勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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「知ってるでしょ。私には体力が25%以下になって発動できるスキルがあるのよ」

 

 はあちゃまの目が赤く染まります。

 スキル「断末魔」の発動です。

「断末魔」は残り体力が25%になることで発動できるスキルであり、使用者の攻撃力を75%上昇させます。

 

「はあ!」

 

 彼女は凄まじい熱気を発しだしたクリスタルサビロイをグッと押し込んで、鍔迫り合いするマリンの目と鼻の先までその剣身を近づけます。

 

「くッ」

 

 一気に押し込まれた拍子に体勢を崩したマリンは、とにかく仕切り直さなくてはと後ろに跳ねます。

 はあちゃまはそれを逃がすまいと追撃し、着地したばかりのマリンに向かってクリスタルサビロイを袈裟斬りに振り下ろしました。

 

「……ッ」

 

 マリンはそんな彼女をキッと睨んでから、足腰にグッと力を込め、マシーンヨーテボリを逆袈裟に振り上げて迎え撃ちます。

 クリスタルサビロイとマシーンヨーテボリ、二振りのソーセージが合わさりました。

 それらはガキン! と、凄まじい衝撃音を城内に響かせ、双方同時に大きく弾き返されます。

 

「互角!」

 

 観戦していたるしあは思わず叫びました。

 

「すごい船長! 相手は『断末魔』を発動して攻撃力を増してるのに!」

 

 興奮気味に騒ぐるしあに、

 

「違うな」

 

 隣から否定を出されます。

 アキロゼでした。

 

「互角じゃない」

 

 ぼそりと呟く彼女に「え」とるしあが振り返ります。

 その一方、はあちゃまとマリンは第二撃目を振るって再びのソーセージ衝突に入ります。

 そんな二人の剣士を眺めながら、アキロゼは続けました。

 

「上回っている。宝鐘マリンが」

 

 彼女がそう口にした直後、それを証明するかのような展開となります。

 衝突の第二撃目、それぞれ横なぎに振るわれたクリスタルサビロイとマシーンヨーテボリ、先は双方弾かれた痛み分けの結果でしたが、今度はハッキリと優劣がついたのです。

 

「くッ」

 

 はあちゃまのクリスタルサビロイに、マリンのマシーンヨーテボリが打ち勝ったのでした。

 

「行けえ! 船長!」

 

 ここぞとばかりにあくあが声を張り上げます。

 その声に応えるように、マリンが大きくマシーンヨーテボリを振るいました。

 

「……」

 

 相手に飛び込んだ直後のはあちゃまは、回避が間に合わずにクリスタルサビロイを防御に構えます。

 マリンはお構いなしに打ち込みました。

 すると呆気なく、はあちゃまのソーセージは上方に弾かれて身体ががら空きになります。

 マリンはそんな彼女の胴体めがけて、続けざまにマシーンヨーテボリを振るいました。

 もちろんはあちゃまもただやられてばかりではありません。弾かれたクリスタルサビロイをしならせてマリンに剣先を向かわせますが、マリンはガン無視で攻撃に集中します。

 はあちゃまの左脇にマシーンヨーテボリを叩き込みました。

 

「……ッ、……ッ」

 

 はあちゃまはその痛みに思わず息を止めます。

 それから目を見開き「血の涙」を発動しようとしますが、こんな時でも力を調整して打ち込むのが宝鐘マリンのしたたかさであるのでしょう、スキル発動が不発に終わります。

 一方マリンに向かって来ていたクリスタルサビロイは、途中から主のコントロールを失ってマリンの肩先をかすめる程度の軽傷が戦果になります。

 マリンの勢いは止まりません。

 彼女はマシーンヨーテボリをわずかにはあちゃまの胴体から離してから、再びその巨大ソーセージを振るいはあちゃまを弾き飛ばします。

 数センチの間しか開いていなかったにもかかわらずその打撃は強力で、はあちゃまは何度か地面に転がされながら壁際まで飛ばされていきました。

 それからよろよろと、クリスタルサビロイを支えに立ち上がろうとします。

 

「うおおお!」

 

 マリンがそんなはあちゃま目掛けて駆け出していきます。

 これからまたマリンの猛攻が始まる、二人の勝負を観戦する誰もがそう思いました。

 しかし、

 

「……」

 

 ようやくに立ち上がり上目で睨みつけて来るはあちゃまに、マリンはピタリと足を止めてしまいました。

 

「どうしたの」

 

 そんな彼女に、はあちゃまが含み笑いを浮かべながら話しかけます。

 

「追撃のチャンスだって言うのに、止まったりなんかして」

 

「意地が悪いわね。わかってるくせに」

 

 マリンはため息をつきます。

 

「あーあ、やっちゃったなあ。つい力んじゃって飛ばしすぎちゃったわ。船長にあんたを倒すチャンスがあるとすれば、一気に畳みかけて終わらせるしかなかったのに」

 

