勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~   作:はばたくアヒル

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 スバルとるしあがアヒール村にやってきてから一週間が経ち、半月が経ち、一ヶ月が経ちました。

 しかしアヒールの騒ぎはなかなか収まらず、彼女たちは村へ入れずにいました。

 

「どうしましょうかスバル先輩」

 

 るしあがスバルに尋ねます。

 

「さすがにこれ以上長引きそうだと、いったんるしあの屋敷に引き返して旅の準備を整え直したほうがいいと思うのですが」

 

「シュバルバア」

(そうだなあ)

 

 実はスバルもるしあと同じことを考えていました。

 食料についてだけ言っても、肉や野菜は毎回ジョゼフとたまき君が頑張って取ってきてくれますが、臭み消しなどに用いる調味料の残量は心許なくなってきていました。

 その他、こまごまとしたものも不足しがちになっていたのです。

 

 普通の旅であれば近隣の村や町に買い出しへ行って補充すれば済むところですが、そもそも近隣の村であるアヒールに入れず手こずっているわけで、そのアヒール村を除けば最も近い補給場所がるしあの屋敷なのです。

 そこでるしあはいったん屋敷に戻らないかと提案しているのでした。

 

「シュバ」

(よし)

 

 それもやむを得まい、とスバルが思った時でした。

 

「くっくっくっ」

 

 すぐそばの茂みから、男の声がしました。

 

「見つけたぜ、アヒルと魔女のお嬢ちゃん」

 

 スバルとるしあが声のほうを振り向くと、中年の男が背高い茂みを掻き分けて出てくるところでした。

 

「こんなところに隠れてるなんてな、手間とらせてくれるじゃねえか」

 

「くっ!」

 

 スバルとるしあは後ろへ飛び退き男から距離を取ります。

 

「わかってるだろうな、おまえら」

 

 男は笑いながら二人に話しかけます。

 

「おまえらは俺たちスバ友の触れちゃいけねえ逆鱗ってとこに触れちまったんだ。これは覚悟してもらわなくちゃいけねえわけよ」

 

 言いながら男はスバルたちに近づいてきます。

 

「たまき君!」

 

 るしあは声を張り上げました。

 すると直後ズルズルズルと、スバルたちと男の間を割り込むようにして土の中からたまき君が現れます。

 

「戦いなさい、たまき君!」

 

 るしあが指示すると、たまき君は右足に付けたレッグバッグの中から金色のフォークを取り出しました。

 

「金色のフォーク、上級剣か」

 

 それを見た男がぼそりと呟きます。

 

 ソーセージのフォークはその色によってランクを識別することができます。

 金色のフォークであれば上級剣士の用いる上級剣、銀色のフォークであれば中級剣士の用いる中級剣、木製のフォークであれば下級剣士の用いる下級剣、といった具合です。

 ちなみにスバルが持っているようなレジェンドソーセージのフォークは虹色をしています。

 

 たまき君は金色フォークをぶん! と振るいます。

 するとフォークの先に上級剣ソーセージのレバーケーゼが現れました。

 

「……。くっくっくっ、くははははは!」

 

 男は急に笑いはじめました。

 

「な、なにがおかしいのですか! レバーケーゼは上級剣ですよ!」

 

「別におかしくはねえさ。ただ覚えておきなお嬢さん方」

 

 言ってから男もフォークを取り出します。

 彼のフォークも金色、つまりは上級剣です。

 

「スバ友は他のチームの剣士より一階級上の実力を持つ。つまりだ、スバ友の下級は一般の中級、スバ友の中級は一般の上級、そしてスバ友の上級は一般の伝説級ってことだ」

 

「そうなのですか?」

 

 男の話を聞いたるしあが小言で隣のスバルに尋ねます。

 

「シュバルバ」

(らしいな)

 

 スバルは頷きました。

 

「シュバシュバルバシュバルババ」

(ただスバルは初耳だ)

 

「そして、聞いて驚け」

 

