勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~ 作:はばたくアヒル
「ふふ、ふふふふふふ」
フェニックスに乗っての移動中に、はあちゃまに襲われたスバルたち。
すでにスバルが人間に戻れる三分間を使い果たしたということでざわつきだす彼女らですが、そのなかでただ一人、ポルカだけは意味ありげな笑みを浮かべていました。
「まあまあ皆さん落ち着いて」
ポルカは皆をなだめる身振りをしながら続けます。
「ここはどうでしょう、この尾丸ポルカに任せてみては。今こそ皆様にポルカの秘められし真の力を見せてしんぜよう」
ポルカは芝居かかった口調でそんなことを言い出します。
するとああだこうだと言い合っていた他の面々が、水を打ったようにピタリと静かになりました。
ねねがぼたん、ラミィと順に顔を見合わせます。
ぼたんが目を伏せ、ラミィが悲しげに首を振ります。
ねねは二人に頷いてから「なあおまるん」とポルカに声をかけました。
そして「ん?」と振り向くポルカの頬に、パチン! とビンタをかましました。
「え? なに? どうしていきなりポルカ叩かれてるの?」
目を瞬きさせながら頬を押さえるポルカに、ねねは「目は覚めたか?」と労わるように話しかけ、その手を彼女の肩に置きました。
「現実を見ろおまるん。おまえは俺TUEEEEE! の主人公でなければ秘められし真の力を宿すつよつよキャラでもない、ホロファイブ最弱の中級剣士・尾丸ポルカなんだ」
「最弱はねねちゃんだけどね」
ぼそっとツッコミを入れるラミィに「しーっ、しーっ!」とぼたんが口元に指を立てます。
「とにかく、今はおまるんの真の力を見せてしんぜる場面じゃないからさ、おまるんは大人しくそこで座っててよ。ね」
ねねは言ってからまたポルカの肩を叩きます。
「その通りだよおまるん」
ぼたんも会話に入ってきました。
「おまるんが戦わなくちゃいけないなら、それこそ私が先に戦うって」
「そうそう」
ラミィまで加わってきます。
「おまるんは中級剣士なんだからさ。ちょっと強い言うてもまだまだ立場は半人前、無理を言ってみんなを困らせないことが今のあなたの役目よ」
ねね、ぼたん、ラミィと順々に諭されて、ポルカは「え、あ、はい、すいません」とぺこぺこ謝ってから引っ込みました。
そんなポルカを認めてから「さて」とラミィが呟きます。
「まあ、ここはどう考えてもラミィが戦う一択でしょうね」
立ち上がるラミィに「大丈夫デスか?」とキアラが声をかけます。
「だいぶ時間が経ったとはいえスバルせんぱいと戦ったあとデス、万全の状態ではないのデショウ?」
心配するキアラに「杞憂ご無用」とラミィは返します。
「顔が肝臓丈夫さこそがラミィの持ち味、スバルさんと戦った後だからって全然余裕です!」
言ってラミィはパチンとウインクします。
「シュバルルシュバルバシュバルルバシュバシュババ、シュババ」
(かわいい顔してすごいこと言うシュバな、この子)
ラミィはフェニックスから地面に飛び降りはあちゃまと対峙しました。
「ふふふ、素直に降りてきてくれて嬉しいわ」
はあちゃまは言いながらフォークを取り出し振るいます。
フォークの先にクリスタルサビロイが現れます。
ラミィもフォークを振るいスケルトンソーセージを出現させます。
「先日あなたがノエルさんにしたことは、剣士の風上にも置けない下劣な行いです。剣士とはどうあるべきか、ラミィが直々に叩き込んで教えてあげます」
「結構よ。あなたからは反面教師以外学べることがなさそうだからね」
一言二言軽口をたたき合ってから、二人は間合いを詰めて剣を振るいます。
ラミィのソーセージは上半部だけ肉がついたスケルトンソーセージです。
それを彼女は剣というより鎚を振るうようにして円を描き、はあちゃまに当てにいきます。
はあちゃまは後ろに跳んで避けてから再び間合いに入り、抜刀するようにクリスタルサビロイを振るいます。
ラミィはその一太刀を横にかわし、剣を振るったばかりのはあちゃまにスケルトンソーセージを当てにいこうと踏み込みます。
直後、はあちゃまはクリスタルサビロイをひん曲がるほどしならせて、そのしなる勢いでラミィを斬りつけにかかりました。
クリスタルサビロイがラミィに迫ります。
とはいえ、そのソーセージはしなりだけで動いているので速さも力もそれほどではありません。
かわすことも、剣で受け止め防ぐことも容易にできます。
にもかかわらず、ラミィは迫ってくる剣に対してまた一歩踏み込みました。
直後ラミィの左脇の端をクリスタルサビロイの刃先が抉り取ります。
ラミィはわずかに顔をしかめます。
だけれども、言ってしまえばたったそれだけのダメージです。
そして彼女は、今度は自分の番だと言わんばかりに剣を握り込み構えます。
