勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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 スバルたちはムーナに案内されるままぺこら開発の研究所を見学しました。

 その間にもしばしば、ムーナはウサ耳カチューシャ白衣のぺこら開発社員・野ウサギの男たちに「ムーナ開発部長!」と呼び止められ、時には五人同時に話を聞いてそれぞれへ的確な指示をだすなどしました。

 スバルたちは、ぺこらの「ムーナは七つまでなら並行して作業をこなすことができるペコー」という言葉が決して誇張ではないということを、ただただ目の当たりにするのでした。

 

 

  ◇  ◇  ◇

 

 

「どうだったペコ? 我がウサダ開発の内側は」

 

 見学を終えたスバルたちは社長室へ通されました。

 そこはぺこらビルの最上階です。

 社長室に入ってすぐ目につく正面の社長専用チェアにぺこらが座り、その椅子から少し離れたところに並べられたソファにスバルたちが腰を下ろしています。

 

「はい! 素晴らしかったデス!」

 

「ええもう本当に素晴らしくて、るしあ感動しました!」

 

 正直言うと、るしあはぺこら開発の技術力云々よりもムーナの超人的な有能性が印象に残りすぎて、何を見てきたのかよく思い出せません。

 しかしとにかく褒めなければと「素晴らしい! とにかく素晴らしい!」とぺこらに連呼しました。

 ぺこらは気を良くして「ふぁっふぁっふぁっふぁっふぁっ」と笑いました。

 

「そこまで喜んでもらえたなら、ちょっとばかし我が社についてお話ししましょうかペコな」

 

 彼女は自分の会社自慢を長々と語りはじめました。

 

「あ、あの、ぺこら社長」

 

 はじめは黙って聞いていたるしあでしたが、一向に終わる気配のないぺこらの話がさすがに長すぎると感じ、彼女の喋りを遮ります。

 

「ん? どうしたペコ?」

 

 しゃべりすぎて舌が乾いたのでしょう、ぺこらは手元に置かれている紅茶を一口含みました。

 

「ありがたいお話の最中に本当に恐縮なのですが、実はるしあたちはエルフの館という場所を探していまして」

 

「ああ、そういえばそんなこと言ってたペコな」

 

 ぺこらはテーブルに置いてある内線電話を手に取ります。

 

「へいムーナ!」

 

『はいシャチョー』

 

「シュババシュバルル!」

(ムーナ直通!)

 

 少ししてからコンコンコンとドアがノックされ、ムーナが社長室に入ってきました。

 

「はいシャチョー、お呼びでしょうカ?」

 

「ムーナ、あんたエルフの館って聞いたことあるペコか? この子たちが探してるらしいペコだけど」

 

 わざわざ内線で呼び出しそんなことを聞いてくるぺこらに、ムーナは一切不愉快そうな顔をせず、ただふるふると首を振ります。

 

「ムーナ開発部長!」

 

 その間にも廊下の方からムーナを呼ぶ野ウサギの声が聞こえてきます。

 

「シャチョー」

 

「うん、ありがとペコ。もう下がってそっちの方を頼むペコ」

 

 ぺこらがそう言うと、ムーナはスバルたちにぺこりとお辞儀してからドアを閉め、ぱたぱたと足音をさせて走っていきました。

 

「悪いぺこな、ぺこらもムーナも力になれなくて」

 

「いえそんな、こちらこそ本当にお忙しいところお邪魔してしまってすいませんでした」

 

 スバルたちは恐縮したように何度も頭を下げます。

 

「ふぁっふぁっふぁっふぁっふぁっ、そんなにかしこまらなくてもいいペコ。ああそうだ、この近くにぺこらの昔馴染みで『さくらみこ』っていうのが、魔王城だが何だかわかんないでっかいハリボテの建物造って住んでるペコ。もしかしたら何か知ってるかもしれないし、行ってみるといいペコ」

 

 ぺこらは椅子から腰をあげ、退室するスバルたちのためにドアを開けてくれます。

 

「本当にありがとうございました」

 

「見学までさせてもらって嬉しかったデス」

 

「またいつでも来るといいペコ」

 

 スバルたちはぺこらに見送られながら社長室を出ていきました。

 

 

  ◇  ◇  ◇

 

 

「あ。皆さん、お帰りですカ?」

 

 ビルの一階まで降りたところで、スバルたちはムーナと鉢合わせになりました

 

「はい。今日はいろいろとありがとうございました」

 

 るしあの感謝の言葉に合わせ、スバルたちはムーナにもお辞儀します。

 

「いえいえこちらこソ、なんの力にもなれズすいませン」

 

「そんなことありません。ぺこら社長からさくらみこという方のところへ行けば何かわかるかもしれないと教えていただきましたので、これから尋ねてみようと思っています」

 

「さくらみこ? ああ、みこさんですネ」

 

 言ってからムーナはくすりと笑います。

 

「知ってるんですか?」

 

「ええ、何度か会ったことがありますシ、社長からモよくお話を聞いていますのデ。みこさんハ社長の幼馴染デ、数少ない親友なんでス。社長は敵だト言っていますガ」

 

「へえ」

 

「昔かラ、何か珍しいものガ手に入るたびニ自慢してきテ、シャチョーは歯がゆい日々ヲ送ったそうでス。今でもなにかト張り合っていますシ」

 

「シュバシュバシュシュシュバ」

(超仲いいじゃん)

 

「喧嘩するほど仲がいい、というやつデスね」

 

「シャチョーが言うニ犬猿の仲らしいですガ」

 

