勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~ 作:はばたくアヒル
36羽
「いやあ悪かった悪かった、まさか暴走してしまうとはな」
シュバンゲリオンの一件のあと、フレアの館に戻ったスバルたちはフレアに詰め寄りました。
「シュバア! シュバルバババシュバシュバルバシュバルルババシュバ! シュバシュバルババシュババシュバルシュバシュバ!」
(おめえ! 悪かったで済まされると思ってんのかシュバ! どう落とし前つけてくれるんだシュバ!)
「そ、そう怒らなくてもいいじゃん、何事もなく終わることができたんだし。約束通りレジェンド所有者の情報を教える、それで手を打とう」
「シュバア! シュバルバシュバルルシュババシュバルバシュバルルバシュバルシュババ!」
(キアラ! こいつにスバ友流のけじめのつけ方を教えてやれ!)
「キアラ。スバル先輩がキアラに、スバ友のやり方でけじめをつけさせろとおっしゃっています」
「了解デス」
キアラが指を鳴らしながらフレアに近づいていきます。
「わ、わかった! わかったよ! あたしが知ってるレジェンド所有者を二人教える! 二人だ! それで勘弁してくれ!」
「シュバルシュバシュバルシュバルルバシュバ」
(どうせなら全部吐いちまえシュバ)
「冗談言わないでくれ、あたしだって何でも知ってるわけじゃない。これ以上跳ねても何の音もしないって」
「シュバ、シュバルルシュバルシュバルルシュバ」
(ふん、そういうことにしてやるシュバ)
スバルが右翼を上げると、フレアに詰め寄ってきていたキアラが大人しくひきました。
「シュバ、シュバルシュバルバ?」
(で、どこのどいつだ?)
どかっとソファに腰を下ろしてスバルが尋ねます。
「一人は現在のランキングトップチームのリーダー、もう一人はそれ以前までランキングトップを維持していた元トップランカーチームのリーダーだ」
「シュバア、シュバルバシュババシュバルシュバ? シュバルバシュバルバシュバルルバ」
(おまえ、スバルをバカにしてんのか? 名前を言えっつってんだよ)
「まあ待てって。実は前者の現トップランカーは近々この館にやってくる予定なんだ、その時におまえたちを紹介してやるよ。名前は本人から聞くといい」
「シュバルルシュバルバ」
(本当だろうな)
いぶかしむスバルに「もちろんだとも」とフレアが胸を叩きます。
「それで後者の元トップランカーなんだが、スバ友絶頂期の五年前も堂々とその地位についていた実力者だ。あたしよりもおまえの方がよく知ってるんじゃないのか?」
「……」
「三年前に剣士を引退してランキング一位の座から降りた後、自分の城に帰って暇を持て余してるらしい。会いに行けば喜んで出迎えてくれるだろう」
「シュバア」
(そうか)
「というわけで、さきにそっちへ行ってきたらどうだ? もし帰りが遅くなっても、おまえたちが戻って来るまで現役トップランカーの方はあたしがこの館に引き留めといてやるからさ」
「シュバルバ。シュバルルバシュバ」
(そうだな。そうするかシュバ)
呟いてからスバルは「シュバルバ」(悪いな)とフレアに言いました。
「なに、シュバンゲリオンの件では悪いことをしたとあたしなりに反省しているんだ。そのほんのお詫びだよ」
フレアとスバルの和解したような雰囲気に、キアラは「ふむふむ」と頷きます。
それから彼女はるしあの方に振り向きました。
「それでるしあさん、結局どうすることになりマシタか?」
「フレアさんの提案に従って、元トップランカーに会いに行くことになりました」
「そうデスか! それなら玄関前にフェニックスをつれて来ときマスね!」
そう言ってキアラが客間を出て行こうとします。
「ちょっと待った!」
そこへいきなり大声が聞こえてきました。
声の主は廊下からスバルたちの会話を盗み聞きしていたようで、ぞろぞろと室内へ入ってきます。
「レジェンドソーセージを所有する元トップランカーがいるという根城、ねねたちも同行させろ!」
