勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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 翌朝になりました。

 

「んー、やっぱり朝食はあっさりめに味付けされた牛丼に限りまっする」

 

 剣士の回復力は常人とは桁違いです。

 それが伝説級の実力剣士ともなれば、さらに桁数が変わっていきます。

 ノエルはひどい負傷をした昨日の今日にもかかわらず、ソセレ合金防具を装着しながら牛丼の三杯目を「あびゃびゃびゃびゃ」と言いながらがっついていました。

 

「でも元気みたいで良かったよノエル」

 

 ノエルの隣に座るねねも朝食を取りながら、彼女に話しかけます。

 

「ほらだって昨日あんなことがあったじゃん? もしノエルが落ち込んでいたらホロファイブの武勇伝でも聞かせて元気づけてあげようと思ってたのに、そんな必要全然ないんだもん」

 

 言いながら、ねねは器用に野菜だけ取り除いて朝食を口に運びます。

 

「たははは! 当然ですよ、駆け出しの頃なんてもっと酷い怪我をして帰ったこともあったんですから! 一度や二度の敗北がなんだ! 次に二十連勝三十連勝すればいいだけのこと! そのためにも今は力をつけることが肝要、つまり牛丼を食べなくてはいけません!」

 

「ふーん、ねえ、ところでなんかそれおいしそうだね。牛肉一切れだけねねにくれない? そしたらねねはお返しに、取り分けといたこの野菜全部あげるんだけど」

 

「それはありがたいです、交換しましょう」

 

「うん!」

 

 ノエルは笑ってからまた「あびゃびゃびゃ」と牛丼を食べ始めます。

一方、そんなノエルを少し離れた場所から見守る人影が二つありました。

 

「良かったですねスバル先輩、ノエルさん本当に元気そうで」

 

 その一人であるるしあが、もう一人のスバルに話しかけます。

 

「シュバルバ」

(そうだな)

 

 スバルはるしあに頷きました。

 

 朝食を済ませたノエルは庭に出て鍛錬をはじめます。

 常日頃からソセレ合金防具を装備しているのでそれだけでも十分鍛錬しているようなものですが、ノエルは朝昼晩と日々の鍛錬を欠かさずこなしているらしいのでした。

 スバルとるしあは訓練するノエルをこっそり見守ります。

 

「シュバルルシュバ」

(変わらねえな)

 

「そうなんですか?」

 

 尋ねるるしあにスバルは頷きます。

 

「シュバルルシュバルババシュババシュバルババ、シュバシュシュシュババシュバルババシュバルババシュバルルバシュバルバシュバルバ。シュバルバババシュバルバシュババシュバルルシュバシュバルバ」

(トップランカーになったっていうのに、ああいう地味な鍛錬を疎かにしないのはノエルの長所だ。昔からの日課を今も続けているようだな)

 

「でも、スバル先輩だって毎日鍛錬をしているじゃないですか。そのお姿でできることはそのままで、素振りなどするために貴重な三分間を使ってまでして」

 

「しゅ、シュバルシュバシュバルバ」

(お、おまえよく見てるな)

 

「いやあ、だってスバル先輩のことですもの」

 

「シュバシュバルバシュバルルシュババ、シュバルルシュバルバシュババシュバルバシュバルルシュバルバ。シュババシュバルルバシュバルバシュバルバシュバルルシュバ」

(そりゃスバルも鍛えるけどさ、ああいう毎日同じメニューは正直しんどい。飽きがこないよう日ごとにメニューを変えてるシュバ)

 

「ふふふふ、素敵ですスバル先輩」

 

「シュウシュバシュバ」

(あーはいはい)

 

 そんなことを喋っているスバルとるしあに「あのー」と声がかかります。

 二人が振り向いてみると、そこにいたのは白銀聖騎士団所属の青年剣士でした。

 白銀聖騎士団は近くの村の宿に皆泊まっているのですが、今朝早くにリーダーであるノエルの怪我の具合を心配し、フレアの館へ来ていたのでした。

 

「すいません、うちの団長を見かけませんでしたか?」

 

「ああ、それならちょうどあそこで鍛錬を……、あれ?」

 

 るしあはさっきまでノエルがいた場所を指さそうとします。

 しかし、そこにはすでに彼女の姿がありませんでした。

 

「おかしいですよね、みんなでずっと探してるのに全然見つからないなんて」

 

 彼は独り言のようにそう言ってから「すいません、急に話しかけてしまって」とスバルとるしあに頭を下げます。

 それから「どこにいるんだろう」と呟きながら歩いていきます。

 

「シュバルバシュバルバシュバ、シュバシュバルバシュバルルババ」

(どうやらノエルのやつ、大丈夫じゃなさそうだな)

 

 青年の背中を見ながらそう言うスバルに、るしあは「え?」と言って振り向きました。

 

 

         

 

 

 時間が経って夜になります。

 白銀聖騎士団の団員たちは未だにノエルに会うことができずにいました。

 しかし、昨日大怪我をしたという自分たちのリーダーを一目も見ずに帰るわけにはいかないということで、彼らはフレアの館の隣にテントを張って野営することにしました。

 

「……、はあー」

 

 そんな団員たちを館の屋根上からしばらく見下ろしていたノエルは、丸めて座っている身体の膝元に顔を埋めてため息をつきます。

 

