勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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「ホロ・デ・ソーセージ大陸はおまえのものじゃない! 覚悟しろ! はあちゃま!」

 

 スバルがライトニングウィンナーを出現させて叫びます。

 

「ふん」

 

 はあちゃまは鼻で笑いました。

 

「せっかく最後の最後にお情けをかけてあげたっていうのに、随分な態度じゃない。いいわよ別に。あなたがそんなにボコボコにされたいのなら」

 

 そう答えるはあちゃまはすでにクリスタルサビロイを出しています。

 ただならぬ空気が漂っていることを感じたねね、るしあたちは、急いで二人から離れました。

 そしてポルカを運ぶねねとラミィがステージから降りたタイミングを戦闘開始の合図に、スバルが動きます。

 

「シュバ!」

 

 アヒルなかけ声と同時に、スバルの姿が消えます。

 もちろん実際に消えたわけではなく、傍目からそう見えるほどに速い動きで、はあちゃまに駆け出したのでした。

 そうして一瞬にしてはあちゃまの目の前まで接近しライトニングウィンナーを横薙ぎに振るおうとするのですが、

 

「ふん」

 

 はあちゃまはそんなスバルを一笑します。

 そして彼女の両目がそれぞれ違う色、右が鉛色に、左が茶色に染まり変わりました。

 それと同時に、彼女の手にしているクリスタルサビロイがガチガチに凝固しだしたかと思うと、その節々から白い湯気を噴き始めます。

 初手バフスキルの『集結』と『大地』を同時発動したのでした。

 初手バフスキルは完全体力状態であることを条件に発動できるスキルであり、『集結』は使用者の攻撃力を75%、『大地』は55%上昇させます。

 つまりは130%の攻撃力上昇バフをかけたのでした。

 攻撃力バフがかかっているということは、攻撃力のみならず剣速も向上します。

 その結果、いきなり目の前に出現して先制攻撃を行ったスバルに対して、130%向上した驚異的な剣速のクリスタルサビロイでもっての迎撃が成功してしまいます。

 一方、それに気づいたスバルは剣を受ける直前で腕を折り畳みました。

 そうして急所だけは防ぐものの、防御するためのその腕にクリスタルサビロイを受け、勢いよく飛ばされます。そのまま壁に叩きつけられました。

 

「ッ」

 

 現在のはあちゃまは130%の攻撃力バフが掛かっていることに加え、レジェンドソーセージであるクリスタルサビロイを生身で受ければ属性ダメージも加算されます。

 スバルはその痛みに思わず顔を歪めました。

 

「どうしたの。覚悟しろとか偉そうなことを言っておいて、この程度?」

 

 振るい終えたクリスタルサビロイをゆっくりと下ろしながら、はあちゃまが余裕の笑みを浮かべて聞きます。

 

「……」

 

 一方スバルは無言で立ち上がりました。

「はああ」と長く息を吐き、肩を脱力させます。

 それからゆっくりと身を屈めてクラウチングのポーズを取ったかと思うと、またフッと消えました。

 ですが、その消え方が一度目の疾駆とはまた程度が違うのでしょう、るしあなどの剣士でない人間の目には同じように消えたとしか見えないのですが、先程のスバルの動きには表情変えずに目で追っていた観客側の面々も、今回は「あれ?」「ん?」と困惑の呟きをもらしたりきょろきょろと周りを見回したりしているのです。

 レジェンド所有者を含むベテラン勢がそんな反応をするほどの速さなのでした。

 しかし、

 

「……」

 

 はあちゃまは冷静です。

 姿を消したスバルに対しサッと視線だけで左右を確認したかと思うと、素早く背後に振り返ってクリスタルサビロイを逆袈裟に振り上げます。

 すると一瞬後、まさにその空間にスバルが出現しました。

 

「はあ!」

 

 現れたスバルにクリスタルサビロイが迫ります。

 それは先程の二の舞に思われました。

 ですが、

 

「シュバア!」

 

