勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~ 作:はばたくアヒル
50羽
「シュバルババ、シュバルルシュバルバルバシュババシュバルバシュバ」
(とりあえず、一件落着ってことで良さそうだな)
「そうですねスバル先輩」
ねねとラミィの一件があってから一日が過ぎてやってきた朝。
ダイニングに入ろうとしたるしあとスバルは、まるで何事もなかったからのように朝食を楽しむホロファイブの四人を認めてホッと肩をなでおろしました。
ねねとラミィの戦いが終わったあと、彼女たち二人だけでなくホロファイブの四人がお互い全く喋らなくなり、終いには各々部屋にこもってしまったので、スバルたちはチーム解散の危機なのではないかと心配していたのです。
「ふん、昨日は急展開だったからな。かしましいあいつらだって一生に一度くらい、一人で静かに過ごしたくなるさ」
いつからそこにいたのか、るしあの横にフレアが腕組みしながら立っています。
「シュバルシュバ」
(よく言うぜ)
スバルがボソッと呟きました。
「あん?」
「シュバルシュバルバシュバシュバシュバルルバシュバルシュバルバ」
(昨日一番そわそわしてたのはおまえじゃねえか)
「バカを言うな。あれは尿意をこらえてたんだ」
「女の子がドヤ顔して『尿意をこらえてたんだ』とか言わないでください」
るしあが呆れたようにため息をつきます。
「まあまあ、確かに何度もトイレに行ってたし、そういうことにしておきましょう」
三人の会話に「おはよー」とノエルが入ってきました。
「でもフレアは近頃便秘に悩まされていたんだね、団長全然気づけなかったよ」
「へらへらしながら唐突に何を言い出すんだおまえは」
眉を顰めるフレアにノエルは「だって」と続けます。
「トイレの個室に入るたびに『あたしのせいかー!』とか『なんであんな話してしまったんだー!』とか叫んでたじゃない。あれは出すものを出すためのふんばりのかけ声だったんでしょ?」
ノエルはにやにや面白がるように聞きます。
フレアは珍しく顔を赤面させて「そ、そうだ!」と答えました。
「ちょっとー!」
すると、ダイニングの入り口前で喋るスバルたちにねねが中から声をかけてきました。
ホロファイブの四人は皆食事の手を止めて、皆苦笑いしながらスバルたちの方を見ています。
「こっちは優雅なモーニングランチタイムなんですけど。おしっことかウンコとか汚い話は他所でやってもらえます?」
「シュバルルバシュバシュババシュバルバシュバルルシュババシュバルシュババ!」
(悪かったけどみんなそこまでド直球に言ってねえよ!)
「いやあすまんすまん、あたしらも朝食を取りに来たんだ」
ねねが割り込んで会話が中断されたのをこれ幸いに、フレアがそそくさとダイニングに入り朝食の準備をします。
るしあとスバル、ノエルも自分たちの分を用意しはじめます。
そうしているうちに「おはようございます」とキアラが入ってきて、館にいる全員がダイニングにそろいました。
「ねえ、さっきラミィ達とも話してたんだけど、お姫様のところにはいつ行くの?」
すでに朝食を取り終えたねねがスバルたちに問いかけます。
「だそうです、スバル先輩」
決定権はすべてスバルにあると言わんばかりに、るしあが膝元のスバルに尋ねます。
「シュバルバシュバルルシュバルバ、シュバア、シュバシュバルバシュバルバシュババ?」
(スバルはいつでもいいけど、キアラ、フェニックスの調子はどうだ?)
「キアラ、スバル先輩がキアラにフェニックスの調子はいいかどうか聞いています」
るしあの通訳にキアラは「万全デス」と答えます。
「それに、仮に調子が良くなかろうとスバルせんぱいの一声でいつでも行けマス、それがアヒージョというものデス」
言いながらキアラは誇らしげに腕を組みました。
「シュババ、シュバルバ、シュバルシュババシュバルバシュババシュババシュバルルバシュバルルシュバル」
(そうか、じゃあまあ、ここにいてもすることないし今日の昼頃に出発しよう)
「今日の昼頃に出発だそうです」
るしあの言葉にキアラが「了解デス」と頷き、ねねが「わかった、昼頃だね」と繰り返します。
「シュバア」
(るしあ)
そんな皆をよそに、スバルがボソッとるしあに話しかけます。
「シュバルバシュバシュバルバシュバルバシュババシュバルルシュバルバシュバルル、シュバルバシュバルバシュバルバ」
(スバルはこの食事が済んだらちょっと野イチゴ探しに出かける、暇ならおまえも付き合え)
「もちろんいいのですが、どうして野イチゴを?」
首を傾げて問いかけるるしあに「シュバ! シュババシュバル!」(しっ! 声がでかい!)とスバルが注意します。
「シュバアバシュバルルシュバルバ!」
(キアラに聞こえるだろうが!)
