バフスキル、この系統スキルのうちで最も高い攻撃力上昇率を持つわ。でもあんたは『集結』を使えない。体力完全状態になれないから。あなたは船長を倒してもパワーアップなんてできないのよ」

 

「なるほど。いやね。そんなつまらないこと考えながら戦ってるなんて」

 

「面白いことも考えてるわよ」

 

 返しながら、マリンがグイっと鍔迫り合い中の剣を押し込みます。

 

「あんた、何か秘策を隠しているでしょ」

 

「なによ唐突に。根拠は」

 

「勘!」

 

「はん。無根拠ってわけ」

 

 鼻で笑うはあちゃまに「ええ」とマリンが答えます。

 

「確かに『秘策』っていうのは船長の勘よ。ただ、何かを隠してるっていうのにはある程度確信があるわ」

 

「へえ」

 

「あんた、いちいち騒ぎすぎなのよ」

 

 マリンは続けます。

 

「ラミィさんの時もココさんの時も、フブキさんの時も。みんな結構驚かすようなことしてたからびっくりするのも無理ないんだけど、なんだろう、人間って一度や二度ならまだしもそう何度も立て続けに見せられたらさ、リアクションって薄くなっちゃうもんなんだわ。驚かないって意味じゃないのよ、内心で驚いていても反応が面倒くさくなってくるの。戦闘に集中しなくちゃいけないあんたなんて一番最初にそういう鈍化が始まりそうなもんなのに、いちいちオーバーリアクションしてさ。実は大抵のことに対して何とかできる秘策か何かを隠し持っているから、逆にその余裕を悟られたくなくてついつい大袈裟に反応しちゃうんでしょ」

 

「……。さあ。どうかしらね」

 

「図星でしょうが」

 

「あなた、さっきからうるさいわよベラベラと」

 

 はあちゃまは押されていた剣に力を込めて押し返し、ちょうど二人の中央あたりまで持っていきます。

 

「あなたが言ってたことで納得できたのはたった一つ、あなたを倒して『集結』を手に入れたところで次の戦いには使えないということだけよ。だけど私としてもそんなこと大した問題じゃないわ。だってそんなスキルなくても大空スバルは倒せるんだもの。私にとって重要なことは世界に十二本のレジェンドソーセージ、そのうちの一本のスキルが手に入ると言う事実なのよ」

 

「へえ。そう」

 

「そして次のスバルの番に、私の体力をより減らしておこうって言うあなたのノルマも達成できないわ。あなたごときのダメージなんて連続使用の『不死の魂』で十分カバーできるからよ」

 

「いいえ、そこは反論させてもらうわ」

 

 威圧的なはあちゃまに、負けじとマリンも睨み返します。

 

「船長にも意地ってもんがあんのよ。少なくともあなたの体力を二割以下にまで削る。それができなくちゃ降りるに降りれないわ」

 

「あら大変ね。それが本当ならあなたはもう二度とステージから降りることができなくなるわ。でも心配しなくていいのよ。私が蹴落としてあげるから」

 

 言いながらはあちゃまは剣の柄を強く握りしめ、目を大きく見開きます。

 

「知ってるでしょ。私には、体力が25%以下になって発動できる攻撃力バフスキルがあることを」

 

 その目が赤く染まりました。

 

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