ねねにぼたん、ラミィ、ポルカのホロファイブです。
「あー、こいつらも連れてってやってくれ」
館にいられてもうるさいし、とフレアは付け加えます。
そんなフレアに「聞こえてるぞ」とねねが突っ込みました。
「でも嫌とは言わせないからな、大空スバル。先の巨大アヒル暴走の一件は我がホロファイブのメンバーししろんの大活躍のおかげでどうにか事なきを得たと言っても過言ではない。それを思えばねねたちを一緒に連れて行くくらいどうということはないはずだ」
「シュバシュバシュバルシュバシュバシュバシュバル」
(いちいちもっともなこと言いやがる)
「スバル先輩、構わないということでいいですか?」
るしあがスバルに確認します。
「シュバ」
(ああ)
「ついて行って構わないだそうです」
「やったー!」
ねねが飛び跳ねて喜びます。
「ねね、あのダチョウに乗ってみたかったんだ!」
「え? るしあたちとフェニックスに乗ってついてくるつもりですか?」
るしあは呆れたように言ってから、ちらりとキアラのほうを見ました。
「大丈夫大丈夫」
キアラは笑って答えます。
「フェニックスとてアヒージョの一員、ファイナルファン〇ジーのチョコ〇と思ってもろて」
「は、はあ。キアラがそう言うのでしたら」
「シュバルルシュ、シュバルシュババシュババシュバシュバル。シュバルシュバルルシュバルバシュバルルバ」
(フェニックス、スバルたちは同じ鳥同士。つらくなったら守ってやるからな)
◇ ◇ ◇
「ららいおん、ららいおん」
「「「「ねーねをがぶがぶ、ららいおん」」」」
「きれいに声をそろえて、本当に仲がいいんですね」
機嫌よさげに歌うホロファイブの四人に振り返りるしあが話しかけます。
ねねが笑いながら「当たり前じゃん」と答えました。
スバルたちはフェニックスに乗って元トップランカーのいる城へ向かっていました。
しかしその目的地までかなりの距離があります。
そのため時々フェニックスを休ませながらも一日中走らせて、気が付けば日が沈みかけていました。
スバルたちはジョゼフとたまき君に野営の準備をさせます。
テントは大きなものを二つ組み立てさせました。それぞれスバル一行用とホロファイブメンバー用のテントです。
テントの設置が終わったら、ジョゼフとたまき君は食べ物を探しに駆り出されます。
その間スバルとるしあ、キアラは焚火の準備をしました。
ホロファイブメンバーは楽し気に歌ったり喋ったりしています。
しかしケラケラ笑いながらもぼたんは猟銃を上に向けてバンバン撃っており、銃声がするたびに空から鳥が降ってきます。
気が付けば人数分の鳥肉が手に入っていました。
ジョゼフとたまき君が戻ってきたところで持ってきた野菜を鍋に突っ込み、皆で囲んで突きます。
ラミィはお酒を飲みながら少しずつ食べていきます。
実は彼女、フェニックスに乗っている時もしばしば飲んでいました。
ぼたんは鍋に突っ込まれた鳥肉を骨ごとかみ砕いて飲み込んでいます。
ねねは野菜をのけて肉だけ食べます。
ポルカはとりあえず何でも食べます。
キアラとるしあはそれぞれ、自分たちが食べながら隣と膝元にいるフェニックスとスバルに食べさせてやっていました。
フェニックスはキアラに気を使って鳥の骨ばかり食べます。
スバルは好き嫌いなく肉も野菜も食べるのですが、るしあが鳥肉を食べやすいようにちぎってから口元へ持っていってやると、はじめは別段気にする様子もなく口を開くものの口の中に入れた途端に複雑そうな顔になります。
そして開けたままの口を閉じることができなくなってしまいます。
「えっと、鶏肉はやめておきますか?」
「シュバルバシュバ」
(すまないシュバ)
「え! いらないなら口付けてないところねねが食べる!」
「どうぞ」
るしあからスバルの分の鳥肉を渡されたねねは豪快にかぶりつきました。
夕食を終えてから皆はそれぞれのテントに入って寝始めます。
「スバル先輩は、これから会いに行く元トップランキングチームのリーダーと知り合いなんですか?」
なかなか寝付けなかったスバルとるしあは一緒にテントの外に出て、焚火にあたりながら喋っていました。
