勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~ 作:はばたくアヒル
「まだよ」
ラミィが目を見開きます。
その目が金色から灰色へと変わります。
「勝手に終わらせないでちょうだい!」
スケルトンソーセージのスキル『執着』が発動します。
スケルトンソーセージの肉付き上半分、それらの肉が朽ちたようにボロボロと剥がれ落ちていきます。
そして骨だけとなったソーセージが、まるで何らかの呪縛から解放されたように凄まじい冷気を放出します。
その冷気がラミィをまといます。
冷気はラミィの身体に張り付き固まっていき、全身を覆う氷の鎧と化します。
その鎧に接したクリスタルサビロイの剣先が、ガキン! と音を立てて弾かれました。
「なるほど、それがスケルトンソーセージのスキル『執着』」
呟くはあちゃまに「そう」と答えながらラミィが立ち上がります。
「これこそスケルトンソーセージの『執着』、体力が25%以下であることを条件に発動が可能となり使用者の防御力を60%向上させる防御スキル」
言ってから、ラミィは骨だけになったスケルトンソーセージの刃先をはあちゃまに向けて構えます。
しかし直後「くっ」とつらそうに呻いて、先程剣で突かれた背中を押さえよろめきます。
「ふふふ、防御力が上がると言ってもダメージを受け付けないわけではなし」
はあちゃまは喋りながらゆっくりと剣を構えます。
「そもそもそのスキルを使用する時点で雪花ラミィ、あなたの残り体力が四分の一以下であることは確定されたというわけよ。今そのスキルを使ったところでただの悪あがきに過ぎないわ」
そう口にしてからはちゃまは剣を振るいます。
そして悪いことに、彼女が言ったまさにその通りに戦いは展開していきます。
はあちゃまは先程ラミィが苦しげに押さえた背中ばかり狙ってくるのです。
しかも、クリスタルサビロイのえげつない攻撃法と言いますか高度なフェイントと言いますか、その部位を狙って振るわれたと思ったら例の凄まじいしなりで腹部や脚部を突き刺すといったこともしてくるので、いくら「執着」によって防御バフがかけられているとは言え、徐々に徐々にラミィの体力は減っていきます。
「くっ!」
そしてとうとう、ラミィは足が言うことを聞かなくなってしまったように、ガタンと地面に両膝を立ててしまいます。
それでも自分は倒れまいとして、彼女は膝元の地面に剣を突き立てそれを支えに堪えました。
「ぶざまね。ソーセージを杖に使うなんて」
鼻で笑ってから、はあちゃまはそんなラミィに近づいていきます。
◇ ◇ ◇
「ラミィ!」
ずっと黙って見守っていたねねでしたが、ラミィに詰め寄るはあちゃまを見てとうとう我慢できずに叫びます。
「このままじゃラミィが!」
あたふたしてから彼女はぼたんの方を振り向きます。
「なんとかしてししろん!」
そして無茶振りします。
しかしぼたんはねねにニヤリと笑い返しました。
「オーケー、リーダー」
ぼたんは自分のバックパックを逆さにして全て取り出し、フォークを振るってちくわを出現させます。
そして何やらガチャガチャとちくわに装着しはじめました。
銃口、持ち手、引き金など次々と取り付けていき、気づけばちょうどぼたんが担げるサイズの大砲のようなものができあがります。
「喰らえししろんバズーカ!」
叫んでから、ぼたんは銃口をはあちゃまに合わせてトリガーを引きました。
円筒に詰められた火薬が発火し、なかから砲弾が飛び出します。
「!」
そしてその砲弾は不意を突かれたはあちゃまの顔面に直撃しました。
さらに、はあちゃまに着弾した直後その砲弾はバアン! と大きな音を立てて爆発を起こします。
普通に考えれば即死の一撃ですが相手は剣士、しかもレジェンド所有者の伝説級です。
ぼたんは手を止めません。
「おまるん! 弾!」
後ろで控えていポルカに指示します。
「あいよ」
ポルカは返事をしながら慣れた手つきでししろんバズーカに砲弾を装填します。
そしてポルカが離れるや否や、ぼたんは二発目を発射します。
ちなみに、はあちゃまの立っているあたりは先程の爆発のせいで凄まじい砂埃がたっています。
もはや標的がどこにいるのかもわからないような視界状況のなか、ぼたんは撃ったのです。
砲弾が放たれます。
直進する弾の周囲だけ風圧によって煙幕のような砂埃が切り裂かれ、その隙間から中の状況が覗き見えます。
一瞬だけ、はあちゃまの姿が皆に視認されます。
一方ぼたんの放った二発目は、まるで吸い寄せられるようにそのはあちゃまめがけて突っ込んでいき、先程と全く同じく顔面に当たって爆発を起こしました。
そして一撃目の砂埃に上乗せされた更なる砂埃が舞い上がります。
「次弾!」
「あいよ」
「もういっちょ!」
「あいよ」
ドオン! ドオン! ドオン! と、ぼたんは容赦なく砲撃し続けます。
