勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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 サーカステントを出たスバルたちはまたフレアの館の客間に戻りました。

 

「ところで、大空スバルにしてもポルカにしても、あたしに何か用があるんじゃないのか」

 

 戻ってきてから二杯目になる紅茶を自分で注いで飲みだすフレアに、フレア以外のその場の全員が「「あ」」と声を上げます。

 

「そうでしたフレアさん」

 

 スバルたちを代表してるしあが話しかけました。

 

「フレアさん、るしあたちはスバル先輩の呪いを解くためにレジェンドソーセージの所有者を探しているんです。なにか知っていませんか?」

 

「知っているとも」

 

 フレアは「ふふん」と含み笑いをして答えます。

 

「もちろんおまえたちに教えてやってもいい。だけどその見返りとして、こっちの頼みも聞いてもらいたい」

 

「な、なんですか?」

 

 るしあは露骨に「この人の頼みって絶対に大変なのだ」と思っていそうな顔をします。

 

「なに、大したことじゃないよ。まあその前にポルカの方も聞かせてくれ」

 

 水を向けるフレアに「分かってるでしょ師匠ー」と言いながら、ポルカがテーブルに身体を乗り出します。

 

「魔王様からいただいた発注の品、納期が今日までですよ。ポルカは今朝急に魔王城へ呼び出されてですね、『おいポルポル、約束の日は今日のはずだにぇ、まだ届かないのか』ってお叱りを受けてですね」

 

 ぐちぐちと続けるポルカに、フレアは「はあ」と重いため息をつきました。

 

「まったくうるさい魔王様だよ、ちょっとうっかりして届け忘れてただけじゃんか」

 

「それ一番ダメなやつですよ師匠!」

 

「とにかくものはとっくに出来上がってる。裏に置いてあるからすぐにでも届けてやってくれ」

 

「はい師匠」

 

 ポルカは返事をしてから向かおうとします。

 そんな彼女を「ああそれとポルカ」とフレアが呼び止めました。

 

「こいつらも一緒に連れて行ってくれ。そこのアヒルは天下の大空スバル様だ、道中の護衛としてこれ以上の適任はないだろう」

 

 言ってからフレアはスバルたちに向き直ります。

 

「ということで、届け物を配達し終えるまでの護衛がレジェンド所有者に関する情報提供の条件だ。悪い話じゃないだろ?」

 

 尋ねるフレアに、るしあは「まあそのくらいなら」と頷いてからスバルの方を見ます。

 

「ですよね? スバル先輩」

 

「シュバ、シュバルルシュバルバ」

(ああ、お安い御用だ)

 

「ありがとう助かるよ。じゃあ届け終えた後にまたここへ戻ってきてくれ。約束はその時には果たそう」

 

「シュババ」

(わかった)

 

「お願いしますね、フレアさん」

 

 フレアに答えるスバルとるしあに対し、「ありがとうございます」とポルカも二人へ礼を言います。

 

「それじゃ皆さん、すぐに出発の準備をしてきます。なのですいませんが、あと少しだけここで待っていただいて」

 

 そう言い置いてポルカが客間から出ようとした時でした。

 コンコンコンと、玄関の方からドアをノックする音がします。

 

「ポルカー? ポルカー、おるかー?」

 

 続いて女性の声が聞こえてきます。

 ポルカは廊下に頭を突っ込んで「おるよー」と答えました。

 

「おらん!」

 

 しかしフレアがさらに大きな声でもってポルカの返事をかき消します。

 

「え、でも今ちょっと『おるよ』って聞こえたよ!」

 

「だまれ! ポルカは取り込み中だ、帰れ!」

 

「なあんだ、やっぱりいるんじゃん。お邪魔しまーす」

 

 ガチャリとドアノブを回す音がして、ずかずかと誰かが中へ入ってきます。

 その足音から察するにどうやら訪問者は一人ではないようです。

 

「あ、いたいたおまるん、こんねねー!」

 

 ひょこりと客間に顔を出したのは、長いレモン色の髪を頭に二つお団子に結んだ女のでした。

 お団子には花の髪飾りが付いていて、軽くふわついた後ろ髪が腰のあたりまで伸びています。

 彼女はエメラルド色の目を細め、いたずらっぽく笑う口の端に八重歯をのぞかせました。

 

「ししろーん、ラミィー、おまるんとフレアさんいたよー! 客間ー!」

 

 彼女が廊下に呼びかけると、どたばた音を立てて二人の女性がやってきます。

 

「いやあ、フレアさんこんちゃー」

 

 そのうちの一人がフレアと目が合った途端に話しかけました。

 

「相変わらずすごいですよねー、この館。本当に面白そうなものがいろいろあって、思わず射的しはじめたくなってきちゃいますよー」

 

「はじめるなよ」

 

「わかってますって」

 

 彼女はけらけら笑いながらフレアに答えます。

 

