勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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「いやー、情けは人のためならずですよねー」

 

「ポルカも驚きですよ、まさか同じ目的地だったなんて」

 

 エルフの館を探しながら走り回っている最中、スバルたちは偶然にもその館へ向かおうとしている獣人の女性・尾丸ポルカと出会うことができ、道案内してもらえることになりました。

 

「シュバルバシュバシュバルシュババシュバ」

(目的地に着けるだけじゃない)

 

 スバルも上機嫌です。

 

「シュババシュバルシュバルバシュバルババ。シュバルバシュバルシュババシュババシュシュバシュバルババシュババ、シュバルバシュバシュバシュバシュババシュバルバシュバルババシュバ」

(弟子を送り届けて行くんだ。エルフは気難しい者が多い種族だと聞くが、少なくとも門前払いされる心配はなくなったシュバ)

 

 喋っているうちに前方に建物が見えてきました。

 立派な西洋館です。

 キアラは館の玄関前に自分以外の皆を下ろしてから、フェニックスを少し離れたところで休ませます。

 それから走って皆のところへ合流しました。

 

「師匠ー、戻りましたー! それとお客様がいらしてますよー、師匠ー!」

 

 玄関のドアをノックしながらポルカが呼びかけます。

 するとしばらくしてから「おー」と中から声が返ってきました。

 

「ポルカー、おるかー?」

 

 変わった出迎えの言葉です。

 ポルカは「おるよー」と答えながらドアを開けます。

 それから「ささ、どうぞどうぞ」とスバルたちを屋敷のなかへ招き入れました。

 ポルカはスバルたちを客間に通します。

 

「あれえ、師匠はどこにいるんだ?」

 

 独り言を言ってから、ポルカはきょろきょろと辺りを見回し、廊下に頭を出して左右を見たりなどしはじめます。

 そうするうちに何を見つけたのか「あ」と声を出して、庭に面した窓をパカンと開けました。

 そんなポルカの視線の先に、不思議なものが浮いていました。

 

 それはちょうど生後一年くらいの赤子サイズで、パンダの姿をしたぬいぐるみのように見えます。

 そのぬいぐるみのようなものはジョウロを持っており、ぷかぷかと宙に浮きながら庭の花に水をやっていました。

 

「きんつば!」

 

 ポルカが呼びかけます。

 するとそのパンダのぬいぐるみ、きんつばはピタリと動きを止め、ジョウロの口を上方に向け水かけを中断してからポルカの方へ向きました。

 

「きんつば、師匠はどこにいるの?」

 

 尋ねるポルカに、きんつばはジョウロを下に置いてから身体を地面にへばりつかせます。

 

「地下室か」

 

 呟いてから、ポルカはソファに座っているスバルたちに向き直ります。

 

「少しだけ待っててくださいね、すぐに連れてきますから」

 

 そう言い置いて、ポルカは廊下に出ていきました。

 

 

  ◇  ◇  ◇

 

 

 しばらくして、エルフの女性が客間にやってきました。

 

「おー、おまえたちか。ポルカが早く接客しろと口うるさく言ってくる客人は」

 

 横に尖がったエルフ耳を持つ、褐色の肌をした女性です。

 紺と白を基調にした古めかしい衣装を着て、まっすぐで張りのありそうな金色の髪をツインテールにまとめ黒いリボンで留めています。

 彼女は赤い目を細めてスバルたちの向き合いに腰を下ろしました。

 

「師匠、お客様ですよ。しかもポルカをここまで送ってくださった親切な方々です、もっとちゃんとしてください」

 

 彼女に続いてポルカが入ってきます。

 ポルカはティーカップとポットの紅茶セットを持ってきており、スバルたちとエルフの女性の前に紅茶を入れて並べていきます。

 

「そうだな、自己紹介をしておこう」

 

 エルフの女性は紅茶のカップを持ってグイッとあおってから、それをソーサーの上へ戻しスバルたちの方を見ます。

 

「あたしの名前は不知火フレア、不知火でもフレアでも好きに呼んでくれて構わない。趣味はDIY、見ての通りどこにでもいるただのエルフだ」

 

「じゃあこちらも自己紹介しますね」

 

 言ってるしあが名乗ろうとするのを「待った」とフレアが止めました。

 

「なんですか」

 

