勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~ 作:はばたくアヒル
森カリオペと会うということでキアラの記憶を取り戻す手がかりが得られるかもしれない、そう考えたスバルとるしあはキアラを連れてるしあの故郷「オバケ村」へ向かうことにしました。
オバケ村はホロ・デ・ソーセージ大陸の北部にあるらしいということで、フェニックスに食料を持たせて走らせます。
ちなみにホロファイブの四人も同行したがったのですが、やはり七人もフェニックスに乗せるのは多すぎるということになり、フレアの館に残ってもらうことになりました。
「シュバア、シュバルシュバシュバシュバシュバルシュバルババ?」
(るしあ、オバケ村までどれくらいかかるんだ?)
「普段通りの旅のペースでいくと一週間くらいだと思います」
「シュババ」
(そうか)
スバルは頷いてからまた「シュバ」(なあ)と彼女に話しかけます。
「シュバルバシュババ、シュバルババシュバルシュバルババ」
(北っていうと、コミーノに通りかかるよな)
「そうですね」
「シュババシュバルルバシュババシュバルバシュババ? シュバアバシュバルバシュババシュバルバシュバ」
(ちょっとコミーノに寄って行ってもいいか? キアラにフォークを買ってやりたいんだ)
「キアラ、新しいフォークがほしいのですか?」
るしあはスバルに聞いたのですが、キアラは自分に話しかけてきたと思ったのでしょう「はい、ごめんなさい」と謝ります。
「なくしてしまったみたいで……」
「ううん、謝ることじゃないですよ。むしろちょうどいいタイミングです。コミーノは大きな町ですので、きっとどんなフォークも揃ってますよ」
るしあがキアラに微笑みながらそう言います。
スバルはフェニックスの耳元で「シュバシュバシュバ」と喋りました。
するとフェニックスは頷いてからやや進路を西へずらします。
「シュバルババシュバルバシュバルルバ」
(コミーノに向かってくれるって)
◇ ◇ ◇
しばらくして、三人はコミーノに到着しました。
コミーノに着いたスバルたちはさっそく武器屋に向かいます。
「いらっしゃい」
店に入った彼女たちに、ごつい体つきの店主が挨拶してきました。
店内にはさまざまなソーセージの模型がショーケースに入れられて飾られています。
また「サンプル」と札がつけられたフォークもそれぞれのショーケースの手前に置かれています。
「緑のシールが貼られているのが下級剣、白のシールが中級剣、黄のシールが上級剣だよ」
ショーケースのなかの模型を珍しそうに眺めるキアラとるしあに店主が言います。
ケースの正面側右上に色別の丸いシールが貼られているのでした。
るしあは「へえ、こんなふうになっているんですね」と楽しそうに言ってからキアラの方に振り向きます。
「さあキアラ、金額は気にしないで何でも好きなフォークを選んでください。前と一緒のでも、思い切って違うのを選んでもいいですよ」
キアラは「ありがとうございマス」とるしあに礼を言います。
「でも、以前使っていたソーセージもよく覚えていないし、こんなに多いと迷ってしまいますね」
キアラは模型のソーセージを角度を変えて見てみたり、またその模型のフォークサンプルを実際手に取って振るったりしながら首を傾げます。
どうやら、しっくりくるものがなかなか見つからないようです。
しかしそうして順々にフォークを見たり手に取ったり繰り返していくうちに、キアラの足がぴたりと止まりました。
「……」
案の定、チュロスの模型を前にした時でした。
それを目の前にして、キアラは感動や喜びよりも懐かしさが込み上がってきたように目を細めます。
キアラはチュロスの模型の前に置かれた何種類かのフォークも手に取り、それぞれを振るっていきます。
最終的に彼女が選んだものは、これも案の定ウサダ製のものでした。
「あの、これがいいデス」
「シュバルシュバルバシュバルシュバシュバルバシュバルバシュバルバシュバルバシュシュシュババ」
(やはり記憶をなくしても身体は自分のフォークを覚えているシュバな)
「そうですね」
キアラは店主にチュロスのフォークサンプルを手渡します。
彼はキアラの顔を見ました。
「チュロスは上級剣、つまり剣士協会が上級剣士と認定している剣士にしか売ることができねえ剣だ。お嬢ちゃん、剣士協会が発行している身分証を見せな」
「はい」
キアラが身分証を差し出すと、店主は「確かに」と呟いてから彼女にそれを返します。
それからカウンター奥に保管されているフォークの現物を持って戻ってきますが、彼はチュロスのフォークをキアラに渡す前に「余計なお世話かもしれないが」と前置いてから喋り出します。
「お嬢ちゃん、さっきいろいろ店内のソーセージ模型を見て回ってただろ? 新しいソーセージに替えようと思っているのだとしたら、チュロスはお勧めしないぜ。模型じゃわかりにくいが上級剣最長の170センチの長さに加えて気持ち悪いくらいしなるソーセージだ、見た目よりずっと癖が強くて扱いが難しい」
「え、そうなのデスか?」
「ああ」
店主のお節介な忠告に、ソーセージのフォークを直感で選んだキアラは迷いはじめます。
「おいるしあ」
(シュバシュバア)
それを見たスバルがるしあに話しかけました。
