勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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「ルーナとスバルちゃ先輩は将来を約束し合った仲なのら」

 

「んな!」

 

 ルーナの口にする衝撃の事実に、るしあは驚きのあまり思わずあんぐりと口を開きます。

 

「そう、あれはルーナがはじめて舞踏会を開いた月の明るい夜」

 

 ルーナはそんなるしあに構わず続けます。

 

「招待状も送ってないのにスバルちゃ先輩が勝手にやってきやがって、ルーナに愛の告白をしてきたのら。ずっと一緒にいような、って」

 

 言い終えてからポッと顔を赤らめてルーナは両手で頬を押さえます。

 

「……」

 

 るしあが背筋をゾッとさせるような冷たい目でスバルを睨みつけました。

 

「シュバアアア! シュバルバシュバルルシュバルバシュババ!」

(おめえええ! 話を捏造してんじゃねえよ!)

 

 スバルは弁明するように叫びます。

 

「シュババシュバルバシュバルルバシュババ、シュバシュバシュババシュバシュバルバシュバルシュバルバシュババシュババ!」

(道に迷って立ち寄った時に、たまたま庭にいたおまえとちょっと喋っただけじゃねえか!)

 

「ルーナ姫、スバル先輩はそんな約束していないとおっしゃっていますが」

 

 ドキドキしながら伝えるるしあに、ルーナは「あははは」と面白がるように笑います。

 

「まあ確かにしていないのらけど、でもスバルちゃ先輩、一考の価値はあると思うのらよ。もしスバルちゃ先輩がルーナのお婿さんに来てくれたら、ルーナは一日三食を食わせてやってまあまあの寝床を用意してやるのら。その代わり、スバルちゃ先輩は朝から晩までルーナの身の回りの世話をするのらよ。買い出しをし、ご飯を作り、後片付けをし、掃除をし、洗濯をし、草木の手入れ、お風呂沸かし、ゴミの振り分け、ゴミ捨てなどなどなど、馬車馬のように働いてもらうのら」

 

「シュバルバシュバシュバルルバシュバルバ!」

(おまえもうそれ使用人じゃねえか!)

 

「お婿さんというより使用人じゃないか、とおっしゃっています」

 

「スバルちゃ先輩は結婚に夢を持ちすぎのらよ、実際そんなもんなのら」

 

 呆れたようにルーナが言います。

 

「まあでも実際やってみると悪くない生活と思うのらよ。どうのら? ん?」

 

 それからルーナはスバルに詰め寄ってきます。

 

「ず、ずるい!」

 

 すると、ずっと通訳に徹して大人しくしていたるしあが、とうとう我慢できなくなったようにスバルを抱きかかえてルーナから距離を取りました。

 

「これはるしあのスバル先輩なんですからね! 取らないでください!」

 

「シュバ」

(おい)

 

「……、ぷふ」

 

 そんなるしあとスバルを見て、思わずといったふうにルーナが吹きだします。

 

「あははは、やっぱりスバルちゃ先輩は面白いのらな。あはははは」

 

 そしてしばらくルーナはお腹を抱えて笑いました。

 

 

  ◇  ◇  ◇

 

 

 それからスバルたちは客の間に移り、ルーナから紅茶と茶菓子を振舞われます。

 るしあやホロファイブの面々がルーナに打ち解けはじめた時でした。

 

「姫、お楽しみのところ失礼いたします」

 

 セバスチャンが入ってきました。

 

「どうしたのら?」

 

 紅茶のカップをソーサーに置いてルーナが尋ねます。

 

「かつてのトップランカー、赤井はあと率いるハートンが城にやってきました。門番のルーナイトに城門を開けろと脅してきたそうです」

 

 セバスチャンの報告にスバルたちがざわつきます。

 ルーナは「それで?」と彼に聞き返しました。

 

「は。追い返せと伝えておきました」

 

「うん、よくやった。それでいいのら」

 

 ルーナが褒めるとセバスチャンは「は!」と一礼してから退室します。

 

「はあちゃまが、もうすぐそこまで?」

 

 るしあがスバルを抱く腕の力を強めます。

 

「心配しなくてもいいのら、落ち着くのらよ」

 

 ルーナは優雅に紅茶を飲みます。

 

「ここはルーナの屈強なチームメンバー『ルーナイト』が守る城なのら、たとえ相手チームがあのハートンでもそう易々と」

 