 今回のスバルは先程とは違いました。

 三節棍状のライトニングウィンナーを、迎撃してきたはあちゃまのクリスタルサビロイよりもさらに上の剣速でもって、鞭のように振るってはあちゃまに当てにいったのです。

 パアン! と、乾いた音が城内に響き渡ります。

 

「入った!」

 

 思わずるしあが叫びました。

 

「だからどうしたのよ!」

 

 それに答えたのははあちゃまです。

 彼女は構わずクリスタルサビロイを振り上げました。

 そして剣を振るった直後のスバルの身体に、その強打を叩き込みます。

 

「ッ」

 

 それは、驚異的な一撃でした。

 まずスバルは攻撃直後であったために防御が追いつかず、胴体へのクリーンヒットとなってしまった点。また、そのタイミングが絶妙で、ある程度のカウンターダメージが加算されてしまったという点。

 そして一番最悪なのが、スキルが解かれるまでの時間内の攻撃になった、という点です。

 というのも初手バフスキルは完全体力状態であることが発動条件であるので、その理屈で言うならば、スバルの攻撃を受けて条件を満たさなくなったはあちゃまはその瞬間から初手バフスキルの『集結』と『大地』を使えないはずです。

 しかし実際にはダメージを受けてからしばらくの時間ラグがあります。

 スキルが宿ったソーセージが通常状態に戻り、スキル発動時の証となる目の色の変化が治るタイミングでバフ効果が消えるのです。

 つまりスバルは130%攻撃力が上昇したソーセージの一撃をカウンターで、まともに受けてしまったのです。

 その一撃を受けたスバルはふたたび飛ばされて、壁に激突します。

 ずるずると壁から落ちて地面に俯せとなり、咳き込みます。

 その口元に手をやってそっと掌を見てみると、赤く染まっていました。

 

「ふふ。ふふふ。全然大したことないわね」

 

 そんなスバルを見て、はあちゃまが笑います。

 ダメージを受けた彼女はすでに『集結』と『大地』が解除された状態で、目の色もクリスタルサビロイの形状も元に戻っています。

 しかしその表情には依然余裕が張り付いていました。

 

「軽い。軽すぎるわ大空スバル。あなたの剣は」

 

 スバルに打たれた左肩を、埃を払うように叩きながら続けます。

 

「私が戦ってきたこの場のレジェンド所有者のなかで一番軽い。まともにヒットさせてこの程度のダメージなんて、とてもレジェンド所有者のレベルじゃないわ」

 

「……」

 

「実を言うとね、私はあなたをすごく警戒していたのよ。『神の怒り』以外のすべてのスキルを揃えなくちゃいけないって、スキルを二つ同時発動する秘策もあなたのためにずっと隠し通そうって、そうしなくちゃ勝てないって思ってた。そのくらい警戒していたの。なんて言ったって、私に唯一の黒星を付けた相手だからね。でもとんだ拍子抜け。私があなたに負けたのは目覚めた直後、かつ全くスキルを持っていなかった絶不調状態だったから。赤井はあとがあなたを期待したのもただあいつの見る目がなかったから。それだけのことだったのね」

 

 すると、

 

「……。ふッ」

 

 ベラベラと喋るはあちゃまに、地面に俯せのスバルが含み笑いをこぼします。

 それが気に入らなかったのでしょう、

 

「なにかしら」

 

 はあちゃまは無理矢理笑みを張り付けたような顔で、首を傾げて聞きました。

 

「はあと先輩に見える目がなかった? 違うな」

 

 口にしながら、スバルがふらつきながらも立ち上がります。

 

「見えてないのはおまえだよ。はあちゃま」

 

「なんですって」

 

 目元を顰めるはあちゃまに、スバルは顔を上げてキッと彼女を睨みつけます。

 そして、

 

「おまえは何も見えてねえ! それを今からわからせてやるよ!」

 

 そんなスバルの目が、青紫色から金色に変わりました。

 

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