 ライオン耳と尻尾のある獣人の女性です。

 灰色のパサついた髪を後ろのほうでふたチョンに留めていて、髪と同色の目をしています。

 目尻が鋭くとがっていますが笑っていると気さくな印象を与えます。

 首にはじゃらついた貴金属のネックレスをつけており、服は肩を露出させた黒基調のものです。

 その上から襟に毛皮を付けた黒地のモッズコートを肘で引っかけるようにして軽く羽織っていますが、さっきから彼女はその右手をピストルのような形にして客間の置物に狙いを定めるようなしぐさをしています。

 そのためフレアは気が気でないように彼女から目が離せません。

 

「あ、そうそうフレアさん」

 

 ふと何かを思い出しように彼女が再びフレアの方を向きました。

 

「なんだ」

 

「この前蔵の奥で見つけた超長距離射程バズーカ、遠距離射的にすごくよかったですよー。また蔵の中あさってみていいですか?」

 

「いいわけないだろ! 全部あたしの大切なコレクションだぞ!」

 

「はいはーい」

 

 つまらなそうに答えてから彼女は客間を出ていきます。

 

「ごめんなさーい。ししろん、銃器にめっぽう目がないから」

 

 入れ替わりに話しかけてきたのは、透き通るような水色の髪をしたエルフの綺麗な女性です。

 そのサラつく繊細な髪は流れるように腰の下まで伸びています。

 頭には花のブローチ型の髪飾りをつけていて、つむじからハート型に折れたアホ毛が一本生えています。

 服には肩だしのコルセットドレスを着ており、その上から水色の厚手コートを羽織っています。

 また、そんな彼女の横にはきんつばと同じくらいのサイズの何かが浮いています。

 

「ね、だいふく」

 

 彼女はそれに話しかけました。

 だいふくと呼ばれたそれはコクコクと頷きます。

 

 だいふくの見た目は、水色の袋に頭だけ出しているシロクマです。

 シルエットだけで言えば丸みのある瓢箪のようにも見えます。

 

「うるさい、おまえも早くどっかへ行け」

 

「はーん、つめたーい。フレアさん、ラミィたちはエルフ同士なんですから仲良くしましょうよー」

 

「だまらっしゃい! おまえのような乳臭い小娘とあたしを一緒にするんじゃない! 年季が違うんじゃ、年季が!」

 

「はーん、ひどーい」

 

 ラミィは屈みこんで大げさに泣き出します。

 

「まあ、それはそれとしまして」

 

 しかし直後にケロリと立ち上がり、くんくんと鼻を鳴らしはじめました。

 

「地下の方からでしょうか、フルーツ酒の匂いがしますね」

 

「バカな! 完全に密封しているんだぞ!」

 

「おいでだいふく、少しだけ味見させていただきましょう」

 

 彼女はだいふくを伴って客間から出ていきます。

 

「おい! 本当に少しだぞ! 少しだけだからな!」

 

 フレアは廊下に首を突っ込んでダメ押ししますが、すでに彼女の姿はありません。

 がくりと肩を落としながらソファに座りなおしました。

 

「ごめんねフレアさん、ねねのチームメンバーが迷惑かけちゃって」

 

 そうして残ったのは、やって来た三人のうちの最後の一人です。

 彼女はちゃっかりるしあの隣に腰を下ろしていて、口で言うほど悪びれる様子でなく紅茶など優雅に飲んでいます。

 

「まったくだ、大迷惑している」

 

 フレアはソファの背もたれに上体をあずけました。

 

「リーダーならチームメンバーにきちんと事の良し悪しを言い聞かせておけ。あいつら、人様んちをドラゴンク〇ストの宝さがし気分で探索してやがるからよ」

 

「あはは。ねねそのネタわかるよ、ツボとかタルとか壊して探すタイプだよね」

 

「笑い事じゃない!」

 

 フレアはバン! とテーブルを叩きます。

 

「人生をノリと笑いだけで生きてるような奴は、本当にタチが悪い!」

 

「シュバアバシュバシュバルルバ」

(おまえのことじゃねえか)

 

「うんうん、ねねにはフレアさんの気持ちがよくわかるよ。でもフレアさん、どうか大目に見てあげてくれないかな」

 

 ねねは紅茶を一口含みます。

 

「ねねもさ、普段はこんな放任主義じゃないんだよ。みんなに『よそ様に迷惑かけちゃ駄目だよ』ってちゃんと言うんだけどさ、フレアさんのとこにいるときだけは息抜きさせようって決めてるんだ。だってほら、こうしてたまに羽を伸ばしてあげないと冒険なんて途中でやってられなくなっちゃうじゃん」

 

「おまえが一番タチ悪いわ!」

 

 フレアがねねに怒鳴ります。

 しかし彼女はどこ吹く風といった様子で平然と紅茶を飲み続けます。

 

「師匠ー、みなさーん、出発の準備ができましたー」

 

 いつの間にかいなくなっていたポルカがそう言いながら戻ってきました。

 

「おまるん出発って? どっかに行くの?」

 

 ポルカにねねが食いつきます。

 

「あ、うん。魔王様のところへ届け物をとどけに」

 