「姫、大変でございます」

 

 ルーナの喋り途中にまたセバスチャンが客の間に入ってきました。

 

「今度はなんなのら」

 

「門番のルーナイトが倒されました。まもなく赤井はあと率いるハートンが城門を突き破り城内へ侵入してきます」

 

 ルーナはガタンと立ち上がりました。

 

「スバルちゃ先輩、なにをボケーっとしてるのら! 急いで逃げるのらよ!」

 

 ルーナは先程と正反対のことを言ってから「セバスチャン!」と呼びかけます。

 

「は!」

 

「緊急避難用の秘密通路を使って急いでスバルちゃ先輩たちを外に連れ出すのら!」

 

「かしこまりました」

 

 セバスチャンは客の間に飾ってある巨大な絵画を取り外します。

 その背面はフェニックスも通れるほど幅が広い通路になっています。

 セバスチャンはその隠し通路にまず先に入り、スバルたちを案内しようとします。

 そんな彼に向かって「それから!」とルーナが言葉を続けました。

 

「スバルちゃ先輩たちを避難させたら、すぐ城内外のルーナイトたちにも城を捨てて逃げるように伝えるのら!」

 

「姫、それはつまり赤旗を上げるようにというご指示でよろしいですか?」

 

 確認するセバスチャンに「なのら!」とルーナが頷きます。

 

「かしこまりました」

 

 セバスチャンはルーナに一礼してから「ささ、皆様お急ぎください」と秘密通路へスバルたちを促しました。

 スバルたちは順に秘密通路に入っていきます。

 

「ルーナは、逃げないの?」

 

 最後尾のねねが振り返って客間に残るルーナに尋ねました。

 すると他の皆もそのことに思い当たったようで足を止めてルーナの方を見ます。

 

「なに心配してるのら、ルーナもすぐ逃げるのらよ」

 

 ルーナは笑って答えました。

 

「この城には王族だけが知ってるもっと特別な通路があるのら。ルーナはそれを使ってみんなより安全な場所に避難するつもりだから、心配してくれなくてもいいのら」

 

 彼女がそう言うと「なんだよ、ずるいなー」とねねは笑い返します。

 そしてスバルたちはまた進みはじめました。

 

「さてと」

 

 スバルたちの足音が聞こえなくなったところで、ルーナは床に降ろされている絵画を秘密通路にかけ直します。

 それから、彼女は玉座の間へと向かいました。

 

 

  ◇  ◇  ◇

 

 

 ドカン!

 

「よくやったわハートン!」

 

 一方城外では、ハートンたちの体当たりによってとうとう城門が破られてしまいました。

 

「さあ、大空スバルたちを見つけるわよ!」

 

 ハートンたちに指図しながらはあちゃまが城内に踏み込みます。

 

「……」

 

 しかし踏み込んだ瞬間、はあちゃまは違和感を感じました。

 通路の灯が消えており、人の気配もないのです。

 

「闇討ちを警戒しなさいハートン」

 

 はあちゃまは注意を促しながら先頭に立って進みます。

 城内一階は静かです。

 忍び足で進んでいるはずなのに、自分たちのわずかな足音しか聞こえません。

 

「ん?」

 

 そうして玉座に続く階段の手前まで来た時です。

 虫の泣くような小さな音を彼女の耳が捉えました。

 

「……ピアノ?」

 

 それはピアノの旋律でした。

 はあちゃまは自分の幻聴を疑いました。

 しかし連れているハートンたちも同じように聴こえていることを知り、現実であると確信します。

 

 音は二階、しかも玉座の間から漏れているようです。

 はあちゃまは玉座の間に続く中央の階段を上がり扉の前に立ちました。

 やはり音はそこから聞こえます。

 玉座の間には灯もついているようで、扉と壁、また扉同士の接する隙間からわずかな光が漏れています。

 はあちゃまはその扉を押し開けました。

 すると直後、塞き止められていた川の水が流れ出るように優雅な曲調のメロディが城内に広がり渡りました。

 

 玉座の隣に設置されたグランドピアノ、その椅子に腰かけながらルーナがピアノ伴奏しています。

 はあちゃまは不審げに周りを見回してから「ねえ」と彼女に話しかけました。

 

「ここに大空スバルたちがいることはわかっているわ。痛い目にあいたくなかったら早く出してくれないから」

 

