勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~ 作:はばたくアヒル
「どこのどいつだ、レジェンドソーセージをすべて集めれば願いが叶うなんて適当なことを吹き込んだのは。そんなわけがないだろう」
フレアはねねに向かってそう断言しました。
「え? え? だって、え?」
ねねは目をぱちくりと瞬きします。
「目を覚ませねね、そんな都合のいいものはこの世界に存在しない。赤井はあとの持っているクリスタルサビロイのスキル『生命』でさえ怪我を治すという奇跡は起こせず、それを実現しうる別人格を作り出すことしかできなかったんだ」
「ち、違うじゃん!」
ねねはバン! とテーブルを叩いて立ち上がります。
「クリスタルサビロイのスキルはそうなのかもしれないけど、レジェンドソーセージを全部集めて願いが叶うのは別じゃん! だってスバルも、あのはあちゃまとハートンたちも、そのためにレジェンド所有者を探してるんでしょ!」
「そうか、そうだな。そんな話を聞けば、レジェンドをすべて集めれば本当に願いが叶うのだと期待してしまっても無理はないな」
「なんだよ、その『そうじゃないのに』みたいな含みは」
「事実そうじゃないんだ、ねね。その二つの願いはそれぞれ成就できる理由があるんだよ」
そう言ってからフレアは「まずスバルの呪い解除についてだが」と話し始めます。
「はっきり言ってしまうと、アヒルの呪いを解く力そのものとレジェンドソーセージは全く関係がない。解除の力があるのはむしろクソザコの書とかいう魔導書の方だ。そしてスバルたちがレジェンドソーセージの所有者を探しているのは、所有者十二人の名前を本に記すことが本の力を使用する条件となっているからに過ぎない」
ねねは黙ってフレアの話を聞いていますが、さっきからギュッと下唇を噛み締めています。
フレアは構わず「次にはあちゃまだが」と続けようとします。
「師匠」
すると、もう見ていられないと言いたげにポルカが割り込んできました。
「もういいです、十分ですよ師匠。あとはポルカがねねちに言っておくんで」
「そう言ってまたうやむやにするのがおまえの悪い癖だポルカ」
フレアはポルカを一蹴してからねねの方へ向き直ります。
「はあちゃまは、あいつの場合はとんでも能力を使って倒したレジェンド所有者のスキルのエネルギーを吸い取ってるんだ。クリスタルサビロイのような例外もあるが他のレジェンドソーセージスキルを見てばわかる通り、スキルとは基本的に使用者の身体や精神を強化したり回復したりする力だ。はあちゃまはそれらのエネルギーを奪い取り心身の強化に応用することによって赤井はあとを完治させようとしているんだよ。極端なことを言えば身体の病気だろうと心の病気だろうと、不治の病だろうと治るだろうよ。それらを全く受け付けない超人的な健康体を作り上げるつもりなのだから」
そこまで喋ってから「わかるだろ、ねね」とフレアはもう一度呼びかけます。
「どっちもおまえみたいに、とりあえず集めとけば願い事が叶うみたいなメルヘンチックなものじゃないんだ。願いが叶う根拠があるんだよ」
ねねはフレアを睨んだまま「うー」と唸り声を上げます。
フレアはため息をついてから紅茶を口に含みました。
「いくら唸ってもどうにもならん。本当に、どこの誰にそんなくだらないことを吹き込まれたんだ。レジェンドソーセージの原型を造ったあたしでさえ、そんな話聞いたこともないぞ全く」
ねねの矛先を自分から逸らすためでしょう、フレアは再び情報提供者を問いただします。
「誰って」
ねねは周りを見回しました。
ポルカを見て、ぼたんを見ます。
それからラミィを見ます。
ラミィの横で浮いているだいふくが、心配そうな顔をしてラミィを見上げます。
「そうだよ、ラミィじゃん!」
ねねは叫んでからラミィの側まで詰め寄りました。
「ラミィ、おまえ言ったよな! 信用できる確かな筋からの情報だって!」
