勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~ 作:はばたくアヒル
スバルたちと屋根の上で会話し終えてから数分後、
「や、やあみんな、こんばんまっするー」
ノエルは団員たちに顔を見せるため、スバルとるしあ、フレアと一緒に野営地にやってきました。
「だ、団長!」
ぼーっと焚火を眺めていた団員の一人がノエルの存在に気づき、思わずと言ったふうに立ち上がります。
「おい、今誰か団長って言ったか!」
「団長が見つかったのか!」
「おーい! みんなー! 団長が会いに来てくれたぞー!」
まるで伝播するようにはじめ一人二人だった団員たちが続々と集まっていき、あっという間に白銀聖騎士団が勢ぞろいします。
「は、はははは、みんな元気そうで何よりだよ」
ノエルは彼らに苦笑いしました。
「それはこっちのセリフですよ団長! お怪我はもうよろしんですか?」
「なんでこんな時までソセレ合金防具をつけてるんですか!」
「まったく、団長には毎回驚かされますな!」
「当たり前だろ! な! だから俺の言ったとおりだったろ! 俺たちの団長はレジェンド所有者かつトップランカーチームのリーダー、実質大陸最強の剣士! きたねえ手さえ使われなければ負けることなんて絶対ないし、怪我なんてすぐ治っちまうんだ!」
「おいおい、偉そうなこと言ってんなよ。確かにそんなことを口走ってはいたが、焚火を見ながらぶつぶつ独りで呟きながらだったじゃねえか。はたから見る限りおまえはただのヤベエやつだった」
「ちげえねえ。あと数分あんな感じだったら、俺は担いで病院へ駆けこんでやろうかと思ってたぜ」
がははは、と団員たちが笑います。
ノエルも皆に合わせて「たははは」と笑っていましたが、しばらくすると笑えなくなってしまって無言で俯きだしました。
「団長?」
ノエルの異変に気付いた団員が話しかけます。
「やはり、まだお怪我が痛みますか?」
心配する団員にノエルは首を振ります。
スバルたちがノエルを見守ります。
ノエルはゆっくりと顔を上げました。
「みんな、聞いてほしいことがあるんだ」
ノエルの呼びかけに、団員たちの笑いが一斉にやみます。
「みんなもう館の誰かから話を聞いて知ってると思う。団長は昨日、あるレジェンド所有者の剣士に敗れてしまった」
「知ってます知ってます」
ノエルに気を使ってでしょう、団員の一人が大したことでもないように答えます。
「きったねえ手を使われて負けたんでしょう、本当に腹が立ちますよね」
言いながら彼が隣の団員にカンチョーしだすと、他の団員たちがまた笑いだします。
「その剣士の所有していたレジェンドソーセージは、クリスタルサビロイというのだけれど」
しかしノエルが話し始めると、皆は呼吸を合わせたようにピタリと静かになりました。
「クリスタルサビロイのスキルはとても恐ろしいものだったんだ」
「ど、どんなスキルなんですか?」
「クリスタルサビロイの所有者と戦って敗れたレジェンド所有者のレジェンドソーセージスキルを奪い取り、そのレジェンドソーセージを使えなくしてしまうというスキルだ」
ノエルがそう口にすると、先程までとは明らかに種類の異なる沈黙が流れます。
「すまないみんな」
ノエルは団員たちに向かって頭を下げました。
「団長はマグマ・ホットドッグを使って負けてしまったんだ。だから団長はもうマグマ・ホットドッグを使えない。実質レジェンド所有者ではなくなってしまったんだ」
それは衝撃的な告白のはずです。
普通なら皆ざわつき困惑しだしてもおかしくない告白、しかし団員たちは一言も言葉を発さず黙っています。
その沈黙がノエルをちくちくつつきます。
「みんな、団長はもうレジェンド所有者じゃないんだ」
ノエルはぼそっと繰り返します。
その声はか細く震えていました。
「だから今後、リーダーがレジェンドソーセージを所有しているような上位チームとは張り合えなくなってきて、白銀聖騎士団のランキングもどんどん落ちてしまうと思う」
