勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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「な、なにイイイ!」

 

 いきなりるしあとスバルを抱えて高層ビルの最上階から飛び降りるというキアラの自殺行為にしか思えない行動に、ココは思わず声を上げました。

 ココは蹴破られたガラス張りのところまで駆け寄って下を覗き込みます。

 そして地面に向かい落下していくスバルたちを認めました。

 

「おー、おー、おー、おー! なんて無茶苦茶なヤツらだよおい!」

 

 

  ◇  ◇  ◇

 

 

「シュ、シュバルウウウ!」

(お、落ちるううう!)

 

「あわ! あわわわ! わわわわわ!」

 

「スバルせんぱい、暴れないでください! るしあさん、もっとしっかり掴まって!」

 

 ビルの最上階から飛び降りたスバルたちは、落下速度がどんどん増していき、息をするのも苦しくなります。

 しかしキアラは大きく息を吸い込んで、声を張り上げました。

 

「フェニックス!」

 

 直後、タタタタタとダチョウが駆ける足音が聞こえてきます。

 ふとスバルが下を見てみれば、ちょうど彼女たちが落ちるだろう地点にフェニックスが到着したところでした。

 そしてフェニックスの身体の上に、二人を抱えたキアラが落下します。

 

 ボフン!

 

 着地直後、フェニックスがクッションとなりスバルたちは一度大きく宙に跳ね上がりました。

 しかしそれから二度、三度と跳ねるうちに衝撃は急に弱まっていき、四度目ともなると自分たちで跳ぶ程度の高さとなります。

 三人はフェニックスにしがみ付き完全に衝撃を押さえつけてから、騎乗の体勢を整えました。

 

 一方、スバルたちを受け止めたフェニックスは足をがくがくと振るわせます。

 今にも地に膝をついてしまいそうです。

 

「フェニックス!」

 

 キアラが呼びかけました。

 

「根性を見せろ! おまえもアヒージョの一員だろ!」

 

 キアラの入れる喝にフェニックスは目を見開きます。

 震える足を一歩前に出し、力んで踏みとどまりました。

 

「えらいですね、フェニックス」

 

 るしあがフェニックスを労って背中を撫でてやります。

 

「シュババシュバルババシュバシュバルルシュバ」

(あとでうまいもん食わせてやるからな)

 

「よおし! 南に走れフェニックス! 目指すは剣士のいる丸太小屋ア!」

 

 キアラがそう号令をかけた時です。

 上から何かが降ってきて、ズドン! と音を立てスバルたちの目の前に落下しました。

 

「シュ、シュバア?」

(な、なんだ?)

 

 それが地面に落ちた衝撃で砂埃が舞い上がり、よく前が見えません。

 でもしばらくすると視界が晴れてきます。

 さて何が落ちてきたのだろうかと砂煙のなかを覗き込んだスバルたちは、思わず息をのみました。

 

 まず目についたのは地面をえぐったクレーターのような跡です。

 それからその窪みにバチン! と鞭打つ大きな尻尾、そしてオレンジ色の髪を逆立て血色に目を光らせている桐生ココその人です。

 

「行かせねエと言ってんだろうがア!」

 

 ココはスバルたちを追って自分も最上階から飛び降りてきたのでした。

 

「シュバシュババシュババシュバ!」

(無茶苦茶なやつだなおい!)

 

「なに言ってっかわかんねエんだよアヒ公がア!」

 

 そうこうしている間に桐生会の黒服たちがビルから階段を使い降りてきます。

 彼らはスバルたちとココの周囲をぐるりと囲ってしまいました。

 

「さあ、もうそろそろ降参したらどうだおまえたち」

 

 ココが降伏を勧めます。

 その一方で周囲の黒服たちは次々フォークを手に取って、ソーセージを出していきます。

 

「フェニックス」

 

 キアラがフェニックスの背中を撫でながらぼそぼそと話しかけます。

 

「まだ突っ切れるだけの根性は残っているな?」

 

 尋ねられてから、フェニックスは何重にも自分たちを包囲している黒服たちを見回しました。

 それからキアラに視線を戻します。

 その目は「やってやる」と語っていました。

 

「ありがとう」

 

 キアラはフェニックスに礼を言います。

 そして一か八か、フェニックスに強行突破を命じようとしました。

 しかし、

 

「ふふ、ふふふふ」

 

 いきなり隣から不気味な笑い声が聞こえて、キアラは思わず咳き込みました。

 振り向いてみると、なぜかるしあが不敵に笑っています。

 

「る、るしあさん?」

 

「シュバ、シュバルバシュバア?」

(おい、どうしたるしあ?)