 しかしルーナは目を閉じピアノを弾き続けるだけで答えません。

 もしや聞こえていないのだろうかと思い、はあちゃまはルーナのそばまでやってきて「聞いてるの?」と話しかけようとしました。

 すると、

 

「あれは、ルーナがはじめて舞踏会を開いた月の明るい夜だったのら」

 

 ルーナはそんな彼女の言葉を遮るように、独り言のような口調で語りだしました。

 

「知り合いみんなに招待状を送ったのに誰も来てくれなくて、ルーナはさみしくて死んぢまいそうだったのら。でも、そんなルーナのもとにスバルちゃ先輩が現れたのら」

 

 いきなり何を喋りだすのかと、はあちゃまは眉を顰めます。

 

「スバルちゃ先輩はルーナの話し相手になっておしゃべりしてくれて、そして」

 

 ルーナはゆっくりと目を開けてから、当時を懐かしむように笑いました。

 

「ずっとずっと、友達でいてくれるって約束してくれたのら」

 

「それがどうしたのよ」

 

 はあちゃまが面倒くさそうに聞きます。

 

「んなああああ!」

 

 するとルーナは突然大声を上げて叫び、ピアノの鍵盤にバアン! と両指を立てました。

 直後、部屋の灯が一斉に消灯します。

 

「スバルちゃ先輩を虐めるやつあ、ルーナがぜってえ許さねえのらあああ!」

 

 突如、ルーナの身体に異変が起きます。

 窓から差し込む月明かりに照らされるルーナの身体が輝きだし、徐々に大きくなり始めたのです。

 

「な、なに!」

 

 しかも一回り二回りという比ではなく、彼女の身体は玉座の間いっぱいにまで広がり、とうとう天井を突き抜けてしまいます。

 

「んなあああああ!」

 

 最終的には自分の城とほぼ同じ背丈になるまで巨大化し、ルーナは月に向かって雄たけびを上げるように吠えました。

 それから彼女はフォークを取り出します。

 中級剣の銀色フォークですが、巨大化したルーナに合わせて大きくなっています。

 ルーナがそのフォークを振るうと先端に中級剣のチェヴァプチチが現れました。

 

「面倒くさいことになってきたわね」

 

 はあちゃまはボソリとこぼしました。

 それから彼女は「ハートン!」と、巨大化したルーナに慌てふためいているハートンたちへ呼びかけます。

 

「このでかいのは私が相手するわ。だからあなたたちは城内のどこかに隠れている大空スバルたちを見つけ出しなさい」

 

「ブブー!」

 

 はあちゃまの指示を受けてハートンたちは走り出します。

 

「させねえのら!」

 

 ルーナはそんな彼らの前方に巨大ソーセージを振り下ろそうとしました。

 

 ガキン!

 

 しかし、ルーナの振り下ろした剣は青白い光を放つソーセージによって受け止められます。

 はあちゃまのクリスタルサビロイです。

 

「ふん。やはり所詮は中級剣士」

 

 素早くハートンたちの前に移動しルーナのチェヴァプチチを受け止めたはあちゃまは、彼女の一刀を鼻で笑いました。

 

「巨大化しようが何だろうがはあちゃまの敵じゃないわ」

 

「うるせえのら!」

 

 ほえてからルーナはまた剣を振るいます

 はあちゃまはそれをひらりとかわしました。

 

「無駄よ、剣士としてまるでなっていないお遊戯だわ。私が本気を出す前に大空スバルたちをどこに隠したか喋るのが賢い選択だと思うわよ」

 

「んなあああ!」

 

 ルーナははあちゃまの忠告を無視してソーセージを振り回します。

 

「ふん」

 

 対するはあちゃまは、そんな力任せに振るわれるソーセージを避けるなり軽く受けて逸らすなりしてあしらいます。

 どうやらルーナが力尽きで大人しくなるのを待っているようです。

 一方、そんなはあちゃまの狙いは戦っているルーナが一番わかっているでしょうに、彼女は構わずソーセージを振るってとにかく前進します。

 

「んなあああ!」

 

 その短い時間のうちにどれだけ力を込めて剣を振るい続けたのでしょう、ルーナは額をびっしょり濡らし呼吸をぜえぜえ荒らげています。

 ですが決して手は止めず、息つく間もない連撃を続けます。

 