語気を強めて問いただすねねに、一方のラミィは無言です。
「まあまあ、落ち着こうよねねちゃん」
そんなねねとラミィの間にぼたんが入りました。
「悪いのはラミちゃんにそんなことを吹き込んだヤツであってラミちゃんじゃないしさ、ラミちゃんだって被害者なわけじゃん。それに私も最近はちょっと期待しちゃったけど、最初からダメ元のつもりで探してたわけなんだしさ」
ねねはぶすっとしながらも「わかった」と頷きます。
「でも、どこのどいつからそんなことを聞いたのか、それだけは教えてもらうからな。ねねはそいつを絶対に許さない」
皆がしんとなります。
そしてラミィが話し始めるのを待ちます。
「ふ」
静寂を破るラミィの第一声は、鼻で笑うような含み笑いでした。
「ふふふ、ふふふふふ」
そしてラミィは俯きながらふつふつと笑いはじめます。
「な、なに笑ってんだよ」
ラミィの異様な雰囲気に、ねねはごくりと唾をのんで問いかけました。
「ふふふ、だっておかしいんだもん」
ラミィがゆっくりと顔を上げてねねと目を合わせました。
「情報源を教えてほしい? そんなの無理だよ。だってあれはラミィが考えたただの作り話なんだもの」
「……、なに?」
ねねの眉がピクリと動き、その目に静かな怒りがこもります。
「ラミィ、もう一回言ってみろ」
「お望みなら何度でも言ってあげるよ」
ラミィは立ち上がってねねと対峙するように向き合います。
「ねねちゃん、あんたバカだよ。あんなラミィのでまかせを信じるなんてさ。あれはラミィが強い剣を手に入れるためについた、みんなにレジェンドソーセージを探してもらうためのでまかせなんだよ。すべてそろえば願いが叶う? ド〇ゴンボールじゃないんだからそんなの起きるわけないじゃない」
「ラミィ、遺言はそれで全部か? 今のうちにおまるんとししろんへのお別れも言っておけよ」
ねねは今まで見たこともないほど眉を逆立て怒りをあらわにしながら、口の端を持ち上げるようにして笑いました。
それからレッグバッグに手を伸ばし静かにフォークを取り出します。
ブン! とフォークを振るって、彼女の所有ソーセージである下級剣ランドイェーガーを出現させました。
一方ラミィもそんなねねから目を離さずに、自分のレッグバッグへ手を伸ばそうとします。
「ちょっと待った」
フレアが一触即発の二人を止めました。
「ケンカなら外でやれおまえたち。あたしの館のなかでソーセージを振り回されちゃかなわない」
「シュバ!」
(おい!)
「ついてきなラミィ」
ねねがフォークにランドイェーガーをつけたまま部屋を出ていきます。
ラミィもねねに続きます。
さらにそんな彼女らを追って、部屋にいた全員が館の外へ出ました。
◇ ◇ ◇
「剣を抜けラミィ!」
館の門前に着いたあと、ラミィとある程度まで距離を開けてからねねは反転しランドイェーガーの剣先を彼女に向けて怒鳴りました。
「ふん、いいよ」
ラミィは頷きレッグバッグから銀色のフォークを取り出します。
「ただし、ラミィの本当のフォークでね」
言いながら彼女は両手でそのフォークの両端を掴み、へし折ってしまいます。
「おい! 何してんだよ!」
「見た通りよねねちゃん、もうくだらないダミーを使うのはやめるの」
ラミィは折れ曲がったフォークを放り捨ててから「だいふく!」と隣で浮かぶだいふくに呼びかけます。
「ラミィのフォークを出しなさい!」
だいふくはラミィの命令を拒むように首を振りますが、もう一度ラミィが「だいふく!」と怒鳴ると袋の中からフォークを取り出しました。
それは虹色の、レジェンドソーセージのフォークです。
ラミィはフォークを掴んでブン! と振るいます。
直後、フォークの先に異様なソーセージが現れました。
スバルドダック(アヒルverスバル)のシュバル語は読み始めると疲れます。
あえて読もうという方以外は、基本的にシュバシュバ喋った次行の(~)だけをお読みください。