勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~ 作:はばたくアヒル
あの頃から、一体どれだけ月日が経ったでしょう。
かつてキアラはスバルのことを、ずっと遠い存在だと思っていました。
キアラが大空スバルのことを知ったのは、スバルがレジェンド所有者になる少し前でした。
破竹の勢いでランキングを上げていく大空スバル率いるスバ友、巷ではその話題で持ち切り、一体どんな人なのだろうと憧ればかりを膨らませていました。
当の本人を初めて見たのは剣士になったばかりの駆け出しの頃。
はじめてのフォークを購入するために出向いた武器屋で、偶然スバルとスバ友たちに出くわしました。
選ぶ武器を悩むふりしてちらちらスバルの方を見ていたキアラに話しかけてくれたのはスバルの方で、スバ友でもないキアラに親切にアドバイスをしてくれました。
キアラはスバルが滞在している宿屋を教えてもらい、毎日のように通いました。
スバルはスバルでスバ友のランキングを上げるために一番忙しい時期だったはずなのに、嫌な顔一つせずにキアラを出迎えてくれました。
会いに行くたびに、キアラはスバルの様々な面を知りました。
スバ友の皆を面白がらせようと頑張っているところ、誰よりも真面目で剣士であることにプライドを持っているところ、たまにすごく抜けていてかわいいところ、寝る間も惜しんで皆のために働き続けているところ。
キアラは中級剣士に昇級した時に、スバ友に加入しました。
スバルは新参者の一人にすぎないキアラに気を配ることを忘れず、キアラのかける声にもすぐ応えてくれました。
キアラにとってスバルは喜びであり希望でした。
スバ友の一員としてランキングを駆け上がっていくことが何にもまして喜ばしく、スバルが行方不明になっていた五年間の空白期間でさえ、きっと戻って来ると信じて待つ自分を誇らしく感じました。
いつかきっとスバ友は復活ののちさらなる高みへと駆け上がり、スバルを頂点に立たせる。
その景色を一緒に眺めて笑いう。
それこそアヒージョの使命だと思ってきました。
しかし、もしもスバルをそのステージに立たせるためならば、ここで自分が犠牲になろうともためらうわけにはいきません。
スバルとスバ友たちが笑い合うエンディングのために、何をためらう必要がありましょう。
「ぜったいに、いかせない!」
「!」
はあちゃまの足首を掴むキアラの手が、腕が、身体がぶわっと燃え上がります。
肩甲骨のあたりから炎の翼が生えて広がり、周囲に火の粉を撒き散らします。
大きく見開いた目が、猛禽類のように鋭く尖り、そこから青白い光を発します。
「おまえはここで終わ」
「あなた、魔界の住人だったのね」
はあちゃまは剣を逆手に持ち直し、キアラの胸元めがけて突き下ろしました。
クリスタルサビロイがキアラの身体を貫通します。
すると、キアラの炎の翼がザッと吹き消されたようになくなってしまいます。
彼女をまとっていた炎もしぼんでいき、やがて燃え尽きたかのように消えてしまいます。
キアラは目を見開いたまま、その目の光を失って動かなくなりました。
キアラの身体の下に赤い水溜まりが広がっていきます。
はあちゃまは足首を掴む彼女の手を払いのけてから「そこのハートン!」と、目の前にいたハートンに呼びかけました。
「これをどこかへ捨てていきなさい! 残りは私に続きなさい! 大空スバルを追うわよ!」
そう言ってからはあちゃまは馬に跨り拍車をかけます。
そんな彼女に続きハートンたちも馬に乗ってスバルたちを追いかけます。
はあちゃまたちはあっという間にいなくなってしまいました。
ぴくりとも動かなくなったキアラの側で、ハートンが一人立っています。
「ブブー」
彼ははあちゃまに命じられた通り、キアラの身体をどこかへ捨てに行こうと運びはじめます。
後ろ手に掴まれズルズルズルと引きずられ、血の跡が地面にひかれます。
「……ごめん、なさい」
キアラの口元から、ボソリと声が聞こえました。
「ごめん、なさい。スバル、先輩……」
それはキアラを引きずっているハートンにも聞き取れないほど、小さくか細い声でした。
「ごめんな、さい。スバ友、みんな……」
そしてもう一度だけ、彼女は最後の力を振り絞るように口を動かします。
「ごめんな、さい、カリ……」
直後、キアラの身体が灰色に染まりました。
それからざらざらした肌触りに変わり、風化した後の砂塵のように身体が散りはじめ、さらさらと風に飛ばされていきます。
「ブブ……?」
キアラを運んでいたハートンはいきなりの軽さにびっくりして、彼女の方を振り返ります。
しかし、そこには何も残っていませんでした。
スバルドダック(アヒルverスバル)のシュバル語は読み始めると疲れます。
あえて読もうという方以外は、基本的にシュバシュバ喋った次行の(~)だけをお読みください。