「シュバルバシュバシュバルルシュバ。シュババ」
(さっさと金払っちまえ。出るぞ)
スバルに頷いてから、るしあがずいっと店主とキアラの間に入り込みます。
「店主。親切心からのご忠告はとてもありがたいのですが心配無用です、彼女はチュロスの使い手なのですから。今回は訳あってそのフォークを失ってしまったのでこうして買いに来ただけなのです」
言ってからるしあはカウンターにチュロスのフォーク代金を置きます。
店主は「まあ俺はどうでもいいんだけどよ」と呟きながら、るしあにフォークの入った木箱を渡しました。
「はいキアラ」
るしあはそれをキアラに差し出します。
「あの、わたしは本当に、チュロスの使い手だったのデスか?」
受け取りながら尋ねるキアラに、るしあは「はい」と頷きます。
彼女の隣でスバルもこくこくと何度も首肯します。
「そっか、そうなんだ。よかったあ」
するとキアラはにっこり微笑みました。
◇ ◇ ◇
キアラのフォークを購入したスバルたちは、とりあえず今晩泊まる宿を探すために町をぶらつきます。
「ちょっと、あなたがた」
するといきなり後ろから声をかけられました。
その声には聞き覚えがありました。
「エルフの館は見つかった?」
振り返ってみると、そこにはローブを羽織った例の占い師が立っています。
るしあは彼女に「はい、おかげさまで」と答えました。
「よかったよかった。じゃあさ、白銀ノエルとも会えたんだよね? 彼女とは戦えたの? ねえ、どうだった?」
占い師の問いかけにるしあとスバルは顔を見合わせます。
「どうだった、とは?」
「いやいや、だから勝敗だって。やっぱり大空スバルともなれば、たとえ相手がトップランカーであろうと勝ってしまうのかなと」
あはははと笑いながら聞いてくる占い師に、るしあはまたちらりとスバルの方を見ます。
スバルはこくりと頷きました。
「いえ、勝ったか負けたかと聞かれれば残念ですが負けてしまいました。あなたが言うように、なんせ相手はトップランカーでしたから。でも署名は貰えたので何も問題ないです」
るしあが言うと占い師は口元に手をやって「へえ」と呟きます。
それから「もしかしてだけどさ」と喋りだしました。
「あなたたち、これまでそこそこレジェンド所有者に会ってきたと思うけど、勝負に勝って署名できたことって一度もなかったりする?」
「なんですかその言い方、スバル先輩が弱いとでも言いたいのですか?」
占い師の含みある言い方にカチンときたるしあが言い返します。
すると占い師は自分の失言に気づいたようで「あ、いや、そうじゃなくて」と両手を振ってあたふたしだしますが、結局素直に「ごめん」と謝りました。
「シュババシュバア、シュバルルシュバシュバルシュバ」
(いいよるしあ、実際その通りじゃん)
スバルはそう言いますが、るしあは「そんなことありません。るしあは絶対認めません」と顔を顰めて頑なに否定します。
「シュババシュバルバ、シュバルシュバルルバシュバルルシュバ」
(別にいいって、スバル本人が言ってるのに)
「それでもです」
るしあはふんと顔を逸らしました。
「いや、今のはうちが本当に失礼だったよ」
一方、スバルの言葉はわからないでしょうにそんなるしあとスバルのやり取りから大体の会話を察したようで、占い師はぺこぺこと謝りだします。
「あの、もしよければなんだけど、まだ泊まる宿屋は見つけてないよね? 失言のお詫びにうちの知り合いがやってる宿屋をタダで宿泊できるよう手配しとくから、それでどうか許してくれないかな?」
「いえ、そこまでしてくれなくてもいいです」
「いいやいいやそう言わず、それじゃあうちの気持が済まないからさ。予約は入れておくからこの地図の場所へ夕方あたりに来るといいよ」
言いながら、占い師は紙にさらさらと簡単な地図を描いてるしあに手渡します。
「それじゃあね」
そしてさっさと立ち去ってしまいました。
「どうしましょう?」
地図の書かれた紙きれを見て、るしあがスバルに尋ねます。
「シュバルルシュバシュバルシュバルル」
(せっかくだし留めてもらおう)
「でも、なんだか親切すぎませんか? そりゃすっごく失礼なこと言いましたけれど、だからってタダで宿に留めさせてくれるなんて」
「シュバルシュババ、シュバルバシュババシュバルルシュバルルシュババシュバルバシュバルシュババシュバルバシュバルルバシュバルバシュバルバシュババシュバルバ、シュバルバシュバシュバルバ」
(そうは言うが、今までだって情報提供料も取らずにスバルたちにレジェンド所有者の居場所を教えてくれていたしさ、奇特な人なんだよ)
「まあ、そう言われてみればそうですね」
「シュバアバシュババシュババ?」
(キアラもそれでいいか?)
「キアラ、スバル先輩がさっきの占い師が言っていた宿で一泊しても良いかと聞いています」
通訳するるしあに、キアラは「はい、わたしは何でも」と答えます。
「シュバ、シュバシュバルルシュバシュバルルバシュバルルバ」
(よし、じゃあ夕方まで適当にぶらつくか)
スバルたちは再び歩きだしました。
スバルドダック(アヒルverスバル)のシュバル語は読み始めると疲れます。
あえて読もうという方以外は、基本的にシュバシュバ喋った次行の(~)だけをお読みください。