 スバルたちと立ち話をしているムーナに、野ウサギからまた「ムーナ開発部長!」と呼ぶ声がかかります。

 

「すいませン、野ウサギが呼んでいるのデわたしはこれデ」

 

 ぺこりとお辞儀してからムーナは野ウサギのほうへ走っていきます。

 スバルたちもムーナの背中にぺこぺことお辞儀し返して、ぺこらタウンを後にしました。

 

 

  ◇  ◇  ◇

 

 

 さくらみこの魔王城は目立つからすぐに見つかる、というぺこらの言葉を信じてスバルたちはフェニックスに乗りながら周囲を見渡します。

 しかしなかなかそれらしい建物は見当たりません。

 仕方なくもう少し南へ行ってみようということになり、キアラがフェニックスに指示を出して走らせます。

 

「シュバ?」

(ん?)

 

 すると、魔王城は相変わらず見当たらないのですが、その代わり沈んだ顔でとぼとぼと歩いている女性を見つけました。

 その女性はやや癖のある金髪を肩の辺りまで伸ばし、淡い黒紫色の目をしています。

 服装は赤と青の色を使ったミニスカートのコルセットドレスです。

 彼女は両目の下にカラフルなチークを入れており、頭にはパサついた印象の黄色いキツネ耳、お尻からも同色の尻尾を生やしています。

 その尻尾は墨を浸した筆先のように先端が黒く染まっていました。

 

「はあ」

 

 彼女は重いため息をつきながら、キツネ耳と尻尾を下にだらんと垂らし力なく歩いています。

 

「あの」

 

 見ていられなくなったキアラがフェニックスを彼女に寄せて声をかけました。

 

「はい?」

 

 女性が疲れきったような目をキアラに向けてきます。

 

「大丈夫デスか? どこか調子でも悪いのデスか?」

 

 心配そうに問いかけるキアラに「ああ、いえいえ」と彼女は空笑いをして返します。

 

「ありがとうございます、でも別に調子は悪くないんです。ただその、なんと言いますか、仕事のことで上司に叱られてしまいましてね」

 

「はあ」

 

「それで、取引先? にまた催促しに行かなくてはいけないのですが、そう思うとなんだか気が重くなってしまいましてね、あははは」

 

「そうなんデスか」

 

 気の毒そうに相槌を打ってから、キアラはるしあとスバルの方へ振り返ります。

 

「スバルせんぱい、るしあさん。この人すごくかわいそうデス」

 

「シュバルババ、シュバルシュバシュバルルシュババシュバルババシュバルバシュバ」

(そうだけど、本人に聞こえるとこでそんなこと言うなシュバ)

 

「スバルせんぱい、るしあさん。この人を目的地まで連れて行ってあげては駄目デショウか? わたし、フェニックスに乗って少しでも気晴らしをしてもらいたいデス」

 

 キアラの申し出にスバルとるしあは顔を見合わせます。

 

「シュバルバシュバルルシュバ。シュババシュシュバシュバシュバルババ」

(スバルは構わないシュバ。フェニックスが大丈夫なら)

 

「フェニックスが重量オーバーでないなら構わない、だそうです」

 

 キアラはフェニックスの方を見ます。

 

「いけるな? フェニックス」

 

 フェニックスはコクリと頷きました。

 

「あの」

 

「はい?」

 

 歩きだす女性をキアラはふたたび呼び止めます。

 

「もしよかったら、この子の背中に乗ってください。あたりを見たところ近くに建物らしきものはなし、まだずいぶん歩くのデショウ?」

 

「いえそんな、申し訳ないですよ」

 

「そんなことないデス」

 

 恐縮する女性に構わず、キアラはフェニックスの上から彼女に手を差し伸べます。

 

「さア」

 

「は、はい」

 

 女性はキアラの押しの勢いに負けて手を取りました。

 キアラは彼女を引っ張り上げてフェニックスに乗せます。

 

「名前は?」

 

 キアラは女性をフェニックスの比較的安定している位置に座らせてから尋ねました。

 

「ポルカ。尾丸ポルカです、はい」

 

「わたしは小鳥遊キアラ、そしてこちらがスバルせんぱいに潤羽るしあさんデス」

 

 フェニックスの上で各々が「あ、どうも」と軽く挨拶し合います。

 

「それで、ポルカさんの目的地はどこデスか? わたしたちはこの辺りに不慣れデスので、方角も教えてほしいデス」

 

「あ、このまま真っ直ぐでお願いします」

 

 ポルカの指さす先へキアラはフェニックスを走らせます。

 

「しばらくしたらポルカの師匠、不知火フレアというエルフが住んでいる館があるんです。そこの前で降ろしていただければ本当に助かります」

 

「え?」

 

 ポルカの目的地を聞いたキアラはピタリとフェニックスの進行を止めました。

 

「今、なんて?」

 

「あ、すいません、わかりづらかったですか? フレアの館とかエルフの館とかって呼ばれているらしいのですが、ポルカの師匠であるエルフが住んでいるところでして」

 

 かしこまりながらポルカが説明しなおします。

 その直後、

 

「「えええええええ!」」

 

「シュバアアアア!」

(なにいいいい!)

 

 るしあとキアラ、スバルの驚く声が辺り一面に響き渡りました。

 

 




 スバルドダック(アヒルverスバル)のシュバル語は読み始めると疲れます。
 あえて読もうという方以外は、基本的にシュバシュバ喋った次行の(~)だけをお読みください。
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