一方はあちゃまは、避けるか防ぐかするに違いないと思い振るった威嚇のつもりだったものが無視されたため、次に打つ手を失うという失態をさらしてしまいます。
それに加え、今の自分が剣を振るい終えた無防備状態の上にラミィに懐へ入られてしまった最悪の状況なのだと一瞬遅れて理解して、慌てて後ろへ飛び退きます。
しかしそんな彼女の行動を読んでいたラミィは、まさに彼女が移動する動きに合わせて深く踏み込みます。
そしてはあちゃまめがけて剣を振り下ろそうとします。
「……」
しかし、ラミィはその手を不意に止めてしまいました。
「!」
そのわずかな隙をはあちゃまは見逃しません。
また一歩後ろへ跳ねながら、牽制するようにクリスタルサビロイを横なぎに振るいます。
対するラミィも後ろに下がることでその一刀を避けました。
「今、どうして剣を止めたの?」
しばらくお互い沈黙しながら睨み合い、ぽつりとはあちゃまが問いかけます。
「止めていません」
否定するラミィですが「いいえ、確かに止めたわ」とはあちゃまは言い切りました。
「しかしどうして止めたのかわからない。それほど不調のようには見えないし、だとしたら身体のどこかに不具合を抱えているか、もしくは」
下を向いてぶつぶつと呟いてから、はあちゃまは何かに思い当たった顔をしてラミィに向き直ります。
「まさかとは思うけど、私のこの身体が赤井はあとのものだから、振り下ろす直前になって躊躇ってしまったの?」
彼女は驚くというより呆れるように尋ねます。
対してラミィは無言に徹します。
しかしはあちゃまにはそれで十分だったようで「図星のようね」と笑いました。
「ふふふ、教えるだのなんだの偉そうに言っておいて、どうやらあなたは大空スバルや白銀ノエル以上に甘ったれた剣士のようね」
小バカにするように言ってから、はあちゃまは「ハートン!」と呼びかけます。
「あの下級剣士を襲いなさい!」
はあちゃまは唐突にハートンへ命令しました。
一方ラミィははあちゃまの次の動きを捉えようと意識を集中していたため、それを聞き流してしまいます。
「……。ん?」
しかしふと頭の中でその言葉を反芻し、誰が襲われそうになっているのか時間差で理解して「えええええ!」と大声を上げました。
そしてねねの方へ振り返ります。
ところが、ねねには何も起きていませんし、そもそもハートンたちは動いてすらいません。
「バカ! こっち見るな!」
ねねがラミィに「前! 前見ろ!」と注意します。
ラミィはハッとして前方に向き直りました。
しかし、そこには先ほどまであったはずのはあちゃまの姿がありません。
それどころかラミィの視界から丸ごと消えてしまっています。
「ど、どこにいったの?」
ラミィが独り言を言った直後でした、
「はあちゃまっちゃまー」
背後から声がしたかと思ったら、ラミィの背中に熱い痛みが走ります。
「くっ!」
ラミィは振り返りざまブン! と横なぎに剣を振るいます。
しかしその一振りはむなしく空を切り、むしろ怒りに任せた勢いにラミィの方が剣に引っ張られてしまいました。
しかも、またもやはあちゃまの姿がありません。
「なるほど、自分で言うだけあって丈夫さだけは人一倍のようね雪花ラミィ」
やはり斬りつけるのは後ろからです。
はあちゃまはまたもや背後に回り込み、大振り直後のラミィに容赦ない連撃をあびせます。
ラミィはそれらをすべてまともに受けてしまいます。
「ふーぅん!」
彼女は子犬が鳴くような悲鳴を上げました。
スケルトンソーセージは下半部骨剝き出しの見た目に反し、レジェンドソーセージのなかでもマシーンヨーテボリに次いで重量のあるソーセージです。
そのため通常のソーセージに比べて幾分動きが鈍くなります。
とはいえ上級剣士レベルが相手ならば大して問題にならない欠点ですが、今回は相手が同じレジェンド所有者の伝説級、しかも背を向けた状態から放たれる目にも止まらぬ速さの連撃です。
スケルトンソーセージの所有者には避けることも防ぐことも難しいのです。
ラミィはバタンと前のめりに倒れてしまいます。
「ふふふふふ」
はあちゃまは笑いながら歩み寄り、彼女の側までやってきます。
一方ラミィはどうにか立ち上がろうと頑張って四つん這いになっています。
「じゃあねばいばい、雪花ラミィ」
言って、はあちゃまがラミィの背中に剣を突き立てようとした時でした。
「まだよ」
ラミィがぼそりと返します。
彼女はソーセージを握ったまま両手両膝を地面につけている状態で、両目を大きく見開きます。
「勝手に、終わらせないでちょうだい!」
直後、その目が金色から灰色に変わりました。
スバルドダック(アヒルverスバル)のシュバル語は読み始めると疲れます。
あえて読もうという方以外は、基本的にシュバシュバ喋った次行の(~)だけをお読みください。