 男の話はまだ続いています。

 

「上級のスバ友剣士はその実力に見合った二つ名をつけることが許される。言わずもがな、俺もその二つ名を持つ剣士の一人というわけよ」

 

「スバ友はそんなことをしてるんですか?」

 

 またぼそりとるしあがスバルに尋ねます。

 

「シュバルバ」

(らしいな)

 

 スバルはふたたび頷きました。

 

「シュババシュバルバシュバルババ」

(それもスバルは初耳だが)

 

「名乗らせてもらおう!」

 

 男は金色フォークを横なぎに振るいます。

 そのフォークの先に現れたのは上級剣ソーセージ・ビーフジャーキーです。

 

「俺はスバ友上級剣士の田中、スバル四天王に名を連ねる実力を持つ男! またの名を『スバルの〇っぱい』! いざ参る!」

 

 田中はビーフジャーキーを手にたまき君に斬りかかろうとします。

 

 しかし、

 

「シュババシュバルバアアアア!」

(ちょっと待てええええ!)

 

 いきなりスバルが叫びました。

 それに気づいたるしあが「ちょっと待ってください田中さん!」と彼を制止します。

 

「ちっ、なんだよ」

 

 田中は振るう寸前だった剣をしぶしぶ下ろしました。

 

 るしあはそんな田中に「しばしお待ちを」と言い置いてから、「スバル先輩、どうかなさいましたか?」とスバルに尋ねます。

 

「シュバア。シュバルバ、シュバルルシュバルバ?」

(るしあ。今あいつ、二つ名なんつった?)

 

「すいませんが! 二つ名をもう一度読み上げてもらえませんでしょうか!」

 

「お、俺の二つ名をもう一度聞きたいだと? ふ、ふーん、まあどうしてもって言うならいいぜ別に俺はよ」

 

 田中は上機嫌になって「あー、あー。ごほん、ごほん!」と咳払いなどしだします。

 

「よおく聞きやがれ! 我が二つ名は『スバルの〇っぱい』! 今度こそ参る!」

 

「シュバアアア! シュバルバシュバルルバシュバシュバルバアアア!」

(おめえええ! スバルの聞き違いじゃねえようだなあああ!)

 

 するとスバルはこれでもかというくらい喧しい声を張り上げました。

 

「シュバルバアアア! シュバアアア! シュバアアアア!」

(アウトだあああ! やれえええ! るしああああ!)

 

「行きなさいたまき君!」

 

 るしあはたまき君に命令します。

 命じられたたまき君が前進します。

 彼女は剣士田中の前までやってくるとレバーケーゼを真上にふりかざし、それを勢いよく振り下ろしました。

 

「うおっと」

 

 田中はたまき君の一刀をビーフジャーキーで受け止めます。

 

「なるほど、なかなか重いソーセージだ」

 

 田中がつぶやく間に、たまき君はまたソーセージを振り下ろします。

 一合、二合、三合とたまき君の攻撃が続きます。

 たまき君はソーセージを振り下ろし続けます。

 

「シュバ」

(なあ)

 

 ふと、あることに気づいたスバルがるしあに話しかけました。

 

「なんでしょうか?」

 

「シュバルシュババ、シュババシュバルシュバルバシュババ?」

(たまき君さ、なんで縦振りしかしないんだ?)

 

「それは」

 

 るしあは一瞬、言うべきかどうか逡巡するような間を開けて「……からです」と、ボソッと小声で答えました。

 

「シュバ? シュババ、シュバシュバルバシュバルシュバ?」

(え? ごめん、今なんて言ったシュバ?)

 

 聞き取れなかったスバルがもう一度言い直すよう彼女に求めます。

 るしあは諦めたようにため息をつきました。

 

「あの、ですね、たまき君はあえて縦振りをしているのではなく、縦振りしかできないんです」

 

「……。シュバ?」

(……。はあ?)