 並の剣士であれば、その粘り強い猛攻に根負けして膝を屈しているでしょう。

 しかし相手はレジェンド所有者のはあちゃまです。

 はあちゃまは涼しい顔でルーナの一振り一振りをあしらいながら、がむしゃらに前進するルーナに合わせて一歩、また一歩と足を引くにすぎません。

 もしかしたら、そうやって場内から追い出すことがルーナの狙いなのかもしれませんが、激しい体力消耗と引き換えるにはあまりにささやかな成果と言わざるを得ません。

 

「もしかしてあなた、実戦経験がないの? まだ体力のペース配分が狂ってることに気づけないのかしら」

 

 はあちゃまがルーナを小バカにします。

 

 ちょうど、その時でした。

 ルーナがはあちゃまを場外へ押し切り、城門を跨ぎ越えたのは。

 

 唐突にルーナははあちゃまへの攻撃を止めます。

 それからはあちゃまと全く見当違いのところ、城門の脇に剣を振り下ろしました。

 

「あらあら、自分の城を壊しだすなんてとうとう頭がどうかしちゃったのかしら?」

 

 はあちゃまが嘲笑います。

 しかし、ルーナが剣を振り下ろし砂埃が立つ場所から十数頭の馬が飛び出し走り去っていくのを見て、彼女の笑いがピタリと止みました。

 

「え、もしかして今の、私たちの馬?」

 

 はあちゃまは愕然としたように呟きます。

 それから怒りで震えはじめ、キッとルーナを睨みつけました。

 

「あなた、はじめから馬が狙いだったのね! 中級剣士の分際で、よくもレジェンド所有者である私を虚仮にしたわね!」

 

 激昂して怒鳴るはあちゃまに、ルーナは溜飲が下がったような顔でにやりと笑い返しました。

 そしてぜえぜえと荒い呼吸を少し整えてから「そういうことなのら」と、はじめてはあちゃまに答えます。

 

「ああそれと、スバルちゃ先輩の居場所も教えてやるのら。とは言ってもルーナは城の外に出してあげただけだから、その後どこへ行ったのか全然知らないのらけれど。今からでも心当たりを探してみればいいんじゃないのら? 自分の足で走って追いつけるのなら」

 

 急にべらべらと喋り出すルーナに、はあちゃまは「ふっ」と含み笑みをもらします。

 それから俯き「ふふふ、ふふふふふ」と肩を震わして笑いだし、手の甲の血管がはち切れるほど強くクリスタルサビロイを握り込みました。

 

「なるほど、あなたよっぽど私にぶっ殺されたいようね」

 

「んなこと一言も言ってねえのらああああ!」

 

 ルーナは叫びながら再びはあちゃまに剣を振り下ろします。

 わずかながらも休むことができたからでしょう、その一刀は先程までより一段階鋭くなっています。

 

「調子に乗んじゃないわよ!」

 

 しかし、はあちゃまはそれを今までのようにあしらおうとはしません。

 真正面から受け止めます。

 驚くことに、体格差で言えば巨大化したルーナにとってはあちゃまは子犬程度の大きさなのに、はあちゃまが受け止めた剣はびくともしません。

 

「ふん!」

 

 かけ声と同時に、はあちゃまは腕力でもってルーナの剣を押し返しました。

 

「なあああ!」

 

 ルーナは凄まじい勢いで飛ばされ城に激突します。

 ルーナのぶつかった衝撃でガラガラガランと城壁が壊れ、崩れ落ちます。

 

「覚悟はできてるんでしょうね」

 

 上半分が崩れ落ちた城壁を背もたれに尻もちついているルーナの元へ、はあちゃまがクリスタルサビロイを引っ提げて近づいてきます。

 

「くっ!」

 

 ルーナがとっさに剣を振るいます。

 しかしはあちゃまは軽くそれを弾き返し、ルーナの懐に入りました。

 巨大化したルーナにとって射程外の近さです。

 

「でしゃばったことを後悔しなさい」

 

 言って、はあちゃまは剣を振り下ろそうとしました。

 その時です。

 

「!」

 

 真横から鋭い一閃がはあちゃまめがけて飛んできました。

 




 スバルドダック(アヒルverスバル)のシュバル語は読み始めると疲れます。
 あえて読もうという方以外は、基本的にシュバシュバ喋った次行の(~)だけをお読みください。
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