勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~ 作:はばたくアヒル
『ぐああ!』
『ぺこおお!』
ぺこダムとみこシャアが何度もシュバンゲリオンに挑んでは返り討ちにあっているその一方、
「シューバシュバシュバシュバ!」
シュバンゲリオンのコクピットではスバルが高笑いしていました。
「わかったか! ソーセージは遊び道具じゃねえんだシュバ!」
凄まじい操作テクでシュバンゲリオンを己の手足のごとく動かし、両手を使わないハンデのままぺこダムとみこシャアを圧倒します。
そしてもう何度目かわからないくらい二機を倒し続けた後に、スバルは「ふう」と一息つきました。
「これだけボコしとけばふざけた決闘ごっこなんてしなくなるだろう」
スバルはキャップ帽で顔を扇いでからそれをかぶりなおします。
「さて、あいつらも頑張って戦ってたことだし、そろそろ負けてやるかな。二人で共闘してようやく倒せた、そんな素晴らしいエンディングを飾ってやりたいシュバ」
言って、彼女が再びシュバンゲリオンを操作しようとした時でした。
ボン! と音がしてから煙に包み込まれ、スバルは人間からアヒルの姿に戻ってしまいます。
その直後、『ヴー! ヴー!』とシュバンゲリオン内部に警告音が鳴り響きました。
『パイロット大空スバルを確認できず、パイロット大空スバルを確認できず。アヒルが一羽、アヒルが一羽』
「シュバルシュバ!」
(スバルだよ!)
『コクピットに適任パイロットを確認できません。これよりパイロット操作から自動防衛モードに移行します』
「シュバアアア!」
(なにいいい!)
◇ ◇ ◇
スバルがアヒルの姿に戻ってしまったちょうどその頃、
『みこ先輩、あいつ急に腕組みやめて猫背になりましたねペコ』
『腕が疲れたんじゃないかにぇ』
ぺこらとみこはシュバンゲリオンの様子が変わったことに気づきました。
『今だったらワンチャンあるんじゃないですかペコ?』
『おお、確かににぇ』
ぺこダムが握りこぶしを作ってから、そろりそろりとシュバンゲリオンに近づきます。
目と鼻の先までやってきてその拳を振り下ろそうとした時でした。
ギュン!
いきなりシュバンゲリオンが鎌首を上げました。
『ペコおおおお!』
ぺこダムは思わず尻もちをつきます。
『ちょっとお! マジで勘弁してくださいペコ! 心臓止まるかと思ったペコよ!』
ぺこダムは片手で胸部を撫でながら立ち上がりました。
『にゃはははは!』
ぺこダムのリアクションがあまりにも面白かったのでしょう、みこシャアも腹を抱えて笑いだします。
そんなみこに『そんなに笑わないでくださいみこ先輩!』とぺこらは突っ込みました。
しかし、そんな二人をよそにシュバンゲリオンは無言です。
◇ ◇ ◇
「なんだか、シュバンゲリオンの様子がおかしくないですか?」
るしあも異変に気付き始めました。
「おかしいってなんだ?」
するとフレアが顔をムッとさせながら食いつきます。
「あたしが作ったシュバンゲリオンにケチ付ける気か?」
「いえ、そういうわけではないですけれど、なんだかちょっと前からスバル先輩らしくないというか」
「何をバカな、だいたい何を根拠に大空スバルらしさなんていう漠然としたものを定義して」
フレアはるしあの心配を鼻で笑おうとします。
『ジュバアアアアア!』
しかしシュバンゲリオンが遠吠えするように咆哮する姿を見てから、「あー、すーぅ」と息を吸ってるしあから目を逸らしました。
「今、『あ、やべ』って思いましたね」
るしあはそんなフレアをジト目で見ます。
「思っていない、断じて」
「じゃあ何で目を逸らしたんですか」
「『うわ、やっべー』って思ったからだ」
「師匠、子供みたいなこと言わないでください」
呆れたようにポルカが二人の会話に入ってきました。
「なんなんですかあれ、どう見てもおかしいですよ師匠」
「おそらくだが」
フレアは観念したように喋りだします。
「大空スバルが人間の姿からアヒルの姿に戻ってしまったんだ。シュバンゲリオンはあたしが人間の大空スバルだけが動かせられるように作った大空スバル専用機、だからアヒルになった大空スバルをシュバンゲリオンが大空スバルと認証できなくなってしまったんじゃないかと思う」
「認証できないとどうなるんですか?」
「戦闘態勢に入っている時にパイロットを確認できなければ自己防衛モードに移行する。コクピットからの操作を受け付けなくなり、シュバンゲリオンが敵だと認識している対象と自動で戦闘しはじめる」
「大問題じゃないですか!」
るしあが叫びます。
「さっきまではスバル先輩が明らかに手を抜いて戦っていたからぺこダムもみこシャアも無傷でしたが、それがお構いなしで戦いだすとか笑い事じゃ済まされませんよ! 大惨事になってしまいます!」
「まあ落ち着きなって」
フレアはるしあをなだめました。
「シュバンゲリオンは確かに見た目がガチムキで裏ボス感半端ないけど、実際はそれほど強くない。腕力はそこそこあるけど、ぶっちゃけ速さが死んでるんだ。大空スバルの操縦テクあればこそ問題なく戦えていたが、オートモードに切り替わった今シュバンゲリオンはただのとろくさいマッチョだよ。シュバリアのせいでソーセージが使えない状況なのがネックと言えばネックだけど、小回りが利いてスピードもあるぺこダムとみこシャアが二対一で戦うなら問題なく勝てる相手さ」
フレアが滔々と説明する後ろで、ちょうどぺこダムがシュバンゲリオンに殴りかかりるのが見えます。
しかしシュバンゲリオンは俊敏に避けてから逆にぺこダムの頭部を掴み、ブチブチブチと音をさせながらそれを引っこ抜きました。
頭を取られたぺこダムは胸部のコクピットが露出します。
「ペコー!」と叫ぶぺこらの姿が外から丸見えになりました。
「めちゃくちゃ強いんですけど!」
「ははははは! いやあ参った、これは誤算だ。シュバンゲリオンめ、大空スバルが操作していた時の動きを覚えてしまったようだな。これは手強いぞ」
「だから笑い事じゃないですって!」
るしあはフレアの胸倉をつかんで思い切り前後にとゆすりました。
◇ ◇ ◇
「あーん! 助けてペコー!」
一方、シュバンゲリオンはぺこダムに標的を定めているようでした。
みこシャアを無視し、頭を失ったぺこダムを執拗に追いかけます。
「あーん! あーん! ぺこ虐はやめるペコよー!」
ぺこらが泣き叫んでもシュバンゲリオンは容赦しません。
ぺこダムから引き抜いた頭、ぺこダムヘッドを掴んだまま鈍器を扱うように振り回したり、もう片方の手で殴りかかってきたりします。
「あたっ!」
そしてとうとう、ぺこダムはぺこダムヘッドで殴りかかるシュバンゲリオンの攻撃を避けたもののその直後着地に失敗し、地面に転がってしまいました。
そんなぺこダムにシュバンゲリオンがゆっくり詰め寄ってきます。
シュバンゲリオンは手が届く範囲にまで近づいてきてから足を止め、ぺこらの露出するコクピットに腕を伸ばしてきました。
「ひいい!」
ぺこらは思わず目を閉じます。
そして、
ガシュンと、何かが握り潰される音がしました。