勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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「白銀聖騎士団は、亡き兄上に代わって団長がリーダーとなり結成したチームなのです」

 

 ノエルは昔を思い出すように話しはじめます。

 

「兄上が生きておられた当時、兄上は名の知られた上級剣士でしたが団長はまだ中級に昇級したばかりの半人前剣士でした。そんな団長だったので、兄上がチームを構想されている段階では、団長は一団員として白銀聖騎士団に加入しようと思っていたのです。ところがある日兄上は倒れられ、団長を白銀聖騎士団のリーダーにしてほしいという遺言を残し亡くなりました」

 

「悲しかったでしょうね」

 

「はい。大好きな兄上だったので。しかしだからこそ兄上のチームを守り抜かなくてはと強く思いました。当時の団長は剣士として未熟な小娘でしたが、チーム結成に臨み兄上が集めてくださっていた団員たちの多くはベテランの上級剣士でした。このメンバーならば白銀聖騎士団をランキング上位のチームにすることも夢ではないと希望を持てたのです」

 

「良かったですね、お兄さんがいろいろと残してくださって」

 

 ノエルは相槌を打つるしあをちらりと見てから「団長が世間知らずだったのです」と苦笑いしました。

 

「当時の団長はずっと兄上に甘やかされて生きていたので、全部自分の都合のいいように考えてしまっていました。白銀聖騎士団のチームメンバーは皆兄上を慕い集まってくれた同志たち、当然兄上が残してくれたチームを共に支えてくれる仲間に違いないと勝手に思い込んでいたのです」

 

「違ったのですか?」

 

「あくまで彼らが慕っていたのは腕が立ち武勇で名を馳せた兄上であって、まだ右も左もわからないような小娘ではなかったのです。当り前です。財も地位も力もない中級なりたてのひよっこ剣士がリーダーのチームなんぞに、誰が残りたいと思いましょう」

 

「そんな」

 

「それに白銀聖騎士団はまだ正式なチームとして剣士協会に届け出をしていませんでした。チーム加入についても兄上と彼らとの間で交わされた口約束にすぎません。チームに残るとかそういう段階ですらなかったのです、だってまだチームはできていなかったのですから。団長が剣士協会のチーム発足手続きを終えリーダーとして正式に白銀聖騎士団を結成したとき、皆は蜘蛛の子を散らすようにいなくなっていました。チームと言って良いのかどうか、白銀聖騎士団は団長一人からスタートしたのです」

 

 ノエルは自嘲するように笑います。

 

「実際にリーダーとなってから途方に暮れてしまいましたよ、ランキング上位どころかチームの存続が目下の問題なのですから。チームメンバーのために買い揃えた物々のせいで結構な額の借金は背負いますし、団長の生活費だって稼がなくてはいけません。しかしなりたての中級剣士一人でできる割のいい仕事なんてそうそうありませんし、かと言ってお金を稼ぐために他チームに加入しようにも団長自身がチームリーダーなので当然断られます。兄上が残してくれた白銀聖騎士団を解散するわけにもいかず、あの頃は本当に困ってしまいましたね」

 

「え? じゃあどうしてたんですか?」

 

「スバル先輩に助けていただいたんです。スバル先輩は他チームリーダーである団長を、独り立ちできるまでスバ友としてではなく食客としてチームに置いてくださいました」

 

 そう言ってからノエルはスバルに向き直り、「あの時期はスバル先輩とスバ友の皆様に本当にお世話になりまして」とぺこぺこ頭を下げだします。

 

「そうなのですか?」

 

「シュババシュババシュバルルシュババシュバシュバルシュバ」

(別に礼を言われるようなことじゃないシュバ)

 

 スバルはぷいと顔を逸らします。

 

「シュバルシュババシュバルバシュバシュバルルシュババ。シュバルルシュババシュバルババシュバルルバシュバルルバシュバ」

(剣の才があるのはすぐわかったからな。助っ人としてスバ友を手伝ってもらってたんだ)

 

「ど、どうしたんですかスバル先輩、団長何か失言しましたか?」

 

 ノエルにはシュバル語がわからないうえアヒルの表情は読みにくいものです。

 急にそっぽを向くスバルにノエルはおどおどします。

 

「気にしないでください、照れているのです」

 

 るしあが教えると彼女はホッと息を吐きました。

 

「それでノエルさん、スバ友から独り立ちした後はどうなったんですか?」

 

「はい、それ以降は順調に物事が進んでいきました。小まめに酒場へ行くようにしたりメンバー募集の張り紙をしたりして、少しずつ団員を増やしていきました。無名チームだったのではじめはメンバーの入れ替わりも激しかったのですが、それでも団員たちと冒険を続けていくうちに人数がすごいことになっていって、気づけばおかげさまで夢の上位ランカーチームになることができました」

 

「シュババシュバルバシュバルシュバルルシュバ」

(上位どころかトップランカーだろ)

 