「シュバルバシュバルルシュバ」

(やっぱり変わんねえな)

 

「!」

 

 いきなりシュバシュバとアヒルの鳴き声が聞こえて、ノエルは思わず振り向きます。

 そこにはスバルとスバルを抱えたるしあがいました。

 

「シュバルバシュバルババシュバルルシュババシュババシュババシュバルルバシュバルル」

(おまえは昔から思い詰めると屋根の上で星空を見上げる)

 

「なにか思い詰めたことがあるとこうして星を眺めるのは昔と変わらない、とおっしゃっています」

 

 るしあはスバルを抱えたままノエルの隣に腰を下ろします。

 

「たはは、団長やっぱりスバル先輩にはかないませんね」

 

 ノエルは苦笑しました。

 それからため息をつき、ゆっくりと星空を見上げます。

 

「団長には兄上がいたんです」

 

 星を見ながらノエルは喋りはじめます。

 

「とてもやさしい兄上でした。しかし団長が白銀聖騎士団を結成する直前になくなってしまった、ううん、正確に言うなら兄上が結成しリーダーとなるはずだった白銀聖騎士団を、団長が亡き兄上の遺志を継ぎ結成したのです。だからこそ、団長は兄上の分まで頑張らねばと気を引き締めて日々を送ることができるわけなのですが、それでもどうしようもない時はあります。そんな時、無性に兄上に会いたくなるのです。兄上は星空が好きでした。あの星空のどこかで兄上が団長を見守っておられるような気がして、つい星を眺めたくなるのです」

 

「シュババ、シュバルルバシュバルバ?」

(それで、今回はどうした?)

 

「お兄さんにどんなことを慰めてもらっていたのですか?」

 

 尋ねるるしあにノエルは何も答えず苦笑します。

 

「シュバルバシュバルルバ?」

(昨日の敗北か?)

 

「昨日の勝負で負けてしまったことを気にしているのですか?」

 

 その問いかけにもノエルは無言で首を振ります。

 

「シュバルバ」

「となると」

 

 スバルはノエルを見上げました。

 

「シュバルバシュバルルババシュバルバシュバルルバシュババ」

(レジェンドソーセージのスキルを奪われたことか)

 

「マグマ・ホットドッグのスキルを奪われてしまったことですか?」

 

 聞くるしあに、ノエルはしばらく黙ってから「団長は」とぼそぼそした声で話しだします。

 

「確かにマグマ・ホットドッグを失ったことはつらいですが、諦めもつくのです。勝負とはそれくらいの覚悟を持ってのぞむもの、しかもマグマ・ホットドッグは世界に十二振りしかないソーセージの一振り、持っていないことの方がむしろ普通なのです」

 

「じゃあ何でそんなに思い悩んでいるのですか?」

 

「それは」

 

 ノエルはそこでため息をついてから、改めて続けます。

 

「それはあのフォークが団長一人だけでなく、団長と団員皆が苦楽を共にしながらようやく手に入れたものだからです。あれは白銀聖騎士団みんなのものだったんです」

 

「そうですよね、それを失ってしまうのはつらいですよね」

 

 うんうんとるしあが頷きます。

 

「そうなんです。それと、あえて付け加えるなら」

 

 ノエルはまたいったん言葉を止めて、笑顔を作ってから続けます。

 

「団長がレジェンドソーセージを所有しているということが、まあちょっとした団員たちの自慢だったというか、白銀騎士団のチームメンバーでいてよかったと思えるポイントでもあったわけでして、そう考えるまあそのこともキツイなあと思えてきまして、たははは」

 

「シュバルバ、シュババ」

(なるほど、そこか)

 

 ぼそっと呟くスバルにるしあが「え?」と顔を向けます。

 

「シュバア、シュバルシュババ。シュババシュバシュバルシュバババシュバルルシュバシュバシュバルルシュバ。シュバルバシュバルバシュバルルバシュババシュバルバシュバルルババシュバルババ。シュババシュババシュバルルシュババシュバルルババ」

(るしあ、伝えてくれ。別にそう思うことは恥ずべきことでもなんでもない。スバルはリーダー成りたての頃のおまえを知ってるからなおさらだ。だから変に格好つけず喋れってな)

 

「は、はい」

 

 るしあは頷いてからそのことをノエルに伝えます。

 するとノエルは肩をがくりと落としてからまた「たはは」と笑いました。

 

「全く参ってしまいまっする、自分の過去を知られているというのはどうも」

 

「シュバルバシュバ、シュバルルババシュババ」

(いいからほら、好きなように喋れ)

 

「えっと、好きに喋るようおっしゃっています」

 

「スバル先輩、そうは言ってもるしあさんも聞いてくれるのだとしたら、団長それは昔の頃の話からさせていただきたいです」

 

 言ってからノエルはまた星空を見上げます。

 

「さっき話したように、もともと白銀聖騎士団は兄上がリーダーになるはずだったのを、急遽妹の団長がリーダーとなるといったドタバタな状況からスタートしたチームなのです」

 

 そして、ノエルは昔を思い出していくように話しだしました。




 スバルドダック(アヒルverスバル)のシュバル語は読み始めると疲れます。
 あえて読もうという方以外は、基本的にシュバシュバ喋った次行の(~)だけをお読みください。
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