「シュババ。シュバシュバルルバシュバルシュババ、シュバルバシュバルバシュバシュバルルバシュババ」
(まあな。でももうずっと昔だから、向こうがスバルを覚えているかどうか)
「スバル先輩を忘れるなんて、そんな人がこの世界にいるはずないです!」
むきになって言い返するしあにスバルは苦笑します。
「シュバルババ。シュバシュバルルバシュバルバシュバア、シュバルルバシュバルバシュバルバシュバルルシュバルシュババ、シュバルババシュババルルシュババシュバルバ。シュババシュババシュバルババシュバシュバルルシュバシュバシュバシュバルルシュバルルシュバシュバルルシュバシュバ、シュバシュバルバシュバシュババシュバルルシュバ」
(ありがとな。でもそうやっておまえやキアラ、スバ友のみんながスバルを慕ってくれるように、スバルにも憧れる人がいたんだ。そしていつかその人の立つステージまで駆け上がって同じように輝いてみたい、そう思ってスバ友を結成した)
スバルは星空を見上げながら続けます。
「シュバルバシュババシュバルバシュバルルシュバシュババシュバ」
(いまから会いに行くのはそういう人なんだシュバ)
「スバル先輩……」
るしあは目をうっとりさせながらそんなスバルを見つめました。
「なになに? なに話してるの?」
するとるしあの余韻を破るようにしてねねがやってきて会話に割り込んできました。
ねねは焚火にあたる一番いいポジションに「どっこいしょ」と腰を下ろし、「で、なに喋ってたの?」とるしあに聞きます。
「なんでもないです」
るしあはしらけたようにため息をつきました。
「どうしたんですかねね? さっきまでぐーぐー鼾をかいて寝ていたようでしたが」
「いやー、ちょっとRestroomのほうに参りたい状況になりましたの」
「トイレとかお花を摘みにとか言ってください、リアクションに困ります」
「シュババシュバルシュバシュバルババシュバルシュバ」
(むしろリアクションしかなくて困るシュバ)
「それよりさ、なんかねね目が覚めちゃったんだよー。何でもいいから暇つぶしに面白い話してくれないかなー?」
「シュバルバシュババ」
(おまえがしろよ)
「ねねは何か面白い話とかありませんか?」
「え? ねね?」
きょとんとした顔で聞き返すねねに、るしあは「はい」と答えます。
「先日、レジェンドソーセージをすべて集めるって言ってましたよね? 話せるところまででいいので、どういうことなのか教えてくれませんか?」
尋ねるるしあに「ふふふふふ」とねねは含み笑いをしました。
「よくぞ聞いてくれたアヒルしか愛せなくなった魔女よ」
「ぶん殴りますよ」
「冗談だよー。やだなもー、ノリが悪いよー」
ケラケラ笑ってからねねは焚火を見つめだします。
「ねねさ、何度も何度も同じ夢を見るんだ」
「夢?」
聞き返するしあに頷いてから、ねねは続けます。
「その夢の中でね、ねねはラミィやおまるん、ししろんと一緒に大陸中を冒険するの」
「楽しそうですね」
「うん、すごく楽しいんだ。みんなで歌いながら冒険して、世界を平和にしていくんだ」
そう答えてから「でも」と言って、ねねの笑顔に曇りがさします。
「ねねとラミィ、おまるん、ししろんの四人のほかに、夢の中にはあともう一人だけ仲間がいるんだ。ホロファイブは四人じゃない、その五人目を含めてはじめてホロファイブがフルメンバーになる。ねねはその夢を見るたびに目が覚めてから『はっ』となって五人目を探すけど、しばらくしてから『ああ、夢だったんだな』ってわかるの。でも、わかったあとでもなんだかすごく悲しくなって、ねねは居ても立ってもいられなくなっちゃうんだ」
ねねはため息をつきました。
「わかってるんだねねだって、ただの夢なんだってことくらい。こんなことガチで話すねねなんか、妄想と現実をごっちゃにした変なヤツだとか思われてるんだろうなとかも自覚してる」
「そんなことないですよ、ねねはおかしくなんかないです」
ねねはるしあに微笑んで「ありがとう」と返しました。