 

 キアラとスバルが呼びかけますが、るしあは一向に答えません。

 それどころか、彼女はいきなりココの方へ目をやって「桐生ココ、そして桐生会」と話しかけます。

 

「これでるしあたちに勝ったつもりですか?」

 

「なにイ?」

 

 ココが眉をひそめます。

 一方るしあはスバルをキアラに渡してからフェニックスを降りました。

 

「上陸したときから感じていました。この島の土はるしあに馴染みやすい、るしあとの相性が抜群なのだと。さっきはコンクリートのビルの中だったからビクついてしまっていただけ、こうして外に出てしまえば話は別です。にもかかわらず、まだマウントを取ったつもりになっているあなたたちが片腹痛くて仕方ありません」

 

「なに言ってんだアおまえ?」

 

「シュバア、シュバルシュバシュバルルバ」

(るしあ、はったりならやめておけ)

 

 心配するスバルに「違います」とるしあは首を振ります。

 

「スバル先輩、キアラ。るしあが突破口を作ります、そしたら急いでこの包囲を抜けて例の剣士のところへ向かってください」

 

「るしあさん……」

 

 キアラはスバルを抱きしめてから「わかりマシタ」と頷きます。

 

「るしあさん、どうか無理をなさらないで」

 

「ええ」

 

 キアラとるしあはシリアスな雰囲気で見つめ合います。

 

「おー、おー、おー、おー。盛り上がってるところ悪いんだが」

 

 そんな二人にココが腕組みしながら話しかけました。

 

「突破口を作るだア? やってみせてもらうじゃねえか、できるもんならなア」

 

「ええ、すぐに」

 

 るしあは答えてから屈みだし、地面に両手を付けます。

 

「おいおい、もしかして土下座でこの場を収めようってか?」

 

 黒服の一人がそんな彼女をからかいます。

 他の黒服たちも声を上げて笑いだしました。

 

「覚悟なさい」

 

 そんな黒服たちにるしあが言い放ちます。

 地獄の底から聞こえてくるようなその声色に、黒服たちは皆思わず口を閉じました。

 周囲がしんと静まり返ったところで、るしあは目を見開きます。

 

「るしあは気が遠くなるほどの長い年月を屋敷の地下で引きこもり、その力ついに神をも超えたのです」

 

「ざれごとを」

 

 ココがるしあに吐き捨てます。

 

「ざれごとかどうか、その目でしかと見るがいいです!」

 

 直後、るしあの髪が翡翠色から薄桃色に変わります。

 それと同時に、るしあの周りの地面がぼこぼこと盛り上がり紫色に変色します。

 それらがるしあを囲い、彼女を埋め尽くすように集まっていきます。

 

「な、なにイ!」

 

 変色する地面の範囲は広がっていき、るしあの半径数メートルに及ぶ土がすべて紫色となり、それらもるしあを押しつぶすような勢いで彼女に積み重なっていきます。

 気づけば高さ6メートルはあるでしょう紫色の土塊ができあがっていました。

 

 その大きさまで集まると、その土塊は見えない巨大な手でこね回されているようにフォルムを変え始め、徐々に徐々にスリムな人型となっていきます。

 肉質など細部まで表現されるほど精密に造り上げられたところで、頭部や肩部、胸部などに新たな土塊が付着しだし、それらは紫ではなく翡翠色に変色します。

 そうして翡翠色になった土塊は、鎧や甲冑などに形を変えて人型巨人に装着されます。

 

「バカな!」

 

「なんだこれは!」

 

 ほんの数秒間の間に、鎧甲冑を着込んだ紫色の巨人が現れたのでした。

 

『見よ!』

 

 紫の巨人のなかから、スピーカーを通して発せられたようなるしあの声が響きます。

 

『これぞるしあの最終形態! エヴァ〇ゲリオン・るしあ!』

 

「シュバルバアアア!」

(アウトだあああ!)

