勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~ 作:はばたくアヒル
客間で打ち解け喋り合ってから少しして、ノエルとスバルは外へ出ました。
それに気づいたねねが二人を追いかけていき、るしあとキアラもそれに続きます。
さらにポルカ、ラミィ、ぼたんまでやってきて結局フレア以外の全員が館の外に集まりました。
「光栄ですスバル先輩」
スバルと距離を取りながらノエルが語りかけます。
「あのライトニングウィンナーの使い手、大空スバルとこうして手合わせしていただけるなんて」
「それはスバルのセリフだシュバ」
スバルは人間の姿に戻ります。
「白銀ノエル、本気で行かせてもらうシュバ」
「もちろんです」
ノエルは頷きます。
「ところでスバル先輩、我々剣士はソーセージに敬意を払い、むやみやたらとソーセージを抜かず相手を倒すという信念を持つ時のみソーセージを使用するようにしています。それこそが剣士の心得であり、ソーセージ道であります」
「いかにも」
「されど団長と先輩の場合、お互いがレジェンドソーセージを所有する者同士、スキル使用可能な条件下の戦闘でこそ本来の実力が発揮できるのであります。どうでしょう、この一戦ばかりは模擬刀ではなくソーセージで戦いませんか? ソーセージに対して十分な理解と敬意がある先輩と団長ならば、たとえソーセージを使用したとしてもソーセージ道を外れる心配はないと思いまっする。なにより、スバル先輩に全力を持って勝ちたいというのは団長の偽りなき信念であります」
「そうだな。相手がおまえであることだし、こんなにも観客がいるんじゃ、断るに断れねえシュバ」
そう言いながらもスバルの顔は嬉しそうです。
スバルとノエルはやや距離をあけて対峙します。
そして互いにレッグバッグからフォークを取り出しますが、ソーセージを出現させようとはしません。
右手にフォークを持つスバルに、左手にフォークを持つノエル。
二人は鏡合わせになるように直立しだし、フォークを顔の前で真っ直ぐ立てるように掲げます。
「「我らはソーセージに誓う!」」
二人の声がそろいます。
「「剣士としての誇りを持ち、己のソーセージに恥じぬ正々堂々とした戦いをすることを!」」
そう言ってから二人は一礼し、互いにソーセージを出し合います。
「それが噂の、『神の怒り』ライトニングウィンナー」
スバルのソーセージを見ながらノエルが呟きます。
そう言うノエルのフォークにも異様なソーセージが現れています。
長さは120センチ前後、棒状になった溶岩のまわりにソーセージの破片が大小集まりくっ付いているようなビジュアルです。
破片と破片の隙間から赤く光る溶岩が顔をのぞかせており、まるで火が付いた後の炭のようにその光を強めたり弱めたりしています。
「うっひょお!」
マグマ・ホットドッグを見たねねが興奮して飛び跳ねました。
ねねの隣で百年梅酒ぺこらverを飲み終えたラミィも、二人の剣士から一切目を離さずにホロのみホロライブverのなかの一本を開封します。
「行くシュバ!」
スバルがザシュッ! と砂埃を立てて姿を消しました。
「え!」
それを見たるしあが驚き自分の目を疑います。
瞬きしてからもう一度よく見てみますが、やっぱりいません。
るしあはもしかして自分がおかしいのかと心配になり、ちらりと隣のキアラを横見しました。
キアラは顔をしかめるほど目を細めています。
しかしそれでもどうにかスバルの姿をとらえているようで、視線をきょろきょろと動かしています。
一方、ノエルはそんなスバルに「たはは」と笑いました。
「さすがスバル先輩、ここまで速い剣士なんて大陸中を探しても二人といません」
そんなことを言いながらも全く怯んだ様子がありません。
ソセレ合金防具の合間を縫うように放たれるライトニングウィンナー、それをノエルは平然と両腕のソセレ合金で弾きます。
ノエルが腕を動かすたびにキン! キン! と音が響くので、スバルの姿を見ることができないるしあも腕当てで上手に防いでいることがわかりました。
「あの人、スバル先輩の動きが見えているんですね」
「デスね」
キアラが答えます。
「しかし、完全に対応しきれてはいないようデス。スバルせんぱいの攻撃のいくつかはちゃんと当たっています」
「そうなんですか? さすがスバル先輩!」
るしあが嬉しそうな笑みを浮かべます。
「しかし、気がかりなのはマグマ・ソーセージを振るってこないことデスね。さっきから腕当てで弾いてばかりいマス」
「スバルが狙ってるからじゃないのか」
るしあとキアラの会話にポルカが入ってきました。
「なんだかんだでノエルに隙がないから、スバルもノエルに大振りさせたくてちまちま攻撃してるんだ。でもノエルが全然乗ってこずに、逆にスバルの隙をうかがってる。だから二人で我慢くらべしてる最中なんだよ多分」