「え、あ、はい、ごめんなさい」
何を怒られているのかわからないまま、るしあは声を抑えてスバルに謝りました。
「シュバルシュバシュバルルシュバシュバルルバシュババシュバルバシュババシュバルルシュバルバシュバシュバルバシュバ、シュバシュバルルバシュバルルシュバルババシュバルルシュババシュバルルシュバシュバルシュバルバ」
(野イチゴを潰してから牛乳を入れてかき混ぜたのが好物なんだよフェニックスのやつ、また頑張って走ってもらうから出発前にこっそり食べさせてやるんだ)
「そ、そんな好物があったんですね、へええ」
「シュバ」
(ああ)
相槌を打つるしあに、スバルは当然とばかりに頷きます。
「で、でもなんでスバル先輩がフェニックスの好物なんか知ってるんですか?」
聞こうかどうか少し逡巡した末に、るしあはスバルに尋ねます。
するとスバルは「シュバ」(ふっ)とニヒルな笑みを浮かべました。
「シュバア、シュバルバシュバシュバシュバルシュババシュバルルバシュバシュバシュバル、シュバシュババ」
(るしあ、世の中には鳥同士にしかわからないこととかあるんだ、いろいろな)
「そ、そうなんですね」
あははとるしあは引きつった笑みを浮かべてから、がくりと肩を落とします。
「なんか、スバル先輩がいつの間にか意外な伏兵とすごく距離が狭まってて、るしあ地味にショックなんですが」
ぶつぶつとそんなことを呟きながらも「でもスバル先輩がるしあに野イチゴ探しを付き合えって、これ実質デートのお誘いじゃないですか」などと考えて顔をニヤつかせました。
「まあ出発は昼頃ということは、それまでは時間があるということですね。そういうことですよねえ? スバルさん」
ですが、ラミィのスバルに対する問いかけが、そんなるしあの夢心地を打ち砕くことになります。
「シュバ? シュバ、シュバルバ」
(ん? ああ、そうだな)
スバルはラミィに頷きました。
「ふふ、語調と喋った字数から考えるに、ラミィの言葉に相槌を打ってくれたのでしょう」
的確にスバルの発語を解釈してからラミィは勢いよく立ち上がります。
「スバルさん、このあとラミィに少しお時間いただけませんか?」
「シュババ? シュバ、シュバルシュバルババシュババ」
(んん? まあ、別に構わないシュバが)
答えながら、スバルはるしあの膝元から降りようとします。
しかしそうはさせまいと、るしあがスバルのお腹周りに両腕を回し離れられないように固定しました。
「シュバ」
(おい)
「ダメだそうです。スバル先輩は食後にるしあとの大切な用事があるのだそうです」
るしあの言葉にラミィは「えー、そうなんですかー」と項垂れながら、残念そうに着席します。
「おい、何を勝手な返事をしているおまえ」
そんなやりとりを聞いていたフレアがため息をつきました。
「大空スバルは別に構わないと言っているじゃないか。あたしとおまえ以外シュバル語を解せるやつはいないんだから適当なことは言うな」
フレアの話を聞いたラミィはジト目でるしあを見ます。
るしあは視線を斜め上に泳がせてから小さく「ちっ」と舌打ちしました。
「それで、スバルに何の用があるんだ?」
フレアがラミィに続きを促します。
「ふふふ、スバルさん。スバルさんたちはレジェンド所有者の署名を集めているのでしょう? ここにもまだ一人、署名していないレジェンド所有者がいることをお忘れではないですかってことですよ」
言いながら、ラミィはスケルトンソーセージのフォークを取り出しちらつかせます。
「ああ、そうでした」
るしあはバッグからクソザコの書を取り出しました。
「良く言ってくれましたラミィ、昨日の雰囲気ではお願いするにできずそのまま聞かずじまいでいてしまい、るしあとしたことがすっかり忘れていました。さあ、さっそくサインしてください」