 

 巨人を見上げながらスバルが叫びます。

 

『はあ!』

 

 一方そんなスバルの叫びをよそに、巨人を操作するるしあは自分たちを囲う黒服たちに殴りかかります。

 

「うああああ!」

 

「ちょ、マジかよ!」

 

 全長六メートルの巨人が放つ拳です。

 黒服たちはとにかく避けることに必死となり、蜘蛛の子が散るようにバラバラとなって逃げ惑います。

 

『今です! スバル先輩、キアラ!』

 

 巨人がスバルたちの方を振り向いて呼びかけました。

 

「走れ! フェニックス!」

 

 すかさずキアラがフェニックスに号令をかけます。

 直後、フェニックスが慌てふためく黒服の男たちの間を突っ切って駆け出しました。

 

「ま、待て!」

 

 走り去っていく彼女たちを見た黒服の男が急いで追いかけようとします。

 

『させません!』

 

 そんな黒服に気づいたるしあが、妨害しようと殴りかかろうとした時でした。

 

「追わなくていい!」

 

 大声が響き渡ります。

 それはココが発したものでした。

 その声でルシアと黒服たちの動きがぴたりと止まります。

 

「し、しかし会長!」

 

 一瞬遅れて、追いかけようとした黒服がココに何かを言い返そうとします。

 しかしココが一瞥すると彼は黙り込みました。

 

「なに、大丈夫さ」

 

 ココは彼から視線を外して続けます。

 

「よくよく考えてみれば上級剣士にアヒルとダチョウが一羽ずつ、かなたんの負ける理由が見つからねエ。それよりおまえたちには別で頼みたいことができた」

 

 言ってから、ココはるしあの巨人に近づいていきます。

 

「おー、おー、おー、おー。とにかくタッパがありゃア勝てるとでも思ったか? 魔女のお嬢ちゃんよオ」

 

 余裕の態度で話しかけてくるココに警戒しながら『何が言いたいのですか?』とるしあが聞き返します。

 

「何が言いたいか、だと?」

 

 ココはそんなるしあに不敵な笑みを浮かべました。

 

「そうだな、そりゃア、今度はお嬢ちゃんがワタシの最終形態を見る番だってことかなア!」

 

 言ってからココは目を見開きます。

 するとココの血色の目が赤く光り、続いて彼女の身体がまばゆい光で包まれました。

 その光源は徐々に幅を増していき、縦にもぐんぐん伸びていきます。

 そしてあっという間にるしあの巨人の背丈を頭一つ分抜くまで大きくなっていき、それからじわじわ輝きが薄れていきます。

 光が全てなくなってみると、るしあの目の前に仁王立ちになった竜が現れていました。

 

「どうだア!」

 

 竜が大口を開けて吠えます。

 

「ざっと全長七メートル! ワタシの方がでけエんだよオ!」

 

 それは巨大な竜の姿となったココでした。

 

『くっ!』

 

 竜となったココを見て怯んだように、るしあが一歩さがります。

 

「会長!」

 

「やっちまえ会長!」

 

「リーダー!」

 

 地上から黒服たち、桐生会のチームメンバーがココを応援します。

 

「おまえらア、よオく聞けエ!」

 

 そんな彼らに、竜の姿になったココが呼びかけました。

 

「この姿で戦うとなると、いくらワタシでもどれだけ地上を荒らしちまうかわからねエ! そこでおまえらの出番だ! 神竜町で暮らす女に子供、年寄り、それからソーセージを持たない一般人! そいつらみんな地下のシェルターに急いで避難させな! ぜんぶ桐生会の財産だ!」

 

「へい会長!」

 

「わかりました!」

 

 ココの指示に桐生会の男たちが各々答えます。

 

「それから!」

 

 ココは彼らに続けます。

 

「みんな避難し終えたら、すぐにおまえらもシェルターに入れ! そんで外の物音がしなくなるまでじっと中で待機してな!」

 

「ま、待ってください会長!」

 

「会長、俺たちも戦いますぜ!」

 

「守られるなんてまっぴらだ!」

 

「俺たち桐生会、会長のためならばこの命惜しくなんてありません!」

 

 それには従えないとばかりに、男たちが次々食い下がります。

 

「バッキャロー!」

 

 ココはそんな彼らに怒鳴りつけました。

 

「ワタシの大切な財産を守れって言ってんだ! 三度目は言わせんなよ!」

 

 有無を言わせぬココの指示に、桐生会のメンバーはしぶしぶ頷きます。

 それから各々神竜町へ向かって駆けていきました。

 

「さあ、待たせたなア」

 

 ココがのしのしとるしあに歩み寄ります。

 

「超重量級の頂上決戦だ」

 

『受けて立ちます』

 

 るしあも答えて一歩前に踏み出しました。

 




 スバルドダック(アヒルverスバル)のシュバル語は読み始めると疲れます。
 あえて読もうという方以外は、基本的にシュバシュバ喋った次行の(~)だけをお読みください。
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