「本当に良かったですね」

 

 手を合わせて喜ぶるしあに「ありがとうございます」とノエルは礼を言いますが、そのあとで「でも」と続けます。

 

「団員のみんなが団長についてきてくれるのは、その大きな理由としてレジェンドソーセージの所有者だったというのがあるのです。かつて兄上が集めた白銀聖騎士団のチームメンバーになるはずだった人たちのように、強い団長を慕って集まってくれている部分は必ずあります」

 

「シュバ、シュバルシュバババシュバルルシュバ」

(まあ、あるかないかと言われればな)

 

「それは一理あるかもしれませんが」

 

「マグマ・ホットドッグを使えなくなった団長が、いつまでチームを上位ランカーに留めておけるのかも正直怪しいところです。まだ団員のみんなは団長が敗れたことは知っていてもマグマ・ホットドッグを使えなくなったことは知りません。だけど今後それが明らかとなりランキングも徐々に下落していったとき、一体何人の団員が白銀聖騎士団に残ってくれているでしょう? そのことを考えると団長、怖くて怖くてたまらないのです。他チームと掛け持ちされるくらいなら全然かまいません。ですが、前日まで普通に笑い合っていたはずの仲間が急にいなくなってしまうのを想像すると本当にゾッとしてしまうのです」

 

「心配しすぎですよノエルさん。はじめてチームを結成した時に集まっていたチームメンバーが最悪すぎただけなんです」

 

 慰めるるしあに「るしあさん、チームはただの仲良しグループではないのです」とノエルは首を振ります。

 

「加入するも脱退するも個人の自由、だから敗北するたびにメンバーは減るし、ちょっとした失言一つでいなくなることもザラにあります。だからリーダーはもちろん強くなくてはいけませんが、メンバーに気を使ったり、定期的に冒険に連れて行ったり、皆が慕い憧れるリーダー像を示し続けたりしなければいけないんです」

 

「シュバルバ」

(そうだな)

 

 スバルまで共感しだしてはチームリーダーどころか剣士ですらないるしあが言い返せるはずもなく、るしあは「へえ、リーダーって大変なんですね」と頷くに終わります。

 

「……、はあ」

 

 沈黙が訪れる屋根裏で、ノエルのため息が響きます。

 

「シュババシュバル、シュバルバシュババシュバルシュババ。シュバルルシュババシュバルババシュバルルバシュバルルシュシュシュバ」

(だけどノエル、おまえは少し怯えすぎだ。最悪だったスタートのトラウマに引っ張られてる)

 

 スバルがるしあの胸元から抜け出て、ノエルの前にやってきました。

 

「シュバシュバルシュババシュバルルシュバルルバシュバルルバシュバシュバルバ。シュバルルシュバルバ、シュバルバシュババシュバシュバルバシュバルバシュバルババシュババ。シュバシュバシュバルバシュバルルシュバシュバルシュバルバ、シュバルバシュババルルバシュバルルシュバルバシュバルルシュバルバ、シュバルバシュババシュバルバシュバルシュバルルシュバシュバルシュバシュバルシュバルシュバルバ。シュバルバシュバルルババシュバルルバシュバルバシュバシュバシュバルバシュバルバシュババシュバ、シュババシュバルババシュバルバシュバルルシュバシュババシュバルシュババシュバルバシュバルルバシュバルルバ」

(そりゃ初期の頃はそういう連中もそれなりにいるだろうよ。冷やかしだったり、おまえのことを良く知らずにチームに入ったりしてな。でも今おまえと一緒にいるチームメンバー、おまえとランキングを駆け上がってきた団員たちは、おまえの良いも悪いも全部ひっくるめてついて来てくれるやつらばかりだ。レジェンドソーセージが使えないからだとかランキングが下がったからだとか、そんなくだらねえ理由で鞍替えするような薄っぺらい次元の連中じゃねえんだよ)

 

「あ、あの、スバル先輩は何と言ってるんですか? すごく良いことを言ってくれていると思うのですが、団長にはシュバシュバとしかわからなくて。るしあさん通訳を」

 

「えっとですね」

 

「シュバシュババシュバ。シュバルバシュバルルシュバルバ、シュバシュババシュババシュバルバシュバシュバルルバシュババシュバルルシュバ、シュバルバシュバルルシュババシュババシュバルバシュバシュバル。シュババ、シュバルバシュババシュバルルババシュバルシュバルバシュバルバシュバシュバルバシュシュバシュババ、シュバルバシュバルルシュバルルバシュバルバシュバルシュバルルシュバルシュババ。シュバルルバシュバルシュバ」

(まあまずは聞け。スバルのスバ友だってな、各々の主義の違いで今大変なことになっているが、それでもスバ友としてずっと残ってくれている。みんな、突然消えて五年間もいなくなってたスバルをまだリーダーだって言って、形は違えどスバ友の未来を思い描いてくれてるんだ。ありがてえ話だよ)