クソザコの書を差し出するしあに、ラミィは「ち、ち、ち、ち、ち」と舌を鳴らします。
「サイン? ラミィはまだしてあげるなんて言ってませんよ?」
「あ?」
ドスを利かするしあに「はーん、ごめんなさーい」と彼女は即座に謝ります。
「します、もちろんサインさせていただきますけど、そのまえにスバルさんと戦わせてくださいよるしあさん」
「どうしてですか」
問いかけるるしあに「だって」とラミィは口を開きます。
「昨日はこれ以上ねねちゃんたちに嘘をついていたくなくてレジェンド所有者だっていうことをカミングアウトしましたけれど、ラミィの強いところを全然みんなに見せれてないんですもの。先日のノエルさんみたいに同じレジェンド所有者のスバルさんと戦って『ざわ、ざわ……。え? ラミィってあんなに強かったのかよ……』って思われたいんですよー」
「ばかばかしい、付き合ってられません」
るしあは吐き捨てるように言ってから続けます。
「いいですか? スバル先輩は一日に三分しか人間の姿になれないのです。その貴重なお時間を使って、素振りなどアヒルの姿ではできない鍛錬を日々コツコツと重ねているのです。それをどうしてあなたの自己顕示欲を満たすために使わなければならないのですか。そんなことでるしあとスバル先輩のデートの邪魔じゃなくてスバル先輩の貴重な三分間を使わせようなんて冗談じゃないですよ。いいからさっさとサインしてください」
ずいっとクソザコの書を押し付けるるしあに、ラミィが「はーん」と悲しげな声を上げます。
「シュバ、シュバルバシュババ。シュバルルバ」
(いや、いいじゃん別に。戦うよ)
「スバル先輩……」
「シュバア、シュバルルシュバルババシュバルルバシュバルシュバルシュバルルシュババシュバルシュバシュバルルバシュバルバ、シュバルシュバルシュバルバシュバルルシュバシュバルバシュバ。シュバルシュバルバシュバルバシュバルババ」
(るしあ、レジェンド所有者が勝敗に関係なく戦うだけで署名してくれるっていうんだ、感謝したいくらいの好条件じゃねえかシュバ。なんでそんなに邪険にするんだよ)
「でもでも、るしあと一緒に行く例の件はどうなるんですか?」
「シュバルルシュバルルシュバシュバルルバシュババシュバシュバ。シュババシュバルルシュバルバ、シュバシュバルバシュババシュバルルシュババ」
(言うても三分だろ、そのあとで行けばいいシュバ。もしも行けなくなっても、また今度にすればいいだけだしな)
真っ当なことを言うスバルにるしあが「うー」と唸ります。
「スバルさんはなんて言ってるんです?」
顔の前に手を合わせながらラミィが恐る恐るるしあに聞きます。
「勝負してくれるのだそうです」
るしあがぶすっとしながら答えました。
ラミィは「やったー!」と拳をかかげて喜びます。
それから彼女はくるりとねねたちの方へ振り返りました。
「聞いた? ねねちゃん、おまるん、ししろん! これからラミィの本当の実力をお披露目してあげるから、目ぇひん剥いてよーく見てるんだよ!」
ポルカが「はいはい」と微笑ましげに二つ返事して、ししろんが「がんばれラミちゃん」とエールを送ります。
ねねはラミィと同調しているのかと思われるくらいに興奮しながら「いけー! ラミィー!」と発破をかけました。
「任せてよ! 顔が肝臓雪花ラミィ、今こそみんなに本当のラミィを見せてあげる!」
そして、ラミィとスバルの戦いが始まりました。
攻めるスバルに対しラミィは防御に徹する戦い方で、そのまま三分が経過します。
二人の勝負は引き分けということで終わりました。
スバルドダック(アヒルverスバル)のシュバル語は読み始めると疲れます。
あえて読もうという方以外は、基本的にシュバシュバ喋った次行の(~)だけをお読みください。