「どうする? 降参してもいいのよ」

 

 マリンはちらりと観戦するあくあ達の方を見てから「まさか」と肩をすくめて返し、ギュッとマシーンヨーテボリの柄を握り直します。

 

「船長もさあ、もう引っ込ますわけにいかない重たいもん掲げてんのよ。たとえ先の展開がわかってたとしても、ここで降りるわけになんていかないでしょうが!」

 

 大声で言うなり、マリンはまた「うおおお!」とソーセージを振りかざしながらはあちゃま目掛けて突っ込んでいきます。

 

「ああ。そう」

 

 はあちゃまは短くため息をついてから、ゆっくりと目を見開きました。

 その目がじんわりと黒紫色に染まります。

 それと同時にクリスタルサビロイから毒々しい紫色の靄が漂い出します。

 スキル「毒牙」の発動でした。

「毒牙」は所有者の残り体力が15%以下になることを条件に発動可能となるバフスキルであり、使用者の攻撃力を100%上昇させます。

 

「あなたは大したものよ宝鐘マリン。あなたが言っていた通り、私は残り体力を2割以下まで減らされた。次の戦いにはさらに少ない体力で臨まなくちゃいけない。『毒牙』を発動させた私にあえて突っ込んでくるのも、あるいはスキル発動状態の動きをスバルに見せてあげたいという作戦なのかしらね」

 

「うおおお!」

 

「私もそんなあなたの期待に応えて、徹底的に見せてあげるわ!」

 

 袈裟斬りに振るわれるマシーンヨーテボリの一振りを、はあちゃまはクリスタルサビロイで受け止めます。

 先に「断末魔」の攻撃力75%バフが掛かった攻撃には互角以上に渡り合っていたマリンでしたが、「毒牙」の100%バフでは勝手がまるで違うのでしょう、勢いつけて振り下ろされたマシーンヨーテボリが軽々と弾かれてしまいます。

 

「くッ」

 

 そこからは、一方的なはあちゃまの攻勢となりました。

 そもそも力で相手に勝ることが大前提になるマリンの戦い方が、「毒牙」の発動によって常に力負けしてしまうことによって、根本から通用しなくなるのです。

 攻め特化したマリンの剣士としての資質のみならず、所有するマシーンヨーテボリも攻めている間はその巨体を生かした盾となる一方、防戦一方になればその大きさゆえに小回りが利かず反撃するのも難しい木偶の棒の体となります。

 それでもどうにか致命傷だけは避け続けるマリンでしたが、横なぎに振るうと同時にしならされるクリスタルサビロイの剣先に追いつけず、脇腹を深く突き刺されます。

 

「……ッ」

 

 マリンは思わず顔を顰めました。

 

「船長!」

 

 それを見たあくあが叫びます。

 

「ずるいよこんなの!」

 

 彼女は悔しそうに頭を振りました。

 

「船長は、あんたが『断末魔』使っても自分のステータスだけで打ち勝ってたのに! 攻撃力を上げりゃいいんでしょとばかりにいけしゃあしゃあと『毒牙』使って、二倍になった力で押し付けてさあ! スキルなんて使わずに素のステータスで勝負してみなさいよ!」

 

 叫ぶあくあに、るしあが「あくあさん……」と呟きます。

 それから何か慰めを言ってやろうとしたのでしょう、口を開きかけますが、

 

「あくたん」

 

 戦場から、マリンがあくあに話しかけてきました。

 彼女は振り返る余裕もないようで、はあちゃまから目を離さずの状態で「そういうもんなのよ、ソーセージを持つ剣士の戦いってのは」と続けます。

 

「スキルを使われたからって卑怯だとか理不尽だとか言ったら始まらない。そういうことを含めて厳しい世界だって言われてんだから。それにね、そう文句言って良いのはレジェンドソーセージを持ってない剣士たちまでだよ。船長たちレジェンド所有者は多かれ少なかれ何らかのスキルを持っていてその恩恵を得ているんだし、そのなかでもマシーンヨーテボリの『集結』は優秀なスキル。そのソーセージを所有する船長はスキルについて責められる立場にあっても責める立場にはなれないし、なるべきでもないよ」

 

 あくあは悔しそうに「でも船長……」と食い下がろうとします。

 

「大丈夫よあくたん」

 

 マリンはそんな彼女の方を振り返り、口角だけを上げて笑ってみせます。

 

「船長はもう、二度と海賊旗を降ろしたりなんかしないから」

 

 その直後でした。

 

「はあ!」

 

 はあちゃまの振り下ろしたクリスタルサビロイが、マリンの左肩から右脇を抉り取るように斬り込まれます。

 

「……ッ」

 

 その一撃を受けたマリンは、一瞬目を見開いたかと思うとフッとその視線が上方を漂って、糸が切れた傀儡人形のように力なく崩れ落ちました。

 

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