「ねねは、あの夢はただの夢じゃないって信じてるんだ。だって何回も何回も夢に出てくるなんてやっぱり変だもん。五人目はこのホロ・デ・ソーセージ大陸のどこかに絶対いる、会いたい、でも会うことができない、そんなこと思いながらホロファイブの活動をして過ごしてたある日、レジェンドソーセージを全てそろえると願いが叶うっていう噂を耳にしたんだ」
ねねはまた焚火の炎を見つめながら続けます。
「ねねもそれ聞いた時はまさかと思ったけどさ、情報源も信用できたしこういうのって駄目で元々じゃん? とにかく集めるぞー、それで五人目に会わせてもらうぞーってノリでホロファイブ総出でレジェンド集めをしだしたんだ。おまるんにはフレアさんのところや魔王城に、ラミィやししろんにもいろんなところに潜ってもらってレジェンドソーセージに関する情報収集をしてもらった。でもフレアさんは口が堅いしラミィとししろんも有力情報が得られないしで、八方塞がり状態だったんだよ。そんな時、久しぶりにみんなで気晴らしに冒険でも行こうと思っておまるんのいるフレアさんの館に行ってみたら」
「るしあたちがいたんですね」
「うん。とうとうレジェンドソーセージを見つけたっていうのも嬉しかったけど、それより嬉しかったのはるしあたちの事情を聞けたこと」
「どういうことですか?」
「だってるしあたちはスバルの呪いを解くためにレジェンド所有者を探してるんでしょ? レジェンド所有者の名前をなんとかっていう変な本に書けば、スバルの呪いは解けるんでしょ? ちょっと違うとこもあるけど、十二本のレジェンドソーセージの何かを集めるっていうのは一緒じゃん。レジェンドソーセージを全部集めれば願いが叶うんだって、ねねは確信できたんだ」
「言われてみればそうですね」
「ふふふ、楽しみだなあ五人目の子。夢の中でしか会ったことないけど、実際はどんな子なんだろう。ねねがすぐに十二本のレジェンドソーセージを集めて、ホロファイブに加えてあげるんだ」
ねねは八重歯を見せていたずらっぽく笑いかけます。
「シュバルシュババシュバシュババ」
(おまえたちに会う前に)
すると、ずっと黙っていたスバルが独り言を言うようにぼそぼそと喋り出しました。
「シュバルババシュバシュババ、シュバルシュババシュバルルシュババシュバルルシュバルバシュバルババシュバルシュバルバ。シュバルシュババシュババシュバルバシュババシュバルバ、シュバルシュバシュバルバシュバシュバババシュバルルシュバシュバシュバルシュバ」
(おまえたちに会う前に、スバルたちは宝鐘マリンっていうレジェンド所有者に会ってきたんだ。今度会った時におまえのことを話して、少しだけレジェンドソーセージを借りれないか聞いてやるシュバ)
「え? なにシュバシュバ言い続けてるの、スバル」
シュバル語が分からないねねは気味悪そうにスバルを見ます。
るしあがコホンと咳払いをしました。
「実はるしあたちには一人レジェンド所有者の知り合いがいるんです。スバル先輩はねねのために、その人にねねの事情を話して協力してもらえないか聞いてくれるとおっしゃっているんです」
るしあの通訳に、ねねは「え? 本当?」とスバルを見ます。
スバルはこくりと頷きました。
「ふふふ、ありがとうスバル」
言ってから、ねねは夜空を見上げます。
透き通った紺色の空には数えきれないほどの星が煌めいています。
ねねは足をぶらぶらさせて歌いはじめました。
「ららいおん、ららいおん」
「「「「ねーねをがぶがぶ、ららいおん」」」」
するとホロファイブのテントから三人の声が聞こえてきて、きれいに重なります。
「なんだよおまえらー、起きてたのかよー!」
ねねは焚火のそばから腰を上げてテントの方へ駆けて行き、中へ入っていきました。
しばらくしてから、きゃいきゃいと四人の楽しそうな笑い声が聞こえてきて、しんと静まった夜空の下で鈴の音のように響き渡りました。
スバルドダック(アヒルverスバル)のシュバル語は読み始めると疲れます。
あえて読もうという方以外は、基本的にシュバシュバ喋った次行の(~)だけをお読みください。