勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~ 作:はばたくアヒル
「ぜえ、ぜえ。ど、どうだった? ねねちゃん」
スバルとの戦いを終えたラミィは息を切らせながらねねたちの元へやってきます。
「あの大空スバルと引き分けるほどのラミィの実力、わかってくれたかな?」
「あー、うん、まあ」
「え、なに? どうしてそんなに歯切れ悪いの、ねねちゃん!」
ラミィが聞くと、ねねは「あのさラミィ」と正直な感想を述べ始めます。
「わかってくれた? って聞かれても、ねねにもラミィが強いんだろうなっていうのは何となくわかるんだけど、ラミィの戦い方って地味な上に明らかにスバルの時間切れ狙っててせこいなーって感じだし、やっぱりねねはスバルやノエルみたいにド派手でかっこいいのがいいかなー」
「そんなあ」
ラミィはがくりと肩を落としました。
「まあ確かに魅せるプレイではなかったわな、良く言えば玄人向けというか」
そんな彼女にポルカまで追い打ちをかけます。
「ねねちゃん、おまるん! 忖度! 忖度だって!」
するとおそらくわざとでしょう、ぼたんがラミィにも十分聞き取れる距離で二人に注意しました。
「でもすごくかっこよかったよラミィ!」
「手に汗にぎる激戦だったじゃんラミィ!」
直後、ねねとポルカは手のひら返してラミィを讃えはじめます。
「はーん! 二人とも遅すぎるよー!」
ラミィは「はーん! はーん!」と泣きました。
しかしすぐケロリと泣き止んで、いつもの四人でけらけらと笑い合いました。
◇ ◇ ◇
ラミィはスバルとの戦いが終えたあとでクソザコの書に名前を書きました。
なのでクソザコの書にはスバル本人、宝鐘マリン、赤井はあと、白銀ノエルに続いて五人目の署名が加わりました。
またスバルはるしあと野イチゴ探しに出かけ、籠いっぱいになったそれらをバケツに移し替えてからすり潰し、たっぷりの牛乳を注いでこっそりフェニックスに食べさせてあげました。
「走れエ! フェニックス!」
おかげでフェニックスは絶好調、いつものスバル一行に加えホロファイブも乗せているのに、普段より速いペースで走っています。
「あの、ぼたん」
出発してからしばらくして、フェニックスの上で相変わらず銃器の手入れをしているぼたんに、るしあが話しかけます。
ぼたんは「んあ?」と言って顔を上げました。
「どうしたのさるしあさん」
「実はですね、るしあずっとぼたんに聞いてみたいことがあって、隣いいですか?」
「どーぞどーぞ」
答えながらぼたんはまた銃器の方に視線を戻します。
そして汚れなどを拭きとるためにバラしていた部品をガチャガチャと組み立てはじめました。
るしあはスバルを抱きかかえながらそんな彼女の隣に座ります。
「ぼたんは非凡な銃の腕の持ち主ですよね。シュバンゲリオンが暴走していた時、ものすごく遠くから狙撃してくれたのだと知ってびっくりしました」
「あはは、ありがとう」
「それに加え剣の方も上級剣士、いいえそれ以上の腕前です。剣士でないるしあでも、ぼたんが並の上級剣士よりずっと強いんだろうなってことくらいわかります」
「どうしたのさるしあさん、今日はなんかすごく持ち上げてくれるじゃん」
ぼたんは組み立て終えた銃を持ち、遠くを狙うように構えながら「うん」と頷きます。
それからパックパックの中へ仕舞いました。
「別に持ち上げてるわけじゃありません。今まで思っていたことを口にしているだけです」
「あははは、買いかぶられるのも悪くないね」
ぼたんは胡坐をかきながらけらけらと笑いました。
るしあも彼女に愛想笑いを返してから「それでここからが、ずっと聞いてみたかったことなのですが」と切り出します。
「ぼたんは剣も銃もどちらも一流以上の使い手ですが、どうして剣士であるのに銃を持とうと思ったのですか? この世界で一番強い戦闘職は間違いなく剣士です。るしあのように、魔法使いとして特化しすぎているため剣士素質が皆無という血筋の縛りを受けてるわけでもないのに、どうして剣士一本に絞ろうとしなかったのですか? ぼたんなら、もし二足わらじをやめて剣士として専念すれば、今頃はレジェンド所有者になっていてもおかしくないはずです」
「あはは、冗談がきついきつい、それは褒めすぎだよるしあさん。スバルさんやノエルさん、ラミちゃん、それにあのはあちゃまの戦いを間近で見せてもらったけどみんながみんなぶっ飛んだバケモノばかり、たとえ私が剣士一筋だったとしてもあの中に混ざれたかどうか怪しすぎるよ」