ノエル本人は気づいていないのか震えた声のままそんなことを喋りだすので、それを横で聞いていたフレアは苦しそうな顔で自分の胸元を押さえだします。
「みんな本当にごめん、団長が負けちゃったからこんなことになって」
そこまで言ってとうとう耐えられなくなったのでしょう、ノエルは「うっ、うっ」と嗚咽をもらしながら崩れ落ちてしまいました。
しんとした静寂のなかで、ノエルの嗚咽する息づかいだけが響きます。
「団長!」
すると突然、その静けさをぶち破るほどの大声が団員たちのなかから聞こえてきました。
「泣かないでくださいよ団長!」
その声はノエルに負けず劣らず潤んでいました。
他の団員たちが声の方へ振り向き、ノエルも顔を上げて声の主を見ます。
泣きながら声を張り上げた団員は、昼頃スバルたちに話しかけてきた青年の剣士でした。
「お、俺が、俺がそんな卑怯なやつ、叩きのめしてやりますよ! だからもう泣かないでください!」
彼がそう叫ぶと、今までどうにか塞き止めていたものが溢れ出したかのように、他の団員たちのところどころで声を押し殺した嗚咽が聞こえ始めます。
「バカ野郎!」
青年の隣にいた壮年の団員がガツン! と彼の頭を小突きました。
「半人前の中級剣士が一丁前のこと言ってんじゃねえよ!」
彼は青年剣士を りつけてからノエルの方へ向き直ります。
「団長! なーにめそめそしてるんですか! らしくないですよ!」
彼は野太い声でそう言ってから「がははは!」と笑いました。
すると団員たちのなかから「くよくよしてどうしまっするー!」とノエルの口調をまねた声が飛んできて、「あははは」と泣いているのか笑っているのかよくわからない乾いた笑いがぽつぽつと起こります。
「団長! レジェンドソーセージを使えるとか使えないとか、そんなのどうでもいいじゃないですか! え? ていうか団長今までレジェンドソーセージ使ってたの? びっくりなんですけど!」
「バカかおまえ、おい白銀聖騎士団の面汚しがここにいるぞ! 団長! こいつに一発ガツンと喝入れてやってくださいよ!」
「ていうかそもそも! そもそもですよ! ソセレ合金防具を装着できる剣士なんて大陸広しと言えども団長だけなんですから! その時点で人類最強説確定で良くないっすか?」
「団長、それ以上に高みを望んだら罰が当たりまっするって!」
「いや待て待ておまえら! むしろ団長がソセレ合金防具をフル装備したら、相手がレジェンド所有者だろうが何だろうがぶっちゃけ関係なくないか?」
「おお! 言われてみれば!」
「ああくそ! それ俺が言おうと思ってたのに!」
「嘘ついてんじゃねえよ!」
がははは! と笑い合ってから団員たちがノエルの方へ向き直ります。
「ねえ団長! 今度そいつに会ったらソセレ合金防具フル装備でリベンジしてやりましょうよ!」
呼びかけてくる団員に、ノエルは手の甲で涙をぐしぐしと拭い取ってから立ち上がりました。
「バカものー! いくら団長でもフル装備は無理だー!」
ノエルが叫ぶと団員たちにドッと笑いが起こりました。
「おい! 酒持ってこい酒! 団長が全然見つからないから酒がまずくてまずくて、今からパアッと飲みなおすぞコラ!」
「団長、負傷された昨日の今日ですが酒はいけそうですか?」
尋ねる団員にノエルは「問題ない!」と答えます。
それから「どんどん持ってこい!」と付け加えました。
「おい! 団長のお許しが出たぞ! 持ってきた酒樽ぜんぶ開けちまえ!」
「団長も飲まれるそうだ! 牛丼持ってこい! 牛丼!」
それから白銀聖騎士団は夜明けまで飲み明かし、その場に居合わせたスバルたちも彼らの宴会騒ぎにつき合いました。
スバルドダック(アヒルverスバル)のシュバル語は読み始めると疲れます。
あえて読もうという方以外は、基本的にシュバシュバ喋った次行の(~)だけをお読みください。