そこにぼたんが「でも」とさらに加わってきます。
「ノエルさんの体力が徐々に減らされているのは確かだからさ。このままの状態がずっと続くと、本当にスバルさんが押し切って試合終了だね」
◇ ◇ ◇
一撃、また一撃とノエルにスバルの攻撃が入ります。
「ふふふ、参ってしまいますスバル先輩。団長、ここまで防戦一方を強いられる戦いはマグマ・ホットドッグを手にしてからこの方覚えがありません。防ぐのがやっとですよ」
「つまらねえ嘘つくんじゃねえシュバ」
パシン! とノエルの右腿にライトニングウィンナーを当ててからスバルが姿を現します。
「致命傷だけ上手く防ぎながらダメージをわざと蓄積してるのがバレバレなんだよ」
スバルの言葉に観戦していた皆がざわめきます。
ノエルは「ふっ」と含み笑いをしました。
「そんなことまで見抜かれているとは、団長、本当に参ってしまいまっする。五年の空白期間を挟んでも大空スバルの実力は健在というわけですね」
言ってから、ノエルは剣を持つ手の左半身を前に出す構えを取ります。
そして目を見開きます。
ノエルの翡翠色の目が、徐々に赤く染まっていきます。
手にしているマグマ・ホットドッグの溶岩がまわりのソーセージの破片同士の隙間から溢れ出しそうなくらいせり上がり、真っ赤な光を放ちます。
ノエルの足元で先程まで生き生きと背を伸ばしていた草花が、マグマ・ホットドッグの発する熱気にあてられ急にしなびてしまいます。
「スバル先輩、これがマグマ・ホットドッグのスキル『断末魔』です。使用者の体力が25%以下になることを条件に発動が可能となり、発動することによって使用者の力を75%増幅させます」
「ライトニングウィンナーの『神の怒り』と同じタイプのスキルというわけシュバな」
ノエルは「はい」と頷きます。
「しかし申し訳ありませんが、スバル先輩に『神の怒り』を発動させるつもりはありません。こうしてスバル先輩の剣を見させていただき、それを使われることがどれほど恐ろしいかよくわかりました。ゆえにこの勝負、スバル先輩にスキルを発動させることなく終わらせてもらいます! 卑怯だとか言わないでくださいね!」
「言うわけねえだろシュバア!」
スバルが再び消えます。
ノエルの目がスバルを追います。
スバルはノエルから見て右手側に移動しており、ライトニングウィンナーを振り下ろそうとしています。
先ほどまでのノエルなら、その攻撃を右の腕当てで受け止めていたでしょう。
マグマ・ホットドッグで受け止めるよりも動作が少なく、隙を作らないからです。
しかし今、ノエルはマグマ・ホットドッグを振るいます。
75%のバフ強化に加え、タイミングとしても絶好のカウンターです。
しかしそんなマグマ・ホットドッグの振るわれる先はスバル本体ではなく、剣であるライトニングウィンナーでした。
ライトニングウィンナーの根元に、強化されたマグマ・ホットドッグの一撃が入ります。
「くっ!」
その衝撃にスバルの握力が耐えられず、フォークが弾き飛ばされます。
虹色のフォークが空高く上がり、やがて地面に落ちてからんからんと軽やかな音を立てました。
一方ソーセージを失ったスバルの鼻先には、ノエルのマグマ・ホットドッグが突きつけられます。
スバルは静かに息を吐いてから「参った」と言いました。
「ノエル、本当に強くなったな」
そうスバルが語りかけると、一瞬ノエルの目が潤みます。
しかしそのすぐ後にはぶんぶんと首を振って「いえいえ、団長なんてまだまだです」と答えました。
ノエルはソーセージを消してからレッグバッグにフォークを仕舞います。
それから飛ばされたスバルのフォークを拾いに行き、あぐらをかいているスバルにそれを差し出しました。
スバルはフォークを受け取ってからレッグバッグの中に入れ、まだ伸ばされたままのノエルの手を掴んで立ち上がりました。
「次やる時は勝たせてもらうシュバよ」
「ええ、その時はスバル先輩の呪いが完全に解けた状態でしましょう。三分というタイムリミットでは、今回のようにスバル先輩に勝負を急かせてしまいます」
「ふん、だから負けたんだとかつまらねえことは言わねえよ。十分勝てると思って勝負を決めに行き負けた、それだけシュバ」
「再戦の日を楽しみにしてまっする」
スバルとノエルが拳を軽く合わせます。
二人の対戦を観戦していたるしあたちも、健闘を称えるように拍手を送りました。
そんな中、
「その前に、私とも戦ってくれないかしら?」
二人のすぐそばの茂みから、聞き覚えのある声がしました。
スバルドダック(アヒルverスバル)のシュバル語は読み始めると疲れます。
あえて読もうという方以外は、基本的にシュバシュバ喋った次行の(~)だけをお読みください。