勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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 弾き飛ばされたポルカに向かってはあちゃまが駆け出し、クリスタルサビロイを振り下ろします。

 ポルカはそれをどうにか躱しますが、レの字を書くように返し刀で斬り上げた二振り目は回避が追いつかず、バーニング・サラミで受け止めました。

 

「……ッ」

 

 その瞬間、ポルカの顔が歪みます。

 ポルカは剣先を地面に向けたままバーニング・サラミの先端から、ポルカ・ファイアを放射しました。

 相手だけでなくポルカ自身にも青い炎が燃え移るわけですが、だからこそはあちゃまにとっての不意打ちとなったようで、わずかならが彼女の動きが止まります。

 ポルカはその隙を見逃さず、バーニング・サラミを持つ右手を左手で持ち上げて、噴出口である剣先をはあちゃまに向けます。そうしながら後方に跳ねて距離を取りました。青い炎を煙幕代わりにして、はあちゃまの追撃を防いだのです。

 そのようにして仕切り直しを計るポルカでしたが、彼女の右腕は付け根からだらんと垂れ下がっていました。

 

「あら」

 

 それを見たはあちゃまが笑います。

 

「その腕、大丈夫なのかしら」

 

「……」

 

 ポルカは無言で左手で外れた右腕の付け根あたりを押さえると、ゴキン! と音をさせて押し込みます。

 それから利き手の具合を確かめるように、軽く剣を振るうなどしました。

 一方はあちゃまはクリスタルサビロイを片手に、ゆっくりと近づいていきます。

 ポルカは自分に向かってくるはあちゃまと向き合いながら、ごくりと唾をのみました。

 表情にこそ何も出てきませんが、バーニング・サラミを持つポルカの手は震えていました。

 

「もう降りたい?」

 

 はあちゃまがそんなポルカの心情を汲み取ったような声音で、話しかけます。

 

「私としては構わないわよ。あなたを徹底的にボコボコにしてスキルを得ようが、あなたが自発的に降参して得ようが、どっちにしても『再来』が手に入るなら」

 

 そう喋りながらも、足は止めません。

 

「……」

 

 ポルカは何か発しようとするように口を開きかけますが、躊躇するように俯いてその口を閉じます。それを何度も繰り返します。

 そうしている間にも、はあちゃまはポルカとの距離を縮めていきます。

 ポルカは最後、意を決したように唇を噛み締めて、はあちゃまを睨みつけました。

 

「へえ。戦うってわけね」

 

 ポルカの反応をそう解釈して、はあちゃまは鼻で笑いました。

 その時です。

 

「おまるん!」

 

 スバルたちの観客方向から、ポルカを呼ぶ声が聞こえました。

 はあちゃまとポルカの呟きのような会話が皆に聞こえるほどの静寂のなかでしたので、その声はよりはっきりと響き渡りました。

 思わず二人は声の方に振り向きます。

 

「もういい! 戻ってこいおまるん!」

 

 声の主はねねでした。

 

「リーダー命令だ! 降参しろ!」

 

 ねねは声を張り上げて叫びます。

 

「おまえが降参してスキル渡しちゃっても! そのせいで大変なことが起きちゃったとしても! おまえは悪くない! リーダーのねねがそうしろって言って、おまえは従っただけなんだから! もしもこのことでああだこうだ言うやつが出てきたら、ねねがそいつの納得するまで頭下げて丸く納めてやるから! だからこっちに戻ってこい! 取り返しのつかない怪我をする前に!」

 

「ねねち……」

 

「そうよおまるん! あなた打たれ強い方じゃないでしょ!」

 

「降参しとけおまるん! これガチで死んじまうって!」

 

 ねねに続きラミィ、ぼたんもポルカに呼びかけます。

 

「……。あーあ」

 

 すると、ポルカは先程までの緊張張り詰めた肩をだらんとさせて、はあちゃまが目の前にいるにも関わらず伸びなどし始めました。

 

「なにしてるの。あなた」

 

 いきなりそんなことをしだすものですから、はあちゃまも怪訝な顔になります。

 

「何って。ちょっと肩肘張って動きが鈍くなってるみたいだから、ストレッチ」

 

 平然と答えるポルカに、彼女は「ふん」と鼻を鳴らしました。

 

「降参するにしては態度がなってないわよ。尾丸ポルカ」

 

「降参、か」

 

 身体を伸ばすのを止めて、ポルカがぼそりと呟きます。

 

