勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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 ポルカに攻撃を仕掛けたはずのはあちゃまが、突然地面に叩きつけられます。

 はあちゃまは、一体何が起きたのか思考が追いつていないようで、俯せのまま眼を瞬かせます。

 

「見たか! ポルカハンマー!」

 

 そんな彼女にバーニング・サラミを突きつけたポルカが叫びます。

 その声にハッと我に返ったのでしょう、はあちゃまは急いで立ち上がり飛び退いてポルカとの距離を取りました。

 それから彼女はポルカの持つソーセージを見て、思わず顔を顰めました。

 ポルカのソーセージ、バーニング・サラミの見た目が変わっていたからです。

 ちょうど剣身の半ばあたり、ポルカが少し前に火を点したその部分がグニャリと折り曲がり、まるでトンファーのような形状になっていました。

 

 

 ◇  ◇  ◇

 

 

「シュバシュバルバ。シュバシュバルルバ」

(無茶苦茶だな。あのソーセージ)

 

 ぼそりとスバルが呟きます。

 

「シュババシュバルバシュバルルババシュババシュバルルシュバルバシュバルバシュババシュバルバシュバルルババ、シュバシュバルシュバルシュバ」

(初見レジェンドソーセージのなかで一番見た目がまともと言うか地味だと思ってたら、トリッキー過ぎるだろ)

 

「そうですね。見た目が地味な分だけ意外性がすごいです」

 

「シュバ」

(ああ)

 

「でも、なきりのゴーストベーコンも形を自在に変えることができましたし、盤外スキルのレジェンドソーセージは実質戦闘中に使用できるバフスキルがないわけですから、その代わりにソーセージそのものが他のものに比べて特別性になっているのかもしれませんね」

 

「シュバルバ。シュバルルシュバルバ」

(そうだな。そうかもしれない)

 

「ところで、さっきは一体何が起きたのですか。るしあとしては、ポルカを後ろから刺そうとするクリスタルサビロイの方に注目してしまって、よく見ていなかったのですが」

 

「シュバルバシュバルバ。シュバルシュババ、シュババ」

(スバルもそうだよ。だけど多分、あれは)

 

「ソーセージ剣身の上半分をはあちゃまの背中に落として当てたんだろう」

 

 アキロゼが、意図せずもスバルが喋ろうとしているのを遮って答えます。

 スバルはそうやって話途中に被せられるのはもう慣れたようで、「続きはそいつから聞け」と言わんばかりに殊勝に口を閉じてステージの方に目を向けます。

 るしあはアキロゼの方に顔を向けて、

 

「そうなのですか」

 

 と促しました。

 

「ああ」

 

 アキロゼは頷きます。

 

「二節棍状態となっているバーニング・サラミの節部分が、少し前に尾丸ポルカがソーセージに火を点した部分と一致する。おそらくあれはバーニング・サラミを二節棍状態にする準備だったんだ。火程度でソーセージが何らかの影響を受けるとは信じがたいが、点火されたソーセージ部位がおそろしく軟化することで二節棍の武器に変えた。尾丸ポルカははあちゃまのフェイントにかかったふりをして彼女のそばまでバーニング・サラミを持っていき、その振るった勢いで二節棍化したソーセージ上半分を円運動させて、クリスタルサビロイが自分に達するよりも早くはあちゃまを叩き落としたんだ」

 

「マジですか。でもそれ、もしはあちゃまに見破られていたら一気に不利になりそうですよね」

 

「そうだな。尾丸ポルカがはあちゃまのフェイントにかかったふりをしたように、はあちゃまが尾丸ポルカの攻撃にかかったふりをしていたとしたら、直後に躱され逆に背中をクリスタルサビロイで突き刺されていただろう」

 

「わざわざソーセージに火を点すとこなんか見せてるんですから。警戒されてもおかしくなかったですよ」

 

「肝が据わっていることに違いはない。だが彼女の判断は無謀じゃない。実際にはあちゃまは見抜けなかった」

 

「はあ」

 

「尾丸ポルカは何度かパフォーマンスのようなことをしていただろう。てっきり相手を挑発して苛立たせたいのかと思っていたが、おそらく本当の狙いはこれだ。これまで何度も挑発としか思えないパフォーマンスをしてきたからこそ、今回もその下らない挑発だと思わせて警戒を緩めさせた。逆を言えば、仮にあの不意打ちの準備を尾丸ポルカがこそこそと始めたとしたら、はあちゃまも仕切り直すくらいの警戒はしただろう。そうした判断を鈍らせたのは、これまでの挑発的なパフォーマンスがあり、かつああ堂々と目の前で指を鳴らして火を点されたからだ。あの不意打ちが成ったのは幸運でも相手の不注意でもない、尾丸ポルカの敷いた布石が生かされた結果というわけだ」

 

「そう言われると、そうかもしれませんが」

 

 頷いてから「でも」とるしあは続けます。

 

「るしあには、やっぱりしっくりこないです。ポルカはどうしてわざわざそんなリスキーなことをするのでしょうか。ポルカははあちゃまの攻撃を難なく躱すことができるじゃないですか。万が一でも見破られたら不利になるようなこと、しなくてもいいと思うのですが」

 

「今は容易に躱すことができても、その優位は長く続かないとわかっているからだろう」

 

「そうなのですか」

 

「はあちゃまには『断末魔』や『毒牙』と言った残り体力が少なくなることによって発動できる攻撃力バフスキルがある。攻撃力バフによって強化された剣戟を同じように躱せるかと言ったら話が変わってくるからな。そういった後々の戦局まで考慮すると、現段階の優位な状況のうちに何らかの手を打っておかなくてはならない」

 

「それがリスクを背負ってまで実行したポルカ・ハンマーなのでしょうか」

 

「ハンマーだのファイアだのなぜいちいち叫んでいるがわからんが、まあそうだ。重要なのはそれらによってはあちゃまが受けたダメージじゃない。仕留めたと確信した直後にまさかの不意打ちで二度もやり返された、という戦いの流れだ。二度あることは三度あるとも言うし、実際次は何をするか私たちも想像がつかない。はあちゃまの立場であれば尚更そうで、絶好の攻撃機会と思える場面に合っても尾丸ポルカの不意打ちを警戒せざるを得なくなった。本調子でない剣は自然と鈍り、本来なら躱せない剣戟の回避も可能になる。また仮にはあちゃまが来るだろう不意打ちを覚悟しての特攻覚悟できたとしても、そのために判断力、思考力が鈍化してくれるから単純な不意打ちやフェイントはかけやすくなる。そうした精神的な足枷を取り付けることが目的だと言えば、リスキーな攻撃をする価値は十分にあったと思わないか」

 

「なるほど」

 

 るしあは頷いてからポルカの方に視線をやります。

 

「でもまさか、ポルカがそんなことまで考えて戦っているなんて」

 

「おそらく」

 

 アキロゼもポルカの方に目を向けました。

 

「癖の強さで言うなら、彼女の方がはあちゃまよりも一枚上手なのだろうな」

 

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