一方ねねはその隙にフェニックスから降りてラミィに駆け寄りました。
「ラミィ!」
「ね、ねねちゃん?」
「逃げるぞラミィ! ほら、ねねの肩に掴まって! こんな時に剣士のプライドだの一対一だのなんて言わせないからな!」
ねねは動けないラミィをほとんど担ぐようにしてフェニックスの元へ戻ります。
フェニックスの上から手を伸ばするしあとキアラにラミィを引き上げてもらい、最後に自分もよじ登りました。
「ししろん! おまるん! ラミィ回収し終わった!」
ねねが砲撃し続けている二人に大声で呼びかけます。
「よおし回収完了! てったい! てったーい!」
ポルカが叫びます。
「よおし、こいつはおまけだ!」
ぼたんは最後とばかりに砂埃のなかへ砲弾をぶち込みました。
そして着弾を確認することなく皆の方へ振り返り「今のうちに逃げるぞ!」とキアラに言います。
キアラは頷き、フェニックスに指示を出そうとします。
その時でした。
「そうはさせないわ」
声は砂埃の中からでした。
吸い寄せられるようにして、ぼたんが最後に放った砲弾はその声の主の方へ直進していきます。
しかしその一撃だけは標的に命中しませんでした。
着弾よりも速くはあちゃまがクリスタルサビロイを振るったからです。
中心を縦一文字に斬られた砲弾は綺麗に裂かれ、はあちゃまをすり抜けるようにして左右に分かれ直進し、しばらくしてから見当違いの場所でバアン! バアン! と爆発を起こします。
「だから嫌なんだよ、バケモノレベルの剣士は」
珍しく苦々しそうな顔でそう呟いてから、ぼたんは「キアラさん! 早く!」とキアラに呼びかけました。
「フェニックス!」
すぐさまキアラはフェニックスに号令を出し走らせようとします。
しかしそれを耳にしたはあちゃまが韋駄天のごとく駆け出しました。
そして彼女はブウン! と凄まじい音をさせてクリスタルサビロイを振るいます。
「止まれフェニックス!」
キアラは怒鳴るように撤回の指示を出しました。
フェニックスは即座に命令を聞き入れて走り出すのを中断します。
その直後、フェニックスの目と鼻の先をクリスタルサビロイがかすめます。
はあちゃまの動きを全然目で追えていないるしあとねねは背筋をぞっとさせ、顔を見合わせました。
「逃がさないと言っているでしょう」
フェニックスの前方にはあちゃまが立ち塞がります。
加えてハートンたちも改めてフェニックスを包囲しはじめます。
「ど、どうしましょう? スバル先輩」
るしあがスバルに話しかけました。
「シュバル、シュバルバシュバルルシュバ」
(すまん、スバルが戦えれば)
「なんでスバル先輩が謝るんですか! スバル先輩は悪くないですよ!」
「シュバ……」
(でも……)
るしあはスバルをギュッと抱きしめました。
そんな二人を見ていたポルカが「ねえ」と口を開きます。
「ここはポルカが戦うよ。みんなはそのうちに逃げてくれ、今はそれしかない」
「今一番ないのがそれだよ!」
瀕死のラミィが怒鳴るように言い返します。
「空気読んでおまるん! 中級のあなたなんか一番出てきちゃダメでしょうが!」
ラミィはどうにかして上体を起こしました。
「ラミィが行ってくるよ、そもそも勝負の続きだったんだ。まだ勝敗は決まってない」
「何言ってんのさ! もう決まってるよ! だからねねたちが無理やり割り込んで逃げようとしたんじゃん!」
ねねがラミィをまた横にしようとしますが、ラミィはその手を払いのけます。
「そうだとしても、はあちゃまの狙いはスケルトンソーセージのスキルだよ。最悪ラミィが降参して敗北を認めれば奪われるのはスキルだけ、みんな生き残ることができる」
「わかんないじゃんそんなの! 毒々しいオーラ出てるんでしょ!」
「あの人の目的は多分本当にスキルだけで、人の命を奪うとかそういうことには興味ないんだよ。ノエルさんもスキル取られたけど生きてるでしょ」
「そうかもしんないけど」
ラミィは言葉に詰まるねねを押しのけて立ち上がろうとします。
しかし、それをぼたんが無理やり押し倒して寝かせました。
「な、なにするのよ!」
「だからって瀕死のラミちゃんを行かせるわけないだろ」
言いながらぼたんは掴んだままになっているフォークを振るい、もう一度ちくわを出します。
「私が行くよ。スバルさんもラミちゃんも戦える状態じゃないとすれば、戦場に立つべきは上級剣士! 私しかいない!」
「だからポルカが行くって言ってんじゃん!」
「みんなラミィの言うこと聞いてよ! ねえ!」
ああだこうだとぼたん、ポルカ、ラミィの三人が取っ組み合う勢いで言い争いをはじめます。
そんななか、
「……」
キアラがちらりとスバルを見ます。
それから、彼女は黙ってフェニックスを降りました。
スバルドダック(アヒルverスバル)のシュバル語は読み始めると疲れます。
あえて読もうという方以外は、基本的にシュバシュバ喋った次行の(~)だけをお読みください。