「へーえ」

 

 ねねは何かを考えるように口元に手を当てました。

 

「ねえ、それってねねたちもついてっていい?」

 

「え? あー」

 

 ポルカはうかがうようにフレアの方をちらりと見ます。

 フレアは「しっしっ」と虫を払うようなしぐさを返しました。

 

「行け行け、行ってしまえ」

 

「いいらしい」

 

「やったー!」

 

 ねねは嬉しそうにソファから立ち上がり、廊下に首を突っ込みます。

 

「ねーえ! ししろーん! ラミィー!」

 

 それから大声で呼びかけました。

 

「おまるんが出かけるんだって! 久々にチームみんなで一緒に行動できるよ!」

 

 しばらくしてほかの二人が客間に戻ってきました。

 

「ん?」

 

 やって来た二人のうちの一人、ラミィを見たフレアが眉を顰めます。

 彼女の頬が少し赤らんでいたのです。

 

「ラ、ラミィ?」

 

 呼びかけるフレアに、やや間をあけてからラミィが「はい?」と振り向きます。

 その反応の遅さに、フレアは「お、おい!」と声を荒らげて立ち上がりました。

 

「おまえ、どれだけ飲んだんだ!」

 

「え?」

 

 彼女は一度二度と瞬きしてから「ちょっとですよー」と言って笑い返します。

 それから「ひくっ」としゃっくりしました。

 しかし彼女の隣で浮かんでいるだいふくは気まずそうにフレアから顔をそむけます。

 フレアは血相を変えて客間を出ていきました。

 

「なんだなんだー?」

 

 ライオン耳した女性が不思議そうにフレアの後姿を目で追います。

 

「よくわかんないけど放っとこうよ。もうねねたちが付いて行っていいって許可はもらってるんだから」

 

 そう言ってねねは玄関の方へ向かおうとします。

 

「ちょっと待った、ねねち」

 

 そんな彼女をポルカが呼び止めます。

 

「ん? どうしたのおまるん」

 

「こっちの方々も届け物の護衛のために同行してもらうことになってるからさ、みんなここでちゃんと自己紹介しときなさい」

 

「あ、ごめん! フレアさんの個性が強すぎてさ、ねねってばすっかり忘れてたよ!」

 

「シュバルバシュバルシュババ」

(おまえも負けてねえよ)

 

「じゃあねねからするね」

 

 ねねが「こほん」と咳払いします。

 それからスバルたちを順々に見ていきました。

 

「ねねの名前は桃鈴ねね、この四人精鋭チーム『ホロファイブ』のリーダーをしてます。よろしく!」

 

 言ってから、ねねはかわいらしくウインクします。

 

「四人?」

 

 るしあが首を傾げました。

 

「ねねとー、ラミィとー、ししろんとー、おまるん!」

 

 答えるねねに、るしあはびっくりしてポルカの方へ向きます。

 

「え? ポルカさんもメンバーなんですか?」

 

「そうだよー」

 

 緩い感じでポルカが答えました。

 

「次は私だね」

 

 一歩前に出てきたのはライオン耳の女性です。

 

「私の名前は獅白ぼたん、ねねちゃんに紹介してもらったようにホロファイブのチームメンバーやってまーす。どうかよろしく」

 

「じゃあ最後はラミィだね」

 

 ぼたんと入れ替わりに、だいふくを従えたラミィが自己紹介をはじめます。

 

「雪花ラミィです。エルフです。あとはみんなと以下同文でメンバーの一人です。あ、これはラミィの妖精のだいふくです。どうかともどもよろしくお願いします」

 

 ラミィはぺこりと頭を下げました。

 

「潤羽るしあです」

 

 次はスバルたちの番です。

 

「小鳥遊キアラです」

 

 るしあとキアラも自己紹介します。

 

「それからこちらはスバル先輩です」

 

 るしあはスバルを抱きかかえながらねねたちに紹介しました。

 

「シュバルバ」

(よろしく)

 

「先輩って、アヒルじゃん!」

 

 ねねが「ぷふっ」と吹き出します。

 

「こらー! 失礼すぎるぞねねち!」

 

 そんなねねをポルカが咎めました。

 

「今は呪いのせいでこんな姿になっているけど、このお方はあのライトニングウィンナーの使い手、大空スバルさんだぞ!」

 

「ライトニングウィンナー?」

 

 ねねがソーセージの名前に食いつきます。

 

「あのレジェンドソーセージの?」

 

「シュバア」

(そうだ)

 

「そうです」

 

 るしあがスバルの代わりに答えます。

 するとねねは品定めするようにじろじろとスバルを見はじめます。

 

「シュ、シュバルバ」

(な、なんだよ)

 

 しばらくスバルを観察してから、ねねはにやりと笑いました。

 

「でかしたおまるん」




 スバルドダック(アヒルverスバル)のシュバル語は読み始めると疲れます。
 あえて読もうという方以外は、基本的にシュバシュバ喋った次行の(~)だけをお読みください。
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