 

「そうですね」

 

「シュバルババシュバルシュバルババシュバルルシュバルシュババ、シュババシュバルバシュバルバシュバババシュバルルバシュバルシュババシュバルバシュバルバ。シュババシュバルバシュバルルシュババシュバルバ シュバルバシュバルルシュバルシュバシュバルバ。シュバル・シュバルシュバルバシュバルシュバルルバシュバシュバルルシュバシュバルバ? シュバルシュバルバシュババ。シュバルバシュバルルシュババシュバルシュババシュバルシュバルシュバルバ、シュバルバシュバルババシュバルルバシュバルルシュバルシュババシュバルバシュバルルシュバルシュバルシュバシュバルバ」

(リーダーとチームメンバーの絆っていうのはな、共に過ごした時間の長さに比例して結びつきを強めていくんだ。今のおまえと団員たちの絆はちょっとやそっとじゃ緩みすらしねえよ。マグマ・ホットドッグが使えないことをまだ知らないって言ったか? 早く話してやれよ。おまえの団員たちはそれを知って脱退するどころか、おまえの悔しさや悲しみを一緒に分かち合って絆を強めてくれる野郎どもじゃねえか)

 

 スバルが話し終えます。

 

「そうだな、それがいい」

 

 するとその直後、煙突の物影からフレアが現れました。

 

「え、フレアさん?」

 

 突然の登場にるしあが目を瞬かせます。

 

「すまんな。何やら話し声が聞こえたのでつい、な」

 

「一体いつから?」

 

「おまえたちが屋根に上がってノエルに話しかけたところからだ」

 

「シュバルバシュバシュバルバシュバルババ。シュバルルバシュバルシュババシュバシュバルシュバルバ」

(さらっと嘘ついてんじゃねえよ。はじめから全部盗み聞きしてるじゃねえか)

 

「まあそう言うな。いや、とにかくいい話を聞かせてもらった。いいこと言うじゃないか大空スバル」

 

 言いながら涙腺が緩んでいるのか、フレアは眉間を押さえます。

 

「あのー、団長疎外感が半端ないのですが」

 

 ぼそっと口にするノエルに「ああ悪い悪い」とフレアが答えます。

 

「大空スバルはな、団員たちへ顔を見せに行ってやれと言ってたんだ。そしてノエルが話せそうならマグマ・ホットドッグがもう使えないということもカミングアウトしてすっきりしてしまえ、とな。なに、ノエルのチームメンバーたちだ、しっかりその事実を受け止めてくれるって。大体そんな話だったよな? さっき喋ってたの」

 

 フレアが振り返ってるしあに聞いてきます。

 

「ま、まあ、ざっくりと言えば」

 

 フレアはるしあの返答に満足げな顔をしてから「な?」とノエルに向き直ります。

 

「そうなんだ」

 

 ノエルは頷いてからちらりと、団員たちのテントの方を見ました。

 普段野営をする時にはわいわいキャンプ気分で子供のように騒ぐ団員たちが、今はフレアの館の客間あたりを見ながら皆無言でちびちびお酒を飲んでいるようでした。

 

「ほーら、みんなおまえを心配して慌てて駆け付けてきたってのに全然会ってもらえないもんだからさ、辛気くさい顔して酒飲んでるよ。あーかわいそうに」

 

 言ってからフレアはドン! とノエルの背中を押します。

 

「今すぐ顔を見せに行けノエル」

 

「ええー」

 

 ノエルはあからさまに嫌な顔をしました。

 

「まあそんなに嫌なら無理にとは言わないけど、館内におまえを泊めるスペースはないぞ。あの団員たちのテントに受け入れてもらえなければ、今晩おまえは野宿するということになる」

 

「はあ? いきなり何言い出すのフレア」

 

「ノエル、おまえさっきのスバル大先生のお話を聞いて何も感じなかったのか? ノエルに与える布団があるなら大先生に献上しなくちゃいかんだろ」

 

「ちょ、本当にふざけないでよ」

 

「いやまあそれはさすがに冗談だけどさ、今顔を見せとけっていうのは本気で言ってるよ。世の中には時間で解決する問題があるけど、時間でこじれてしまう問題もある。今回は後者の方だとあたしは思うんだ」

 

 フレアが真剣な調子でそう言いました。

 

「ル、るしあもそう思います」

 

 すると横からるしあが会話に入ってきます。

 

「ノエルさん、今会いに行ってあげるべきです」

 

「シュバル」

(ノエル)

 

 そこにスバルも加わります。

 

「……スバル先輩も、団長に行けと言っているんでしょうね」

 

 ノエルは長いため息をつきました。

 それからまたちらりと、彼女は団員たちの野営地に目を向けました。

 




 スバルドダック(アヒルverスバル)のシュバル語は読み始めると疲れます。
 あえて読もうという方以外は、基本的にシュバシュバ喋った次行の(~)だけをお読みください。
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