 

 スバルは目を瞬きさせてから「シュバルバ?」(嘘だろ?)と聞きなおします。

 しかしるしあは「いいえ、嘘ではありません」と答えました。

 

「たまき君はソーセージを横に振るうことができないんです」

 

「シュバアアア!」

(おめえええ!)

 

 スバルはふたたび叫びました。

 

「シュバルバシュバルルシュバルバシュバルバシュバルバシュバシュバルルシュバルバ! シュババシュバルシュバ! シュババシュバルシュバシュバルルバ!」

(それじゃあ上級剣士どころか下級剣士にも勝てないじゃねえか! 横に振るえよ! 横に振るうだけじゃねえか!)

 

「やめてくださいスバル先輩!」

 

 るしあが膝を地につけ両手を顔に当てながら、まるで悲劇を嘆くように首を振りはじめます。

 

「たまき君に難しいことを言わないであげてください! たまき君も精一杯頑張っているんです!」

 

「シュバシュバア、シュバルバシュババ、……シュバア、シュバルバシュババア」

(いやおまえ、そんなこと言っても、……ええー、どうすんだよこれ)

 

 絶望的な顔をしながら、スバルはたまき君と田中の戦いに視線を戻します。

 

「くっ! うっ! くそお!」

 

「シュバ?」

(あれ?)

 

 しかし、戦況は意外にもたまき君の優勢でした。

 田中は防戦一方で、たまき君の攻撃を受けることで精一杯の様子です。

 

「シュバルバ? シュババシュバルシュバルババ?」

(嘘だろ? あれに苦戦してるのか?)

 

「これがスバル四天王の実力……」

 

 隣でぼそっとるしあがつぶやきます。

 するとスバルが彼女のほうへ、すごい勢いで振り向きました。

 

「シュバルルシュババシュバルバシュバルルシュバルルバ!」

(言っとくけど本人非公認だからな!)

 

「わ、わかってるですよ。スバル先輩が公認なさった四天王ならもっともっと強いに決まってるですもん」

 

 しまった失言してしまった、という顔をるしあはすぐ笑顔で取り繕います。

 

 一方たまき君と田中の戦いでは、たまき君の一撃でとうとう田中は地に膝を付けてしまいます。

 そこへ容赦なく振るわれるたまき君のレバーケーゼ。

 田中はどうにか避けて、たまき君から距離を取ります。

 

「くっ! な、なぜだ!」

 

 田中は狼狽しました。

 

「この五年間、スバルさんが失踪した悲しみに明け暮れ酒ばかりを飲み、ソーセージなど一切触れてこなかったとは言え、なぜ勝てんのだ!」

 

「シュバアアア! シュバシュバルバシュバルシュババシュバルバシュバルルバ!」

(おめえええ! 今自分で語ったのが全てじゃねえか!)

 

「し、しかし、これで勝ったと思うなよ……」

 

 田中はフォークからソーセージを消し、それをレッグバッグにしまってから「くっ!」と辛そうに呻き片腕を押さえます。

 

「たとえここで俺を倒したとしても、第二第三のスバ友が現れてきっとおまえたちを倒すだろう!」

 

「シュバ! シュバルバシュバルルシュババ! シュバルババシュバルルシュバシュバシュバルシュバルバ!」

(おい! 物騒なこと言うな! スバ友のイメージが悪くなるだろうが!)

 

 田中は右手の指を口に突っ込んでピィイ! と指笛を吹き始めます。

 

「どうしたどうした?」

 

「アヒルと魔女を見つけたのか? 田中」

 

 すると早くも第二第三のスバ友が続々茂みから現れました。

 人数はますます増えていき十人近く集まってきます。

 

「ふはははは! いくらその上級剣士でも、これだけの人数が相手だと手も足も出まい!」

 

 田中は一歩、また一歩と後ずさりしながらも笑い声だけは攻撃的に発してきます。

 

「スバル先輩……」

 

 るしあは心配そうにスバルのほうを見ました。

 

「シュバア」

(くそお)

 