「わざわざ紹介しなくてもいい、ネクロマンサーの潤羽るしあ」

 

「!」

 

 名前だけでなく戦闘職まで言い当てられ、るしあはフレアに身構えます。

 フレアはそんな彼女を面白がるように「まあそう警戒なさんなって」と言いました。

 

「師匠が怖がらせること言ったんでしょうが」

 

 隣でポルカが呟きます。

 

「さて、お次の二人だが」

 

 フレアは聞こえないふりをしてスバルたちの方へ目を向けました。

 

「呪いにかかってアヒルの姿にされているスバ友リーダー・大空スバルに、スバ友アヒージョの上級剣士・小鳥遊キアラだな」

 

「ど、どうしてるしあたちのことをそんなに知っているのですか?」

 

 問いかけるるしあに「ふふふふ」とフレアは含み笑いをします。

 

「この程度、長年生きていればいろいろなことがわかるようになるのさ」

 

 それからフレアは紅茶を一口含みました。

 

「フィーリングでな!」

 

「シュバア!」

(すげえ!)

 

「そんなわけないでしょお!」

 

 るしあはバアン! とテーブルを叩いてから「はあはあ」と肩で息をします。

 

「なんなんですかこの人!」

 

 るしあはフレアを指さしながらポルカに聞きました。

 

「いや、その、あははは」

 

 ポルカは苦笑で言葉を濁します。

 

「よく弟子入りしようなんて思いましたね!」

 

 怒鳴るようにポルカへ聞くるしあに、なぜか「まあそういうな」とフレアが答えます。

 

「実はあたしは弟子を取らない主義でね。しかしこのポルカはなかなかに面白いやつだったから、特別に弟子入りを許可したんだ。三ヶ月前に」

 

「シュバシュバルバシュバルバ」

(つい最近じゃねえか)

 

「るしあはポルカさんに聞いているのですが!」

 

「いや、でも実際そうなんですよ」

 

 ポルカが場を収めるようにるしあとフレアの間に入ります。

 

「ポルカが師匠に無理を言って弟子入りさせてもらっているんです」

 

 ポルカはそう言いながらフレアのカップに紅茶をつぎ足します。

 フレアは「うむ」と満足そうに頷いてからそれに口を付けました。

 

「ああそうだポルカ、久しぶりにあれを見たくなった」

 

「ええー、今ですかー?」

 

「今でしょう」

 

 フレアは答えて立ち上がります。

 それからスバルたちの方に目を向けました。

 

「あんたたちも時間あるなら見て行かないか?」

 

「な、なにをですか?」

 

 恐る恐るるしあが聞き返します。

 フレアはそれに意味深そうな笑みを返しました。

 

「面白いものさ」

 

 

  ◇  ◇  ◇

 

 

 ポルカとフレアに連れられてスバルたちがやって来たのは、館から少し離れた場所に設置されているテントでした。

 テントはテントでもサーカスを披露するために用いる巨大なテントで、大きさはフレアの館と同じくらいあります。

 テントの入り口のところでポルカだけ別れ、スバルたちはフレアに案内されるまま中へ入りました。

 テントの中は照明がついており中央に広場があって、その周りを段々と囲うように席が設けられています。

 そのためどこに座っても中央の広場を眺められる構造となっていました。

 

「さあ、好きな場所に座りな」

 

 スバルたちにそう促してから、フレアは自分の特等席と決めているのでしょう正面近くで下から二段目の席に腰を降ろします。

 るしあとキアラもフレアの近くに座りました。

 ちなみにスバルはるしあの膝上で抱かれています。

 

 しばらくすると一斉に照明が落とされました。

 それからバチンと音がして、中央の広場にだけスポットライトの光が当てられます。

 

「さあさあ皆さま、お待たせしました! これよりポルカサーカス、開幕いたします!」

 

 いつの間に現れたのでしょう、広場の中央にはポルカが立っていました。

 彼女は両手を広げて「わたくし、座長のポルカでございます!」とあいさつしはじめます。

 

「待ってました!」

 

 するとフレアが拍手しはじめました。

 空気を読んだるしあとキアラも同じように拍手します。

 

「ありがとうございます! ありがとうございます!」

 

 ポルカは観客席に向かって何度かお辞儀しました。

 そして拍手が止んだ後にゆっくり頭を上げ「それでは第一幕!」と声を張り上げます。

 

