勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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「ちょっと待った!」

 

 人間の姿に戻ろうとしたスバルを、誰かが大声で制止します。

 びっくりしたスバルは思わず変身を中断して、声の方を振り返りました。

 

「シュ、シュバルバ」

(お、おまえは)

 

「ふふ。ふふふふふ」

 

 その声の主は、ポルカでした。

 

「皆さん、誰か忘れちゃいませんかって」

 

 突然のイレギュラーな展開に唖然とする皆を余所に、ポルカは悠々とスバルの方へ歩いていきます。

 

「はあちゃまが手に入れてないレジェンドソーセージスキルはライトニングウィンナーの『神の怒り』だけじゃない。あともう一つあるだろ」

 

「なに」

 

 はあちゃまがポルカに怪訝な目を向けます。

 ポルカはそんなはあちゃまに不敵な笑みを返しながら、ゆっくり右手を伸ばします。

 ただしその手の向かう先はフォークが仕舞っているはずのレッグバッグではなく、なんと彼女自身の胸元でした。

 ポルカは躊躇することなく谷間に二本の指を突っ込みます。

 

「きゃ! エッチ!」

 

 ねねが小さな悲鳴を上げて、両手で目を覆いました。しかし指と指の間の隙間はきっちり空いており、むしろ興味津々にポルカをジッと覗き見ています。

 

「バーニング・サラミのレジェンドソーセージスキル、『再来』がよ!」

 

 一方ポルカは勢いよく谷間から手を引き抜きます。

 引き抜かれるポルカの指、そこには虹色に輝くレジェンドソーセージのフォークが挟み持たれていました。

 彼女は素早くフォークを持ち直し、ブン! と振るいます。

 フォークの先にソーセージが出現しました。

 

 長さは120センチ、幅も基準サイズです。

特徴的な外見としては、先端部分が斜めに切断されてできたような楕円型の断面になっていることでしょうか。

 しかし正直な感想を言えば、やや黒味のかかったサラミソーセージという印象であり、現にそれを見たるしあたちは「おおおお!」と出かかった声を「おお、……おおお?」とつい竜頭蛇尾に押さえてしまい、敵であるはずのはあちゃまですらどこかがっかりしたような顔をしています。

 しかしポルカはそれらの反応を一切気にした様子なく、

 

「ていうわけ。さ。スバルよりまずポルカと戦おうよ」

 

 と、はあちゃまにその剣先を向けて口にします。

 すると、

 

「ちょおっと、待った」

 

 そのポルカに、はあちゃまではなく味方サイドのぼたんが制止をかけます。

 

「おまるん。これは一体どういうことなのか説明してもらえるかな?」

 

 にこやかに目を細めながら尋ねますが、瞼の奥は全く笑っていません。

 

「おまるんがバーニング・サラミのレジェンド所有者? なにそれ初耳なんだけど」

 

 ぼたんの言葉にねねとラミィもこくこくと頷きます。

 

「あ、あはは」

 

 ポルカは乾いた笑みを浮かべてから、

 

「いや、まあ、なんつーの?」

 

 と話し始めました。

 

「ラミィだってスケルトンソーセージの所有者だってこと隠してたじゃん。そんな感じっていうかさ。ほら。ポルカほどのいい女になると秘密の一つや二つ持ってて当然だしい」

 

 腰をくねらしながらそんなことを言いだすポルカに、

 

「いい女かどうかは置いといてさ」

 

 とねねが冷静に突っ込みます。

 

「ねねたちは一緒にレジェンドソーセージを集めてた時期もあったじゃん。ラミィは事情が事情だから仕方ないってわかるよ。でもおまるんは違うじゃん。あんまりだよ」

 

「いやいやポルカもね、残りのレジェンドソーセージがポルカのバーニング・サラミ一本になったらちゃんとカミングアウトするつもりだったよ。当たり前じゃんねねち」

 

「ええー。信じられないんですけどー」

 

 あからさまにうんざりした態度で言うねねに、

 

「なんだよー!」

 

 ポルカがバーニング・サラミを向けて、突然キレました。

 

「ポルカだって、ポルカだってなあ! 本当はもっと早く颯爽と正体を明かして『キャー! おまるんカッコイイー!』とか言われたかったんだよ! でもみんなそんなチャンス与えてくれなかったじゃん! 絶体絶命大ピンチって展開になっても『はいはいおまるんはいいから大人しくしてようね』ってばっかりでさ! きいいい!」

 

 ヒステリックを起こしたように地団駄を踏み始めます。

 

「どおどおどお」

 

 ぼたんがそんなポルカを馬を落ち着かせるようにあやします。

 