 たまき君でこれだけの人数を相手にするのはいくら何でも無理です。

 正直な話、田中以外の剣士と戦って勝てるかどうかも怪しいのです。

 

「……」

 

 しかしレジェンド所有者のスバルであれば、たとえタイムリミットがたった三分であっても、彼ら全員を倒すことができました。

 剣士の戦い方は一対一が大前提、そのためたとえスバルでも一度に多人数と斬りあうのは無理です。

 しかしそれはあくまで戦い方の話です。

 スバルであれば一人ずつ数秒で倒していき、結果的に相手を全滅させることは容易なのでした。

 

 では何が問題なのかといえば、それはスバル自身の気持ちです。

 自分を慕いついてきてくれたスバ友にスバル本人がソーセージを向ける、彼女にはその決断を下す踏ん切りがつけれていませんでした。

 

「スバル先輩、逃げますか?」

 

 逃げるというるしあの言葉にスバルが過敏に反応し、彼女の肩がビクンと跳ねます。

 それを見たるしあは自分の失言に気づいて「違います! 違うんです!」と急いで補足しだしました。

 

「深い意味ではなくそのままの意味で聞いたのです! るしあはいつでも準備ができているということを伝えたかっただけで、その、決して深い意味ではなく!」

 

 あたふたしだするしあに「シュバ」(いや)とスバルは首を振ります。

 

「シュバアバシュバルシュバ、シュバア」

(おまえの言うとおりだ、るしあ)

 

「スバル先輩?」

 

「シュバシュバシュバルバ、シュバルバシュバルルシュババシュバルルシュバ」

(そろそろスバルも、逃げてちゃいけないのかもしれねえシュバ)

 

 言ってからスバルは目を閉じます。

 彼女の身体が光で満たされていきます。

 その時でした。

 

「せんぱあああい!」

 

 遠くから女性の声が聞こえてきました。

 

「シュバ? スバルルシュバ、シュババ!」

(ん? この声は、まさか!)

 

 その声を聞いたスバルは思わず人間に戻ることを中断します。

 

「スバルせんぱあああい!」

 

 声の主はすぐそこまで近づいてきます。

 声が近づいてくるに伴ってタタタタタタ! と何かが地面を蹴って駆けてくる音も大きくなっていきます。

 

「スバルせんぱあああああい!」

 

 茂みから飛び出してきたのは大きなダチョウでした。

 そしてその巨大なダチョウの上には、一人の女性が乗っています。

 

 彼女はやまぶき色の髪をしていますが、その髪色は毛先に行くにしたがって淡い青色に変色しています。なので肩の下まで伸びた後ろ髪の毛先は透き通るように綺麗な青で染まっています。

 服は袖なしの赤いジャンパーと同色のミニスカートで、それらをガーターで繋ぎ留めています。

 

「シュバア!」

(キアラあ!)

 

 スバルは思わず彼女の名前を叫びました。

 

「スバルせんぱい! はやく乗ってください!」

 

「シュバ!」

(おう!)

 

 スバルはキアラの後ろに飛び乗りました。

 キアラは次にるしあのほうを見ます。

 それから「おまえも!」と言って、彼女に手を差し伸べました。

 

「おまえええ?」

 

 るしあは不満げに顔をしかめました。

 しかしこの場に置いて行かれるわけにもいかず、仕方なしにキアラの手を取ります。

 キアラはぐいっとるしあを引き上げました。

 

「走れ! フェニックス!」

 

 それからキアラはダチョウの横腹を叩きます。

 

 タタタタタタ!

 

「うおっ!」

 

「あ、あぶねえ!」

 

「おまえ、くそ、キアラ!」

 

 キアラに走れと命じられたダチョウは目前にいるスバ友たちを振り払い、アヒール村とは正反対のほうへ駆けていきました。

 




 スバルドダック(アヒルverスバル)のシュバル語は読み始めると疲れます。
 あえて読もうという方以外は、基本的にシュバシュバ喋った次行の(~)だけをお読みください。
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