「我がサーカス団のキュートなアイドル、ペンギンのペンちゃんによる大玉乗りをご覧あれ!」

 

 言われてステージに登場してきたのは一羽のペンギンです。

 ポルカは大玉を用意して中央に持っていってから、ペンちゃんを抱きかかえて恐る恐る大玉の上に乗せます。

 それからゆっくりと手を離しました。

 ペンちゃんは大玉の上で身体をそらすなどしてどうにかバランスを取ります。

 大玉を転がして進むようなことはしません。

 本当にただ乗っているだけです。

 数秒が経った後、ポルカはまたペンちゃんを抱きかかえて地面に降ろしてやりました。

 

「拍手ー!」

 

 ポルカのかけ声にるしあたちがパチパチパチと応えます。

 そのような感じでキツネのふぉっ君による上空一メートルの綱渡り、サルのモンクスによる地面にクッションを満遍なく敷き詰めた上での空中ブランコなど、すごいのかすごくないのかよくわからないリアクションに困る芸が続きました。

 

「さてさて皆さまお待たせしました! 本サーカスの大目玉、火縄くぐりでございます!」

 

 広場の中央に大きな輪が設置されます。

 その輪に火がつけられ、円型に燃える日輪ができあがります。

 

「男の子に大人気! 我がサーカス団のヒーロー、ライオンのキング君です!」

 

 そう紹介してからポルカは広場の外へ引っ込みました。

 それから少しして、彼女は大きなライオンにまたがって戻ってきます。

 そのライオンのサイズは相当なもので、普通のライオンより一回り以上大きいために乗っているポルカが小さく見えます。

 もしもその巨体で設置された日輪をくぐるつもりだとしたら、まさに針穴に糸を通すような正確さを必要とされるぎりぎりの間隔です。

 

「それでは皆さま、ご覧あれ!」

 

 声を張り上げて、ポルカはキングから降りました。

 そして「はっ!」と気合の声を出しながら火の輪をくぐります。

 それを三回四回と繰り返します。

 

「シュバルバシュシュバルルル!」

(おまえがくぐるんかい!)

 

 思わずスバルが突っ込みました。

 

「あはは! あははははは! どうだ、面白いだろ!」

 

 フレアが盛大に拍手しながら大笑いします。

 

「笑わないでくださいよ師匠ー」

 

 広場からポルカが話しかけました。

 

「だってキングはやりたくないって言ってるし、ポルカだってこんな危険な芸で座員にもしものことがあったらと思うと心配でならないですし。でもだからと言ってポルカサーカス団を見に来てくださった観客皆さまのため、トリくらいはどうにか盛り上げなくちゃいけないですし。そうなればもう、ポルカが火の輪をくぐるしかないじゃないですかー」

 

「そうだな、その通りだな。ふふふ、あたしはこれを見て弟子入りを許可したんだ」

 

「え、これを見て?」

 

 るしあが苦笑しながらフレアに聞きます。

 

「嘘ですよね? だって、弟子にするかしないかに全然関係ないじゃないですか。本当は他に才能の片鱗のようなものがあって、それを見抜いたうえで弟子にしたんですよね?」

 

「才能の片鱗?」

 

 フレアは「はん」と鼻で笑います。

 

「そんなものは知らん。あたしは才能があろうとなかろうと、つまらないヤツを弟子には取らないんでね」

 

「シュババア……」

(マジかあ……)

 

「大マジだ」

 

 フレアがスバルのシュバル語に答えます。

 るしあは思わず「え!」と驚きを口にしてフレアの方に振り向きました。

 

「フレアさん、スバル先輩の言葉がわかるんですか!」

 

 るしあの問いかけに「まあな」とフレアは答えます。

 

「エルフは寿命が長い。そのためあたしも長きにわたり暇をもてあました。あまりに暇すぎたんでその間に数十億の言語を習得したんだ」

 

「シュババシュバルシュバ」

(桁がやべえだろ)

 

 ドン引きしながらスバルが突っ込みを入れました。




 スバルドダック(アヒルverスバル)のシュバル語は読み始めると疲れます。
 あえて読もうという方以外は、基本的にシュバシュバ喋った次行の(~)だけをお読みください。
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