「ポルカもさ、実はさっきちょっとだけそれが頭に過ったんだ。ポルカって汚ねえやつだからさ、明らかな降参だと体裁悪いから死んだふりでもして退場しようかしら、なんて下衆な考えとかもうっすら浮かんじゃったわけ。でもなあ、なんかなあ」

 

「?」

 

「やっぱり無理なんだよな、こんなに良い仲間持って見守ってもらってさ。こいつらにポルカの降参するなんて格好悪いところ見せたくねえんだよ!」

 

「降参しないのね?」

 

「耳クソ詰まってんのか! しねえって言ってんだよ!」

 

 声を張り上げるなり、ポルカは目の前のはあちゃまに向かってバーニング・サラミを振り下ろします。

 

「ふん」

 

 それを見たはあちゃまは、そのソーセージにクリスタルサビロイを振るって合わせにいきます。

 バフスキルによって175%も攻撃力上昇している彼女のクリスタルサビロイには、打ち合うだけでもポルカにダメージが入るからです。

 一方、はあちゃまがバーニング・サラミに剣を合わせにきたことを認めたポルカは、左手で指を鳴らしました。

 ボッと音をさせて、バーニング・サラミの剣身半ばに青い火が点火されます。

 その直後、ガキンと音をさせてレジェンドソーセージの剣と剣が衝突しました。

 

「……ッ」

 

 案の定、その衝撃に耐えきれずにポルカの腕の根がミシミシと軋み声を上げます。ポルカの顔にも苦悶が浮かびます。

 それを見たはあちゃまはクリスタルサビロイを握る手にさらに力を入れて、一気に押し込もうとします。

 しかし、

 

「!」

 

 いきなりバーニング・サラミの剣身の点火箇所がぐにゃりと折れ曲がり、その剣身上半分と接しながらの状態で力を込められていたクリスタルサビロイが、張り合う相手をなくして空中に泳ぎました。

 所有剣ですらそうなのですから、所有者であるはあちゃまなどバランスを崩して多々良を踏むざまです。

 

「油断してるからだよお!」

 

 そんなはあちゃまに、ポルカは叫びながら懐に潜り込みました。

 そこは超至近距離、殴る蹴るのリーチです。

 しかしながらポルカの右腕は先の剣の衝突で使えなくなったようで、バーニング・サラミの柄を握ったままぶら下がっています。

 ポルカは、ポルカ・ハンマーによって二節棍化したその剣身の上半部分を左手で掴み持って、それを思い切りにはあちゃまの脇腹に殴りつけました。

 レジェンドソーセージを素手で持って殴りつける、自分にも属性効果のダメージが直に入ることを承知した上での攻撃です。

 

「……ッ」

 

 打たれたはあちゃまが、苦悶の顔で目を見開きました。

 はあちゃまは現在、『毒牙』と『断末魔』を同時発動しています。

 悠々としているゆえに忘れがちですが、『毒牙』を発動している時点で彼女の体力は15%以下であり、おそらく実際には一桁台に入っています。

 そんな体力状態時に、直接身体にレジェンドソーセージをぶつけてくるのですから、たまったものではありません。

 

「おらあ!」

 

 もう一発、ポルカが腹部に掴んだバーニング・サラミを叩き込みます。

 

「!」

 

 それを受けたはあちゃまの腰が曲がります。

 避けなかったのは、すで足が言うことを聞かないからでしょう。膝が笑うようにガクガクと震えているのでした。

 

「この!」

 

 そしてさらにもう一発、ポルカはバーニング・サラミを喰らわせようとします。

 するのですが、

 

「ッ」

 

 それはできませんでした。

 はあちゃまが、何かしたのではありません。

 ポルカの手が限界だったのです。

 彼女はバーニング・サラミを掴んでいませんでした。

 それを手放した素手で、はあちゃまの胴を叩いていました。

 

「……」

 

 はあちゃまのみならず、ポルカの体力も限界なのでした。

 バーニング・サラミを掴んでいる感触も麻痺してわからない状態であったので、それを落としたことすら気づいていなかったのです。

 

「……ッ、……ッ」

 

 そんなポルカを、荒い息をさせながらはあちゃまが睨みつけます。

 彼女はポルカを蹴りつけました。

 200%近い攻撃力バフがかかっての蹴りですので、ソーセージレベルとは言わずともダメージが入ります。

 それを胸元に受けたポルカは1メートル弱飛ばされて、転がりました。

 すると、

 

「……」

 

 はあちゃまはそんなポルカにクリスタルサビロイを振りかざし、無言で叩きつけ始めました。

 

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