「それはおまるんがレジェンド所有者だって知らなかったからさ。勝算なく言ってるんじゃないかと思って、心配だったんだよ」

 

「そうよ。そもそもそういうすれ違いが起こらないように、あらかじめ教えてほしかったの」

 

 ラミィも会話に加わってきます。

 三対一で劣勢のポルカは「うぐぐぐ」と悔しそうに呻きました

 

「まあまあ。みんなその辺にしとくにぇ」

 

 するとみこが彼女たちの間に入ってきました。

 

「確かにずっと秘密にしてきたことに対して、同じチームの一員として思うことがあるという気持ちはわからないこともないにぇ。でも親しき中にも礼儀ありというし、言いたくなかったことを無理して言う必要はそんなないとみこは思うにぇ。むしろこうして最後の最後にはカミングアウトしてくれたことに感謝するべきだにぇ。欠員だと思っていたバーニング・サラミの所有者が実はすでにみこたちの側にいた、これは喜ぶべき誤算だにぇ」

 

「魔王様!」

 

「行けいポルポルよ! 貴様の持つその伝説の剣でもって邪悪なるはあちゃまを打ち倒し、我が魔王城を取り戻し兎田を助け出すのだ! さすれば貴様を魔王軍四天王から魔王軍総司令官に昇格させることを約束するにぇ!」

 

「魔王軍って、おまるん一人しかいないのに」

 

 ぷふっと笑うねねを余所に、ポルカは「ははあ!」とみこに恭しく傅きます。

 それからあらためて、彼女ははあちゃまの待つ戦場へ向かいました。

 

「いらっしゃい。バーニング・サラミの所有者さん」

 

 ステージに足を付けたポルカに、はあちゃまは微笑みかけます。

 

「わざわざカミングアウトしてくれてありがとう。鴨が葱を背負って来るなんてことが本当にあるなんて、大空スバルとの対戦前にこんなサプライズしてくれて本当に嬉しいわ」

 

「ああ。そうですか」

 

「言っておくけど、一度ステージに上がったからには降参しない限り降りることは許さないわ。あなたはもう私と戦う以外に選択肢はない」

 

「言われなくても降りる気なんてさらさらないって。そうじゃなきゃレジェンド所有者だって教えるわけないじゃん」

 

 ため息ついて答えるポルカに「ふふ」とはあちゃまは含み笑みをこぼします。

 

「あなたを倒せばバーニング・サラミのスキル、『再来』も私のものとなる。愉快だわ。大空スバルと戦いには、まさに『神の怒り』以外のすべてのスキルを所持したベストの状態で臨めるというわけね」

 

「気が早いなあ。相変わらず」

 

 ポルカもそんなはあちゃまに皮肉な笑みで返しました。

 

「一度だってポルカと手合わせしたことないくせによ。それにポルカに勝ってベストの状態で臨むのなんだのって言ってるけど、バーニング・サラミの『再来』はあんたがすでに持ってる『不死の魂』と全く同じ、勝利後に所有者の体力を回復させる盤外スキル。仮にポルカに勝ったとしてもダブってるから意味ないだろ」

 

「ええ。そうね。私はすでに『不死の魂』を手に入れているから意味ないわね。でもノーダメであなたを倒せば次に戦うスバルに備えて多少なりとも体力は回復できる。やっぱり嬉しいに越したことないわ」

 

「あんたさ、そろそろ学びなよ」

 

 ポルカは呆れたようにため息つきます。

 

「相手のことを見くびって戦ってみたら本当は結構強くて手こずって結局ボロボロになってようやく勝利、さっきからずっとそのパターンでしょうが。また繰り返すぞ」

 

「……」

 

 それは本人も多少なりとも自覚あったのでしょう、はあちゃまはポルカの言葉に顔を顰めます。

 それから無言でフォークを振るい、ブン! とクリスタルサビロイを出現させました。

 

「うわあ、怖い怖い。そんな怒るなって。図星だからってさ」

 

 ポルカはそんな彼女を小バカにするように笑ってから、

 

「でもさ」

 

 と続けます。

 顔には薄ら笑いを浮かべていますが、その瞼の奥は少しも笑っていませんでした。

 

「怒りたいのはポルカも同じなんだよなあ」

 

 言ってフォークの柄を強く握るポルカの手の甲から、血管が薄っすら浮き出ます。

 ポルカはそのバーニング・サラミの剣先をはあちゃまに向けてから、キッと彼女を睨みつけました。

 

「おまえがうちのラミィを二度もボコしてくれたこと、ポルカは忘れてねえからな!」

 

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