そう言ってから「それに」とぼたんが続けます。
「剣か銃、どちらか一つに絞れと言われれば私は迷うことなく銃を取る。剣士になって上級まで昇級したのだって上級剣ちくわの使用資格を得るためだったしね」
「ちくわのフォークがほしかったのですか?」
「そうさ。ソーセージより硬い物質なんてソセレ合金を除き存在しない。その上あの手ごろな大きさ、銃身に使ってくれと言わんばかりに斬り抜かれた筒状のフォルム、ちくわほどバズーカにおあつらえ向きの部品はソーセージ多しといえども他にないよ」
「へえ」
「私はライオンだからね、私にとって狩りはアイデンティティなわけよ。でも昔と違い現代は百獣の王でさえ牙と爪だけじゃやっていけない、世知辛い時代だからさ。肉食獣だからって胡坐をかいていられない、時代に合わせて自分を変えていかなくちゃいけない。そうして閃いたのが銃を使いこなすことだったわけ。なのに上級剣士に昇級したあたりからチーム無所属の剣士だからとなめられて、勝負しろだの決闘しろだのうるさいのなんのって、そんなやつらを蹴散らしてるうちにメキメキ剣の腕があがってきちゃってさ。自分でも時々『あれ? 私ってメインは狩人だったよね?』みたいな気持ちになっちゃうこととかあって、野生の本能が鈍ったみたいで本当に嫌になっちゃうよ」
「えっと、いろいろ複雑なんですね」
「ま、だから銃の腕を褒められるのは嬉しいわけよ。ありがとねるしあさん」
そう言ってぼたんがるしあに人懐っこい笑みを向けた時でした。
「フェニックス!」
キアラが叫びます。
それを聞いたフェニックスが急ブレーキを踏まれたように急停止しました。
ガタン! と強い揺れがスバルたちを襲います。
「どうしたんですかキアラ、急に停まって」
るしあがキアラに聞きながら前方に目を向けます。
そしてすぐにその理由がわかりました。
「え? ハートン?」
ブタの着ぐるみをした赤井はあとのチームメンバー、ハートンの一人がフェニックスの前方に飛び出してきたのです。
「はあちゃまっちゃまー」
そのすぐ後で、おなじみの登場台詞を口ずさみながらはあちゃまが馬に乗って現れます。
はあちゃまに続き十数人のハートンたちも騎乗しながら現れて、フェニックスに乗るスバルたちを取り囲みました。
「ふふふ、やっぱりあなたは野放しにしておくのが正解だわ大空スバル。こんなに早く他のレジェンド所有者を見つけてくれるなんて」
言いながらはあちゃまは品定めするようにラミィを見ます。
思わずラミィは彼女から目を逸らしました。
「シュババア」
(はあちゃま)
スバルは苦々しそうに呟きます。
「はあ? 他のレジェンド所有者? るしあたちには何のことだかさっぱりわかりません」
一方るしあは堂々とシラをきりました。
しかしはあちゃまは「ふん」と鼻で笑います。
「ハートンは私の目であり耳であるのよ。そして元トップランカーチームだった彼らの隠密能力は極めて高いの。わかるかしら? あなたたちの知りえたことは全てはあちゃまに筒抜けってわけよ」
はあちゃまは「ふふふふ」と含み笑いをこぼします。
他方、そんな彼女を横目に「どうしマスか?」とキアラが皆に尋ねました。
「フェニックスで突っ切ってみマショウか?」
「シュバ、シュババシュバルバ。シュバルルシュバルババシュバルルシュバルバ」
(いや、それはやめとけ。レジェンド所有者に対して悪手だ)
「キアラ、相手はレジェンド所有者です。危ないからやめておけとおっしゃっています」
通訳するるしあに「しかし」とキアラが珍しく食い下がります。
「スバルせんぱいはすでに人間に戻れる三分間を使ってしまったあと、戦って追い返すことはできマセン」
どうかご検討を、とキアラがスバルに願い出ます。
「ラミィのせいだ」
そんなやり取りを見ていたねねがボソリと呟きました。
「はーん! ひどいひどーい! どうしてそんなこと言うのー!」
ラミィが「はーん! はーん!」と声を上げて泣きます。
そんな彼女をぼたんが「あー、よしよし」となだめます。
その時です。
「ふふ、ふふふふふ」
ざわつく面々を見回したポルカが、急に意味ありげに笑いだしました。
スバルドダック(アヒルverスバル)のシュバル語は読み始めると疲れます。
あえて読もうという方以外は、基本的にシュバシュバ喋った次行の(~)だけをお読みください。